第99話 クラン会議
クランハウスの会議室に古参メンバーに集まって貰った。
「みんな集まってくれて有難う、いろいろと1年間忙しかったせいか、クランの事もミーナさんに任せっきりで御免、こうやって会議をして情報を把握しておこうと思った事と、重大な話をしますので宜しくです」
皆が集まった所で新はそう言った。
「まず、重大な事から話します、聞いてる人もいると思うけど、俺達の活躍と功績により、アルメデオ王から領地を頂く事が出来ました。」
おおおお…
それは凄い…
貴族になったって事か?
それとも…あの姫様と?
皆、ざわざわと騒めいた。
「いや…貴族になったわけではないんだけど、これはイグとジーウ、ミーナさんの功績が大きいと思う、この一年でディファレントアースは、俺のいた世界の科学と、この世界の魔法を一体化した…えっと魔科学とでも言いますか、その、魔科学のお陰で魔導車、MDS《マナードスーツ》、マナードバンドなど、魔力で動く機械を開発しました、それにより、国交がスムーズになり発展しやすくなってきました、そして、ミーナさんの経営力で、この大陸になくてはならないスイーツ店と雑貨店として店舗展開も出来ました、本当に有難う」
新がそう言うと皆は、うんうんと頷いていた。
「アラタ殿、それは違うわい、それもこれもアラタ殿がいなければ成す事も無かった物種じゃわい」
「そうね、アラタさんがこの世界へ来たからこそ、あの香りの良い石鹸、シャンプーや、化粧品、そして、パンケーキやお菓子もです」
イグルートとミーナはそう答えた。
そして、それを聞いた皆がコクリと頷いた。
「イグ、ミーナさん、そう言って貰えると、この世界に来てやってきた事が報われる気がします、有難う…で、本題に戻るんだけど、その俺達クランが預かる領地なんだけど…さっきパウロさんから詳細を記した、フェリオール王国の正式な書状が届いたんだ、それによると…」
新は、その巻物のようになっている書状を開いて読んだ。
そこにはこう書かれていた。
≪クラン、ディファレントアースにホルン郊外にある、英雄の祠を有する土地○○○○〇〇〇〇maを領地として認める。≫
≪なお、我が従弟にあたるホルン町の領主、ホルス・フォン・ディミタスには通達済みであり、拠点の建設には協力してくれるであろう。≫
≪これからも我が国の発展のために力を尽くしてほしい≫
≪フェリオール王国国王、アルメデオ・フォン・フェリオール≫
と書かれていて、王の玉璽でしっかりと印を押されていた。
パウロさんから事前に聞いていたが、この○○maと言うのは、この世界での面積を意味する単位らしい、俺が与えられた領地のその単位で計算すると、東京ドーム10個分、他の言い方をするのなら、東京ディズニーランドくらいの大きさだった。
そして、ホルンの町はここに書いてある通り、アルメデオ王の従弟の王族貴族が治めているらしい事も聞いた、その他にも、フェリオール王国領は各町を貴族が領地として、更に町の区画ごとに伯爵や男爵などの貴族が区画を分けて治めている、つまり日本で言う知事、市長、町長みたいな物なのだろう、これはイシュタルト王国、エイナムル王国もそういったシステムで統制を行っているらしい。
「そう言う事で、俺達は貴族ではないけど功績により、ホルン南に位置する英雄の祠から南への土地を頂きました、冒険者が領地を貰うのは異例の事らしいけど…、ここに、俺達クランのちょっとした町を作り、工房、農場を建設します」
「おおお、なるほどな!アラタ殿が、その場所を選んだ理由はあの祠じゃな?」
「はい、地球への扉は守っていきたいですからね」
イグルートはそう納得して更に口を開いた。
「うむ、しかし…儂ら、グランドヒューマン化したメンバーはゲート魔法も使える者がおるので移動には困らんがな…新人達はどうするんじゃ?物も仕事も王都の方が多いと思うがの…」
「王都や遠い場所ならゲートを使える人に頼むか、魔導バス、普通の馬車などで行き来するって事で、大体の拠点はホルンで良いんじゃないかな?特に低ランク冒険者はね」
イグルートの問いに新はそう答えた。
ホルンもなんだかんだ言っても普通に大きな町だ、人口は70万人くらいはいる、それは日本での地方都市の市の人口くらいである。なので、中級冒険者くらいまでなら、ホルンでも十分に仕事はあるのだ。
「アラタさん、私達スイーツ王都店組は、そのまま王都のクランハウスに住んでも良いでしょうか?農場で生産された物は、私がゲート魔法で採りに行けば問題ないと思いますので」
「それは構わないよ、王様にもそのまま使ってくれと言われているしね、もともとそのつもりだったからさ」
「それは良かった」
ミーナさん率いるスイーツ王都店組はそのまま王都に住むことになった。
店舗があるんだから、逆にその方が良いだろう。
俺達が、王都に行った時の拠点としてこれからも、王都のクランハウスはないと困るのだ。
それから、イグルート率いる工房ドワーフらと話を進めた。
まず、魔物から領地を守るための塀を作らないといけない。
町のように立派な塀を作るには時間がかかりそうだが、まずは住居の囲いから作ることに決めた。
イグルートは、一から建物や塀を作らないといけないため、マンパワーが欲しいと言って、知り合いのドワーフに声を掛けて、口の堅い者達を厳選して集めると言っていた。その交渉には地球のウイスキーがあれば簡単だと言っていたが…
工房も、イグルート親子とジーウがメインで使う秘密工房を一つと、量産に使う大きな工房も一つ欲しいと言っていた。
「イグ、わかったよ、その辺はイグに任せるから宜しくお願いするよ」
「御意、それからアラタ殿」
「ん?まだ何かある?」
「うむ、あのイシュタルト領にある、ハイエルフにしか起動出来ない、レイアリグ大陸への転送装置なんじゃが」
「うん」
「レイアリグ大陸側を封鎖しているのであれば、儂がバラしてみても良いか?ひょっとしたら転送装置の仕組みが分かるかも知れんしのう…あってもアラタ殿しか使えんじゃろうし、壊れたら壊れたで良ければじゃが…」
「‥‥‥わかった、一応、ヘクトルに聞いてみるよ」
「うむ」
そして農場に関しては、後ほどミーナさんがゲート魔法で農家をしていた知人を連れて来るという事になり、後は、全員から近況報告を聞くことになった。
スイーツ店は、相変わらず繁盛していて。
各王都店も、フェリオール王国領にあるホルン、ヘレスティアなどの町も、全てプラス収支で、ちゃんとお休みも週一定休日を取っているとの事だった。
しかしエイナムル王都店では、ヘアマスクがいつも品切れになり毎日のように貴族が入荷日を聞きに来るのだと言ってた。
イグの工房は、人手を借りて魔導自動車を量産していると言っていたが。
さっきの話でドワーフの従業員を正式に何人か雇う事になりそうだ。
次に、冒険者だが。
依頼を熟すのに新しい冒険者を募集したが、殆どが金の亡者で信用できる人間は一握りしかいなかった。
それも、低ランク冒険者だった。
皆で話した結果、低ランク冒険者を一から鍛えた方が、信頼も出来るし、正しい人間に育てる事が容易ではないかとの見解にいきついた。
とりあえず、20名ほどが、新、カレン、クラウスの3名の面接官の目に適って、入隊したのだった。
これにより、冒険者チームもCチーム、Dチームを作成して、訓練が必要な者達ばかりなので、20名を入れ替えたりしてパーティ編成する事にしたのだった。
古参メンバーとの会議はそれからも少し続いて、近況報告などを話し合った。
それが終わって、クランハウスの自室に新は戻ったタイミングでレイアリグ大陸のシュクロスさんからの遠距離念話が届いた。
『アラタ、聞こえるか?』
『あ、その声はシュクロスさんですね?お久しぶりです』
『うむ、おはよう』
おはよう?
あ、そか…レイアリグ大陸とは時差があるから…こっちは夜だけどあっちは朝なのか。
『おはようございます、どうかしましたか?』
『急用と言うほどでもないのだが、気になる事があってな…』
『気になる事?』
『ああ…こっちに来れるか?アラタなら一瞬だろう?』
『そうなんですけど…今から寝るとこでして…』
『ああ…そっちは夜か…なるほど、なら、近々で構わないから来てくれるか?それと…お前のファンも、そろそろ限界だぞ、来る時には甘いお菓子でも持って来てくれるとありがたいのだが?』
俺のファン?
ああ…シュクロスさんの親衛隊冒険者のあの二人か…
『リンさんと、バルゼスさんですか?』
『ああ…そうだ、最近ではアラタが全く来ないと私のとこに来る度に言うのだ…全く、馬鹿な奴らだ』
『ははは…わかりました、やることがあるのでそれを片付けたら、すぐに向かいますので2~3日下さい』
『わかった、ではまた』
そう言ってシュクロスさんとの念話は切れた。
◇
次の日、俺達は早速、自分達の領地の開拓へ動き出した。
アルメデオ王の計らいで、近くのホルンの町から人手も沢山来てもらっていた。
開拓にはイグルートを中心に動いてもらう事にした。
クランの大きな砦のような作りの屋敷と位置、庭、農場、工房の位置などをすでにイグルートへイメージを伝えていた。
そして、俺はと言うと、瑞希、フェルナンド、カレン、と一緒に一度地球に行くことにした。
瑞希は一度、母と会いに行くと言い、フェルナンドさん、カレンさんは、武器の調達をするのだと言った。そして俺は、勿論、仕入れだ、地球でしか手に入らない物をとりあえず持って来ないといけない、オブリシア大陸各国へ店舗を広げたため、すぐにヘアマスクやシャンリンなどが、底をつくのだ…
それと、瑞希から化粧水や乳液なども販売してみようと言う事で、またも、山口総合物産へ行って大量仕入れをしないといけない。
とりあえず、シュクロスさんの所にも行かないといけないし、やる事は山積みだなと考え込みながら、4人で英雄の祠へ向かった。
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