第124話 上層会議
俺達がゴブリンの洞穴で見た物は洞窟の中に大きく出来た岩砦と、大量のスケルトンやゴブリンゾンビと普通のゴブリン達だった。
クインがすぐに撤退と叫んで一度撤退を余儀なくされたが。
クインが言うには、アンデットと言う存在は普通なら剣や魔法でも倒す事も可能らしいが、霊体やその上位種などは倒す事が出来ないのだと言った。
アンデット上位種などは、同じ精神体の精霊や妖精の攻撃、又は、その加護を受けた武器でないと触れる事すら出来ないらしい。
クインは犬妖精なので、多分ソレと戦えるのだろうが。
あの時、もし、あのまま進んでいて雑魚とは戦えても、後ろにどんな上位種がいるのかも分からない上、それが1体ではなかったら、人間の俺達にとっては消耗戦でしかならないだけではなく、足手まといになる可能性が高い、あの撤退は英断だっただろう。
◇
「あああ?上位種のアンデットだって!?」
鉄銅西冒険者ギルドへ来て、すぐに報告した。
すると、ブリガム西支部長は驚いてそう叫び、周りの冒険者がざわざわとする。
「yes、そう言うわけだから上層部へ報告してこれ以上、冒険者や兵士を送り込むのを一旦止めた方が良いぞ!ゾンビやスケルトンが増えるだけだからな!」
フェルナンドはそう言った。
「た…確かに、依頼を受けた冒険者や兵士も戻って来ん…これ以上の犠牲は避けたい所だが…どうしたものか…」
「そこで、精霊の加護を受けた武器とかはこのマージガル神都には置いてないのですか?」
悩むブリガムへ新は聞いた。
「精霊の加護を受けた武器…か…なるほど、それならアンデットに有効だな…、しかし…」
「しかし?」
「上に掛け合えばひょっとしたらあるかも知れないが、とても高級な武器ゆえ、貸してくれるかどうかが問題だ、持ち逃げでもされたら大変な事だからな?」
「おいおい、俺達がそんな事するかよ!それに、このままだとゴブリンとそのソンビでとんでもない事になるぞ?何だったら、それを所有している人間が討伐に行くべきだ!」
グダ着くブリガムにフェルナンドは噛みついてそう言った。
「よ…よし!お前達一緒について来てくれるか?現場に行ったお前達の発言も欲しいからな!」
「ええ、分かりました、行きましょう」
「そこで待っててくれ!」
そう言うとブリガムは奥の部屋へ行ってしまった。
俺達は冒険者が依頼を選別するために相談するための、テーブル椅子へ移動して、そこへ腰かけた。
「クインちゃん、私の神聖魔法での浄化は出来ないの?」
レベッカはクインにそう聞いていた。
「ふむ。あの術式は魂や身体の奥底から浄化する魔法で時間が掛かる。アンデットがそこに留まってくれていれば或いは…だが、本来それは呪いなどの浄化を目的で作られた魔法で、戦いながら浄化するのには向いておらぬだろう…」
「そう…ですよね…」
「うむ。しかし、神聖魔法がアンデットに効果があるのも事実だ…結界を張ったり、低級アンデットの浄化等、時間稼ぎする事なら出来るやも知れん。フー」
クインはそう言って鼻息を吹き、皆にアンデットについて少し語った。
死んだ肉体に何らかの霊的魂が入り込みその器を動かすのがゾンビやスケルトンなどで、大体はその霊が宿った、頭や体を破壊すると倒せる。
レイスなどの本体を持たない霊であっても、こちらに物理攻撃出来ると言う事はこちらからも当たると言う事になる。大体の低級霊などは浄化魔法や炎魔法で払う事が出来るのだ。
魔法で作った仮の魂を死んだ肉体へ寄生させて操る高等魔法である。
上位種になればなるほど、その操る範囲と数が広く多くなる。
クインは、今の時点ではその範囲が、このマージガル神都まで届いていないのではないだろうかと言ったが、もしそのアンデットが成長する者なら、いずれは…言葉を飲み込んだ。
「おい、ディファレントアース達、待たせたな!やっと許可が下りた」
ブリガムがそう言って奥の部屋から出て来た。
アンデットの話をしていたからどのくらい待たされたのか、分かっていなかったが、実際は1時間ほど待たされていた。
「それで?」
「ああ、今日の夕刻、黄金級区域にある中央冒険者ギルドで会議だ、上層部はそこでお前達の話を聞きたいと言って来た、今から行くか?」
「はい、分かりました」
俺はリーダーとして返事をした。
鉄銅級西冒険者ギルド支部長ブリガムは外に馬車を2台手配した。
そこからまた銀級区域を通り、
街の中なのにこれほど時間が掛かるのは、このマージガル神都が相当大きな国なのが伺えた。
黄金級区域への門を潜ると、その街並みに目を奪われた。
車窓から見える、金の装飾が施された建物に立ち並ぶ街灯。
街の中を定期的に周っている馬車などもあり、その馬車にも高級な装飾されていた。
歩いている人達は、物騒な装備を身に付けている冒険者より、綺麗なドレスを身に包む女性や、紳士的な男性など服装にも品のある人達の方が沢山見受けられた。
「ワオ…、またまた…ここはゴージャスな街並みしてるぜ…」
「ほんとですね…」
「あのドレス着てる人綺麗~」
「あの馬車の馬の馬装…にも宝石ついてる…」
皆、この街の景観に目を輝かせていた。
「ん?お前らこんな街が羨ましいってか?」
ブリガムは俺達を見てそう言った。
「い、いえ…綺麗な街だなーと思いまして…」
「ふん、俺はこんな目が眩むような街は嫌だけどな…
「そう…なんですか?」
「大体、上に行けば行くほど、数の多い下の者が働いた恩恵で贅沢しているんだからな…」
「でも、ここの人達も昔に頑張ってここまで伸し上がったんですよね?」
「それもな、実はコネがないと黄金へは行けないようになっている仕組みになっていると何とかでな…おっと、これ以上は上の悪口になってしまうとアレだからやめとこう…まあ、いろいろあるってこった、先を急ぐぞ」
煌びやかな街を馬車で走り、黄金級中央冒険者ギルドへ向かう。
暫くすると馬車は停まり、俺達は下車した。
そこは、中央冒険者ギルド。
大きな建物で入り口の扉でさえ装飾に宝石が使われていた。
兵士が数人集まって来て、ブリガムが通行証を見せた。
冒険者達は疎らにいて、装備も一級品で強そうな冒険者達は俺達を下を見るような目で舐めるように見ていた。
シュクロスさんのタワーにもあった魔導エレベーターがあり、俺達はそこへ乗って上へ移動した。
そして、エレベーターは停まり、俺達は兵士の案内についていく。
案内してくれた兵士は扉をノックした。
「鉄銅級西冒険者ギルド支部長ブリガム殿をお連れ致しました!」
「入って良し!」
中から声が聞こえた。
「ブリガム殿。貴公らは本来この場所には来れぬ場所、この扉の向こうには
「ああ…はい、わかりました」
いつもは度々、荒い言葉を吐くブリガムは、案内した兵士に丁寧な言葉を返した。
よく見るとその案内してくれた兵士の胸元には金の棒状のプレートが下がっていた。
この兵士も黄金級なんだな…
周りを見ると、その辺を歩いている職員や兵士の胸元に見えたのは金棒だった。
扉が開き通路を進むと、大きな広間に大きな円卓が置かれ、そこには30人ほどが円の周りの椅子に座っていた。
俺達は部屋の壁に、並んで立つように言われた。
円卓の上には、座っている人の前にその身分が書いてあるプレートが書いてあった。
白金級中央冒険者ギルド長、白金級参謀指令長、白金級特級部隊長、白金級上級部隊長、白金級将軍長、その他にも黄金級の同じ役職の長達と、白金級、黄金級のクランマスターが数人来ていた。
「では、揃った所で本題に入ろうか?」
白金級参謀長が立ってそう言い、皆が頷いた。
「まず、ブリガムとクラン、ディファレントアースのクランマスター、アラタよ見た事を説明してくれるかの?」
「「はい」」
ブリガムと俺は前に出て、ブリガムが最初にこの被害の全容について簡潔に述べて、俺はあの洞穴で見た事を全て伝えた。
そして、俺の話が終わると皆が暫く沈黙し、参謀長が口を開いた。
「ふむ…つまり、人をこの神都から攫って、女には出産成長の早いゴブリンを産ませ生産し、死ねば食料、男は最初からゴブリンの食料で、そしてその肉の無くなった骨はスケルトン兵士になり、倒されたゴブリンもゾンビとして戦闘員になっているというわけじゃな?…効率の良い面白い事を考える黒幕じゃのう…」
「しかし、ゴブリンなんだよな?それがゴミほどいようが、倒し切ればいいわけで、その後ろの黒幕が上級アンデットだとして、この神都にも精霊武器があるんだよな?」
そう白金級将軍長が机に前のめりになり、参謀長の後に言った。
「ある…と言いたい所じゃが、殆どはあの大昔の大戦で無くなり、数本の剣や槍しか残ってはおらんのだ」
「それで十分なのでは?これだけの猛者が居るんだ、さっさとそんな案件終わらせて平時を取り戻すとしようじゃないか?」
「将軍長…そう簡単にはいかんよ、相手が上位ドラゴンなどなら人間の数で何時かどうにか成るも知れんが、相手は上位アンデットじゃ、もしその数本の精霊武器が効かないもしくは、持っていた者が倒されでもしたら、向こうの屈強な戦闘員になるだけじゃぞ?…事は慎重に行かねばなるまいて、そもそも上級アンデットと戦った事はあるのか?この数千年そんな災害級など出て来てはおわらんわ」
「む、むう…」
流石の参謀長、将軍長はぐうの音を吐いて椅子に背にどすっと背もたれた。
暫く、皆は考え暫しの時が流れた時、ノックの音が聞こえた。
「入れ!」
扉が開き一人の文官のような人が入って来た。
「参謀長、見つかりました!」
「おお、記録を見つけたのか?」
「はい、少しですが今回に似た話が文献に残っておりました」
皆がざわつく。
その文官は参謀長の横に走って行き、その古い本を見せていた。
どんどん参謀長の顔が険しくなった。
「これは…」
「なんて書いてあるんだ参謀長?」
参謀長は生唾をゴクリと一度飲んで言葉を吐いた。
「
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