第136話 死体の群れ。

 イセ・スイーツの仕入れや、武器弾薬の仕入れも終わって、ライナのグランドヒューマン化も終了した。


 ライナは身体の変化に凄く驚いていたが、マージガル神国へ帰れば、白金プラチナ級、冒険者になる。そのくらいの身体能力がないと、俺達に便乗しただけだと蔑まされるだろう。


 秘密を守ってくれるのならそれで良いのだ。

 ライナも勿論、墓場まで秘密は守ると言ってくれたし、呪術も一応施しておいた。

 少し、性格は違うけど決意的な物はマイティと似ているから、真面目だし親近感が増すばかりだった。


 そう言えば、フェルナンドさんは、なんかロケットランチャーみたいな物を持って来たんだ。


 なんか、今、地球では某大国が隣国を侵略戦争を起こしたみたいで、その隣国にNATOが武器支援しているらしく。


 その流れで、武器の調達が容易になったとかで…

 アメリカ軍のジャベリンって言う携行歩行で行える対戦車ミサイルらしんだけど。

 その性能がやばかった…


 ミサイルの弾道は、装甲車両に対して装甲の薄い上部を狙うトップアタックモードと、建築物などに直撃させるためのダイレクトアタックモードの2つを選択できるらしく。


 トップアタックモードって、生物も頭部は大抵、トップにあるから有効って事だよね…?


 このへんが凄いと思ったんだけど。

 ミサイルは、赤外線画像追尾と内蔵コンピュータによって、事前に捕捉した目標に向かって自律誘導されて。メーカー発表によれば、講習直後のオペレーターでも94%の命中率を持つと言った。


 反則級の武器じゃないか…と思ってしまった。


 そもそも事前に補足した画像とかで追尾が出来るとか、補足さえすれば隠れて見えない所から撃っても、ほぼ確実に当たるって事じゃないか…

 今の地球の兵器って凄いんだな…戦争がなくても兵器は進化していくんだなあ。


 それは良いけど…フェルナンドさんまた物騒な物を持って来たなあ。

 俺のマジックボックスの中は結構、危ない物いっぱいだよ…。

 中で擦れ合って爆発とか…しないよね…。


 そしてさ、フェルナンドさん今度、俺を武器商人の所に連れて行って、博物館に保管されるくらいの旧式の戦闘航空機を買うとか言ってた。

 この地で、それを飛ばす気なのかな?…


 まあ、それは良いけどね。

 もし、またSクラスの魔物が出てこないとも限らないわけだしね。


 とりあえず、俺達の準備は整った。

 後は、明日の決戦に備えて休息をとるだけだ。


 ◇


 決戦当日。

 参加する人間達は地下駐車場にある、ゴブリンが掘った洞穴の前に整列していた。


 この二日間でその洞穴は兵士達によって、少しだけだが広げられていた。

 通りやすくして道中、戦いやすくするためだ。


 整列している俺達に、神帝と参謀長は檄を飛ばしていた。

 あまり長い話ではなかったが、皆の士気は上がっていた。

 君達の活躍に期待していると神帝は話を締めくくり、ぞろぞろとゴブリンの洞穴へ入って行く。


「アラタ」


 そう、俺を呼び止めたのは神帝と参謀長だった。


「神帝様」

「アラタ、君とクイン君の勝利を祈っている」

「はい!」


 そう返答して、俺も洞穴へ降りた。


 俺達は2列になり洞穴を進んで行く。


 洞穴には所々に横穴が掘られていて、そこに兵士が待機していた。

 その兵士達はこの洞穴を占拠し守って来ていたのだろう。


 その横穴前の床にはゴブリンか何かの肉片が落ちていて異臭を放っている。

 この状況で任務をこなしているのは凄いなと思った。


 俺達はその肉片を避けて足を踏み出していく。


 その横穴は幾つもありその度に兵士がいて、右手を胸に置いて敬礼していた。

 俺もその兵士に同じように右手を胸に置いて会釈して進む。


 ◇


 やっと、洞穴を抜けて岩城のある大きな広間に出た。


 そこには、灰銀ミスリル級兵士が陣形を整えて、たまに襲って来る低級アンデットを倒していた。


 洞穴出口にはすでに、所々に土嚢などが積み上げてあり。

 ちょっとした前線基地になっていた。


 そこにバラバラだが適当に整列する188人の精鋭達。


「君がアラタ君か?」


 1人の冒険者らしき人が話しかけて来た。


「あ、はい、そうです」

「まだ若いんだな…だけど、君からは異常な気配を感じる。多分、私らクランが君達を襲っても勝てる気がしないほどね」

「はあ…」

「済まない、自己紹介が遅れたね。私達はクラン「ラスター・ムーン」で、私はマスターの、アルバン・アドルスと言う、君と同じ白金級だ、お見知りおきを」

「あ…はい」


 その後も、いろいろな人が俺に挨拶に来た。


 最初の挨拶でクラン「ラスター・ムーン」、次にクラン「ダーク・ホーク」、クラン「ソウル・エッジ」、「タキオン」、「ローエングリン」この5組が白金級。


 黄金級クランも参加した5組のリーダーが挨拶をしに来た。

 いずれも8人パーティと言う均等のとれた王道パーティだった。

 王道パーティと言うのは、前衛に立つ戦士系2人、回復系2人、後の4人は自在攻撃を仕掛けられるアタッカーである。


 10組のクランは、強者として肌で感じているのだろうか、ぽっと出の俺達を見ても蔑む事もなく。同じ戦いに赴く仲間として敬意を表してくれた。


 そして最後に、俺達が失敗した時の為に用意された、神帝直属の部隊「ナイツ・オブ・アーク」が俺達に挨拶してきた。その中には、将軍長のドウラ・ドーレスもいる。


「ディファレントアースよ、我らマージガル神国精鋭が、主らを岩城まで導こうぞ!」


 そう将軍長ドウラは言った。

 その後ろでは、屈強そうな兵士達が剣や槍、斧などを持ち、フルプレートアーマーのような鎧一式を着こんでいた。


「hy将軍長殿?」


 フェルナンドは精鋭兵を見て将軍長へ声を掛けた。


「む?なんだね?」

「いや…あの装備では動きづらくないか?」

「なあに、こういう時の為に日々訓練もしているからな、安心せい」


 フェルナンドは呆れた顔をした。


「おい、アラタ…俺達が先頭を行かせてもらおうぜ…」

「何でですか?俺達を疲れさせまいとしてくれているのでは?…」

「あのな、あんな重装備で雑魚を成敗されても時間かかるだけだろ」

「まあ…確かに…」

「雑魚アンデットなら、器になる死体を破壊するで良いんだよな?」

「ああ‥はい、確かそうでしたね」

「だったら、ミニガンとかで蜂の巣にしていったほうが余程マシだぜ!なんなら、グレネードやロケラン使っても良いくらいだ」

「ああ…それもそうですね…」


 俺はフェルナンドさんの意見に納得して、そこにいる全クランと兵士にその旨を伝えることにした。


「あのー皆さん!我々ディファレントアースは雑魚になら有効な武器も所持しています!なので先頭は俺達に任せてください!」


 ざわざわ…ざわ…


 その時、丁度、前線にいた兵士が駆け込んでくる。


「将軍長様!今まで膠着していたアンデット共がこちらに進軍して来ます!」

「お?アラタ、良い機会だ、俺達の銃器をみせてやるとするか!」


 フェルナンドは将軍長に俺達に任せろと言って、188人は前線基地の一番前にまで移動した。


 こちらの魔法師達があちこちにライトの魔法を発動させて設置してあるため、この大広間はある程度は視認出来るようになっていた。


 灰銀級の兵士達は、将軍が俺達より下がれと声を掛けたので、俺達より背後に戻って待機した。


 岩城の方から黒い大きな影がこちらへと向かって来るのがわかった。

 目を凝らしてみると、死んだ兵士や、ゾンビゴブリン、たまに魔物ゾンビ、ちらほらと普通のゴブリンも混ざっている。


 かなりの数のアンデットがこちらへ波となって向かって来ていた。


「こんな数の死体どこにあったのでしょうか?…」

「さあな、あのスケルトンなんて今まで埋まっていたんじゃないか?」

「死体がどこから沸いたとかどうでもいいだろ?」

「ほんとにこの数の雑魚を纏めて相手できるのか?」


 後から兵士達のそんな声が聞こえた。


 俺はマジックボックスから、ミニガンを4つ出した。

 瑞希、クラウス、カレン、フェルナンドにそれぞれ渡した。


「将軍長いいですか?これを戦闘の始まりとしますよ!」

「ああ…そうだな、他に作戦もないからな、それで良い」


 新は将軍長にそう言った。

 そしてミニガンの安全装置を外したフェルナンドはクラウスなどに言う。


「先ずは、クラウスとカレンがミニガンで撃ち尽くす。その後、弾切れになったら俺と、ミズキに入れ替わり撃つ。その後はアラタの魔法でもマイティやレベッカがアサルトライフルなどで撃つ、それで撃ち漏らした奴は、後ろの猛者達にやってもらう、そんな感じでいいか?」

「了解!」「わかった」「うん」


 ミニガンを持った3人は声を出して頷いた。

 そして、俺も頷き、将軍長含む、後ろの者達にその旨を伝えた。


「よーし!もっと引き付けてから撃つぞ!」


 黒い大軍はどんどん近づいて来る。


「まだだ!」


 その場は静まり返り、アンデットの大きな足並みの音だけが響き渡っている。


「おいおい…大丈夫か…」

「この量…引き付けすぎでは?…」

「大きな魔物のアンデットまでいるぞ…」


 引き付けている時間が長く感じた。

 皆、その量に険しい表情を浮かべる。


 俺達から約20mくらいまで来た時。


「GO!GO!GO!GO!!!」


 キュキュルーーーーズダダダーーーーダーーー!!


 フェルナンドが叫んだ瞬間、2台のミニガンが火を噴く!

 瞬時に黒い影の真ん中に道が出来る、すぐに二人は右左へと軽く銃口を振ると、扇状に前にいた敵は粉々になっていった。


 その光景を見ていた者達は驚きで絶句していた。


 4人は地球人効果+グランドヒューマン化しているので、ミニガンも小銃を持つように軽く持っていて、背中には1万発の弾丸がミニガンまで繋がっていた。


 毎分約6000発、射出する弾丸は2分もかからないくらいで、低級アンデット共を殲滅寸前まで粉砕した。


 フェルナンドと瑞希に代わった時には、残党を処理するために撃ちっぱなしではなく、ちゃんと狙って動く者を小刻みに撃っていた。


 アンデットと言うのは防御力などは殆どないのもあるが、たった3分も経たずにそこにいたアンデットは粉砕、肉片や骨片に変わっていた。


 それには後ろにいた兵士達は開いた口が塞がっていなかった。


「一体…何が起こったんだ…」

「一瞬でアンデットが吹っ飛んだように見えたが…」


 ざわざわ…ざわざわ…


 硝煙の匂いと死臭。

 地面に転がった無数の薬莢が散乱していた。


「さてと、雑魚はある程度片付いたし、ボス攻略を始めますかあ!」


 フェルナンドはミニガンを肩に乗せてそう言った。



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後書き。

ファンの皆様、コロナも年末にはまた第8波が怖いですが。

もう殆どの制限が解除され、人の往来も多くなってきました。


来年には本当に普通に戻っている事を願いつつ、趣味と仕事を両立させております。

だんだん寒くなり普通の風邪も引かないよう、皆さまも健康にお気をつけてくださいませ。

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