第63話 王族の依頼。
Aランク昇格を果たした新達は、フェリオール冒険者ギルド長ベンザ・グリオルから、王族からの依頼を受けるのだった。
イシュタルト王国と、オブリシア大陸の北西に位置する大国、エイナムル王国との親睦会と言う名のお見合いに、フェリオール王国第一王女、エルティア・フォン・フェリオールを護衛するお役目を受けた。
「では、アラタ様、宜しくお願いします。」
「パウロさん、貴方の推薦って聞きましたけど?」
「はい。私の情報によると、多分、この大陸で一番実力のあるクランは、アラタ様のクランだと私は思っておりますので、大事な王女二人の護衛は、ディファレントアース一択しかないと思ってました。ほほほ。」
「はあ‥でも、まだAランクなったばかりですけど‥」
「アラタ様は謙虚ですなぁ、私の査定では、実力はSランクはあると思っております、私の情報網を舐めてもらっては困りますな。ほっほっほ。」
パウロさんはそう言って、笑っていた。
執事なのに、情報通だし‥この人はいったい‥
そう話をしていると、数名の兵士に囲まれた王様、王妃、エルティア、アンジェリアが出てきた。
エルティア姫と、アンジェリア姫を乗る馬車を囲むように、俺のディファレントアース、Bチームも含め13人と1匹、そして、精鋭の兵士が20名護衛としてついて行くことになっている。
アンジェもなんだ?とパウロさんに聞いた所。
今後のために両国の王子達とは、顔合わせさせておくとの事だった。
「アラタよ、儂の大事な娘達を宜しく頼むぞ。精鋭兵士20名がいるとは言え、冒険者ほど魔物などの戦いには慣れておらんからな。」
「はい、全力でお守りしますのでご安心ください。」
「アラターー!道中でお菓子作ってくれるのだ?」
「アンジェ‥ああ‥わかった、作るよ。」
「やったーーーなのだー!さすが親友なのだ!」
俺達は、王に見送られフェリオール王都を出発した。
中央に王女達の馬車、その前後に二人を世話するメイド達と荷物が乗った馬車が1台ずつ、兵士の休憩用馬車が4台、兵士は馬やラーマに乗ってそれを囲む。
先頭は、俺達で、後尾をマルク率いるBチームがついて来ている。
北の炭鉱の砦町ディアムを抜け、獣人の村マアシュタ村を経由して、イシュタルトへ入り、いくつかの村や町に泊まり10日かけてやっと、イシュタルト王都へ着いたのだった。
道中、低級中級の魔物が現れたが、さすが精鋭兵士、手際よく魔物も倒していた。
「やっとついたぁ‥新の魔法だったら一瞬なのにぃ‥」
「まあまあ、瑞希、異世界をこうやって旅するのも俺は楽しいけどね。」
「キャンプも2日までは楽しいのよ‥でも、それ以上は身体が痛くなっちゃう‥それに女の子はデリケートな生き物なんです!」
「ははは‥」
それから、俺達はイシュタルト王城へ入った。
◇
「おーー!アラタ!」
「ああ、ヘクトル。」
「あ、イシュタルト城へようこそ。エルティア姫にアンジェ姫。」
「はい、お初にお目にかかります、ヘクトル様、この度はお招きいただきありがとうございます。」
胸に手を置き頭を下げたヘクトルに、エルティアはドレスの裾を少しあげて会釈した、アンジェも慌てて同じ動作をしていた。
「王女様達は、あの執事が担当するのであの人に着いて行ってください。そして、お前達冒険者は、少し狭いがこっちだ。」
そう言って、エルティアとアンジェ、世話係のメイド達はその執事について行った。
俺達はヘクトルについて行った。
「なあヘクトル、エイナムル王国からも王族が来るんだっけ?」
「ああ、もう昨日ここに着いて、別室で寛いで貰ってるぜ。」
「エイナムル王国ってフェリオール、イシュタルトよりも大きな国なんだろう?」
「ああ、そうだ。多分その2つの国を足したくらいの大きさかも知れないな。」
「へぇ‥」
フェリオールもイシュタルトも、大きい都だと思うがその2倍ってことか‥
「まあ、この大陸は小さいって聞いているから、他の大陸はもっと凄い所もあるんじゃないか?まあ、海の外から来た奴らなんて見たこともないから、この大陸しか人間はいないのかも知れないけどな。」
「海の外の世界かぁ‥」
「あ、でも、エイナムル王国は、海の外の世界に挑戦するつもりで、魔物に潰されないような大きな船の建造計画を立ててるって聞いたことあったな‥ま、冒険好きな俺でも、さすがに身動き取れない船に乗るつもりはないがな。」
ヘクトルはそう言って、前髪を指で払った。
前に聞いたとき、オブリシア大陸は日本の3倍くらいの大きさだと言っていた。
日本でも意外と広いわけだし、結構オブリシア大陸って人も多いし、この大陸だけでも不自由はないんだろうなと、俺は思った。
でも、もし、海の外の世界に行って見る事が出来るのなら行って見たいな‥
最悪、危なくなったら、ゲート魔法でこの大陸に逃げればいいしね。
それから、その日はヘクトルが用意してくれた部屋で寛いで一日を過ごした。
◇
次の日。
3国の王子王女の親睦会が開かれた。
フェリオール王国から、第一王女エルティア16歳と、第二王女アンジェリア10歳。
イシュタルト王国から、第一王子ヘクトル20歳と、第二王子クヴェルト11歳。
エイナムル王国から、第一王子ウェズ24歳、第二王子ラルベルク20歳、第三王女クシーリ19歳。
オブリシア大陸の王族は名前の後には、フォンのミドルネームと、国の名前がその後に続く。
それから、各国の側近の執事やメイド、0兵士を束ねる長などもそこには並んでいた、新達もフェリオール王国側に並んでいる。
《此度は、3国王族のご子息との親睦会に遠方からご足労頂き誠にありがとうございます。イシュタルト王である、このヘヴァイトルが進行をさせて頂く、3国ご子息の方々、この城にいる数日間楽しんで下され。》
開幕に、イシュタルト王ヘヴァイトルが大広間の壇上に上がり、拡声魔道具でそう言った。
ヘヴァイトル王の5分ほどの談話があり、親睦会は始まった。
王族達は、皆、指輪やブレスレットなどの、アクセサリーを身につけている。
それは、単なるアクセサリーではない、ダンジョン産やハイエルフが作った、状態異常を無効にする物だった、それにより、毒を盛られたりしても打ち消すので常に王族はそれを身につけるのだとパウロさんから聞いていた。
実は、俺もそれを聞いて毒や麻痺を無効にする魔法を母エウロラから聞いて、全員にアクセサリーに付与し作って渡していた。
ハイエルフの遺伝子は本当に便利なのである。
半分以上の連れの人間達は壁沿いに見守りながらの立食をしていて、少数の護衛は王族と一緒にいる。
俺、瑞希、フェルナンド、カレンはピタリと、エルティアとアンジェに張り付き挨拶周りに同行している。
まずは、俺も知り合いのヘクトルの所に行ったが、ヘクトルは別に婚姻などに興味はないと言って、エルティアとアンジェを弟のクヴェルトに会話させて、俺と瑞希とばかり会話していた‥全く‥。
で、その後、エイナムルの第一王子ウェズと、第二王子のラルベルクとの会話を王女二人はしていた。この王子二人、文武両道で非の打ち所もない青年達だった。
ヘクトルをチラっと見て、この二人を見ると‥ヘクトル‥お前は婚姻とかに興味はないだろうが、どっちにしろ負けてるぜ‥と俺は心の中で呟いた。
「あんた、ちょっといいか?」
そう、俺に声を掛けてきたのは、エイナムルの第三王女のクシーリ・フォン・エイナムルだった。
「え?お、俺ですか?」
「ああ、君だよ、アラタって言ったっけ?」
「え、知ってるんですか?俺を?」
「私はね、情報通なんだ、東の中規模のスタンピードを収束させたクランのリーダーだろ?」
「は‥はい。」
「今、海の外に何があるのか、それを確かめるために巨大な船を建造し始めた所なんだが、お前、興味ないか?」
「あります‥けど、クシーリ様がそれに乗るんですか?」
「勿論!私が考案者だからな!」
なんか‥この雰囲気誰かに似ているぞ‥
「新‥この子なんかヘクトルに似てない?」
瑞希がそう耳元で囁いた。
そうだ‥この、好奇心旺盛な眼差し‥ヘクトルと似ているんだ。
「おい、こそこそ話してないで、私と海の外のロマンの話をしないか?」
「ははは‥」
「おい!クシーリ、護衛の人に迷惑をかけるんじゃない。今日は王族との親睦会だ、お前も王族並びに側近の人達と顔合わせをして来い!」
「へいへい‥ウェズ兄さん。」
クシーリはそうウェズ王子に言われ、呆れた手振りをして俺達の元から去って行った。
「すまなかったな、君が、クラン、ディファレントアースのリーダーか。東のスタンピードの話は、エイナムルにも届いている、凄い魔法師なのだそうだな、私ともお見知り置きを。」
「ああ‥えっと‥こちらこそよろしくお願いします。」
凛々しいウェズ王子は、軽く会釈したので、慌てて俺は深々とお辞儀した。
それから、王族とその側近の親睦会は数時間続いた。
明日は、イシュタルトの観光をすることになっているので、その日は早めに就寝することにした。
◇
次の日。
王族を囲むように一人に付き、3人の護衛が付いて回るように行動する事となった。
朝からイシュタルト王都の名所を周り、一度、広場で休憩する事になった。
すると、向こうの方でわいわいと何やら騒いでるのが見えたが、それがこちらへ近ずいて来ていた。
「なんだあの騒ぎは‥ウェズ様、こちらへ来ないよう注意してきます。」
「うむ。」
「俺もカレンと何なのか見て来るぜ。」
フェルナンドとカレンと、兵士が数人走って行ったが、暫くするとやはりこちらへと、その騒ぎは近づいてくる。野次馬も膨れ上がり、大きなイベントでもしているかのようだった。
その辺の人に何があったのか、話を聞くと冒険者同士の小競り合いだそうだったが、そんなの別に野次馬する必要があるのかと思っていたが、エイナムル王国護衛の人達は早めに、ウェズ達の避難を始めたので俺達も離れようとした瞬間、後ろを見ると瑞希達と兵士が数人倒れていて、エルティアとアンジェが見当たらない。
遠くを見ると急いで影が建物の通路を曲がったのが見えた。
瑞希と兵士を見ると外傷はない、眠らされているようだった。
「マルク!ちょっと瑞希を見てくれ、俺は追いかける!」
「あ、はい!」
俺は、近くで野次馬を警戒していたマルクにそう言って、影を追った。
こんな時にクインがいれば、すぐに追いついてわかったのだろうが、観光でこれだけの人間がいるから大丈夫だと、適当に過ごしていてくれと言って置いて来たんだった。
俺は、その影が曲がった通路を曲がるが誰もいない。
キョロキョロと走りながら通路を調べて行く。
すると、2人の男が喋っているのが見えて、俺は声を掛けてみることにした。
「あの、ここを人を担いだ人達通らなかったですか?」
「いや?見てないが、俺も聞きたいんだが、この匂いってなんなのか分かるか?」
「あ、今、そんな暇ないので、‥」
すると、1人が俺を羽交い絞めにして、その匂いのついた布を、鼻と口を覆うように被せた。
すぐに振りほどき、力一杯その二人を突き飛ばしたが。
凄い睡魔に襲われた。
これは‥なんだ、意識が‥遠のいていく。
「痛ててて‥こいつなんて怪力出すんだ‥。」
「だな、でもさすがスカークの眠り液だぜ、お前自分の手を嗅ぐなよこうなるからな。」
「わかってるって、で、こいつどうします?護衛にしては細身だし王族なんですかね?」
「王女の近くにいたって事は、側近の偉いやつかも知れんからとりあえず連れて行くか?」
意識が薄れる中、そんな男達の声が聞こえていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き。
更新が遅れまして、応援してくれている皆様にはお待たせしました。
近況ノートの方にも書いたのですが、リアルがすっごい忙しくて、中々考える時間と書く時間がなくなりつつありまして‥
フォロワーも900人を越え、読んで頂ける方も増えてきているので、頑張りたい所なんですが、気長にゆっくりと読んで貰えると助かります。
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