第116話 古代人の作りし物

 俺達は、マージガル神国134調査団に案内され、建設中の町へ向かった。

 もう塀はすでに出来上がっており、「ウッドショック」の話だとアルカードに似た塀と言っていたが、実際は少し違っていた。


 門の入り口には門兵が4人立っていた。


「134調査団だ、少しこの者達と中を見たいんだが良いか?」


 そう言ってラビ団長は何かをポケットから取り出して見せた。


「ふむ、通って良いですよ」


 門番はそう言って門を開けた。

 バイーダーと俺達の車は門を通り、駐車場のような広場に停めた。

 そこには、バイーダーの他に物を載せて移動する車のような物もあったが車輪が無い所を見ると、バイーダーと一緒で宙に浮いて走る物なのだろう。


「こっちです、歩きながらでももう少し西の情報を貰えませんか?」

「分かりました」


 門を入るとこの世界とは思えない光景が広がっていた。


 まず目に入ったのは、建物や塀に使う石材を製造する機械があり、出来た石材を運ぶためのロボットだった。


「うわあ…この機械で建物の材料を作っているんですね…、魔鉱製…ではないんですね?」

「はい、魔鉱は古代人が掘りつくしたとされていて、今は貴重で魔鉱の壁に似ているとは思いますが、それに似せた石材を使ってます」

「あの機械も古代人が作った物なんですか?」

「はい、あれも修理法を神帝様が神の声を聴いて、我らが修復した物です」


 その町は綺麗な升目のように作られていた。

 入った門が西門で、真っ直ぐに石畳の道が作られていて遠くに東門が小さく見えた。


 駐車場で見た宙に浮く車が、建設用ロボットを載せてその道を走って行く。

 そのロボットの腕は物を持つようではなく、何かを粉砕するための腕が取り付けられていた。どうやら腕をその用途によってアタッチメント交換できる仕様のようだ。


「ラビさん、修理をしたと言っていましたが、その神帝様は製造方法は教えてくれないのですか?」

「はい、我らも修理方法が分かるのに、何故、製造方法は分からないのだろうと思った事もあります…それは神帝様のみぞ知る…でしょうか?」

「なるほど…ん?」


 歩きながら語っていると金属の枠でガラス張りの大きな建物があるのに気付いた。


「ああ、これは野菜農場ですよ」

「へえ…」

「育成魔動機が取り付けられていて、この中は様々な野菜や果物が24時間毎日育成されています、これによりマージガル神国は飢える事はないと言われる由縁です、勿論…それは階級によりますが…、これと一緒で家畜を育てられる機械とかもありますよ」


 階級?…その言葉を気になったが、俺達は皆、きょろきょろと珍しい物を見るかのように歩いていた。


「それで、その魔人族とは友好的なのですか?それとも好戦的?」

「ああ、高い知能を持っていると思われます、多分ですが、こちらが何もしなければそこまで脅威ではないと思われています、好戦的だったら、その辺の人間の町は滅ぼされていると思いますし、悪魔族の進化ですから1個体でもかなり強力な力を持っていると推測します」

「なるほど…そりゃそうですよね…」

 

 その後に、少しだけサキベルさん達の触りだけ話をした。

 魔人族を3体見た事があり、大きな魔物を一瞬で倒していたと嘘の情報だ。

 ラビ団長は良い人で親切な人だが、ここは悪いけど慎重に行かせて貰う。


 本当は友好的なんだけど、マージガル神国の本当の目的はまだ何も分かってはいない、しかし、このレイアリグ大陸でどう言った形だろうが大国にしようとしているのは確かだ。なので、脅威はあると思わせていた方が今は良いだろうと思いそう言った。


 魔人族とシュクロスさんがマージガル神国を受け入れるかどうかは分からないけど、もし、マージガル神国との戦争になる事があったら、シュクロスさんの町アルカードと魔人族は手を組まないと勝てないかもしれない。

 もっと情報を集めよう…


「古代人は地下通路を利用していたと言っていましたが、この町からマージガル神国へも繋がっているんですか?」

「繋がっている所もあるが、その殆どは入り口が埋まっていて見つからなかったり、破壊されていたりと様々ですね、因みにこの町はマージガル神国から二つ目の町と言いましたが、一つ目までの町の間の通路は破壊され埋まっているのは確認しました」

「なるほど」

「あ、アラタ君で良かったかな?」

「あ、はい」

「アラタ君達が西から来たと聞いて、地下通路が簡単に見つかるかと思ったのですが、まさか山越えしたとはね…あの門がある場所に地下への通路があるのではないかと何度も調査しているのですが中々見つからない物で…あそこから西へは大きな山と魔素も濃い…大きな山猿のような魔物も確認したので流石に地下通路を見つけないとこれ以上西へは困難だと思っています」


 山猿?ああ…それは絶対、ダイア・コングの事だな…


「で、アラタ君達はこれから何処へ行かれるんですか?」

「ん?えっと、今の所、何処って決めているわけではないのですが、マージガル神国を見に行ってみるのも良いかなとは思っています」

「なるほど…それなら、少しマージガル神国の事をお教えしておきましょう、先ずは、神帝様の悪口は絶対に言わない事です」

「悪口?」

「はい、実は、3世様の時代になってから100年ほど経つのですが、階級分けが出来て、その上の者に対する暴言などは取り締まりの対象になりますのでお気を付けください、知らなかったでは通りませんので…」

「は…はあ…階級ですか…」


 先程言っていた階級の話がここでも出て来た。

 ラビ団長は立ち止まり、首から掛けている棒状のプレートを新に見せた。


「これは階級章になります、私達は銀級。階級で言えば中間あたりになります、大体、兵士になる人間達は銀級が多いのですが、これはある魔道具に入れると私の名前や経歴などが映し出される仕組みになっています」

「それがないと国に入れないとかですか?」

「いえ、一応外からも人が集まるので、最初にマージガル神国の冒険者ギルドに登録をすると良いです、最初は鉄級ですが…それがあれば門の兵士に、この先疑われずに入国する事が出来ると思います」

「なるほど…」


 そこから、階級の事を聞いた。

 マージガル神国は、神帝3世の代にに移ってから階級制になったと言った。

 神帝>白金級>黄金級>灰銀ミスリル級>銀級>銅級>鉄級の6つの階級があって、国の住む場所も決まっているらしく、最低限の食料が配給されるのは銀級以上の階級とも言った。


 今の神帝3世は、階級を設ける事によって、より上への競争心と向上心を養い、上下関係を持つ事で、国が統制され発展へ導くのだと考えているらしい。


 まあ…確かに、社長、部長、課長がいて会社は成り立っている…それは国もそうだ。


 ラビ団長はそう言ってそのプレートを胸当ての中へ仕舞った。


「それから、マージガル神国の通貨は昔、この大陸で使われていた物をそのまま使っていて、ドラを持っているのならそのまま使えます。後は…とにかく、貧富の差が激しく門近くに住んでいる人間達には気を付けてください、窃盗など野盗紛いな奴らが結構います。門から中央に向かうほど身分が上がって行くように国は作ってあります、なので門近くの外側は治安がとにかく悪いので」

「分かりました…気を付けます」


 俺が頷くとラビ団長は軽く微笑んだ。

 すると、スマホみたいな物を覗き込んでいた、134調査団の一人が口を開いた。


「ラビ団長、調査団総帥から通達が来てますぜ」

「む?なんと書いてある?」

「西の山の森、報告にあった山猿を調査、危険なら討伐隊を派遣するとの事です」


 ダイア・コング達…グンゴの事だ。すでに、その調査団本体に報告済みだったのか…、しかしあのスマホのような物、携帯電話みたいな物なのかな?


「ああ、ラビさん!」

「なんだいアラタ君?」

「そのダイア・コング達ですが…、多分、魔人族と一緒でこちらから危害を加えなければ何もしてこないと思いますよ?戦うにしても結構、強いと言うか魔法も効きづらい魔物ですし…」


 この間、俺達がダイア・コング達を懲らしめたばかりで、その数も減っているし…

 このままでは折角、生かしてあげたのに討伐されてしまったら可哀想だ…


「君達はあの山猿達も知っているのか?まさか、魔人族と山猿達は組んでいるとかはないですよね?」

「ああ…どうでしょうね…でも、近くにいる知恵の高い魔物同士、手を取り合っている可能性も否定は出来ませんよね…あははは」

「むう、笑いごとではないんだが…西第2の町も建設中だしな…今は触らない方が身のためか?」


 暫くラビ団長は考えたがすぐに決断をする。


「よし、調査した結果、こちらから何もしなければ、害は無し、せめて、町完成まで静観が必要と打診しておけ!」

「はい!」

「では、アラタ君、私達も一度本国に戻って、補給と報告する事にします、あの旧式ビーカルでは私達よりは遅いだろうが、向こうでもし会う事があれば銀級の町までなら案内しよう」

「はい!有難うございます!」

「ああ、そうだ!もう一つ、マージガル神国登録は、ここから東にある、西第一町「ヴァロ」でも登録は出来るので、休息ついでに寄ると良い」

「分かりました」

「また会おう!」


 そう言って、ラビ団長率いる134調査団は、バイーダーで飛んで行ってしまった。


 俺達も更に進路を東に取ることにした。

 向かうは、マージガル神国だ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る