第49話 新クランハウス、スイーツ屋開店。

 俺達は、とうとう王都のイセ・スイーツ店を開店する事となった。


 クラン工房も、パウロさんに聞いてホルンの倉庫を引き払い、引っ越して来た。


 このクランハウスに住むのは、俺、瑞希、クラウス、レベッカ、マイティ、マルク、クレンシア、フェルナンド、カレン、イグルート、エグバート、オグート、ミーナ、カゼル、リック、リーナ、マリルレット、レナータ、ダリア。


 計19人とクイン一匹だ。


 相部屋になってもらうのは、ミーナ一家、フェルナンド2人、ドワーフトリオが一部屋に纏まって貰って、後は、人が増えるまでは1人部屋で割り振った。


 そして、店内は、テーブル数10で席数40、カウンター10席ある。

 今回は、俺が地球から冷凍庫とバニラアイスを持ち込んでいて、パンケーキの上にアイスを乗せたやつも、1.5倍の値段、銀貨3枚で出してみることにした。


 カゼルさんが受け持つ、雑貨屋もそこそこの広さがあり、この日の為に石鹸とリンスインシャンプーも沢山置いてある。

 そして、高級志向の人の為にミーナさんにあげたヘアマスクが置いてあるのだが‥なんと、金貨5枚での売値になっていた。


 ミーナさんの髪が、サラサラで光沢を放っているので開店準備の時も、裕福層の女性に声を掛けられて宣伝もしていたそうだ。


 ただ‥あのヘアマスクトリートメントが日本円で言う5万円で売っているわけだが、ミーナさんは絶対売れると豪語していたが、本当に売れるのだろうか‥


 そして、朝10時に開店の時間を迎えた。


 すでに行列が出来ており、そこには、パウロさんが兵士を連れて、王族の場所取りまでしていた。


 門を開けて開店した。

 冒険者チームも手伝いに入っていたのだが、目まぐるしい忙しさだった。


 交代で、食事も2階の応接間で摂ってはいたが、殆ど休憩などはしていなかった。


 勿論、アイス乗せパンケーキは、1.5倍の値段にも関わらず、最初に売り切れてしまった。


 そして、開店から30分であのヘアマスクは売切れていた‥

 100個しか置いていなかったが、全部売れたと言う事は、それだけで金貨500枚、日本円で500万を売り上げたことになる‥

 俺は、この世界の女性を舐めていた、まさか、こんなに美に興味があったとは。


 そして、夕方18時まで、あっという間に時間は過ぎ、閉店した。

 皆、ヘトヘトだった。


「疲れた…」

「でも、相当な売上ですよ!アラタさん」


 俺がぐったりしていると、ミーナさんが今日の売上を見ながらそう言っていた。


 俺は、ミーナさんの集計に立ち会った。


 アイス乗せパンケーキが101枚、ハチミツパンケーキ236枚、フルーツパンケーキ211枚。パンケーキ屋の売上は、銀貨1197枚となった。


 一方、カゼルさんが受け持っている雑貨屋も、石鹸とシャンプーを筆頭にヘアマスク、ピーラー、ちょっとした小物なども売れて、ヘアマスクが金貨500枚、

 残りの売上が金貨40枚と銀貨8枚、銅貨1枚だった。


 両方の今日だけの売上で言うと、金貨660枚、銀貨5枚、銅貨1枚と言う、とんでもない売上を上げた。


「ヘアマスクが効いてますね…」

「ええ、言ったじゃないですか、金貨5枚でも売れるって…ふふふ」


 ミーナさんはそう言って笑った。

 商売の事になるとミーナさんは、活き活きとしている。

 俺は思った、ミーナさんに店の方は任せて置けば安泰だろうと。


「ミーナさん、俺のクランの販売の方は、全て任せますので、やりたいようにやってくださいね」

「はい、任されますわ、こんな楽しい商売出来て本当に感謝してますわ。この世界に来たばかりの、アラタさんを連れて来てくれたリックとリーナにご褒美を上げたいくらいです、うふふふ」


 ミーナさんは、ニコリと笑いそう言ってくれた。


 ◇


 それから1週間が経って、やっと店舗も落ち着いてきた。


 ホルンのシルビアさんにも、連絡を毎日念話でとっていたが、王都からの客が減って売り上げは少し下がっていると言ってたが、それでも、黒字なので大丈夫だと言っていた。


 勿論、俺は、二日に一度、地球に仕入れも行っていた。

 山口総合物産の社長は、俺が頻繁に大量仕入れに来てくれているので、メーカーから感謝されてると言っていた。


「アラタさん、冒険者メンバーの方々、もう、私達に任せて本業に戻っても良いですよ」

「うん、大分落ち着きましたね。わかりました、俺達は明日からは本業に戻りますので後は頼みます」

「はい」


 俺はミーナさんにそう言って、この後の店舗の事は任せるのだった。


 閉店して、カチャっと入って来た人がいた。

「あ、もう閉店なんですが…」


 ミーナさんがそう言うと、そこに立っていたのは、フェリオール国、冒険者ギルド長のベンザさんだった。



「いやいや、客じゃなくて済まんのぅ、アラタはおるかい?」

「ああ、ベンザさん」

「お、おったおった、お主に頼みたいことがあるって聞いておらんかえ?」

「あ、そう言えばそんなこと言ってましたね」


 ベンザさんを椅子に座らせて、俺も対面に座った。


「まず最初に、あのホルンで最近登録したお主の仲間二人。ありゃ、地球人じゃろ?」

「はい、そうですけど…」

「相当強い冒険者が現れたと評判じゃったからすぐに耳に入ったわい」

「まさか…何かやらかしましたかね?…」

「いやいや、強いのは大歓迎じゃ、欲しい魔物の素材も集まるしな。それで、お前に頼みと言うのはじゃ、5人の若手冒険者をお前のクランで鍛えてやってくれないかと思ってな」

「若手の冒険者ですか…」


 ベンザがそう言った若手の冒険者とは、リーダーをベンザさんの孫が務めるパーティとの事だった。


 ベンザの孫のドワーフの戦士、キーン。

 魔法師エルフ、ネイ。

 神聖魔法師、シフル。

 斥候を得意とする半獣人、カリン。

 異国の剣術を使うと言う剣士、キリュウ。


 この5人だと言う。


「でも、なんで俺の所に?」

「身内を強いクランに入れるのは当然じゃろ?そのほうが生きる確率があがるからのぅ…実は、すでに外に連れて来ておるんじゃよ」

「え?外に?」


 外に出ると、クランハウスの庭にその5人はいた。


 新とベンザが、外に姿を現すと急に身なりを正して、整列した。

「こいつらじゃ」

「はあ…」


 俺とベンザが出て行ったのを見て、瑞希やレベッカなども出て来た。


「あれ?シフルじゃないの?」

「え?レベッカ姉さん?」


 レベッカとシフルは、なにやら知り合いだったようだ。

「レベッカ?」

「あ…アラタさん、この子は同じ神聖教会で孤児で育った子なんですよ」

「あ、そうなんだ」


 二人は再会を喜んでいた時、クラウスも店から出て来た。

「おいアラタ…」

「クー兄!?」

「へ?」


 すると、半獣人の女の子はクラウスに駆け寄った。

「え?お前なんでここにいるんだ?」

「クー兄と一緒で冒険者になったのよ!まさかここで会えるなんて」

「で…それは良いがここで何してんだ?」


 世間は狭い物で、ここにも知り合いがいたようだった。


「なんじゃ、ほとんど身内ではないか…これで、アラタも加入させる理由も増えたようなもんじゃな、ふぉふぉふぉ」

「いやいや…そんな急に言われても…」

「でも、あれじゃ、すでにお主の所は、冒険者所属の人間が多くなって来ておるから、パーティも組みづらかろう?」


 そう言ってその理由を、ベンザは語った。


 パーティと言うのは大体、3~8人で行動する物で、それ以上増えて行動すると、連携もしずらいのと分け前も減るからだ。逆に少ないと死ぬ確率は格段に上がる。

 ベストなのは8人だと言った。

 それは、タンク、サブタンクor剣士、回復2、魔法2、斥候1、遊撃1。

 これは、ゲームでもこんな感じにパーティを組んでいるが、やはりそれは連携しやすいからだろう。


 なるほどと俺は頷いた。

 今、店は落ち着いたし、仲間が増える分は問題ないか‥

 なんか、レベッカもクラウスも嬉しそうだしな。


「わかりました、引き受けましょう」

「おお!良かった、キーン!ちゃんと、アラタの言う事を聞いて、儂のような名を馳せる冒険者になるのじゃぞ!ふぉふぉ」

「はい、爺ちゃん」


 爺ちゃんと孫‥なんだろうが、身長も体形もほぼ一緒、髭もほぼ一緒、若干シワがないくらいでよくわからない…イグ達もそうだが、ドワーフは見分けするのは難しい…


 とりあえず、加入させるのは別に構わないし、クランハウスにはまだ部屋はあるので、この5人の加入を認めたのだった。

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