第127話 神の声の正体
《ワイはこの時を1万年待ちわびていたのだ~な。ザ…》
「え?…え?」
神帝様も皆もじっと戸惑う俺を見ている。
《この声は、お主にしか聞こえてないのだ~な、お主もワイに念じるように語りかけて見よ?言葉に出しても聞こえるけどな~あ》
そう言われ、俺は念話をするように語りかけてみた。
『これで良いですか?』
《お~お~、中々筋が良いようだの~お。ザ…》
『あの…神様…ですか?』
《ザ…いや正確には違うな~あ…まあ神帝も参謀長も知っておるが、民衆の前では神と言う事にしといてもらえんかの~お?》
『はい、分かりました…』
《率直に聞くが…ザ…ザザ…、お主、えっと~アラタは、ハイエルフ、もしくはその血筋で間違いはないかの~お?》
そう聞かれ一旦戸惑ったが謎の声に正直に答える事にした。
『はい…俺の母さんはハイエルフです』
《やはりか!?これでやっとこの機械の中から出る事が出来そうだわ~い!》
機械の中?…
一体どういうことなのだろう…もっとこの声について調べる必要がありそうだな…
『貴方は一体…何者なんですか?』
《ワイは、古代ハイエルフ…じゃった者じゃよ~お》
『えっと、それはどう言う…』
《まあ、待て、お主らをこの街の地下深くにあるシェルターに案内しようかの~お、話はそれからじゃ!イシシシ。ザザ…》
シェルター…
この街の地下深くにある?
そして、謎の声は神帝に何かを喋っているようで、無言で軽く何度か頷いているに俺は気づいた。
この耳につけた魔道具、これは通信装置で間違いないだろう。
神帝は、このハイエルフだった者と言う謎の声を聴いて、古代魔道具やバイーダーなどの
「参謀長、アラタ達よ、今からある所に連れて行く、勿論、これは重要機密となるので秘密だ」
「分かっておる、神帝様」
「はい、分かりました、皆もいいね?」
皆、俺に頷いた。
◇
俺達一行はある部屋へ連れていかれた。
部屋へ入ると、そこは掃除もされてない埃っぽい部屋だった。
パスワードを設定されたもう一つの部屋があり、そこへ入ると転送装置がポツンと置いてあった。
「むう、このルーンポータルは儂も初めて見るが…どう見ても破壊されておるの…」
参謀長がそう言ってしゃがみ込んだ場所をよく見ると、その転送装置は斧か何かで叩いたのか、大きく真ん中に傷があり、大きくヒビも無数に入っていた。
『これ…壊されていますね?』
《ザ…、やはりそうか…あの太古の大戦時にこちらにこれないよう誰かが破壊したのじゃろ~お…》
俺は通信機でそう謎の声に問いかけると、そう言葉が返って来た。
俺は、そのポータルをよく確認した。
「このポータルはもう使えそうにありませんね…」
「うむ、アラタが居ればもしやと我も思ったのだが…」
「神帝様…神帝様はこの声の主をご存じなのですか?」
「いや、恥ずかしながら実は我も実際の所、何も知る事はないのだ…今回、お主の存在を知ってから我は、楽しみでしょうがなかったのだ…まだ見ぬ声の主、太古の魔道具など、まさか我の代でそれを知る事が出来るやも知れんとはな…とは言え、リッチロードもしかりだ、あんな災害級が目覚めたのも何の因果なのか…むう」
「そうでしたね…まずはそのリッチロードを何とかしないといけませんね、精霊武器を何としても手に入れて討伐しなきゃです」
「それなんだが、精霊武器は宝物庫にあると言っていたが、それを神に聞いた所、別の場所からルーンポータルで行ける事もそのポータルの場所もわかっておるのだ」
「え?それでは!」
神帝は静かに頷く。
「うむ。アラタが居ればその扉が開くのはほぼ確実だと思う…だが、その前に神がどうしてもそのシェルターへ来いと言うのでな、我も神の声の主に会ってみたいとも思っておったしな」
「なるほど…」
神帝の言う言葉に俺は頷くと、参謀長が口を開いた。
「なあに…あのリッチロードもあの山の中から出てこない所を見ると、まだ力を完全に取り戻せていないと儂は思う…何千年も封印されておったんじゃ、封印が解かれたとて、ここ数年でいきなり動ける事もなかろうて、ほれ、老人の膝と一緒じゃよ」
「‥‥‥だと、良いんだがな…」
神帝はそう不安そうに呟き、俺も似たような顔をした。
《ザ…ザザ…神帝、アラタ、全部聞こえておるぞ!イシシ》
通信機から神帝と新には、そう言葉が聞こえた。
《大丈夫じゃ、参謀長の言う通り、リッチロードは目覚めてまだ数年と言う所じゃろうよ~お?ゴブリンなど低級魔物を使っている辺り、まだ動く事すらままならぬのだろう。今暫しの時間は残っておろう…ザザ》
「神様はもう少しリッチロードが動き出すには時間があると言ってますね」
俺がそう参謀長に言うと。
「ほら見よ、一度ベッドに寝て起き上がるのが辛いのと一緒じゃよ!わはは」
「‥‥‥」
高笑いしている参謀長をよそ見に、通信機から声が二人に聞こえる。
《万が一のためにこの神都の外にも一つポータルと抜け道があるのじゃ、そこへ向かって貰えんかの~お?ちと遠いが…ザ‥》
「神よ、わかりました」
神帝は声に出してそう返事をした。
やっと、この国について分かって来た。
神帝様は思ったより悪い人ではなさそうだ、参謀長も話の分かる人そうだし。
最初は、階級での締め付けで不幸な人達を産んでいると思っていたが、それはその国の仕来りがあると思うし、俺は部外者だから口出すのもどうかと思っている。
あの
まだ、俺達の手の内を全部見せるのは良くないと思っていた。
バレちゃったからハイエルフの血筋なのは明かしたけど、地球人、グランドヒューマン化、魔科学の研究などはまだこの時点で、言う事はないと思った。
先ずは、神の声の主を確認してみよう。
「それでは、その場所へ行きましょうか?神様が言うにはこの通信機には発信機もついていて、その場へ誘導できると言ってます」
俺は、神の声を皆へ伝えた。
◇
俺達はすぐに行動した。
神が言ったその場所は神都から南へ300キロ言った第一南町「ボウス」の町の外郊外にある森の中の廃墟だった。
神帝専用の空を飛ぶビーカルと、親衛隊や近衛兵がバイーダーでついて来る。
空を飛んでいるのでそれはそれは早く着いた。
約300キロの距離を半日で「ボウス」の南町へ着いたのである。
夜になっていたので、ボウスで一泊する事にして次の早朝から行動を起こす事にした。神帝の計らいもあり俺達はボウスで一番良い宿へ泊まった。
◇
次の早朝、皆で集まり、神の声が教えてくれた座標、町郊外にある廃墟を目指した。
森の入り口にビーカルなどを停めて森の中へ入って行く。
バイーダーに乗った兵士達は先に森の中へ入って行った。
森の中へ30分ほど入った所ですぐに廃墟は見つかった。
そこには野盗の死体が転がっていた。
今しがた、先行して偵察に入った、兵士達に一掃されていたのだ。
俺達は神帝と共に廃墟へ入って行く。
野盗が拠点にしていたせいか、その辺には酒や食べかけのパンなどが散らかっている。
「こんな所にポータルがあるのかのう…」
俺達は辺りを見渡す。
天井や壁は崩れており、部屋と言う部屋も囲いの崩れた壁があるだけだった、所々から木漏れ日が差している。
「これと言って…何処かに特別な所があるには…」
神帝はそう言って壁を確認していた。
「アラタ!これ見て見ろよ!」
フェルナンドが大きな声でそう言った。
「フェルナンドさん何か見つけたんですか?」
「床だ」
床と言うので砂雑じりの床の砂を足でかき分けると、見た事のある床の素材が出て来た。
「これって…」
「ああ、神帝様のタワーなどに使われている頑丈な素材で作られた床って事だな」
俺達がしゃがんで床を確認していると神帝も参謀長も集まって来た。
「ほう…これは」
「兵士達よこの砂を風魔法で飛ばすのじゃ!」
参謀長の言葉で兵士達は一斉に風魔法を詠唱して、その砂や埃を吹き飛ばす。
床の色が明らかに違い、その素材も別物だった。
「これは…確かに我のタワーと同じ素材の床だな、壁や天井は普通の石作りなのに、この床だけ頑丈に作られているのは、ここで間違いなさそうだな?」
神帝はそう言った。
「おい!ここ!」
フェルナンドがそう叫んだ。
俺が振り向くとフェルナンドは部屋の隅の床に耳をつけていた。
「フェルナンドさん何かあったんですか?」
「ここ微かに空気の抜ける音が聞こえる」
フェルナンドが手を置いている場所に、新も手を置いた。
微かに空気を肌に感じる事が出来た。
「本当だ…」
「ん?これは…」
フェルナンドがその辺を調べた時、指を乗せられるくらいの小さな四角い場所を見つけ、それを押すと、それはくるりと反転した。
精巧にぴたりと作られていたため、そのスイッチの隣の片が取っ手になるとはおもわなかったのだ。
「よし、開けるぞ!アラタどけ」
「ああ、はい」
俺が床から離れて、フェルナンドがその取っ手を引いてみた。
それでは開かなかったので、上下左右に力を入れると、ある方向にそれは動いた。
1m四方の正方形の扉が少し奥にスライドして開いた。
これも精巧に作られていて、隙間が殆どわからないようにぴたりと床と嵌る作りで床になっていた。
「「「「おおお‥‥‥」」」
開いた時に皆が驚く。
「隙間が殆どなかったですね…、フェルナンドさんが気付かなかったらこれ…わかりませんでしたね」
「だろ?ハハハ、大体な隠すもんあるときはな、床や壁に隠し扉があるもんよ、本棚の後や床の中は定石。どれだけそれを隠そうが、空間がある以上、空気の流れや叩いた時の音は隠せないからな」
さすが、元軍人…
隣の斥候を得意としているクラウスも勉強になるなあって顔をしていた。
「この先、灯りはあるようだな?俺が先に行くぜ」
そう言ってフェルナンドは先にその地下への階段を下りて行った。
その後に俺も続いて下りた。
「兵士達よ、お前達はこの廃墟に留まり、我が戻るまでここを死守せよ」
「「「「はっ!!」」」」
神帝はこれから先は神の領域。なので、兵士達に見られるわけにはいかないとそう指示を出して、俺達に続いて下りて来た。
壁は先ほどと同じ素材の壁。
ほんのり埋め込まれた魔道具が光っていて暗くはない。
下りて行くとそこにはひとつの部屋。
フェルナンドの魔力でも普通に開く扉。
そこには
ある者は剣や鎧を、ある者はローブを着ている。ここを守る兵士だったのだろうか?
更に奥に行くと扉があり、更に下への階段が現れた。
更にそれを皆、下って行く。
次の部屋に入った時にも白骨化した死体はあった。
さっきの死体より良い装備をしているようにも見える。
二つの扉がそこにはあり、一つは下への階段。
もう一つにはルーンポータルがあった。
通信機で神様が言うには、そこから階段で目的地は行けるが、その深さは3キロも先のようで、最後の扉はどちらにせよハイエルフの者しか開けられないとの事だった。
ルーンポータルを使った方が早そうだが、大人の人間3人くらいなら乗れる大きさだった。
「このポータルで、神の所に行けるのだな?」
「一応そのようですけど…乗れても3人なので先に行って貰えますか?俺は最後の3人と一緒に行きますので」
「じゃあ、念のため最初は俺、カレン、クラウスが行くとするか!」
フェルナンドは先陣を希望した。
皆はそれに頷き、フェルナンド、カレン、クラウスが先にポータルに乗った。
3人が乗ったのを確認すると俺は魔力をポータルへ注ぎ込む。
するとルーンポータルは起動し、3人を何処かへ飛ばした。
「次はどうしますか?」
「じゃあ、私達が先に行った方が良いよね?」
瑞希はそう言って、瑞希、ライナ、マイティが乗った。
3人を転送する新。
次に、レベッカ、神帝、参謀長が乗り、3人も転送した。
最後に、俺と今まで不可視化していた、クインがそこに乗り転送した。
転送先について周りを見渡すとそこは小さな部屋だった。
扉が開いていて、その扉を出るとそこにはあったものは…
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後書き。
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処女作なのに、これほど沢山の人に読んでもらえるのがとても嬉しいです。
これから、この異世界に関しての話題に突入します!
新達の冒険の先には何があるのか、楽しみにしていてください!
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