第35話 エルフの里【エルファシル】
俺達は、妖精の森、ヘイムベーラ大森林へ足を踏み入れ。
エルフの里、エルファシルへ着いた。
エルフの兵士に案内されて、里の中を歩いて行く。
沢山のエルフが生活していた。
俺達を見て、ざわざわと話声も聞こえた。
木々に囲まれた住まいを抜け、奥に宮殿のような建物があった。
そこへ案内されて、大きな建物の一つの広い部屋へ通された。
この建物は全てが石造りで頑丈な作りだったが、中は木を壁に貼っているのだろうか、ログハウスのような作りになっていた。
机や椅子も、木を加工して作ったお洒落な作りの物だった。
「ここで、暫し待て」
そう言って兵士は何処かへ行ってしまった。
暫く待つと、綺麗な女性と少女、それから付き添いの兵士が二人入って来た。
「ごめんなさい、待たせたわね」
その綺麗な女性エルフがそう言って、隣の少女は軽く会釈した。
「あ‥あのエウロラさんですか?」
「はい、私がエウロラですよ、あなたがアラタね。そして、クインもいたのね、久しいわね」
「ふむ、ふー」
俺をじっと固い眼差しで見ている。
「なるほど、大きくなりましたね」
「はい…えっと…」
「二人とも外してもらえるかしら?」
エウロラは、付き添いの兵士にそう言うと、控えていた兵士は一礼して出て行った。
兵士が出て行って、暫く無言で俺をじっと見ている。
「‥‥‥」
「あの‥」
「そろそろ、良いかしら」
「え?」
「アラターーーー!!」
がばっと母エウロラは俺に抱き着いた。
「ぇ‥」
「ほんっとに大きくなったわね。いつかこの世界に来ると思っていたわ。よしよし。」
クラウスや皆も、エウロラのいきなりの変わりようにちょっと引いていた。
「母さん?‥」
「そうよ!母さんよ!」
エウロラは抱き着いたまま、新に頬擦りしている。
「えっと、聞きたい事が山ほどあるんですけど‥」
「どうして、ツヨシとあなたが地球に戻ってしまったか?かな?」
「う、うん…」
エウロラは新から離れた。
「それはね‥」
「それは‥?」
‥‥‥‥‥
‥‥‥
「不倫だったからよ、うふふ」
「は?」
「「「「えーーーーーーーー!」」」」
俺が一瞬、理解できない言葉を吐くと、後ろのみんながそう驚いて叫んだ。
「えっと‥それは、ど‥どどどういうことなんでしょうか?‥」
「ツヨシと会う前から私は結婚していたのよ。それで、冒険者をやったときにツヨシと出会って、あなたが生まれたのよ、うふふ」
え?何言ってるの?不倫ってなんだよ?
エウロラさん、普通に笑ってますけど…
「詳しく話してあげましょうか、私達エルフはね、人間とは違って寿命が長いから子孫を作ることにあまり興味が薄いのよ、それで、結婚していたんだけど…、私も王族、外の世界に飛び出したくって冒険者になったの」
「はあ‥」
「それでね、ツヨシと会って好きになって貴方が生まれた、以上」
エウロラは、椅子に座り、笑みを浮かべている。
「え‥いやいや、以上じゃなくて、全然詳しく説明してないですよ!で、それでどうして親父と俺は地球に帰ったんですか?」
「あーそれはね、さっきも言ったけど私は王族なのよ。だから、ツヨシとの不倫がバレて指名手配って感じでね、私のその時の旦那が、ツヨシを血眼になって探していたから、安全な地球に帰ったってわけよ」
おいおいおい‥なんか、いろいろ思っていた想像を逸脱していて、びっくりなんだけど‥って待てよ。
「それって‥俺、ここにいて身の安全はどうなるんですかね‥」
「あ、それはもう大丈夫よ。だって、その旦那は、もう、この世にいないんですもの。」
「え?この世にいないって‥亡くなったんですか?」
「そう…去年、ドレイクって魔物がこの里の結界を破って入って来てね。その時、総出で戦ったんだけど‥王族は殆どその時にね‥」
少し、エウロラは暗い顔つきになった。
「それで、もうここの王族は、私と貴方と‥この子だけになったわ」
「この子って‥」
「アラタ、貴方の妹のヴィクトリアよ」
「ぇ?」
またまた俺は絶句した。
妹?この子が?‥あ、種違いか‥いや、そこじゃない!
「こんにちは、アラタお兄様」
「や‥やあ、こんにちは‥」
俺は恐る恐る、挨拶を返した。
妹のヴィクトリアは、母エウロラ似で金髪に緑の瞳で容姿端麗。絵にかいたようなエルフだった。
「で?アラタ、ツヨシはどうしたの?一緒に来てるの?」
「いや‥親父は死んだよ、交通事故でね」
「そ‥そう‥私は愛する人を二人も亡くしたことになるのね」
エウロラは、少し俯いてそう言っていた。
「でも、貴方はこの世界に、やはり来れたのですね。良かった」
「やはり?と言うと?」
「あの魔法陣はね、古代エルフの遺伝子の魔力にしか反応しないし、作り出す事も出来ないのよ。アラタには、私の遺伝子、つまりハイエルフの遺伝子が入っているから起動したってわけよ」
ハイエルフ?ここに来るまでも、その話は出たけど‥遺伝子が普通のエルフとは違うのか?
「ツヨシは何も貴方に伝えなかったの?」
「はい、俺は、親父が死んでから、手紙を見つけてあの魔法陣の存在を知ったので‥」
「私が、アラタが大きくなったらこの世界に来れるかもって、言ったのにあの人何も言わなかったのね‥で、私が貴方のためにツヨシに持たせた
「
エウロラは、頷いた。
「あ、それはこの通り」
俺は、マジックボックスを探って、饅頭を出した。
「うふふ、ちゃんと習得したのね、それは、私の渾身の作なのよ。それ作った時、魔力切れで2日も寝込んじゃったんだから」
魔力切れで2日もね‥あ、そうだった。
「あ!あのエウロラさん、実はもう一つここに来た理由がありまして」
「こ~ら。親子なのに敬語はやめなさい。私の事は、エウロラさんじゃなくて、母さんと言いなさい」
「あ‥はい…、えっと、か‥母さん、ここに魔力の泉ってのがあるって聞いたんですけど?」
また敬語っぽくなって、ジトってエウロラに見られた。
「それ‥誰に聞いたの?」
「え?ベンザさんから‥」
「あ~の、髭ダルマが!泉の話は誰にもするなって言ったのに、全く!‥で?なんで泉に入りたいの?」
俺は、瑞希とリーナを呼んだ。
「この二人に魔力が欲しくて。こっちは、地球人で俺の同級生の瑞希、この子は、俺の従業員の娘さんで、魔力が少なくて貧血みたいなのを起こすとかで」
「アラタ‥‥」
「え?‥」
・・・・・・
・・・
「しょっぱなから、彼女連れてきたの?隅に置けないわね。それに、まさかとは思うけどその小さい子、実はあなたの‥‥」
「ぇ?‥ち!ちがーーう!幼馴染だよ、幼馴染。それにこの子は従業員の子だって!」
「うふふふ、そんなに慌てなくても、冗談よ冗談。まあ、良いわ、とりあえず、その泉には今日の夜、皆で入りましょう、そして魔力が身体に染み渡るまで3日はかかるので、それまで泊ってお行き」
「はい、わかりま‥わかった」
母よ‥冗談きついぞ‥
「それから、アラタ、あなたには、別でやらせることがあるので、後から私の部屋に来なさい。その辺の兵士に聞いたら分かるわ」
そう言って、兵士を呼んで俺達は今日から3日間泊る部屋へ案内された。
◇
兵士には、俺がエウロラの息子だと知らされ、丁重に部屋へ案内された。
そこは、大部屋で、ベッドも8人分ある所だった。
「アラタ‥なかなか衝撃的だったな。あはは!」
クラウスが俺をからかってそう言った。
「あのねぇ‥」
「でも、まさか不倫とはねぇ。新のお母さんも中々やるわねぇ、ウチのお母さんもあんな感じなのかしら?‥」
瑞希は、そう言って、自分の母の事を思い出していた。
「瑞希のお母さんは、不倫じゃないでしょ?でも‥まさか、妹までいるとはね‥2度びっくりだったなぁ‥」
「まあね」
「でも、可愛い子でしたね」
レベッカはそう微笑んで言った。
「新、お母さんとこ行かなくて良いの?後から来なさい!って言ってたじゃない?」
「ああ、そうだね、行ってくるよ」
俺は、その宮殿を歩いて、母エウロラの部屋を探す。
その辺の兵士に聞けって言っていたから、聞いてみると宮殿の3階にあると言う。
3階に向かって、兵士が二人立っている場所があった。
多分ここだな。
兵士は、俺が来ることは聞いていたのだろう、すぐに通してくれた。
すると、その部屋は、エウロラと、ヴィクトリア二人の部屋だったみたいだ。
二人とも何やら仕事をしている。
「あの‥」
「アラタ、少し待ちなさい、仕事がもう少しで終わるからその辺に座ってなさい」
俺はそう言われて、その辺のソファに腰掛けた。
みていると二人とも何かを紙に書いて巻いて封蝋をしていた。
あれは、見た事があった。スキルや魔法の
一段落したのか、エウロラは俺の所へ来て、対面に座った。
「本当に逢えて良かったわ。あれからもう20年経つのね、その後すぐにヴィクトリアを産んでそれっきり、ツヨシはどうしてるのかな?って時々思っていたの」
「親父は‥一度も母の事は何も言いませんでした‥」
するとエウロラは、豪華な筆を俺にビシっと向けた。
「敬語!親子でしょ?」
「ああ、すみませ‥あ、うん」
エウロラは頷いて微笑んだ。
「交通事故って言ってたけど、谷にでも落ちたの?」
「へ?」
「それとも‥道端でゾウって魔物に潰されたの?地球で一番大きな動物なんでしょ?」
ああ‥なんかいろいろ間違ってるけど、この世界の人には日本は想像できないか‥
「いえ、トラック‥えっと、子供を助けようと、走って来た大きな馬車に当たってと言った方が分かりやすいかな?」
「ああ、なるほど、あの人の筋力をもってしても止められなかったのね」
それは、多分この世界にいたとしてもダンプトラックは、止められないね。いや、ギリいけるのか?
「わかりました。ご冥福をお祈りしましょう‥それで、アラタをここに呼んだのは、この筆です」
「筆?」
エウロラは、筆をくるくる回していた。
「これはね、古代の秘術で作られた、魔導筆なのです」
「魔導筆?」
「これを、作ることも、使用することもハイエルフにしか出来ません、なので、私の遺伝子を持っている貴方には使用できるって事なのよ。勿論、ヴィクトリアもね」
「はあ…」
「それで、もうこの世には‥いえ、ひょっとしたら海の外にはいるかもしれませんが、少なくともこの大陸には、ハイエルフの血筋は、ここにいる3人しかいません。それで‥‥‥」
母エウロラの話は続いた。
ハイエルフ、古代の遺伝子を持った希少な種族で、それが王族を名乗って今までこのエルファシルを守って来たらしい。
あの魔法スクロールと、スキルスクロールは、ハイエルフの古代秘術で作られており、この大陸に配布されている物は全て、このエルファシルからの物だと言い、去年の、ドレイクと言う魔物に王族が母と妹を除いて、殺されてしまい、今は二人で各国への巻物を作っているのだと言った。
あの壁の魔法陣も、ハイエルフの遺伝子と魔力があったお陰で、俺は来ることが出来たのだと言う。これは、こちらの人間は地球には行けないので、地球でもこの世界でも、世界間を、1人で行き来出来るのは、俺だけと言うことなのだ。
「それで、あなたにこの筆を渡します」
「え?良いの‥そんな、大事な物」
「どうせ、私達にしか扱えませんわ。他の人が使ってもただの筆ですもの」
「確かに‥」
「それでね、貴方にはここにいる間、みっちりと古代ルーン文字と古代秘術について学んで頂きますからね」
「え‥学ぶ?」
母エウロラから、そう言われ俺は頷いた。
ここにいる期間は3日間。
魔力の泉と、俺は、ハイエルフの秘術について学ぶ事となったのだ。
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