12
「ごめん、もう私達終わりにしよ。」
そう言って彼女は電話を切った。俺がどう思ってるとか気にならない、振り切って次に行けちゃうような、そんな人。
いつからか、キスもハグもしなくなった。でも仲が悪かったわけじゃない。仕事終わりには、待ち合わせして飲みに行ったし、休みの日には部屋を真っ暗にして2人でブランケットを被りながらホラー映画を観た。
ただ彼女はいつも、何か言いたげなそんな顔をしていた。それなのに何も相談しにこなかった。俺が悩んでいるなら話を聞くといっても、別に悩んでないよと言った。
ある日、彼女のスマホに電話がかかってきた。そこで他に男がいるのだと悟った。なんで?どうして?そう思っても、彼女が不意に見せるあの顔を思い出すと、聞くに聞けなかった。「実は浮気しちゃってたの、もう二度としないよ」と、そう申し訳なさそうに謝りにくるのではと。誰しも間違いはあるからと。そう言い聞かせた。
俺が仕事から帰ると、いつものいい匂いがしない。おかえりの声も聞こえない。なんだ、寝ちゃったのか、そう入った部屋は静まり返っている。
慌てて入った彼女の部屋には、何もない。家具も服も何もかもなくなっている。残っているのは微かに感じる彼女との日々だけ。嫌な予感がして、何度も電話をかける。
喧嘩なんて、なかったじゃないか。何か不満だったのか。やっぱり悩んでいたのか。どうして、電話に出ないんだよ。
ふと、彼女のあの顔を思い出した。きっとあれは罪悪感の顔だったのだ。彼女からかかってきた折り返しの電話。きっとこれは、別れのサイン。
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