第145話 平和な日々
あれから、1カ月が過ぎたけど、どう過ごしたかと言うと。
蘇生してから、マイティと瑞希は2日もあれば体力も戻り、元気に動き回っていた。
皆は、自分のやりたい事を各々過ごしていた。
俺はと言うと、1カ月前は、クランの事やいろいろな街の依頼などで大忙しだったけど、クランの規模を大きくする事に精を出していた。
1000人を超えるクランはそう多くはないが、なくはない。
でも、クラン、「ディファレント・アース」はその5倍ほどの規模になっていた。
オブリシア大陸だけで、冒険者が約1500人、スイーツと化粧品販売部が約1500人、クラン工房が2000人、ざっと数えるとこんな所だ。
クランのパーティが全てディファレントアースになるのも分別しずらいので。
うちのクランのパーティには、「○○〇〇・○○・D」のように、個クラン名の後にDを付けてる事にした。
面接などは、冒険者部はフェルナンドさん、カレンさん、クラウスが担当していて。
スイーツ販売部は、ミーナさん、シルビアさんに任せている。
工房は、殆どがドワーフだ、より良い物を作るのが前提になると必然的にそうなった、ただ酒の消費が異常なんだけど…その分賃金は安く済んでいた。
クラン領地には、大きなタワーが聳え立った。
地球への英雄の祠はこの中央に位置し、もう祠ではなく安全に固い壁に囲まれ、俺の許可がないと中へは入れない事になっている。
そして、この世界では一番高い建築物であろう建物で50階建てになっていた。
このタワーをひと月で作るんだから、ドワーフの物作りは凄い。
建築素材には、ランガルフさんから教えてもらった、古代ハイエルフ時代の丈夫な壁の技法が取り入れられて、それは徐々にフェリオール王国からオブリシア大陸には伝わって行くのだろう。
開発と言えば、携帯電話や転送装置もイグルート達のお陰で完成していた。
希少な次元石を使って出来たその装置は、国の管轄になった。
今後、門近くに転送装置がある建物が作られ、犯罪防止も兼ねて使用した人間は記録され、1~2人ずつ転送できるだけの物が設置される予定になっている、これでかなり国交も活発になるであろうが、最初のうちは国の許可を受けた者達だけの使用になるだろう。
携帯電話もそうだ。
次元石が希少な為、たくさん生産する事は出来ない、それは転送装置も一緒だ。
これも最初に設置するのは国だ。
国同士の簡易な報連相。
それから、冒険者ギルドや商人ギルド、奴隷商などの機関がその次に使用できるようになるのではないかと予想する。
そして、その開発元である、クラン、ディファレント・アースはフェリオール王国にあるものの、どの国にも中立に対応する事にした。
スイーツ、化粧品、自動車技術、転送装置、遠距離電話などは、俺のクランの特許である。
コアメンバーには俺の呪術を施す事になっている。
エリクサー技法とスキル、魔法スクロール技法はもっと機密だ。
この2つについては、浅い幹部では、殆ど知られない物になる。
とまあ、この世界で俺は独占禁止を、ばりばりとやっているわけで。
あ、それから、地球産の物もそうだ。
銃に関しては俺達幹部などにしか渡されていない。
銃器は魔法の世界のバランスを壊しかけないので、近親の者にしか持たせない事にしたのだ。
なので、フェルナンドさんが前に持ち込もうとしていた、ハリアーと言う垂直離着陸できる旧式の戦闘機とか、戦闘ヘリとか持ち込むのは断った。
一応、この世界にも飛空艇はあるのだから、それを改良してこの世界の世に放つ事にした。
勿論、兵器などの技法製法などはランガルフさんが話すはずもなく、そのまま永久封印で良いと思った。
とまあ、この1カ月で目まぐるしかった日々を過ごしたんだけど…
平和な日々だった。
◇
そして、今日俺は…
この世界で結婚する。
フェリオール王国の王城は庭が開放され、そこに詰めかけた国民達を上から見下ろしている。
フェリオール王国の王、アルメデオ王とサレーシャ王妃は俺とエルティア姫との結婚式を華々しくやってくれた。異例だったのは、そこに側室になる瑞希も並んでいる事だ。
実は、この1カ月の間、瑞希とエルティア姫は同じ男を愛した女同士って事でよく会っていた。意気投合したのか、俺にとって幸か不幸か分からないが…二人は親友のように仲が良くなった。
それを、アルメデオ王は同じ王族ではないが、俺のもう一人の妃として、エルティア姫と瑞希を並べて国民に紹介したのだった。国民は大歓声だ。
二人は、宝石を散りばめた純白のドレスに身を包んでいて、いつもより綺麗に着飾っている。こんな美人二人を俺は妻に娶る事になるが…罰は当たらないかと心配したくらいだ。
国民への公開結婚式が終わった後、広場には招待状を持つ者だけが入れる、披露宴に様変わりして、そこには懐かしい顔ぶれも来ていた。
クランの幹部は勿論。
各国の王や、王子達。
これから交流も始まるヴェルダシュラム公国の元老院達。
エルファシルからは、母エウロラと妹のヴィクトリア、人魚族アクアシア。
クランのマスターなども数名来ていたが、一番仲の良いクラン「ルミナス・ローズ」のマチルダさんも来ている。
それから、特別に俺が呼んできた、レイアリグ大陸アルカード町のシュクロスさんとリン、バルゼスもいる。
他にも俺に関わった人を呼んだのだが、挨拶くらいしか出来なかったのは言うまでもない。
◇
それから、国をあげての宴は王都の中でも3日も続いた。
その3日間、俺、瑞希、エルティア姫はフェリオール王国の要所を周った。
沢山の人達からの祝福を受けて、もうヘトヘトだった。
昼まで街を周り、夜になると城へ戻っていた。
そう…そう言えば、この世界にも初夜と言う物はあった。
初日は王の娘であるエルティア姫と初夜を共にする事となった。
それは、瑞希とエルが二人で話し合って決めた事らしいので、俺は何も心配しなくて良かったのだ…でも、それってどういう会話をして、そう決めたのだろうか、気にはなった…
エルとの初夜。
エルは地球産の化粧品を巧みに使用し、いつも美人だが、更にその日は美しかった。
透き通るような白い肌で、抱きしめると壊れてしまいそうな、柔らかな身体が印象的で、俺は緊張しっぱなだったのを覚えているが、営みの方もちゃんとスムーズに愛し合えたと思う。
そして朝起きると、エルは同時に目を覚まし、幸せそうな可愛い顔で今日も頑張りましょうねと言ったが…何を頑張るんだか…
その次の日、瑞希とは2度目の二人の夜だ。
お互い、まだ少し恥じらいもあったが、昔話から、何時の間にか、身体を合わせていた。
事が終わった後に、瑞希は意地悪にエルティアとの初夜どうだった?とか聞いてきたが、そんなの恥ずかしくて言えるわけないので、話は、はぐらかしたのだ。
そんなこんなで3日間は過ぎて、クランハウスに戻って来ていた。
いろいろと幸せ疲れのような物があって、クランハウスの自室でくったりと過ごしていた。
コンコン…
「は~い」
扉をノックされたので立ち上がり扉を開けると、そこに居たのはクラウスとマイティだった。
「クラウス?…あ、マイティも…どうした?」
「あ、いや…先ずはアラタに言おうと思ってな」
「ん?何を?」
「私達、結婚式あげようと思っているんです!」
「え?…おおおお~!それは良かった!…でも何で先ず俺に?皆の前でも良いじゃない?」
「いや、俺とマイティはさ、アラタに命を救われて今ここにいるわけだろ?」
「…まあ…そう言われたら…そうなのかな…」
「私達、アラタさんには本当に感謝していて…他の人の前だと冷やかしがあったり、祝いの言葉とかで、ちゃんとこうやって、アラタさんにお礼も言えないかも知れないと思って先に報告に来ました」
「…なるほど」
なんか俺達の結婚式が、人生の二人の起爆剤になったようだった。
それから俺の部屋に、クラウスとマイティを向かい入れ、暫しの時間、クラウスらしからぬ緊張した報告と昔話に花が咲いた。
目まぐるしい日々が続いたが。
何だか幸せな平和な日々だった。
冒険するのも凄く楽しかったけど、こうやって何でもない日々を過ごすのも悪くはない。仲間の幸せそうな顔が、俺を幸せにさせる事に気付かされていた。
さて、落ち着いたらまた冒険に繰り出そうと思う。
実は元ハイエルフで、今は機械の体のランガルフさんからの依頼で。
ランガルフさんからしたら、大昔の敵国になるんだけど。
向こうの本国から何やら弱い電磁波の反応が出ているので。それを調査に行かないか?と打診があったのだ。
この平和な日々をずっと続けていたいが、冒険もしたいのも事実だ。
その国はレイアリグ大陸の隣の大陸だと言う。
次の目標も出来た事だし、もう少し幸せな日々を堪能したら行ってみよう。
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後書き。
ファンの皆様、アラタの冒険は一応一段落しました。
ここでこのお話は一度、休憩させて貰おうかと思っています。
今、新作を書いている途中でもあるのですが。
まだ2話目を書いている感じで…まだ物語をどういう風に持って行こうか、かなり考えているんです。
他にもあるような作品にならないようにはどうしたら良いものか…
どこまで表現してどこまで細かく書くかなどなど…
アップするには5話ほど書いてからと思っています。
新作をアップする時が来て、読んで頂けるファンの方はこのままフォローを続けていてくれれば、通知?は行くのではないでしょうか?
私自身、趣味で書いているような物なので、あまり文章など上手くはありませんが、頑張って書いてみようと思っていますので、このままファンであり続けてくれる事を願っています。
新作は2023年2月初めくらいに公開したいと思っております。
新作を書き下ろした時には、何卒、よろしくお願いいたします。
作者:瑛輝
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