第44話 再びボルボンダンジョン2
俺達は、次の日朝、ダンジョンの前に来ていた。
「君達は‥ディファレント・アースだったか。熱心だな、今回も頑張れよ」
冒険者ギルド職員はそう言って応援してくれていた。
ダンジョンの入り口にある、ギルドが作った帰還魔法陣の横に、古代ルーンで描かれた場所があった。
ギルドの職員は、そこで転送石に魔力を通せば、その階層へ行けると言っていたので、ルーン文字の魔法陣の中に入って20階層石に魔力を通すと、俺達は光に包まれ一瞬で20階層のセーフエリアへ着いた。
「おお、こんな感じで転送するんだね」
「俺も使ったのは初めてだ」
新とクラウスはそう呟いた。
21階層への階段を下りて行く一行。
そこはまだ蟲の迷宮だった。
デスキートと呼ばれる大きな蚊、そしてポイズンモス、フレイムモスと言った大きな蛾の魔物。他にも、ムカデやクワガタのような魔物もいた。
「もう‥ここも虫?どうして虫ばっかり出るのよ‥」
瑞希は戦斧の面の部分で飛んでいたデスキートを叩き落としていた。
デスキートは地面に叩きつけられ絶命し、消滅した。
新は、火炎放射の魔法で焼いて処理し、マルクは矢を魔力で曲げながら命中させていたが、矢にも限りがあるので放った矢は回収しながら戦っていた。
マイティ、クラウスは剣で斬ろうとするが、中々当たりが悪かったり当たらない事もあったが、瑞希は戦斧の広い面の部分で叩いているため、確実に叩き潰していた。
「ミズキさん‥意外とその攻撃の方が効率良いんじゃないですか?」
「え?そお?」
マルクの言葉に瑞希は少し納得してハエ叩きのように戦斧を振り回していた。
クインが虫を排除しながら、先頭を歩いて、索敵と階段の位置を探りながら進んで行く。
流石に、この辺になると冒険者も疎ら、殆ど出くわすこともなかったが、金属音も聞こえたので、いることはいるのだろうと思った。
そして、時間はかかったが29階層まで下りた。
ある場所で、ギルドが設置したと思われる帰還用の魔法陣を見つけた。
そこに、傷ついた冒険者が6人座っていた。
俺達が、そこへ顔を出した瞬間、3人が身構える。
「な‥なんだ、冒険者か‥」
そう言って、その男は剣を床に落とした。
よく見ると6人とも装備もボロボロになっていた。
すぐにレベッカが
「す‥すまない‥」
このパーティのヒーラーが、一人の倒れている瀕死の冒険者を治療していたが、暫くすると動かなくなり死体となった、肉体は黒い霧に包まれダンジョンの床へ吸収され消えて行った。
その冒険者パーティは、涙を流していた。
聞くと、この魔法陣は壊れているらしく機能しなかったとの事だった。
ギルドも魔素の少ない比較的安全な、迷宮の変わらない場所へ魔法陣を描いていると言っていたが、よく見ると何かにえぐられて魔法陣が欠けていた。
それが原因でこの魔法陣は機能を失っているらしい。
「あんた達、有難う‥俺達はちょっと無理しすぎた‥これ以上は迷惑はかけられないのだが、次の魔法陣の所まで連れて行って貰えないだろうか?頼む‥」
リーダーらしき男がそう言っていた。
この人数を守りながら移動することが危険なのはわかっていたが、新は頷き、他の皆も頷いていた。
「ふむ、我の記憶が正しければ、30階層のそう遠くない場所に魔法陣があったはず、ふっー」
「え?本当?」
「じゃあ、そこまで連れて行けば大丈夫なんじゃない?」
クインの言葉に、俺と瑞希は少し微笑んでそう言った。
暫く、この冒険者達が回復するのを待って、俺達は行動を起こした。
レベッカはヒールで消費した魔力を、魔力ポーションを飲んで回復させていた。
魔力ポーションは、体力を回復するポーションより、結構高価なのだ。
万が一のために、買って俺が持たせていたやつだった。
「俺達のために済まない‥地上に帰ったら弁償する」
そう言った男は、30階層への道のりでいろいろと話をした。
この人達は、Bランクのクラン【シルバータイド】と言った。
ダンジョンには7人で来たらしいが、さっきの亡くなった人の前に、一人死亡したらしい、何度も潜っていたダンジョンだったが、今日は無理して守護者の部屋まで行こうと思って、こういう結果になったらしい。
一つの油断が一気に体制を逆転させる、帰ろうにも帰還する場所を記録しないといけない、更に通ってきた通路にも、また魔物が沸くのだ、それがダンジョンだ。
新達は、ダンジョンとは死と隣り合わせと言う事を、再度思い知らされた感だった。
クインの誘導のお陰で、無事に機能している帰還魔法陣へ辿り着くことが出来た。
「有難う‥この恩はいつか返す。ディファレントアース、感謝とご武運を祈る」
そう言って、クラン、シルバータイドの5人は地上へ戻っていった。
「ふむ、ダンジョンではよくある光景だ、明日は我が身だと心に止めておくのだ、ふー」
クインがそう言って、俺達は無言で頷き歩き出した。
そして、俺達は大きな守護者部屋の扉の前に来た。
「やっと、着いたね」
新は、溜息をついてそう言った。
「なんか、ここまでが虫だったから、ボスも虫なんでしょうね‥もう、うんざり‥」
瑞希もそう言って溜息をついていた。
クインが、素早い蟲が守護者だと言うので、俺達は、銃器も準備してクラウスが扉をあけて中に入った。
すると、黒い霧に包まれ現れたのは‥
「え!?無理無理無理無理!!」
「俺もこいつは、嫌だ‥」
瑞希が怯えた後に、俺もそいつを見て後ずさった。
黒いのと、茶色い大きな虫が2匹。
そこに現れたのは、【ジャイアント・ブラック・コックロウチ】、【ジャイアント・チャバネ・コックロウチ】と鑑定では出た。
つまり‥デカいGだ!
「ん?アラタとミズキはこの魔物知ってるのか?」
「知ってると言うか‥地球にとんでもなくいると言うか‥」
クラウスの問いに、そう新は答えた。
「ふむ。ツヨシも驚いていたが‥容赦なく斬りかかっていたが。ふー」
クインはそう言っていたが‥親父は、普通に新聞紙丸めて叩いていたからな‥
俺は、叩いた後を処理するのが嫌いで、ゴキジェットを使っていたが。
それにしても、なんだよあれ‥
触覚が10本もあるぞ。
タタタタタタン!
カサカサカサ‥
開幕クラウスが、アサルトライフルで撃ったが、デカいのに素早い動きで避けた。
「ふむ。やはり素早いな。ふっふー」
クインも斬撃魔法を繰り出すが、なかなか当たらない。
俺達も気を取り直して、俺、瑞希がミニガンを持ってぶっ放すが、カサカサと素早い動きで捉えることができない。
「素早すぎて、僕の弓じゃおえない!」
マルクも弓を構えるのを止めて、俺の渡したアサルトライフルに切り替えた。
G2匹は、カサカサと天井や壁を走り廻り、俺達の銃撃が躱されていく。
グラックGが、なにやら粘液を飛ばして来て、マイティが盾をとっさに構えてそれを受けた。
ねちょっと盾に着いた粘液が垂れて床に落ちる。
「ちょっと‥なにこれ‥」
素早い動きで、動いては粘液を飛ばしてくる。
「ふむ、弱点は触覚だぞ、あれで、距離を測っておるのだ、ふー」
そうクインは言っているが、全く当たる気配がない。
そうこうしているうちに、粘液攻撃で、マルクと瑞希が捕まってしまった。
「ちょ‥臭い‥何よこれ!剥がれない!」
このG達は、全員を粘液で張り付けにした後に、ゆっくりと捕食する気なのだろう。
他の攻撃はしてこない。
ゴキブリ‥弱い物はなんだ‥殺虫スプレーか?いや、そんなものはないし、魔法で作ろうにも、あれが何で出来ているのか知らないから無理だ。
‥あ!よし、あれだ!
「クイン、クラウス、マイティ!魔法を使うから時間を稼いでくれ」
「なんでも良いから早くして!新ぁ!」
俺は、魔法を展開する。
すると、どんどん部屋の温度が下がって行く。
そう、冷凍庫をイメージし、室内の温度をぐんぐんと下げていっているのだ。
Gは、俺に粘液を飛ばして来たが、マイティがそれを盾で受けるも、もう一匹の粘液で新の前で足を捕られて動けなくなった。
「くそっ!」
「マイティ、すまない、もう少し!」
新達の吐く息が白くなってきた時、Gの動きが鈍くなってきた。
クインはチャバネGの触覚を切り落とすと、完全に動きが鈍くなり、粘膜で捉えられている瑞希は力でミニガンをそちらに向けて撃った。
「消えてなくなれぇ!!」
キュルルルルウウ‥‥ズダダダダダーーーーーーーーー
チャバネGはハチの巣になり、悪臭のする血を流しながら消滅した。
「駆除完了!よし、後一匹!」
すでに、この部屋の温度は0度を下回り、壁に霜が付いてきている。
レベッカはマイティの足に付着した粘膜を剥がそうと、火魔法を片手に焼いているが、なかなか燃えづらく剥がれない。
クインがブラックGの触覚を3本斬り落とすことに成功し、動きが更に鈍って行く。
「よし!アラタもう勝ったも同然だな、それ以上やると俺達まで凍えるぞ‥うう、さぶ‥」
クラウスがそう言って身震いしたので、俺は温度を下げるのを止めて、次に大きな氷柱の矢を作り出しGへ放った。
Gの胴体を捉えて突き刺さり、壁に貼り付けにしたが、まだ動いている。
「ふむ。勝ったな。ふー」
張り付けになったGへ、皆の銃器と、クインの斬撃で総攻撃をかけGは消滅した。
「ある意味‥強かったな‥」
俺は、そう呟いた。
「あれって、冷気に弱いんですね、アラタさんよく気付きましたね」
マイティがそう言った。
「ああ‥あれは地球でも、湿った暖かい場所にいるんだ、そして冷気に弱い事も分かっているんだ」
「ほんとに‥恐ろしいわね、最初の出現した時の、あの見てるか見てないかわからないあの視線‥ぞっとする‥ああ、考えただけで気持ち悪‥」
瑞希がそう言って身震いした。
Gが消滅した場所には、大きな魔石が2個と、触覚が20本、羽が8枚、30階層転移石1個が落ちていた。
「あれ‥だれが回収するの?」
瑞希が俺にそう言った。
「俺拾いたくないぞ?」
「なんだなんだ?こんなもんにビビってるのか?」
クラウスはそう言って、触覚を集めて拾った。
「こんな、大きなのは初めてだが、こいつの触覚はいろんな物に使えるんだぞ?」
「「え!?それ使うの?‥」」
俺と瑞希は、同時にそう言った。
「何だよ‥お前ら‥高級品なんだぞ?なかなか捕まえられないしな。」
「ち、因みに、何に使われてるの?」
「代表的なのは、女性のドレスとか?」
「え‥‥まじですか‥」
瑞希は、クラウスのその言葉で、この世界のドレスは絶対に着ないと誓ったのだった。
クラウスは俺に触覚を持って来たが、俺は嫌そうな顔をしてマジックボックスを開いて投げ込んでもらった。
そして、宝箱の罠を解除して、中身を見る。
【コクロウチブーツ】
【魔杖アルカナアリア】
【マジックバッグ】空間魔法袋(中)
他には、金塊30個、魔石(中)30個、宝石特大1個、宝石(中)30個、宝石(小)50個が入っていた。
「うおおお!これは当たりじゃないか?さすが30階層、苦労しただけあるぜ!」
「どれどれ?」
クラウスが鑑定して叫んでいたので、俺はそれを覗いて鑑定した。
「コ‥コクロウチ‥ブーツ‥」
「やめて。それは私は嫌よ」
俺がそのブーツを見て呟くと、瑞希が間髪入れずそう言った。
「いや、それも凄いと思うが、魔が付いているこの杖だ」
「おおおお!マジックは3つだけど、めちゃくちゃ良いじゃないか!」
クラウスが見せた装飾が豪華なその杖は、魔杖とついていた。
「魔杖アルカナアリアって言うんだ‥これは、俺かレベッカだな‥でも、俺の魔力は膨大にあるから、レベッカに渡すよ」
「え?良いんですか?」
「うん、まあ、俺は魔法、剣、銃も使うしね」
そう言って、魔杖アルカナアリアはレベッカに渡した。
「さて、そのブーツは誰にする?」
俺がそう言うと。
「マルクかマイティに渡してくれ、俺は獣人だから元々敏捷はあるからな!アラタ、ミズキは、何故かわからんが、嫌なんだろ?」
俺と瑞希は、うんうんと首を縦に振った。
ブーツの行き先は、マイティがマルクに譲った。
「この袋は、凄いぞマジックボックスと同じ効果の袋だぜ!」
「それは、一応俺が預かっておこう、店関係で使えるかもしれないし、二手に分かれることになった時にも重宝しそうだしね」
皆も頷き、クラウスがマジックバッグを俺に渡した。
金塊なども回収して、俺達は奥のセーフエリアへ向かったのだった。
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