第89話 G,H化
「うおお、あああ…」
クラウスは何かの変化で声を上げていた。
「「クラウス!」」
「クラウス大丈夫?」
フェルナンドは、少し震えて浮いているクラウスの眉間を銃で捉えている。
引き金に指を軽く掛けた。
「身体が…、熱い!」
皆、変化が起きているクラウスを見守っている。
「こ…、これは…、凄いぞ…、フェルナンドさん、大丈夫だ、自分自身で分かる」
クラウスは興奮気味でそう言ったが、フェルナンドは冷静に銃で狙ったままだ。
クラウスは、興奮しながら沈んだり浮いたりしている。
その興奮も終わり、クラウスは俺達のいる方を見た。
「みんな…、これは凄いぞ…、地球の食べ物を食べ始めた時は、徐々に強くなっていく自分を感じていたが…、これは…、なんて言っていいのかわからない、良いからみんなも入れよ!」
「だ…、大丈夫そうだな?クラウス…」
クラウスは清々しい顔をしてそう俺達を呼んでいた。
フェルナンドは銃口を下に落とし、狙いを外したのだった。
そして、俺はすぐにクラウスを鑑定してみた。
-------------------------------------------------------------------------
名前:クラウス・テオドロ
種族:半獣人
性別:男
年齢:25
体力:2537
筋力:2649
魔力:1491
敏捷:3176
スキル:遠距離念話 鑑定 探知 索敵 マーシャルプログラム初級 地球人効果 グランドヒューマン化
-----------------------------------------------------------------------
俺は、脳裏に映るクラウスのステータスを見て驚愕した。
すぐに、マジックボックスにあるメモ帳を取り出した。
それは、前に皆を鑑定した結果を記録しているメモだ。
勿論、これは生物のステータスを数値化した物なので、修行した後や、その時の体調や気合の乗り方で数値は変わるが、大体は把握出来ると思って記録していた物だ。
地球の食材を口にして、地球人効果を得た後に記録したクラウスのステータスは、体力は252、筋力265、魔力158、俊敏311と書いてある。
「うああ!凄すぎるよこれ…」
「何?新、何見てんの?」
「ああ、これは、地球人効果を得た後に記録した皆のステータスの数値メモなんだ」
「で?クラウスは、どう変わってるの?」
「ほ…、本当にほぼ10倍になってる!」
メモを覗きに来た瑞希に俺はそう言って、皆、俺の発言に驚いた。
大体、この世界の普通の成人男性が平均ステータスの一つが約15~20だ。
地球人効果だけでもヤバかったけど、これはそれを元にしての10倍上がっているわけだ…、漫画の世界みたいな事が起こっているわけで…、これには驚きを隠せなかった。
「凄い!じゃあ、俺も入るわ!」
「わ、私も強くなりたい!!」
「ちょ…フェルナンドさん、マイティ!」
俺の言葉を聞いたフェルナンドと、マイティは、武器を床に置いて着ている装備を素早く脱ぎ捨てプールへ飛び込んだ。
ザバン!!
深く潜って浮いて来た二人は、顔を出して大きく息を吸い、1分くらいするとクラウスと同じような声を上げた。
「ウオオオオオ!」
「あああ…、気持ちいい…」
俺は、二人を鑑定した。
みるみると数値が上がって行くのが見えた。
クラウスは一度プールから上がり、自分の身体を確認して、新、瑞希、レベッカ、カレンに近づいた。
「大丈夫、大丈夫、何ともないぞ、お前達も行って来い!ははは!」
ドン!ドン!
ドン!ドン!
「え?ちょ!」
「きゃ!」
「あん!」
ザボン!ザバン!ドボン!ザボン!
クラウスはプールの脇に残っていた俺達を突き飛ばし、4人ともプールの中に落ちてしまった。
落とされた4人は水面に上がるために藻掻く。
何とか水面から顔を出した。
「ぷはぁ!クラウス!まだ装備つけてんだよ!溺れたらどうするんだ!」
「ああ…、悪い、悪い…」
クラウスは後頭部を掻いて引きつってそう言った。
そして、俺にも変化が現れた。
皮膚が熱くなり、何かが皮膚から浸透してくるのがわかった。
周りを見ると、瑞希もレベッカ、カレンもそれを感じ取っているように、手のひらを見たり、腕の皮膚を撫でたりしていた。
身体の熱さが心地よくなってきた。
細胞の一つ一つが騒いでいるのが分かる、髪の毛の先まで神経が研ぎ澄まされていく感覚を覚えた。
エルフの里の魔力の泉は、ステータスを少し底上げしてくれて、地球人で魔力のない瑞希達にも魔力が芽生える事もできる物だった、あの時は身体の変化なんてあまり感じなかったが、このアーティファクトは別格だった。
5分も経つと。
身体の熱も収まり体の底から力が漲ってくるような感覚。
この部屋の亀裂から流れ出ている水の音さえも感じ取れる。
まるで髪の毛の先にまで神経が通っているかのように、身体の全てが研ぎ澄まされた感じだった。
瑞希や他のメンバー達も、それを感じ取っているのだろう。
フェルナンドさん、クラウスは身体能力を試す様にシャドーボクシングみたいな事をしていて、レベッカやカレンは目を閉じて、深呼吸していた。
俺は、アーティファクトの事を思い出して潜った。
そのプールの底に沈んでいるアーティファクトは金色に輝いていた。
クラウスに突き落とされて装備もしたままだが、そんなの関係ないくらい普通に潜っていけた、超人的な身体になったからなのだろう。
俺はそのアーティファクトへ近づいて持ち上げる。
それを持ったまま浮上した。
水面に出ると、瑞希が手を伸ばしてきた。
「その持っている物は俺が持とう」
フェルナンドさんに持っていたアーティファクトを渡して、瑞希の手を取りプールから上がった。
アーティファクトがプールから無くなった事で、そのさっきまでキラキラとしていたプールの水は元に戻っていた。
フェルナンドが、新へアーティファクトを返して来た。
微かにフウウウウン…と音が聞こえる。
「アラタ、これどうするんだ?」
「一応、どんな生物も強化してしまうのなら…、危ないアーティファクトだと思うから、俺が回収して置こうと思ってます、シュクロスさんにも、危ないアーティファクトがあったらどうの~とか言われましたからね」
「そうだな…、危険な魔物まで強化しちまう可能性あるよな…って、このアーティファクトの水が何処かに流れていたからこの辺の魔物は強いんじゃないのか?」
フェルナンドさんがそう気づいたかのように言った。
俺も、はっと思いついた顔をした。
「ああ!そうかもしれませんね…、この亀裂から少しずつ流れていった水を何かの形で浴びたか飲んだとかありそうですよね?」
「だな、この超人になるには5分ほど浸かっている必要があるようだから、魔物の強化は中途半端に強くなったとかそんなものなのかもしれんよな」
「とりあえず、この装置は切って仕舞っておきます…、一度切っておけばハイエルフの遺伝子持ちしか起動は出来ないと思いますが危険なので持って行きます」
スイッチのような場所があったのでそこに指を触れるとアーティファクトは静かになった。
「そろそろ、戻らないとクインちゃん達が心配するよ」
俺がマジックボックスにアーティファクトを仕舞った時、風魔法を使って自分を乾かしていた瑞希がそう言った。
「うん、他には何も無さそうだしとりあえず戻ろうか」
「うん」
「ああ」
皆、頷いて、防具などをしっかりと装備してその部屋を出たのだった。
俺は転送部屋へ行く時にクラウス以外の自分を含め皆を鑑定してみた。
------------------------------------------
名前 伊勢新
種族 ハーフエルフ
性別 男
年齢 20
体力 2163
魔力 16549
筋力 2047
敏捷 2071
スキル: 地球人効果 探知 翻訳 鑑定 遠距離念話 魔法空間∞
グランドヒューマン化
------------------------------------------
名前 桐谷瑞希
種族 人間
性別 女
年齢 20
体力 2198
魔力 502
筋力 2165
敏捷 2276
スキル: 地球人効果 翻訳 遠距離念話 マーシャルアーツプログラム初級
グランドヒューマン化
------------------------------------------
名前 レベッカ
種族 人間
性別 女
年齢 19
体力 1476
魔力 2091
筋力 1032
敏捷 1021
スキル: 生命神の加護 神聖魔法 翻訳 遠距離念話 地球人効果
グランドヒューマン化
---------------------------------------
名前 マイティ・メイセント
種族 人間
性別 女
年齢 20
体力 1690
魔力 856
筋力 1745
敏捷 1694
スキル: 探知 遠距離念話 地球人効果 マーシャルアーツプログラム初級
グランドヒューマン化
------------------------------------------
名前 ブライアン・スミス
種族 人間
性別 男
年齢 32
体力 2976
魔力 831
筋力 3108
敏捷 3098
スキル: 地球人効果 翻訳 銃術特級 体術特級
マーシャルアーツプログラム特級 グランドヒューマン化
------------------------------------------
名前 シャロン・ミラー
種族 人間
性別 女
年齢 30
体力 2767
魔力 791
筋力 2780
敏捷 3354
スキル: 地球人効果 翻訳 遠距離念話 銃術特級 体術特級
マーシャルアーツプログラム特級 グランドヒューマン化
------------------------------------------
ああ…、凄い事になっている。
修行した人間が地球人効果で約5倍になって、魔力の泉に入って少し増加、グランドヒューマン化でそれの10倍なんだから、そりゃね…通常の人より約100倍くらいになっているんじゃないかこれ…
瑞希のステータスに俺は魔力以外いつも抜かれているのが…気になるが。
アメリカ人二人は元々化物だったけど更に化物になったね…
そして、今気づいたけど、瑞希、マイティ、クラウスにマーシャルアーツプログラム初級とか付いてる…、フェルナンドさん、カレンさんに格闘術を習っていたみたいだね。
◇
俺達は、ここに来た時の転送部屋へ戻った。
転送装置に触れると建物が建っている中央の広場へ転送された。
「ふむ、アラタ間に合ったな、ふー」
そこには、クイン待っていた。
「あれ?クインここで俺を待っていたの?」
「ふむ、いや、たまたまだ、しかし事態はそこまで良くないぞ、ふー」
「え?」
「気づいてはいたが、囲まれているぞ、ふっふー」
クインが向いた先を見ると、四方の山の上から数十匹のコング達が俺達を見下ろしていた。
「ふむ、お前達から只者ではない気配を感じる…、何かあったのだろうがそれは後から聞こう、ふー」
クインは俺達のグランドヒューマン化に気付いたようだ。
「よっしゃ!いっちょ暴れますかあ!ワッハッハ」
フェルナンドが両手の拳を合わせて高笑いしてそう言った。
広場にサキベル率いる魔人族も集まって上を見上げている。
クインもヴィグも戦闘態勢をとっていた。
「来るぞ!」
クラウスがそう叫んで、皆、戦闘態勢を取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます