第126話 神帝
俺達の前には大きな円卓があり、この国の幹部30人がこの間と同様に座っている。
その上座にあたる席には、神帝様がどしっと座っていた。
この人が神の声が聞こえると言う神帝様か…
3世と言っていたから3代目なんだろうけど、見た目は
長生きしていると言うのは本当なのだろうか?あの帽子で耳が隠れているのでエルフか人間か分からないけど、エルフにしては身体が大きいし、ドワーフにしては身長が高すぎる。
エルフは大体が
俺はハーフエルフだけど…耳も尖ってないし、容姿は…普通かな…だとしたら、ハーフエルフとかならあり得るのか?
ライナから聞いた話だと、1000年くらい前に神の声を聴ける人間が現れて、その人が1世で、この神帝様で3代目。
人間なら1000年を3代受け継ぐ事は出来ないが、エルフやドワーフなら…
でも、ライナは人間だと言ってた。
そして、神の声を聴いて開発した薬によって長生きしていると言っていたけど…
「神帝様、会議を始めさせて頂きます」
「うむ」
参謀長の言葉で神帝は頷き、皆も頷いた。
「今、調査隊、討伐隊の兵士、並びに、冒険者達にはこの緊急依頼を止めております。裏にリッチロードがいると言う話は濃厚で、対策を真剣に練らないと行けなくなったわけじゃが…上位の死霊を討伐するには、精霊の加護を受けた武器が必要不可欠なのじゃが、現在調べた所、剣28本、槍37本、斧16本、しかなかった」
「結構あったのですな」
「何を言います将軍長!全然、これではたらんと儂はみますぞ?」
「80本もあれば、パーティ10隊分、それでも?」
参謀長と将軍長はそう言い合う。
「あまり知られてはいないと思うが、精霊武器にも階級があるのよ、将軍長」
そう神帝が口を開いた。
「階級…ですか?…神帝様」
「そう、今残っているのは低級が殆どなのだ」
「な‥なるほど…」
将軍長はそう言って黙り込んだ。
「しかし、神帝様とも話したんじゃが…希望はあるのじゃ、このマージガル神国は太古ハイエルフ最大の国、宝物庫なる場所が何処かにある、そこには大昔にリッチロードを封印した
参謀長はそう言うと皆がざわめく。
ざわざわ…
「皆静かに!大体の予想はついている…それは我らが入れぬ領域、太古のハイエルフもしくは、その血筋しか入る事を許されぬ場所…」
神帝は皆を静まらせてそう言った。
「…神帝様、それは儂も先ほど聞きましたが、どうやってその領域に踏み入るのですじゃ?」
「参謀長にも今言うが、我も、昨日まではどうした物かと悩んだのだが…、神の声が今日の早朝に聞こえたのだよ」
「おおお…」
「なんと神の声が…」
そこに居る者はまた騒めいた。
へぇ…神の声って本当に聞こえるんだ?
俺はそう頭の中で呟いた。
「
「なんと…」
ざわざわ…ざわざわ…
神帝は、少し間のある言い方をしていてキョロキョロと辺りを見渡し、一度、天井にある監視カメラを見た。
俺はそれに気づいて同じように天井の監視カメラを見た。
「それは何処の貴族なんじゃ?」
「いや…兵士かも知れませんぞ?」
「皆、静かにせい!その者は今しがた見つかったわ」
皆を制した神帝の言葉で、俺は天井の監視カメラから、神帝に目を降ろすと、じっと俺を見ていた。
それに気づいたフェルナンドや瑞希が俺を見る。
何々?とキョロキョロと見渡すと、皆の視線が俺に集まっていた。
「お主…何者ぞ?」
「へ?…」
一瞬でこの部屋の中は沈黙した。
「…神帝様…この者は外から来た冒険者で新人鉄級の者です…」
俺の隣に立っていた、鉄銅級西冒険者ギルド、ブリガム支部長は慌ててそう言う。
「ほう…外からとな?」
「い、いえ…俺は、その…」
俺は皆の視線を浴びて少し戸惑う。
「おいおい、やはりあそこ入ったらダメな所だったんじゃ…」
クラウスが耳打ちしてそう言う。
「いや…あそこが?あんな分かりやすい突き当りが重要な施設の入り口?なわけ…」
「hy…アラタ、お前一体何しでかしたんだ?」
「フェルナンドさんまで…何もしてませんよって…ちょっと夜中にトイレに…」
「おい!鉄級の貴様!神帝様が質問しているんだ、何を仲間とコソコソと!」
1人の兵士が俺に嚙みついたそう言った。
「良い!」
「ですが神帝様、この鉄級!」
「良いと言っておろう!」
「は、はい!」
その兵士は引き下がり直立不動になっていた。
「して、お主、名は何と言う」
「はい…クラン、ディファレントアースのマスターをしてます、アラタ・イセと申します」
「アラタよ、お主、出身は何処だ?」
これは…地球って言うと面倒な事になりそうだな…オブリシア大陸で良いか…
「お、オブリシア大陸から来ました…」
「オブリシア大陸?…どこだそれは?」
「…神帝様、オブリシア大陸と言えば、この大陸よりもっと遠い海の向こう、海に浮かぶ小さな孤島と認識しております、確か…精霊島とも呼ばれていた場所と文献で見た事があります…」
参謀長がそう神帝へ進言した。
神帝はそれを聞き、少し間をおいて口を開く。
「ほう…精霊島とはな…して、この大陸にはどうやって来たのだ?」
「えっと…転送装置のような物に触れたらこの大陸へ来ちゃったみたいで…」
「‥‥‥ほう?転送装置か…」
また、神帝は間を取っていた。まるで、何かを聞いてから質問しているようにも見えた。
「アラタよ…分かった、その話はまたにしよう。今はこの緊急時、お主を見る限りエルフのようには見えぬが、我らが入れぬ所へ立ち入ったと言う事実は分かっている、我らに協力して貰うが宜しいか?」
「はい…力になる事があるのなら俺は構いませんが…」
「‥‥‥‥」
また神帝は間が開いた。
「アラタよ、暫し、我と話をしようではないか?お主だけ我の住む、この国の中央へ来て貰えるかな?」
俺は、皆を見る…
フェルナンド、瑞希達の顔を見ると心配そうだったが頷いた。
「分かりました、でも…仲間達も一緒でも良いですか?」
「む…、まあ良かろう」
「ほっ…」
良かった、これで俺だけにされても不安だったからほっとした。
「では、この者に宝物庫への入り口を探すのを協力して貰う、皆は、ゴブリンが侵入しないようあの洞穴の警備を強化し、突入に向けて準備を整えておくように」
「「「「「はっ!!」」」」」
「「「「わかりました!」」」」
会議は解散となり、俺の顔をじろじろと見ながら皆、退室していく。
最後そこにはブリガム、ライナ含む俺達と、神帝様、参謀長が残っていた。
「お…おい、アラタ、お前達一体何者なんだ…これは一体…その…ちきゅう何とかと関係があるのか?…」
「ブリガムのおっさんよぉ…まあまあ、その話はまた…な」
慌てるブリガムをフェルナンドが制した。
「ブリガムよ、ご苦労じゃった、お前は先にギルドの任務に戻るが良い。アラタ含む8名よこちらについて参れ」
参謀長はそう言った。
「え?…俺だけ?…」
「って事だ、おっさんまた作戦の時会おうぜ!」
フェルナンドはブリガムにそう言った。
ブリガムは兵士に案内されこの部屋を出て行った。
「ねえ…私ついて行っていいのかな?…」
ライナが不安そうにそう言った。
「ライナ、お前はディファレントアースの一員だろ?」
「フェルナンド師匠…でも私まだ銅級なったばかりだし、その…神帝様と話する事なんて一生かかっても…」
「良いんだよ!俺達がついている、そしてお前も仲間だ!ハハ」
「は、はい!」
フェルナンドはそうライナを
それから俺達はその場を移動する。
魔導昇降機で屋上に上がると、大きな乗り物が停まっていた。
神帝と屋上に着た瞬間、その乗り物は起動した。
ヴヴヴヴウウンと唸り、そこから宙に1mほど浮いた。
ちょっとした個人用ジェット機のような乗り物だった。
両開きにドアが開き、そこには15人ほどは普通に乗れるような作りになっていた。
「この魔導飛空艇に乗って神帝タワーまで行きますぞい」
参謀長はそう言った。
神帝と近衛兵が乗り、参謀長も乗り込んだ。
俺達も物珍しそうに、その飛空艇に乗り込む。
その魔導飛空艇はそのまま飛び立った。
「おほぅ!こりゃ快適だぜ…この世界に、こんな空飛ぶ乗り物もあったんだな」
「そうですね、でもそこまで高く飛べるわけではなさそうですねこれ?」
「だな、ひょっとしたらあのバイーダーの改良版か何かなのかもしれんな…」
「かもしれませんね」
何故そう思ったかと言うと、この高さより高い建物があり、それを避けて飛んでいたからだ。もし、それ以上高く飛べるのなら、建物を避ける必要はないからである。
10分ほど経つと何処かへ静かに着陸した。
魔導飛空艇の扉が開き、神帝も参謀長、近衛兵もそれに続く。
最後に案内兵士に俺達も降ろされた。
見渡すと、そこはこのマージガル神国の中央に聳え立つタワーの中腹辺りだった。
兵士に促され俺達は神帝様の後について行く。
俺達は魔導昇降機の前まで案内された。
「よし、兵達よお前達はここまでで良い、ここで待機し指示を待て」
「「「「はっ!!」」」」
近衛兵達は胸に手を置き敬礼した。
俺達はその昇降機に、神帝様、参謀長と乗ると上の階層へすっと上がって行った。
最上階に着くと、神帝様と参謀長はこっちだと言って俺達はそれについて行く。
見渡すと昇降機を中心に、ぐるりと部屋があるようだった。
昇降機からすぐ目の前の扉に神帝は進んだ。
扉は開き、中へ入ると近代的な機械がそこら中にあり、大きな窓からはこの神都が一望に見渡せた。
「アラタとその仲間よ、今から喋る事はここだけの秘密にしたい。誓って貰えるか?」
そう神帝は言った。
「ああ…はい、誓います」
「今から語る事は、我と参謀長と数人の身内しか知らぬ事、もしも誓いを破ったら命はないと思え、その言葉忘れるでないぞ」
俺達は顔を見合わせ、神帝様に大きく頷いた。
すると参謀長が水晶玉のような魔道具を持って来た。
「アラタからこれに触れてくれんかの?」
「触れるだけで良いのですか?」
「うむ」
俺はその水晶玉に触れると水晶が輝いた。
「おおお…やはり」
「なんですか?これは…」
次にクラウスへその玉を触れるように参謀長は移って行った。
「アラタよ、それはハイエルフの血筋にしか反応しない魔道具である」
「あ…なるほど…」
「それによるとお主はハイエルフの末裔、もしくはハイエルフと言う事になる」
参謀長は皆にそれを触らせて神帝の横に並んだ。
「反応したのはアラタだけじゃったのぅ」
「では、次にこれを…」
そう言って神帝様は俺にだけある物を渡した。
それは英語のCの形をしている何かだった。
「これは…」
「それを耳の裏につけてみよ」
「耳の裏ですか?…」
その魔道具を俺は耳にかけるように左の耳の裏に持って行くと、その魔道具は吸い付くようにピタッと耳の裏に嵌った。
《え~~~コホン、聞こえるか~な?ザ…ザザ…》
「おわ!何か聞こえました!」
「うむ、それが我が聞こえる神の声の正体である」
機械音のような声とちょっとした雑音が聞こえた。
これは…イヤホンのような物かな?
魔道具が骨格を通じて頭の中に声を響かせているようだった。
《ワイはこの時を1万年も待ちわびていたのだ~な。ザ…》
「え?…え?…」
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