第5話

 魔王のご子息であるテアがいるという部屋の少し手前まで案内してくれたワイバーンだったが、テアの部屋よりも部屋2つ分離れた所までしかついて来てはくれなかった。

 理由は自分の弱くなった魔力のせいだとかなんとか言ってたけど、魔王の後継者なんでしょ?なんか距離を感じるんだけど……まっ、行ってみれば分かるかな?

 1人で部屋2つ分を歩き、テアの部屋の前に立ってみると、その扉が鋼鉄製である事に違和感を覚えた。

 え?

 牢屋?

 いやいや、こういう趣味なのかもしれないじゃん。

 コンコン。

 「……」

 おや?

 返事がない?

 寝てるとか?

 まさか1人で勇者に突っ込んだと言わないよね!?

 コンコン。

 「……」

 やっぱり返事がない。

 不安になってワイバーンの方を見れば、中に入っても良いというようなGOサインを出している。

 だから、ここって魔王の後継者の部屋なんだよね?中にいるテアの意志関係なく入っちゃってもいいわけ!?

 とはいってもこのままじゃ埒が明かないし、入るけどさ……テアに文句言われたらワイバーンに入れって言われたのでってハッキリと言ってやろうじゃないの。

 「失礼しまー……あぁ~……」

 扉を開けて1歩部屋の中に入った瞬間、何故ワイバーンが部屋に近付かなかったのか、何故テアの意志確認もなく部屋に入って良いと言われたのかを理解できた。

 まさかの、子供。

 正確に言うなら、燃えてる子供?

 火の魔法を絶えず放出している子供?

 要するに、シーツどころか掛布団もない鉄板のようなベッドの上で炎に包まれながらスヤスヤと眠っている子供がいるわけだ。

 火加減は、鉄板ベッドが赤く熱されるほどだから……すごく熱いのだろう。

 だけど可笑しいな……少しも熱く感じないどころか、この部屋自体暑く感じない。

 それはテアの炎が特別なものって訳ではなく、私の魔法耐性のお陰なんだなーってのは、なんとなく分かる。だってさ、特別熱くない炎っていうならベッドが赤く焼けてはないんだろうし、扉も床も鉄製な訳ないもんね。

 よし、情報不足だ!

 私は1歩入っていた部屋からそっと出るとゆっくりと扉を閉め、廊下の向こうに立っているワイバーンの元に急いだ。

 テアが子供って事は、母親は?

 子供なんだし、教育係の1人や2人いても良いんじゃない?

 あの炎は出っ放しなの!?

 あんな燃えてる子の何をどう世話すりゃいいの?

 後、なんで私は熱く感じないの?

 「なんか、もう、色々聞きたいのに、何を聞きたいのかわかんないんだけど!どうしたら良いですか!?」

 私の行動が今後の魔物の運命を左右するとか、なんかそんな重責を担わされてる感じじゃないよね?

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