第6話
色々と混乱していた私に、ワイバーンは魔力の弱い者はテアに近付き過ぎると炎によってダメージを受けてしまうからと、それだけの説明をしてくれた。
ダメージを受けるって事は、そばに居続けるとそのうち……。
「アカネはこの世界の者ではないから、人間有利のこの世界のルールを受けない。お前だけが頼りなのだ……」
人間有利の世界かぁ……異世界人の前に、私も人間なんだけどね?
だけど、この世界のルールが異世界人に適用されようとも私は人間であるから、どのみち魔物にとっては救世主ってわけか。
人間有利で魔力の弱まったテアの炎なぞ、私にとっては単なるカイロ!
ビジュアルが凄いから怯んでいたけど、そういう事よね?
気合を新たに再びテアの部屋に入りベッドに近付いていけば、急に起き上がったテアが部屋の隅の方に走って行ってしまった。
「キュッキュキュ~!」
あ、かわいい。
え?まだ喋れない位に幼いの?もしかして赤ちゃん?あ、赤ちゃんなら走り回るのは難しいか……もしかすると、話せるってのは相当上級魔物って事なのかな?
じゃあ、テアが喋れるようになったらバリアの強化とかできるようになるのかな?
いつまでかかんだよ!
いや、嘆いても文句をつけても状況は変わらないんだ。なら、元の世界に帰るためにすることなんてテアのお世話しかないじゃない!だって、その為にここに呼ばれたんだから。
「はーい、逃げないでくださいね~魔王様……ご子息様?あっ、坊ちゃん?坊ちゃま?」
こういう時なんて呼べばいいんだっけ?普通にテア様?でも魔王の後継者って事は、王太子的な立場なんだし、名前呼びは失礼になりそうだし、それを思えばちゃん付けも、ちゃま呼びも駄目な気がする。じゃあ、坊さん?坊様?
職業が違い始めたな……。
よし、
「坊殿!」
これで行こう。
殿付けだし文句ないでしょ。
「キュ……キュゥ?」
あぁ、かわいい。
「今日から坊様のお世話をすることになります茜谷……アカネです!」
この世界ではもうアカネとして定着してるっぽいし、アカネでいいや。子供にも言いやすい……かどうかは分からないけど。
「キュ?」
ま、まぁ。言いやすいも何も今はまだ鳴き声?だし言葉が通じてるのかも分からないのか。
だけど!
流暢に喋れるまでしっかりとお世話するからね!魔王城歴代トップの物凄く有能な教育係……は、ちょっと違うか。ならそのままお世話係?
あ、待てよ?なんかそういうのってメイドっぽいよね?
あれだ!魔王の後継者専属メイドってやつだ!
なんだか肩書が「異世界からの救世主」から「テアの専属メイド」って随分とランクが下がったような気はするけど、仕事内容はかなり大事な事だし、気合入れて頑張るよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます