第55話 魔力増幅装置。

 俺達はジーウ、ヘクトルを連れてクラン工房へゲートで戻った。


「おお?本当にここはフェリオール王都なのか?」

「す、凄いぃ」


 イグルート達も俺達に気づいて、こちらに寄って来た。


「アラタ殿、その人が噂のエルフですな。そちらは‥」

「ああ、イシュタルト王国のヘクトル王子だ」

「へ?王子‥ですか‥」

「まあ、それは追って話をするから、このジーウさんに、そのバギーを見せてやってほしい」

「ふむ、わかった」


 イグルートは、ジーウにバラしているバギーのエンジンを説明し始めていた。


「おい、アラタ、本当にお前は何者だ?今の魔法と言い、あの凄いパワーの乗り物と言い、普通じゃないぜ?」

「ああ‥まあ、それも今度ちゃんと話をするんで‥」


 あっちの方で、ジーウがギャーギャーなにやら驚いた声がしているが、機械を見て興奮しているのだろう‥


「ああ、アラタ、さっきのゲートって魔法で一度イシュタルトに繋いで貰っても良いか?」

「うん」

「ちょっと俺も、暫く不在すると城に報告に行ってくるわ」

「え?大丈夫なんですか?」

「ああ、お前達の動向を見る方が面白くてな!はははは。それに、ちょっとアカツキ国にも、シノビが帰ってきているのか気になって行くつもりだったからな、フェリオールからの方がアカツキに近いから都合もいい」


 本当に好奇心旺盛だなあ‥、殆ど城にいないんじゃないのか?

 俺は、とりあえず頷いてゲート魔法をイシュタルトの門まで繋いだ。

 時間を決めて同じ所にゲートを繋げる約束をして、ヘクトルはウインクして帰っていった。


 それから、暫くするとジーウが俺の所へ走って来た。


「アラタしゃん!凄いですぅ!これなら、大きくなったエネルギーを暴発することなく、大きな力に伝達出来るかも知れません!」

「あ‥ああ、そう‥」


 更に興奮して俺に、早口で説明するジーウ。


「それでねそれでね。その蓄積した魔素を‥」

「ああ!‥えっと‥俺にはよくわからないから‥それはイグと語ってくれませんか。」

「うむぅ、それよりお主‥湯浴びした方が良いぞ、匂うぞ」

「えぇ‥」


 ジーウの湯浴びをさせるため、瑞希とレベッカが付き添って、クランハウスへ向かって貰った。


「アラタ殿。いろいろとあのジーウとやらから聞いたのですが、あの腕に巻いている魔道具、凄い物じゃな」

「ああ、あの魔力を供給できるって魔道具ね」

「うむ。仕組みを聞いたが、魔物の部位を使っているようじゃが、あれがあれば相当な魔力消費をしないかぎりは、枯渇する事はまず無いじゃろうし、あれを活用すれば少しの魔力でバギーを動かすことも可能になりそうじゃのぅ」

「俺もそう思った、でも、あのガソリンで走るような速度を作る事は出来そう?」

「それは、儂が、ジーウにエンジンを見せ説明した時、何やら思いついたような顔をしおったから、策はありそうじゃのう」


 俺とイグはそう考え込んでいた。


「heiアラタ、俺とカレンに魔法が使えるようになるって言っていたが、それはどうやって使えるようになるんだい?」

「ああ、そうだった」


 俺は、母エウロラに遠距離念話を送った。


『母さん聞こえますか?』

『あら、アラタどうしたの?また変な物作ったんじゃないでしょうね‥』

『いやいや、それはないって!それよりさ、今俺の元にいる二人の地球人に魔力を与えたいんだけど、魔力の泉に浸からせに行っても良いかな?』

『それは良いけど、今から来るの?』

『うん、そっちにゲート魔法で繋いですぐにそっちに移動させるので』

『はあ?ゲート魔法って何?』


 しまった!まだ、ゲート魔法の事は報告してなかったんだった‥

 俺は一気に顔が青ざめた。


『あ‥ああ‥はは‥ほら、空間転移のような物で‥ですね』

『アラタァ!‥今それはないって言ったばかりで~!』

『ご‥ごめんなさい‥全員で知っている場所を繋げて移動する魔法でした‥』

『また‥とんでもない魔法を‥個人で転移するだけでも相当難しい魔法なのに‥わかりました。勿論、そんな物スクロールにしたりしてないわよね?』

『も‥勿論ですとも!母上!』


 絶対にゲート魔法を世に広めない事と、新しい魔法を作ったら、作ったその場で報告する事を誓わされたのだった。


 ゲートをエルファシルへ繋ぎ、ヘクトルとマイティに付き添って貰って、フェルナンドとカレンを魔力の泉に連れて行ってもらった。


 俺はヘクトルと待ち合わせの時間になったら、ここへ呼ばないといけないので一人残るのだった。



 暫くすると、ヘクトルとの約束の時間が来たので、ゲートを繋ぐとそこにはヘクトルが立っていた。


「時間通りだな!アラタ」

「お帰り」

「ああ、これで暫く国を留守にしても大丈夫だぜ!ははは」


 そう言ってヘクトルは、髪を掻き上げ、親指を立てて俺に笑った。


 そして、瑞希とレベッカが、ジーウを湯浴びさせて帰って来た。

 湯浴びをして、レベッカの着替えを借りて来たジーウは、見違えるほどだった。


 あのボサボサの髪が、光沢のあるサラサラになり、顔についていた煤などもなくなり、勿論、クランのシャンプーなどを使ったからなのだろうが、元のエルフ美人が顔を出していた。


「お‥お前本当にジーウなのか?」

「ヘクトル様ぁ、どういう意味ですかぁ?」

「綺麗になったでしょ~、ジーウさんってすっごい美人なんだから」


 瑞希がそう言っていたが俺とヘクトルは、暫くその変わりように固まっていた。


「イグぅ!早く実験しよぅ!」

「お‥おう‥」


 シャンプーの香りを振り撒いて、ジーウは走ってイグの袖を引っ張ってバギーのエンジンに駆け寄って行った。


「とりあえず時間かかりそうだし、フェリオールを案内してくれよ」

「俺も、あんまり歩き回ったことないから案内とか出来ないよ?」

「まあ、良いさ」


 そう言って、ジーウをイグルートに任せて俺達は、工房を後にした。



 新、瑞希、レベッカは、ヘクトル王子を連れてフェリオール王都散策に出かけた。

 王都は俺も知らない場所があったりで、意外と楽しかった。


 瑞希とレベッカも小物などが売ってたりすると、ウインドウショッピングをしたりと楽しんでいるようだった。


「しかし、本当に一瞬でフェリオールなんだな。空間転移の魔法を行使できる魔法師が羨ましいと思っていたが、まさか空間を繋げて行き来出来るとはな‥」

「あ、これ、内緒にして貰えないかな?俺のオリジナルの魔法なんで、世に広めるつもりもないからさ」

「ああ、わかってる。スタンピードの時のやつとか、お前の魔法は規格外の物があるみたいだからな」

「まあ‥ははは」

「アラタ、お前と友達になれて良かったぜ!なんつっても退屈しないしな!ははは。それに、お前が善人で良かった、そんな魔法持っている奴が悪人だったらゾッとするぜ」


 そう言って、前髪を指で払って笑ったヘクトルだった。


 一回りして、工房に帰ってくると、イグとジーウはすでに何かを完成させていた。


「お、アラタ殿。試作品が完成しましたぞ!」

「え、もう?」

「ドワーフの物作りを舐めちゃいかんぞ?」


 そこには、バギーのエンジンがおいてあるのだが、内部から突起物が飛び出たりしていて、シュウウウと言う音を立てて動いている。


「アラタしゃん、説明しますぅ、ここから魔素を吸引して、この部分で蓄積して、ここの部分でその溜まった魔素を爆発させて、ここの部分でそのエネルギーを動力へ変換させるんですぅ」


 ジーウはエンジンの外側から指で指して説明したが、ざっとしていて良く分からなかったが‥まあ、俺は専門的な事は分からなくても、動けば良いと思っているので問題ない。


「そう‥で、速度はだせそうなの?」

「うむ。アラタ殿が持って来たこのエンジンを言う物は、ガソリンと言われる物を燃焼、爆発させて動力に変える物じゃ、それを、この世界には無限にある魔素に置き換えただけじゃが、ジーウのお陰でその魔素を集めて蓄積させる事も出来たのじゃ、今までその爆発をエネルギーに変える術を知らなかったからよく暴発させていたんじゃよ」

「なるほど」

「そこでじゃ、儂らドワーフの技術と、ジーウの研究成果と、アラタ殿の世界の化学と言う物のお陰で、全く同じ‥いや、上手く扱えばそれ以上の動力を得ることが可能じゃわい。勿論、もう少し煮詰めてみないとこれ以上のパワーに耐えれるかも分からんがな‥」


 何とか、ここに3つの技術で魔力増幅装置が完成した。


『アラタ、フェルナンドさん達の魔力は備わった。ゲート繋いで貰ってもいいか?』

 その時、クラウスからの遠距離念話が届いた。

『はいはい。』


 俺は、ゲートを繋いで、クラウス、マイティ、フェルナンド、カレンをこちらに移動させた。


「ふぅ、本当に魔法が使えるようになったぜ」

 フェルナンドはそう言って、手の平に火を作って遊んでいた。


「フェルナンドよ、火で遊ぶんじゃない、ここは火器厳禁じゃ!ガソリンに引火したらどうするんじゃ、馬鹿もん」

「ああ‥すまんすまん‥」


 イグルートにフェルナンドは怒られていた。


「お?それは‥まさか!完成したのか?」

「ふむ、まだ試作品じゃがな」

 フェルナンドは、そのエンジンをジロジロと見ている。


「そうだなぁ‥名前どうしよっかなぁ」

 ジーウは、そう言って目を瞑って考えている。


「マナードリアクターってのはどお?」

「おおおお!アラタしゃん!流石ですぅ!かっこいい名前それにする!」


 さくっとその名前が出て来たのは、そう、アイアンマンが胸につけている増幅装置が、アークリアクターってやつだからそれを、もじっただけの名前だ。


「イグ、これって研究すれば、もっと動力得られる?例えば何倍も大きいバギーを動かすことが出来るとか?」

「そんなデカいもん作ってどうするつもりなんじゃ?出来たとしても相当な魔素を蓄積させる機関と、動かすための魔力が必要じゃぞ?このエンジンも魔素を吸収しているとはいえ、動かすには多少の魔力は必要じゃからな」


 俺は、ほら、男のロマンを叶えたいと思っただけだ。

 勿論、目標はガ〇ダム、無機質なロボットに乗ってみたいんだよね。


「heiイグ、これでパワードスーツって出来そうか?」

「なんじゃ?ぱわーど?」

「あ、ああ‥えっと、力を倍以上にする鎧と言えばいいか?」

「ふむ。つまり、バギーを身体に張り付けて、エンジンの力を筋力に変えたいと言う訳じゃな?」

「物分かり早いね~流石イグ、ハッハッハ」


 フェルナンドはイグとそう会話していた。

 そうだ、俺も、ようはアイアンマンのようなパワードスーツが作りたいんだ。

 パワードスーツなら、地球でもあるわけだからこの世界でも非現実的ではないわけだ。


「フェルナンドさん、俺もそれ考えていたんです」

「oh!アラタ!お前もか!」

「ええ!出来る事ならアイアンマンになって空飛びたいです!」

「お前ら‥空飛ぶってそんなん無理に決まっておろう‥」


 新とフェルナンドが、目をキラキラさせて話の横で、イグルートは腕を組み呆れていた。


 とりあえず、まずは魔力で動くバギーは完成しそうで。

 そのバギーの名前は、マナードバギーと銘々することにしたのだった。

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