第30話 フェリオール城。
新達は、クラン、ルミナスローズと一緒に、フェリオール王都に入った。
「やっと王都に入ったか‥」
マチルダはそう呟いた。
王都の倉庫へ、オリハルコンを下ろすとマチルダは言って、城の近くにある倉庫へ向かった。
マチルダが、馬車を飛び降り、ルミナスローズの馬車へ駆け寄り、メンバー達とオリハルコンを降ろす準備を始めた。
新達も降りたその時、そこに、見た事のある黒服を着た男性がいた。
「お?誰かと思えばアラタ殿ではございませんか?」
「あ‥あの時の‥えっと、パウロさんでしたっけ?」
「そうです、パウロです、ホルンではアンジェお嬢様の我儘を受け入れてくれてありがとうございました」
パウロは頭をそう言って頭を下げた。
「おろ?パウロさん、アラタと知り合いだったのかい?」
マチルダがこちらに気付いてそう言った。
「はい、以前にホルンに行ったことがありまして、その時に少々」
「へ~、なんだ、アラタやっぱ有名なんじゃないか」
「ん?それこそ、マチルダ殿も、お知り合いでしたか?」
「ああ、アラタは今回のスタンピードで会ったんだ。彼がいなかったら下手したら相当な被害が出ていたと思うよ」
「ほう‥そこまでの成果を上げられたのですか」
パウロとマチルダはそう話していた。
「それで、今回のスタンピードの事でアラタは城に呼ばれたらしい、私は、
このオリハルコンの報告と別件の報告があるから一緒に行こうと思ってね」
「なるほどぉ…そうでしたか?それでは、こうしておられませんな、では、オリハルコンもちゃんと搬入しましたし、私はこれで失礼しま。」
そう言って、パウロは新とマチルダに一礼して、去って行った。
俺達は、マチルダさんの用事を済ませて、一緒に城へ向かった。
門兵はすんなり通してくれた。
城の庭に馬車を停めて、馬車を降りると、そこにはパウロさんと第二王女アンジェリアが待っていた。
「アラターー!」
「あ、ああ、アンジェ‥リア様」
「ぶーーー!アンジェで良いと言ったはずなのだ」
「え?‥新、知り合いなの?」
あ、そう言えば、あの時はシルビアさんと相手したんだっけ?瑞希達はいなかったか。
「ああ、ちょっと前にね、ははは…」
「アラタ、パンケーキ食べたいのだ!」
「え!い、今?」
材料は持ってるけど‥今日はそれで来たわけじゃないんだけどな‥
パウロさんアンジェに俺がいることを伝えるために、あの時帰ったんだな‥
俺がパウロを見ると、目を逸らした。
「アンジェ、今日はとりあえず、王様に会わないといけないみたいだから、それが終わってからね」
「えー、お父様の謁見長いのだ!」
すると、奥の方から、美人な女性が歩いて来た。
「あら‥アンジェ、またパウロに我儘、言って誰かを困らせているんでしょう」
「エル姉ー!この人アラタって言って、わらわの友達なのだ!美味しい甘いお菓子作ってくれるのだ」
「ああ、ひょっとして、ホルンのお店の‥」
「は‥はい」
「アンジェったら、お菓子の噂を聞いてから、お父様に何度も懇願して仕方なくパウロを就けたのよ‥うふふ」
その、アンジェがエル姉と呼んでいた女の子は、そう言って上品に笑っていた。
「あ、
スカートを少し持ち上げ、軽く会釈したその子は、金髪で容姿端麗で上品さが際立っていた。
「新、可愛い子ね、もろにお姫様、漫画にでも出てきそう」
俺の横で瑞希がそう囁いていたが、俺は暫く見惚れてしまった。
「ねー!アラタ!お父様に会うのなら早くして、パンケーキ作るのだ!」
アンジェが俺の腕を引っ張る。
「なるほど、私がアンジェリア様を、最近、出来たホルンの店に行くと言って護衛したが‥アラタの所だったわけか」
マチルダはそう言って俺を見た。
「え?マチルダさんが護衛していたんですか?」
「ああ、クラン総出でな」
そりゃ、国の王女が三日も掛けて行くんだから当然か‥
それから、兵士が呼びに来たので、俺達とマチルダさんは謁見の間へ向かった。
沢山の兵士が、警備していて通る度に、じろっと確認されている。
それから、いくつかの扉をぬけて謁見間に案内された。
ドラ〇エなどの世界に入ったかのようだった。
アンジェとエルティア姫、パウロまでついて来ていた。
謁見の間に入ると兵士達がずらりと両側に並んでいて。
両側の先頭にいたのが、スタンピードの時に会った、軍団長レオンス・ヴァーチと、ペガサス軍団長、ユノウス・シュバインだった。
王の座には、勿論このフェリオール王国、国王アルメデオ・フォン・フェリオールが立っていた。
その隣には、サレーシャ王妃が立っていた。
マチルダさんが膝を付いて屈んだので、俺達もそれを見て同じ姿勢をした。
「面をあげてよいぞ!今回のスタンピードお主らの活躍が大きいと聞いている、そう、畏まらなくてもよいぞ」
マチルダさんが立ちあがったので、俺達も立ち上がった。
「今回の、働きはそこにいる、レオンスとユノウスから全て報告を受けている、アラタと言ったか?相当な魔法の使い手だと聞いた、一瞬で魔物の大群を焼き尽くしたと言うではないか!」
え?話が大きくなってない?‥
「それに、マチルダもさすがだな、儂が一目置くクランだけあるな、スタンピードにも参加しただけではなく、あの量のオリハルコンをちゃんと期日前に運んでくるとはな。」
「はっ、有難き、お言葉です」
「両クランに褒美を取らすゆえ、後からパウロから貰うが良い、それで‥」
「お父様!長いのだ!」
「はへ?」
そこに出てきたのは、アンジェリアだった。
「今から、そこのアラタはわらわに用があるのだ。いい加減長い話は終わらしてほしいのだ。」
アンジェの登場で、しーんとなった謁見の場。
「むむ‥そ、そうか、長いか。わかった!じゃあ、皆、解散せよ、ご苦労であった!」
そんなにも長くもなかったけど‥
アルメデオ王は、アンジェには頭があがらないと見えるな。
サレーシャ王妃は、含み笑いをしていて、エルティア姫は呆れていた。
結局、俺はアンジェに捕まり、マチルダさんは、また機会あったら会おうと約束をして帰った。瑞希達は、パウロさんが待機できる部屋へ連れて行った。
「こっちなのだ!」
アンジェに引っ張られて、厨房のような場所へ連れていかれた。
エルティア姫もついて来ている。
「そんなに美味しいのですか?そのぱんけーきってお菓子は?」
「王都のお菓子なんて、アラタのお菓子を食べたらもう食べれないのだ」
「うふふ、そんなに?」
そこには、王族のご飯を作る料理人達がいた。
「はい、どいてどいてなのだ!」
料理人達を押しのけ、アンジェはアラタは厨房のコンロがある前に連れて行った。
アラタは、ホットケーキミックスと材料を出して、作り出した。
作ること、10分で完成したのだった。
厨房の外の食堂になっている部屋には、瑞希達がパウロに案内されて座っていた。
それを見たアラタは、瑞希達、アンジェ、エルティア、パウロ、そしてそこにいた料理人4人、その場にいる人数分用意した、料理人は甘い匂いと見慣れぬパンケーキに興味津々だった。
今回はちゃんとした地球産だ。
バターもちゃんと、乗せている。
「やっぱり、アラタのぱんけーきは美味しいのだ!」
「はい、アンジェお嬢様」
「これは‥甘くて美味しい~」
エルティア姫も喜んでくれているようだ。
バタン。
「なんだ!この美味そうな匂いは?」
「あなた、ここからよ?」
入って来たのは、アルメデオ王と、サレーシャ王妃だった。
ガタッと、料理人達はフォークを置いて立ち上がった。
「ん?おお、エルにアンジェもいたか?」
「あら‥美味しそうな料理ね」
皆、アンジェリアとエルティア以外は、フォークを置いて固まっていた。
「おお、先程のアラタか、なるほど‥アンジェの用事とはこの事だったのか。ああ、皆、ゆっくり食べても構わんよ」
「アラタ‥と言ったかしら?私達にもその料理作って貰えるかしら?」
「も、勿論です」
俺は、二人の分を作ったのだった。
「美味い!!これは、王都の菓子より、全然美味いじゃないか!!」
アルメデオ王は一口食べてそう言っていた。
「ほんと‥食べたことのない優しい甘さのお菓子ね」
「母様、でしょーなのだ!」
暫く、そこで楽しくパンケーキを嗜み。
俺達は、その後、スタンピードの活躍金、金貨500枚を報酬として貰った。
そして、その日は、このフェリオール王都で宿を取り、一泊することになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます