第113話 二つ目の依頼。
新達は、シュクロスの二つ目の依頼、東から来る人間達の善悪の調査へ乗り出すことにした。
俺は、その前に地球へ行き仕入れついでに、イグ達ドワーフからの催促されたウイスキーを大量に買い込み、新しいクランハウスの倉庫に全て置いてきた。
これで、暫くは大丈夫だろう…いや、あればあるだけ酒盛りするかも知れないが。
建設や開拓の出来は最高なのでその報酬と思えばいいかと思った。
シュクロスの中央タワーへ行くと、そこにいたのはクラン「グランアレグリア」と「ホワイト・ワルキューレ」の生き残ったメンバー5人だった。
シュクロスさんは、俺が東の調査をする日が今日って知っていたため。
この二つのクランに声を掛けたのだと言った。
「アラタ様、先日は救出に来ていただき本当に有難うございました」
クラティスは胸に手を置きもう一度、新達に礼を言った。
それに合わせて他の4人も新達に頭を下げた。
「アラタ様、貴重なエリクサーを、あたいなんかに使ってくれて本当に有難うございます…、お陰でこの通り腕も完全に。そして、古傷も少し痛かった足の関節も完全に治りました、これで…また親孝行出来ると思うと本当に感謝しきれない思いです」
ジュデイトはそう言って治ったばかりの腕を擦っていた。
「いえいえ、俺の国ではエリクサーはこの大陸より手に入りやすいので使ったまでです、気にしなくても良いですよ」
シュクロスさんだけは、俺がエリクサーを作れるようになっているのを知っているため、何も言わず、少し微笑んで俺達の会話を見ていた。
「アラタ様…私達、ホワイト・ワルキューレはこれから
「そうなんですね、また女性だけで?」
「はい、私達…男性にいろいろとあった者達の集まりだったので、恋愛は別としても気の許すことの出来るクランには入れたくないのです」
「なるほど」
するとクラティスの後にいるホワイト・ワルキューレメンバーが少し前に出て。
「アラタ様達が私達を必要とする事はないと思いますが…もしもの時は、いつでも声を掛けてください!必ずお役に立って見せますので!」
そうジュデイトが叫んでホワイト・ワルキューレ5人は力強い眼差しで俺達を見た。
「はい…わかりました、その時はお願いします」
「アラタ殿、我ら、グランアレグリアも何時でも力を貸しますゆえ!」
バルゼスも、胸に拳を当てて力強い眼差しで俺達へそう言った。
「その時はよろしくお願いします」
俺は笑ってそう答えた。
「さ、もう挨拶はそれくらいでいいだろう。次は私の番だ、アラタ、東の事について話そうか?」
シュクロスはそう言って、「ホワイト・ワルキューレ」「グランアレグリア」に帰る様に促した。
二つのクランは、新とシュクロスに頭を下げ、この部屋を出て行った。
「東の詳細について話をしよう」
「はい」
シュクロスはそう言いながら、新達を会議室へ連れて行った。
皆、その部屋の椅子に座って行く。
「物見の冒険者の話では、ここから東の山を超え、その先約300kmの開けた場所に建物を建築中との事だ…」
シュクロスはそう語をきり出した。
何度か聞いた話だが。
東の者達はバイーダーと言う、空飛ぶバイクのような乗り物に乗っていて、壊れたバイーダーを乗り捨て、徒歩で戻る人間を尾行した結果、村か何かを建築している場所へ辿り着いた所までは聞いていた。
その先の話を聞く所によると。
物見の者で確認したのは、人間、エルフ、ドワーフ、獣人などの亜人達、約100人、建設の為かドワーフが比率的には多かったらしい。
開けた草原の場所に作られた建設物は、建物が数棟と、その周りを魔物から守るための塀をぐるりと囲っていた。住むための建物のようだと言っていたので、村か町を作っている。
物見が接近して調べると、その塀に使われている材質は、アルカードに残されている建物の一部とそっくりな材質だったことも分かった。
遠目からだったが、建築用の魔導機械も見えたと言ったが。
それ以上は魔物撃退要員と思われる兵士が数人いて近寄る事がかなわなかったらしい。
「とまあ…今の所はここまでしか分かっていないが、確実に
「なるほど…分かりました、とりあえずは偵察って事で良いのですよね?」
「ああ、それで構わない、本当は私達が向こうへ接触してみて動向を決めたい所なのだが…前にも言ったが、もし、悪だと思われる人間達だとしたらアーティファクトの力でアルカードは占領、蹂躙される可能性もある…。それと、君らならアラタのゲート魔法で不慮の事態が起こっても、どこへでも避難する事も可能だろうと思い、厳しい依頼になると思うが、強い君達に頼むしかないと思ったのだ」
困惑顔のシュクロスはそう俺達に依頼を託してきた。
「分かりました、では早速依頼に取り掛かりましょうか。俺もこのアルカードの町は好きです。だからもしもの時は危険も知らせますし、俺が魔導機械をシュクロスさん達にも提供しますよ」
「な…何を言っているのだ?…魔導機械?アラタもアーティファクトを発掘しているのか?」
「まあ、話すと長くなるので、それはまた今度お話しますよ」
「む…むう??」
そう、俺が言った魔導機械とはMDS《マナードスーツ》の事だ。
イグのお陰で、さらに少量の魔力でパワーと機動が出来るようになっている。
生身で立ち向かうよりは当然、機械に乗って戦う方が安全に決まっているし、この世界にはない銃器を搭載している。
イグ達には、片手間で良いから、MDSをいくつか量産できる体制をとってて貰っても良いかな。実は、ドワーフ専用で重い資材運ぶ用のMDSはすでに開発され、俺の領地作りでその力を発揮しているので、戦闘用に変えるのなんて簡単なはずだ。
まあ、そんな物を戦争などに使わないに越したことはないんだけど。
相手があのアーティファクト兵器だとしたら話は別になる…
もしもの時はそれも頭に入れておこうと思って、もう一つ頭に浮かんだ事をシュクロスに話す事にした。
「ああ、それから…あの女湯浴び場にあった転送装置ありましたよね?」
「うむ、君らがこの町に最初に来た時のルーンポータルだな、それがどうした?」
「実は、俺のクランの開発チームが、
「ほう…それはハイエルフでなくても起動可能で?」
「はい、問題ありません」
シュクロスは暫く目を瞑り考えた。
「ふむ。最初は、アルカード以外の場所との繋がりは危険と思っていたのだが…、東の者達の事を聞いて、私も少し考えたのだ」
「と言いますと?」
「一つの町を維持するのは大変だ…北の魔人族、北東のお前達が懐柔した知恵のあるダイアコング達、他にも点在する町もそうだが、東のアーティファクトを使用している者達…この大陸は広い。他にも敵となるやも知れない者達が、何時襲って来るかも知れない事を考えると、味方になる部族や町などとの交流は不可欠ではないかと考えていた所だ…、最悪の場合はアルカードの民達を他へ避難させる事だって出来るからな」
「じゃあ、オブリシア大陸との交流やってみますか?」
「うむ、そうだな、元々この町とも繋がっていた土地だったわけだしな、それに…」
「それに?」
シュクロスは小さな溜息をついた。
「バルゼスとリンが、お前の店のお菓子の味が忘れられないんだと言ってな…出来ればこのアルカードに支店をどうしても作って欲しいから、私から頼んでくれと煩くてな…」
「は…はあ…支店を」
「しかし、それも一つなんだが、他にも良い事がある。オブリシア大陸にはスキルスクロールやマジックスクロールが普通に売っているのだろう?」
「はい、俺の家族が作ってますからね」
「‥‥‥‥‥‥」
暫く沈黙の時が流れ、いきなりクールなシュクロスの顔が驚愕に変わった。
「ちょ!な、なんだと!!お前以外にハイエルフ血筋が実在するって事か!?」
「ああ‥あれ?言ってませんでしたっけ?はははは…」
「アラタ…お前だけ残ってくれ、ちょっと話を聞こうか…」
「え…」
それから暫くシュクロスの質問攻めにあった新だった。
◇
「ようするに…母と妹は、純血のハイエルフで、アラタは地球人とのハーフエルフって事なのだな?」
「そうなりますね…」
シュクロスさんには全てを話すことにした。
悪い人ではないし、長く生きている分、知識も豊富で何かの時には助言もしてくれると思うし。
「はあ…お前がハイエルフの血筋で、スクロール作成は出来るとは聞いていたが?…まさか伝説のハイエルフがまだ存在していようとはな…そして更に、地球人?異世界人だったとはな…」
「はははは…」
「バルゼスの報告にあったアラタ達が使う見慣れない武器と言うのはひょっとして?」
「地球から持って来た武器ですね…」
「なるほど…聞けば、魔法を放つよりも速い速度で魔物に致命傷を与えると聞いているが…そんな武器をオブリシア大陸でばら撒いてはいないだろうな?」
「あ、それはありません。母にもそんな物ばら撒くなと言われておりますからね…」
「ふむ。お前の母は常識人のようだな」
「そう…ですね」
その後もいろいろと夜まで根掘り葉掘り聞かれた。
明日は、東の調査に出発するため、部屋に戻ったらすぐに就寝する新であった。
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