第48話 クランハウス引っ越し。

 フェルナンド、カレンを地球に連れてきた新は、次の日二人の冒険者登録を行うために、ギルドへ連れて行った。


 二人は、冒険者登録をした後、楽しそうだからと言って俺に最低限度の武器と防具のお下がりと、アサルトライフル、ハンドガンを持って、Eランクのウルフ討伐の依頼を受けていた。


「ほんとに、依頼受けて外に行くんですか?」

「ああ、この世界にも慣れたいし、異世界、面白そうだからなハッハッハ!それに、この世界なら、思う存分暴れても良いって事だしな!」

「yes!、ミー達はスーパーマンなんでしょ?それを試してみたい!ドラゴンでも何でも掛かって来い!ウフフ」


 二人ともやる気満々だよ‥ドラゴンとか出て来たら町ごと無くなるでしょうよ‥

 まあ、Eランクのウルフくらいなら、この人達に掛かれば‥ウルフの方が可哀そうだ。


「じゃあ、俺は、いろいろと引っ越しとかの準備があるので、夜は、あの宿から動かないでくださいね!」

「「OK!」」


 俺は、二人を置いて準備に取り掛かることにした。


 ◇


 まず、俺は、また地球に行って、新居となる王都のクランハウスに持ち込む家具をお馴染みの、お値段以上の物を揃えているナトリに向かい、ベッドを数十台、店舗に置くテーブルや椅子などを購入し、勿論キッチン用具なども買い込んだ。


 そして、引っ越し業者にお願いして直ぐに、家に運び込んでもらうつもりだ。

 盗まれる物もないし、骨董品を置いていた場所は、今は何もないのでいつでも搬入は可能なのである。


 この家も、もうすぐ引っ越しになるので、こっちに来た時はいろいろと整理しないといけないなと、俺は思っていた。


 そうこうしている内に、荷物は届いた。


 購入した物が、トラックから降ろされ、家の中へ搬入されていく。

 最後に現金で引っ越し業者に支払いをして、鍵を閉めて俺は一つずつマジックボックスへ入れていく。


 そして、ホルンのクランハウスへ戻り、皆を連れ、王都のクランハウスへ向かった。


 ミーナさんが現場監督になり、イグルート達と工事を行っていた。

 1階は二つの店舗。2階は、クラン事務所、応接間、残りは客部屋。

 それから、3階に、俺がイグルートにあるお願いをして作ってもらう部屋がある、それは風呂だ。


 この世界は湯浴び部屋は、貯めたお湯を浴びるだけなので、これを男性用、女性用で2つの少し広めの風呂部屋を用意して、湯舟とシャワーも設置するようにお願いしたのだ。


 1~3階は、イグルート達が、部屋を壊して、俺とミーナさんが書いた内装の図面通りに工事を進められている。


 俺達は、2~5階の各部屋にベッドなどの家具を設置して回った。


 それは夜まで続いたが、瑞希と俺は皆にカレーを作って振舞った。


 ◇


 次の日。

 昼にはもう店舗の方は、殆ど出来上がっていた。

 ドワーフの器用さは凄いと思った。


 イグ達は、一度、図面を見ただけで、どんどん作業を進めていく。

 風呂も見たが、3つの部屋を2つの風呂部屋にして、大きめの湯舟とシャワーを設置していた。


 エグバートさんが担当しており、シャワーをよく見ると、水の魔石魔道具と、火の魔石魔道具が埋め込まれていた。これで、調整してお湯が出る仕組みになっている。

 魔石の寿命は大体一ヵ月なので、取り換えは必要だが、電気代だと思えば安いものだ。


 そして驚いたのは、この世界にエアコンが存在したのだ。

 イグが設置しているのを見て、聞いてみたのだが。


 氷の魔石魔道具、火の魔石魔道具、風の魔石魔道具で、調整してエアコンのような風を送り出すことが出来るようだった。

 しかし、3つの魔道具を消費するため、燃費は良くないと言っていた‥地球でも電気代が一番かかるのはエアコンであり、そこは一緒だった。


 トイレは勿論、前も言ったが水洗だ。こうやって見ると、この世界は便利な物もあるのに気づいた。



 そして、俺は、厨房になる部分に地球から持って来た、洗濯機、冷蔵庫も設置して、エグバートさんが、コンセント用に開発してくれた、雷の魔石魔道具を取り付け動作確認もやった。


 これで、殆ど完成だった。


 後は、看板とイセ・スイーツ王都店としてオープンのための準備だけだ。


 ◇


 そして、更に次の日。

 クランハウスは完成していた。


 一階の3分の2はイセ・スイーツ。残りの3分の1は、ディファレント・アースの雑貨店になった。


 雑貨店には、すでにミーナさんの夫のカゼルさんが、リックとリーナと一緒に石鹸を切って紙に包んでいた。

 ここには、石鹸、シャンプーは勿論の事、俺達がダンジョンなどで拾った物で使わない物と、イグ達に頼んで作って貰う生活便利品を置くつもりだ。


 最初にイグ達に依頼した品は、最近では100キンでも売っている、どの家庭でも重宝するピーラーだ。


 この世界では、根菜が多いからこれは重宝するはずだ。

 ピーラーはステンレス製で錆びにくい物なのだが、最初イグに見せたら驚いていた。


 この世界に、ステンレスは無く、大体家庭で使っている刃物は、普通の鉄製なので、錆びるのだ。

 ステンレス鋼を分析して、今度クロム鋼を取りに行ってくるとか言ってた。


 なんにせよ、これで、明日にでも開店出来そうだ。


 今日は、ミーナさんは店にいないと言う事は、根っからの商売人だし、営業にでも行っているのだろう。


 ◇


 一方、外人二人はと言うと。


「hey!猫嬢ちゃん、これじゃあ、ぬるいから、Cランクの昇級試験の依頼もらえないか?」

「え!昨日、Dランクの依頼で昇級達成したばかりじゃないですか?」

「ミー達には、簡単すぎてもっと報酬と強い魔物がいいんだけど?」

「お二人はお強いんですね…じゃあ、グレンデルの討伐か、スワンプドラゴンの捕獲、それから、夜に出現するエルダーグレムリンの討伐がありますが…」

「一番強そうな奴にしてくれ」


 受付嬢は、少し考えて。


「じゃあ、スワンプドラゴンの捕獲が難しいかもしれませんので、それをお願いして良いですか?1匹で良いので」

「ドラゴンって事は相当強そうだな!」

「お、いえいえ、名前にドラゴンって付いていますが、実際は足の6本ある大きなクロコダイルに似た魔物で、通称、沼ドラって呼んでます」


 スワンプドラゴン、通称、沼ドラ。

 沼に多く生息し、頭に角があり、ドラゴンのように厳ついからその名がついた魔物。


 皮が厚く、防具などにも重宝されているのだが、それよりも乗り物として使い魔にする方が多く使われる、軍でも利用されているくらい素早く移動でき、防御にも優れていると言う。


「殺しちゃダメって事か…」

「はい、捕獲して門の近くの冒険者ギルドの倉庫まで連れて来てほしいのです、もし、殺しちゃった場合でも皮が高くで売れるのですが、今回の依頼は、軍に利用するための沼ドラ捕獲が対象なので、捕獲でお願いします」

「ほう‥わかった」

「素早く、凶暴な面もあるので気を付けてくださいね」


 二人は、ギルドからその場所を聞いて、その沼地へ向かった。


 ◇


 ホルンから2時間後その沼に着いた。


「お、あれか?」

「みたいね。ワニと言うよりは、恐竜で言うトリケラトプスみたいな姿ね」

「お、カレンその例えぴったりだな、ハッハッハ」


 そっと近づき、群れからはぐれている1匹の背中に飛び乗ると、それに気づいて暴れようとする沼ドラ。


「暴れんなって!」

 ボゴッ!


 フェルナンドは、堅い皮膚の上から力一杯、頭を殴りつけた。

 すると、ぐったりして動かなくなった。


「ダー…殺しちゃったんじゃない?」

「ど…どうだろ…」


 身体に耳をつけると、鼓動が聞こえたので。

 フェルナンドは、カレンに微笑んで親指を立てた。


「ミーもそれやろっと!」


 ボゴッ、ガズッ!


 ◇


 3時間後。


「え…この沼ドラ気絶してるのか?」


 冒険者ギルドの倉庫番の職員は、4匹の気絶している沼ドラを目にしてそう言った。


「ああ、依頼通りで間違いないか?」

「あ…ああ…ちゃんと確認した、お前ら凄いな…どうやってここまで運んだんだ?」

「あ?引きずって来たんだが…まさか、傷が付くとダメって奴だったのか?」

「あ…いや、そこじゃないんだが…まあ、大丈夫だ」


 ギルド職員は、重い沼ドラを1人2匹ずつ、引きずって来たと言う言葉に首を傾げながら、引きつった顔でそう言っていた。


 フェルナンド達が冒険者ギルドへ報告に去った後。


「この沼ドラ、気絶してるのか?どうやって?」

「さあ、知らん、それよりこんな重い奴を4匹も、どうやってここまで運んだか気になるんだが?」


 そう言って、ギルド職員は不思議そうにしていた。


 ◇


「フェルナンドさん!カレンさん、いたいた」

 フェルナンド、カレンの帰りを新は待っていた。


「アラタ、俺達もお前達と同じ、冒険者ランクCになって来たぜ!ハッハッハ」

「え…こちらに来て3日しか経ってないんですけど?…」

「依頼がぬるすぎて、上のやつを受けさせろって言ってな…たった今、Cになって来た所だ」

「す…凄いですね…」

「この世界素晴らしいわぁ、思い通り以上に体が動くし、力も最高!魔法なんて出来なくてたって、楽しいわ、うふふ」


 新は、引きつった顔でフェルナンドとカレンを見ていた。


「で?どうしたんだ?」

「あ、実は王都への引っ越しの準備が出来たんで呼びに来たんです」

「そうか」


 新は、フェルナンドとカレンを連れてゲートで王都まで移動したのだった。

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