第117話 西第一町「ヴァロ」
ラビ団長率いる「134調査団」と別れ、俺達は東へ進んだ。
建設中の西第二町から150キロほど東へ行った場所に、マージガル神国の西第一町「ヴァロ」があるとラビ団長に聞いていた。
一行は東へ進んだ。
道中も森や山、丘などが点在していたが、マージガル神国の建設チームが通った道のような物は一直線ではないが、ずっと東へ続いていた。
「マージガルの建設隊が通った道が続いている、辿って行けば大丈夫そうだな」
助手席のフェルナンドはそう言った。
よく見ると、車輪の後まであった。浮く乗り物だけで物資などを運んだわけではないようだ。
「そうですね…ヴァロって町でしたっけ?」
「ん?ああ、そんな名前だったな…それより、この道沿いに至る所に何か埋まっている物があるんだが?」
「え?何ですか?」
フェルナンドさんに言われ、今走っている道をよく見ると、微かに光る物が埋まっていることに気づいた。
「あ…ほんとだ…よく分かりましたね?」
「何時でも俺は警戒しているのさ、微かな動きにもな!」
カレンは一度車を停めてフェルナンドは降りて確認しに行った。
俺も車を降りて、フェルナンドさんがしゃがみ込んでいる場所へ向かった。
フェルナンドは軍用ナイフを取り出して、微かに光るその場所の草をわける。
「フェルナンドさん、これって一体なんでしょうかね?」
「なんかの魔道具か、ここを通った記録か何かかもな?」
すると、クインが後から覗き込み口を開いた。
「ふむ。その魔道具…我の予想だと魔素を散らす機械のようだぞ?フー」
「あ、クイン…魔素を散らす?」
「うむ。よく見るとそれはこの道沿いに設置させておる、その周りだけ魔素が薄い、薄ければ魔物もあまり近寄るまい、つまりそう言う事だ。フッフー」
なるほど、つまり魔素を散らして、魔物を近寄らないようにする魔道具って事か…
これも古代人が作った者なのかな?
「ま、害がないのなら、この道を進んだ方がよさそうだな」
フェルナンドはそう言って軍用ナイフを腰のナイフ入れに仕舞った。
俺も頷いて、フェルナンドとクインに続いて車に戻った。
その道のような道を辿って、森の中を行くとようやくヴァロは見えてきた。
「車はここまでにして、ここからは歩いて行く事にしよう」
フェルナンドはそう言い、皆頷いて徒歩でヴァロへ行く事にした。
徒歩でヴァロに近づくと、大きな塀と門が見え、門番が数人立っているのが見えた。
この門は普段は閉められているようで、大きな物を通す時に開門するようだった。
その隣に小さな門があり、人間は、そこから検問を通って町の中に入る様になっていた。
「次、階級章は?」
「俺達、外からの冒険者なので階級章は持っていません、今から登録しに行きたいのですが…?」
「分かった。おい!こいつらを冒険者ギルドへ案内してやれ!」
「はっ!」
その偉そうな門兵は首から銀色の棒状の物がさがっていた。
134調査団のラビ団長は銀棒だったから、階級的にはこの人も銀級で一緒なのだろうと思った。
1人の門兵の案内で、俺達はヴァロの町の中へ案内された。
町へ入ると真っすぐ一直線に道が見えて綺麗に整った街並みをしていた。
しかし、門の周りの道には、テントが張ってあったり、掘っ立て小屋などもあり、あまり良い環境とは言えない街並みをしていた。
「マージガル神国の町に入るのは初めてか?」
「はい、初めてです」
「そうか。大体は本国も周りの町も同じような構造をしているから、分かりやすいと思う。住居などは門の内側から中心にかけて階級が上がって行く、君らは登録をした段階では鉄級となり、一番下の階級になるから、この辺から中心へは行けないから気を付けてくれ」
「はい…えっと、何処から中心に行ってはいけないのですか?」
「それはだな…」
門兵は話してくれた。
この町の中心にはマージガル神国に貢献して領地を与えられた灰級の貴族が住んでいて、ヴァロの町を治めていると言った。
俺達が行けるのは、門から次の塀がある門までで、この辺は鉄級と銅級の地域だ。その門の先には銀級の住居などが広がり、その先、中央に灰金級達貴族の住む場所があるのだそうだ。
人口的には約10万人、マージガル神都はその100倍くらいらしく、都会に住みたくない人が移住していると言った。
「ここだ、先ずここで登録をすれば良い、冒険者達、頑張れよ!」
「はい、案内有難うございました」
門兵はそう言って門の方へ戻って行った。
冒険者ギルドと数軒はちゃんとした建物をしていた。
その冒険者ギルドへ一行は入って行く。
そこでマージガル神国式の冒険者ギルド登録をする事にした。
冒険者ギルドの受付はすぐに登録に取り掛かってくれた。
人数分の鉄の棒状の物。
名前と年齢、性別がこの棒状の階級章に記録されたらしい。
後は、依頼を受けた記録と達成した記録が入って行くらしい。
あまりにも簡単な登録だった。
そして、冒険者ギルドを出た。
「こんな鉄の棒で階級分けされるのか…、で、確か上の階級の悪口言ったらダメなんだったよな?」
「そう言えば、ラビ団長そんな事言ってましたね…」
「ダー、アラタ?さっきチラっと依頼見てみたけど、オブリシア大陸とあんまり依頼内容なんて変わらなかったわ、ただ…」
「ん?ただ?」
「ただね、階級の昇級の事が書かれていたんだけど、鉄から銅級になるのに依頼1000件熟す必要があるって書いていたわ」
「えええ…」
「銅になるまで1000…って、おい…、…待てよ、カレンまさかと思うがその先も…」
「更に2000って書いてあったわね…目指せ安定の銀級!ともね」
カレンの話で皆、遠い目をした。
と言う事は、銀級に上り詰めるまで3000の依頼を熟さなければならないと言う事になる…
さっきのギルドの従業員も銀棒だった。
銀級からは兵士や役人にもなれて、更に、銀級以上は安定した食生活まで補償されると聞いたが…大変な数だぞ。
神帝3世の時代になってマージガル神国は急成長を遂げたとラビ団長は言っていた、文句を言いたければ上を目指せってシステムを作り、人間一人一人のやる気を起こさせて繁栄してきたわけか…
「ま、とりあえず宿探そうぜ!ただ車に乗っていただけだけど…疲れた…」
クラウスは宿を探す事を勧めた。
俺達は気の遠くなる話をやめて宿を探す事にした。
見た目はオンボロだが、宿はすぐに見つかった。
「いらっしゃい、ウチは1泊、一人1銀ドラだよ!食事つきなら追加で一人2銅ドラだよ!」
「ああ、それなら7人分用意してもらっても良いですか?勿論食事付きで」
「あはは、あいよ!」
アルカードの町でシュクロスさんからの報酬で貰っているので、この大陸のドラ貨幣なら結構持っている。
感じの良いおばさんがすぐに部屋を用意してくれた。
一度、皆、湯浴びを済ませて、食事に一階にある食堂へ集まった。
「おばちゃん、このテーブルで良いかい?」
「空いてるのならどこでも良いよ!」
俺達は少し大きめのテーブルを陣取って7人で座った。
暫くすると、家主のおばさんが人数分の料理を運んできた。
「あんた達、見慣れない顔だね、この町は初めてかい?」
「はい、さっき冒険者登録をしたばかりで…」
「そうなんだねぇ」
すると、おばさんは葡萄のような実のフルーツをテーブルに置いた。
「これから長い付き合いになりそうだしねぇ、あはは、これは私からのサービスさ!」
「あ…有難うございます…でも、俺達、この町に長居はしないと思います。マージガル神国の神都へ向かおうと思っていますので」
「あらぁ…残念ねぇ…まあ、それはお食べ」
そう言って家主のおばさんは笑った。
「そういや、おばさん。おばさんも銀級なのかい?」
クラウスはそう家主に聞いた。
「いいや?私は昔から腰が悪くてね…ずっと鉄級だよ、厨房の旦那は銅級でね、依頼で足を悪くしてしまって、依頼なんてもう無理無理さ」
そう言って首から下げている階級章を服の中から外に出した。
「へえ…鉄級でもお店とか構える事が出来るんですね?」
「ああ…普通は無理。でも、息子が銀級でねぇ、この場所に宿を立ててくれたのさぁ、親孝行な息子だよぉ、あはは、最近は調査団に推薦されて入ったとか手紙が届いたけどね」
調査団?…
いやいや、134って事はそれだけ隊があるって事だからそれはないか…
「まさか、息子ってラビ団長って事はないよな!ハッハッハ!」
「ええ?息子の名前はラビだけど…あんたら知り合いだったのかい?」
「「「‥‥‥‥‥」」」
「「「「ええーーーー!」」」」
何気にフェルナンドさんが言った言葉で、皆、驚くことになった。
なんとあのラビ団長のお母さんだったのだ。
そして厨房にいるのがその旦那さんで、ラビ団長の父って事だね…
「いやあ…世間は狭いってこの事だな…ハハハ」
「ですね…ははは」
「へぇ、あの子、調査団はそれでも団長だったのかい?ほんとに親孝行な子だねぇ」
それから、ラビ団長の母親からいろんな話を聞きだした。
マージガル神国では、上の階級の愚痴や悪口は重罪で即牢屋へぶち込まれる。
神帝への冒涜に限っては死罪らしい。
この町ヴァロはまだ作られて50年と最近出来た町である事。
ラビ団長の母「カンナ・シュライゼ」父「ラゼラ・シュライゼ」は銀級ではないため、日々の生活は国には補償されていない。
この店は、ラビ団長が銀級になり、体の悪い両親のために食い扶持を稼げるようにと、それまでの財産をつぎ込んで買った土地らしく、土地に関しては兵士や役人の方が取得しやすいのだそうだ。
冒険者の方が依頼を熟せばそれが収入になり、下手したら兵士なんかよりずっとお金持ちになれる可能性もあるが、冒険者よりも安定した給料の貰える兵士を選択したのも、ひょっとしたら自分達のためではないかと、カンナおばさんは若干引け目を感じているらしい。
それから、ラビ団長には妹がいるらしく、名前は「ライナ・シュライゼ」、16歳にして、もうすぐ銅級に上がる事が出来る冒険者らしい。
「二人とも真面目で、親孝行で、私は鼻が高いよ!あははは、あ、そうだ!あんた達に一つ良い事教えてあげるよ!」
ラビの母親はそう言った。
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