第119話 緊急依頼

 俺達は134調査団、ラビ団長の妹「ライナ・シュライゼ」を仲間にして、マージガル神国冒険者ギルドの緊急依頼と言う物に挑戦する事にした。


 昨日の夜に、シュクロスさんへはここまでの経緯は報告してあるし、早朝にイグルート達や、ミーナさん達スイーツ販売部にも連絡は入れてある。


 どちらも順調で、ミーナさんは、レイアリグ大陸のアルカード支店への出店をとチラっと前に言った所からその事を着々と考えているらしい。

 この大陸にしかない果実などが見てみたいと言っていたが、追々それは考えようと言った。


 イグに関しては、転送装置の試作試験は成功したと聞いた。

 これに伴い、声を魔道具へ転送する携帯電話のような物も開発出来たと言った、流石、ハイドワーフである。

 これについても戻ってからちゃんと話を聞くつもりだ。

 本当にこの世界の人間は働き者である…



 緊急依頼「マーダーベア」討伐へ向け、ギルドから貰った地図を見て向かう事になった、俺はヴェロ町の外でマジックボックスから車を出した。


「うわ、マ…マジックボックス!?…ビーカル?」


 ライナはそう言って驚いた。


「ライナ、この国の人ってこの車見てビーカルって言うけど、それって何?」

「え?マスター、ビーカル知らないんですか?」

「うん、コレは俺達クランが作った、魔導自動車なんだ…長いから車って言っているけどね」

「えっと、私も本で見た事があるだけなんだけど…ビーカルって言うのは、大昔、古代人が利用していた乗り物の一つで、馬やラーマで引く馬車は今も昔もそのままですけど、その次の世代に登場した乗り物だったと思います」

「ふむふむ…ライナ、ここで立って話するのも何だから、とりあえず、向かう車内で教えてくれる?」

「あ、はい!」


 皆、魔導自動車へ乗り込み、運転はいつものようにカレンが担当した。


 依頼区域へ向かう車内の中でライナは語った。


 大昔の乗り物は多種あったらしいが、今のマージガル神国で復旧された乗り物は、宙を数メートル浮いて走る物が殆どで、その中のバイーダーは俺達も知っている。

 その他には、ヴィーダーと言う乗り物が宙に浮いて走る車の事だと言った。


 ヴィーダーが主流で、それは2人乗り~10人乗りまであって、他には、荷物を載せて走るトラックのようなヴィーダーもあり、その用途により様々な物があるらしい。


「ん?主流って言ったが、ヴァロの町ではそんなもん見かけなかったぞ?」


 フェルナンドがそうライナへ聞いた。


「ああ、マージガル神都もそうですが、銀級以上の区画ならまだしも、鉄級、銅級の区画にはそんな物走っていません…それと、大体は地下に馬車などを停める駐車場があるのです。人間との接触事故を防ぐために、その地下から出入口も町の外にいくつかあるんですよ」

「ほほう…しかし、そこから魔物が侵入したり、密入国者が入ったりはしないのか?」

「魔物に関しては、空も入り口も強力な魔素を阻害する結界が張られていて、その密入国者に関しては、そこにも兵士が一応おりますし、そこから外へ出て行くのは殆どが兵士ですので大丈夫なのかと思います」


 俺もライナに聞いた所、それは魔素を主体に作られている魔物を遮断する物らしいが、構造はライナも分からないと言った。


 その魔物を阻害する結界はシュクロスさんの町アルカードにもあった、確か、シュクロスさんが直したと言っていたがそれと同じ物なのだろう。


 それから、バイーダーなど、その殆どの乗り物系は兵士か金級以上の階級に支給される物で、一般の人は昔ながらの馬車などが主流なのだそうだ。


 それなら、外への入り口から出入りするのは殆どが兵士。

 何もしなくてもそこからの魔物や野盗などの侵入は無理なのかも知れない。


 ◇


 そんな話をしている間に、マーダーベアが確認された森へ到着した。


「この辺か?」

「向こうに見える山が、コレでしょうからこの位置で間違いないかもですね」


 カレンは車を停め、新とフェルナンドは地図を確かめた。


「ここから車で入るのは危険そうね、徒歩で行きましょうか?」


 カレンはそう言ってエンジンを止めた。


「あ、じゃあ、私とレベッカは、空から見てみるね」

「よろしく」


 瑞希とレベッカは車を降りて、使い魔を呼び出した。

 瑞希のグリフィンのグリフ、レベッカのペガサスのベガが異次元から、するりと召喚される。


「うわ!?それって使い魔?」

「ライナちゃん使い魔を初めて見るの?」


 驚いて声を漏らしたライナに瑞希は聞いた。


「はい!それって呪術ですよね?」

「ん~私はよく分かんないけど、呪術札を使って使い魔にするからそうなのかな?」

「それも本で読んだ事あります」

「え?あんなに近代的そうなのに使い魔とか使ってなかったのかしら?」

「はい、その呪術と言う魔法は、ハイエルフをどうにかするために作られた闇の術式で、大昔のマージガル国はハイエルフが作りし大国、悪しき術として呪術は排除されて来たと書いてありました。それで、マージガル神国に生まれ変わってもそれは変わらず、呪術師などはマージガル神国にはおりません」


 ライナは皆の前でそう答えた。


「結構、便利なのにねぇ…ねーグリフ」

「クルルル…」

「か…可愛い…いいなあ」

「あら、呪術札はあるからライナちゃんも欲しい魔物がいれば手に入れれば良いのよ?」

「えーー!まじですか!!」

「あ、でも、その魔物よりも強い主人じゃないと認めてくれないわよ?」

「え…、そ、そうなんですか?…って事は…」


 ライナは、その大きなグリフィンとペガサスに、この二人は勝ったって事になるので、ちょっと恐ろしくなった。


「さ、行こうか?ライナが強くなったら、その時俺が呪術札あげるから、頑張ってみると良いよ」


 俺はライナの肩をぽんと叩きそう言った。


「あ…でも、呪術なんて使ったら罰せられるかも知れないからいいや…」

《それに…あんなのに勝てるわけないし…》

 ライナはそう思った。


 ◇


 空から瑞希とレベッカ。

 俺達は徒歩で森に入った。


「地図では、簡単に書いてあるから分からなかったけど…結構深い森ですね」

「そうだな」


 俺はそうフェルナンドへ言った。


『新!2時の方向、砂煙が立って木が揺れてる、何かが争っているのかも!』


 瑞希からの念話が皆へ向け届いた。


『わかった、そっちに行ってみる』


 その言葉で皆が頷いた。


「こっちだ」


 クインは早歩きになり、その方向へ進んだ。


 暫く進むと、クインが立ち留まった。


「ふむ。人が4人いや…5人か?大きな魔物が6体…これがマーダーベアであろうな。フッフー」

「クイン、その感じだと…先に来た冒険者が殺られてるって事になるね…」


 クインは静かに頷いた。


「急ぐぞ!」


 フェルナンドはそう言って現場へ走った。


 俺達が着いた時にはもう6体のマーダーベアの前に悉く散った8人の冒険者が横たわっていて、食べやすくするかのようにその冒険者の遺体の装備を剥ぎ取っていた。


「先手必勝!」


 ドン!ドン!


 フェルナンドが撃った銃は地球最強のリボルバーハンドガン。

 地球での実用性は皆無で、ハンドガンのくせに全長約55センチ、重さは約6キロという、大きさはサブマシンガン並み、重さはスナイパーライフル並という、ハンドガンのメリットである携帯性などを全て無視した作りになっている。


 ライフル弾を撃ち出せるその銃は、この世界でグランドヒューマン化したフェルナンドだからこそ片手でも扱える代物である。


 二発の弾丸は2体のマーダーベアの眉間を捉え、風穴を開けてその場に崩れ落ちた。

 他の4体もこちらの異変に気付いてやって来たが、クラウスとカレンが音もなく背中へ忍び寄り、両腕の武器で頭を挟むようにナイフで突き刺し絶命する。


 マイティは正攻法で、振りかぶった両腕の懐で飛び込んで心臓を一突き。

 その場に崩れ落ちた。


 残りの一体は仲間が一瞬で殺られた事に気付いて逃げ出そうとするが、上空から瑞希とレベッカが降りてきて、立ち止まった。


「hyライナ、こいつやってみるか?」

「え?…ええ?…何が起こったのか理解出来ないんですけどぉ…」


 残った一体のマーダーベアは俺達に囲まれ警戒している。


「あ、ライナこいつ屈服させて使い魔にしてみるかい?」

「は?無理無理無理無理…」


 ライナは俺の言葉に大きく首を横に振った。

 俺は、持っていた超振動付きの剣をライナの手に握らせた。


「魔力を通すと凄い切れ味になる剣だから頑張って!」

「え…えええ…」


 そう言って俺は一歩後に下がった。


「強くなって、兄さんのようになりたいんだろ!」


 フェルナンドのその言葉でライナは一度我に返る。


《そうだ…こんなとこで躓いてないで上へ行かなきゃ!997回も依頼やってきたんだ、相手はたった1体、いつものようにやれば良い…でかいホーンラッドだと思えば的は大きいし寧ろ有利なんじゃないの…》


 キッと眼つきが変わるライナ。


 剣を握りしめて走りだす。

「やーーー!」

「グオ!」


 ライナがやって来た方向へ体を振り返し、右腕を振り上げてライナへ攻撃をしようとする。


 次の瞬間、マーダーベアの右腕が宙に舞う。


 グオオオオ!!


「お!上手いじゃないか、振りかぶって来た腕を狙うのは良い手だぜ、体を攻撃していたら逆にやばかったからな!」


 そう言って万が一のために頭を狙っていた銃を降ろした。

 ライナは相手の攻撃する手札を無くそうと、もう一つの腕を狙った。

 マーダーベアは腕を失った痛みですぐには動けなかった。

 すぐにもう片腕が切断された。


 グオオオオオ!!!


 両腕を失ったマーダーベアは、観念したかのように大人しくなった。


「そこまで!ライナ、マーダーベアにこの呪術札を使ってみるか?」

「はぁ…はぁ…はい!」


 俺から呪術札を受け取り、マーダーベアへ近づく。


「ちょっと…近づくわよ…良い子にしててね…」


 警戒しながらライナはマーダーベアへ呪術札を貼った。


「ごめんね…痛かったでしょ、でも私の勝ちよ…死にたくなかったら私とお友達になりましょ」


 そう言って魔力を通す。

 二人の間を淡い光が包むと、呪術札は熱くない炎に包まれ散って行く。


「こ、これで良いの?…」

「ああ、名前でもつけてやって、出血多量で死ぬ前に次元へ戻すんだ」


 俺の言葉にライナは頷く。


「あなたの名前は…えーと…ベーちゃんね!」

「クオオン」

「気に入ってくれた?じゃあ、お帰り」


 マーダーベアは次元の隙間へ入って行った。


「次元の中では傷も治るみたいだから、心配ないと思うよ、回復には時間かかるかもだけど…」

「はい!有難うございます!でも…私、マージガル神国人だからこの子は隠れた所で出さないと行けないけどね…」


 皆、笑ってライナへ頷いた。


 それから俺達は横たわっている冒険者の遺体の階級章を首から外し、弔った。

 この階級章は、マーダーベアの角と毛皮と共に冒険者ギルドへ持って行くことにした。


 その後、新にこの切れ味の良い剣はなんだ?フェルナンドのあの武器はなんだ?と質問攻めだったがとりあえず、依頼は達成だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

後書き。

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