第129話 地球と異世界の理り

 ランガルフは神帝と参謀長二人に、神であるランガルフと、ハイエルフの末裔である俺達に関する事は、国家機密だと言って他言しない事を誓わせた。

 そして俺達を、このマージガル神国で神帝の次の最高の階級「白金」を授けるように言った。


 あの様子だと二人は厳守してくれるだろう。

 今までのこの国を築いた奇跡を考えたら、神の声が機械の声だったとしてもその忠誠は揺るがないだろうと思った。

 


 ≪なんと!アスナール家の末裔なのか!?≫


 そう画面に映るランガルフは驚いた。


「えっと…母の祖先とお知り合いですか?…」

 ≪うむ。少し話を聞かせてやろ~お≫


 ランガルフは語り始めた。


 太古の昔、人間はハイエルフへと進化した。

 その主だったハイエルフは5つの貴族となってその血筋を繋いでいっていた。

 バーニー家、エリオース家、ブリクソン家、キリンス家、そして母エウロラの家系、アスナール家である。


 太古の大戦では、最初はエリオース家とブリクソン家のちょっとした争いからそれが大きくなり、戦争が膨らむに連れ、ランガルフの家系のバーニー家、エリオース家が手を組み。


 ブリクソン家に取り込まれた、キリンス家が手を組んで、ハイエルフ同士の利権を廻る大戦になってしまったと言う。


 そして、新の母エウロラの祖先アスナール家は戦争を嫌いどちらにも付かず、何処かへ行ってしまったらしい。


 そこまで、ランガルフは語り、ひと時の間を置いてまた口を開いた。


 ≪5家とも元は家族からの親族じゃったからの~お…醜い争いよのう…ワイ達ハイエルフは最終的に自分達の技術で身を滅ぼし、自分達が生み出した亜人達にも憎悪を抱かれこの世から抹殺されたわけじゃ…そこで、そのお主の母の家系、アスナール家じゃが大戦を起こした4家に愛想を尽かし、地球へ渡ったと噂を聞いてからその名をワイは聞いておらん…まさか生き残りが居たとはの~お≫


「アスナール家は…地球へですか?」


 ≪うむ。実はな~あ…地球とこのブルースフィアと言う惑星にはある共通点があってな~あ?≫


 ブルースフィア?…この惑星の名称かな?

 地球との共通点?


「この世界はブルースフィアと言う惑星なんですね…」


 ≪うむ。それで、アスナール家は次元などをルーン文字魔法で操るのを得意としている家系で、その魔法で地球と言う次元世界を見つけたのじゃよ~お≫


「…次元世界…が地球…」


 ≪それでな~あ、その当時のアスナール家、当主アトランから聞いた事があるんじゃが、地球との共通点と言うのは、このブルースフィアも地球、地球もブルースフィアその物と言う事じゃよ~お≫


「え?…それは…どう言う意味ですか?」


 ≪そうじゃな…つまり…ん~と…≫


平行世界パラレルワールド…」


 カレンがそう呟いて言った。


 ≪お~~そうじゃそうじゃ平行世界、つまり、この惑星は違う選択を選んで今に至る同じ惑星と言う事じゃよ~お≫


 パラレルワールド…聞いた事は勿論ある。

 SF映画や、漫画などにもたまに見る事があるやつだ。

 そう、昨日事故で亡くなるはずだっただった人が、違う選択をして生きている時系列のような世界の事…。


 ≪そう、この惑星は何かの原因を辿って魔素がある地球と言う事になる、ワイからしたら地球が魔素のない時系列のブルースフィアじゃがな~あ≫


 更にカレンは口を開いた。


「ミーの友達に考古学に興味ある人が居てね、古代文明アトランティスは宇宙人か別世界から来た人間によって栄えた国ではないかと言っていた事があってね…ミーは興味なかったから流して聞いていたけどね、この世界に来た時、地球にはない金属…オリハルコンがあったのを見て気にはなっていたのよ、アトランティスの文明にはオリハルコンが沢山使われていたらしいわ、それが海底から見つかっているんだって、あながち、この世界の人が地球へ行った説はあっているのかもね」


 ≪アトランティスか…その可能性は大いにあるな~あ、さっきも言ったが、その時のアスナール家当主はアトラン・アスナール…その名をとったのかも知れんしな~あ≫


 皆はじっとこの話に耳を傾けているが、神帝と参謀長、ライナは、何の話をしているのかさっぱりでキョトンとしていた。


 ≪で。そのアトランティスと言う国は今どうなっておるのじゃ?口ぶりからはもう無さそうじゃが…≫


 そうモニターのランガルフが言うと、カレンもその問いに答えた。


「約1万年前に海の底に沈んでいるわよ、何故、現代の文化、技術を上回る文明を持っていた国が、大陸ごと海に沈んだのか?昔過ぎて解明もされていないわ」


 ≪あの大戦辺りと時期は合っていると言う事か~あ…、アトランよ…お主もワイらと同じ運命を辿ったと言う事なのか…それとも…いやしかし、アラタがおると言う事はアスナール家の者はこの世界に残った者もおったという事じゃな~あ≫


 なるほど…

 つまり、俺の家系であるアスナール家は、アトランティスを地球で作って滅んでいるが、俺の母の祖先はオブリシア大陸、ヘイムベーラ大森林の中で妖精達とエルファシルを造り、生き延びていたと言う事か…


 この惑星は違う選択をして来た平行世界の地球…

 魔法がなかったら、にわかには信じられないけど…

 地球からでは無理な話でもこの世界ならそれは可能…

 別の平行世界へ行けるとしたら…親父が生きてる世界もあるのか?…


「あのランガルフさん、その平行世界ですが、死んでいる誰かが生きている世界へ行く事も可能なのでしょうか?」


 ≪む~…それは多分無理じゃな~あ、アトランから聞いた事があるが、ただでさえ次元を繋ぐ事とはとても難しい事じゃと聞いている…、アラタがここに来た現実の時系列が一番相性が合っておったんじゃろうよ~お、そうじゃなければいろんな時系列の地球人、又は少し違う同一人物がこの世界にやって来て大変な事になるわい!≫


「そ…それは大変な事になりますね…」

「それにだ、アラタ…親父の生きている世界に行ったとして、何をするんだ?違う世界のアラタから親父を取り上げる気か?」

「フェルナンドさん…いえ、ただ…なんかちゃんと親子としての会話も、あまりした事なかったな…と思って…」

「新…」


 新とフェルナンドの会話に、瑞希は新を見た後に俯いた。


「アラタさん…アラタさんがこの世界に来てなかったら、私達は今ここにいません。それは、違う世界の、違う性格かも知れないアラタさんでは会う事がなかったかもしれません、私は今ここにいるアラタさんで良かったと思います!」


 レベッカがそう言った。


「ええ、私も…もしかしたらあのまま……私は感謝し尽せません、目の前にいるアラタさんで良かったです」


 マイティもそう言って前に出た。


「アラタ…みんな今、目の前にいるアラタと会えて良かったって事さ…親父さんが亡くなる運命だった世界…でもそれはお前を俺達の下へ導いてくれた運命だった。俺もお前に助けられた一人だ!俺もこの世界と一番相性が合った世界が、このアラタの時系列世界で良かったと感謝しているぜ!」


 クラウスはそう言って俺の肩をぽんと叩いた。


「新、私は…わからないけど、私もクラウスと皆の言う通り、この世界と繋がったこの時系列世界で良かったと思う。だってこんな冒険、他の選択していたら来れなかったかも知れない世界なんでしょ!」


「瑞希…みんな有難う、俺もそう思う」


 俺は皆の言葉を聞いて、親父が生きている世界を一瞬探してみようと思った事を完全に辞めた。


 この俺の時系列だったからこそ、今のこの仲間がいる。

 親父が死ぬのは運命だった。

 そしてそれがなかったらこの世界に来ていたかも分からない。

 下手したら、この世界の事を知らずに半ニートのまま人生を終わっていたかもしれない。


 これは今この俺の時系列だ。

 この世界で何か俺を待っているのか、怖くもあり楽しみでもある。

 笑って今俺を見ている皆を見ているともっと楽しく生きて見たくなった。



 その後、余談で聞く事になるのだが。

 ハイエルフ、アスナール家は次元や空間に特化した魔法を得意としていたのだが。

 マジックボックスの解明も、地球との繋がりも、武器防具への魔法付与などもアスナール家が開発したルーン魔法だったらしい。


 ≪コホン…あのな~あ?ワイの体なんじゃが…何かその~機械でいろいろと動けそうな物を探して来て欲しいのじゃが…良いかの~お?≫


「ああ…じゃあ、俺が持ってきてあげますよ、動けたら何でも良いんですか?」


 ≪おお~良いぞ良いぞ~お≫


「俺の工房に物作りの天才がいるんで頼んで何か作ってもらってきますね」


俺は、ランガルフさんに外の世界を見せてあげる為のロボットを提供する事を誓った。



≪さて…神帝よ~お。お主に問う、ワイは長~い間ここで、逃げ出す事も、自分を破壊する事も出来ず、傍観者だったわけじゃが、アラタのお陰で選択技は増えた…さっきも言ったがまつりごとに興味はない。ワイは太古の過ちを繰り返さぬ為、攻撃魔導兵器の復活を教える事はあるまい、が…今のままでもワイについてくるか?それなら、今までのように、生きとし生ける者が生きる為の知恵は貸そう。もしくはワイがここを出て行き自分自身の国を作るか~の?≫


モニターの中のランガルフは神帝にそう言った。


「はっ!我は…いえ、このライアン・リッケルト、今この神帝の地位にあるのは、ランガルフ様あっての事…貴方様をこれからも神として知恵を頂き、このマージガル神国を神帝としてこの国を豊にして行こうと努力して行く所存であります!」


≪ふむ≫


「ランガルフ様、この参謀長ポレフ・フィギル、神帝様についていきこのマージガル神国を良き国にしていくためこの老体に鞭を打ちましょうぞ」


≪神帝ライアンと、参謀長ポレフよ、よく言ってくれた~な。それなら~知恵を貸すとしよう…じゃが、それは生きるための魔導機に限ってじゃ、それ以上の物は教えん…ま、どちらにせよ、ハイエルフでもないワイは何も出来ないんじゃがな~あ、ホホホホ≫

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