第26話 仕入れと取引、そして訪問者。

 クラン設立を果たした俺達は、ベンザ・グリオルから魔力の泉の事を聞いた。


 休日の店へ皆を送り、俺はその足で地球へ仕入れに行くことにした。

 ホルン南門を出て、ゲンムを呼び出し祠へ行き、地球へ移動した。


 すぐに、フェルナンドさんに連絡を取った。


『hei!アラタ!久しぶりだな。どうした?』

「宝石の事で」

『oh!ツヨシの仕入れ先がわかったのか?』

「まあ、そんな感じです」

『わかった!じゃあ3時間後、○○の立体駐車場で会おう!』

「わかりました」


 携帯を切って、俺は車に乗り込む。


 車を走らせ、ホットケーキミックスの問屋へ急いだ。

 その問屋は、(株)山口総合物産と言って、いろいろな物を取り扱っていて一度来ただけでよく見てなかったが、大きな倉庫に、生活用品、食品飲料、アパレル、電化製品などあらゆるものを置いていた。


「ああ、あなたが伊勢さんですね」

「はい」

「私、社長の山口と申します。お待ちしておりました。えっと、ホットケーキミックスでしたね。こちらです」


 そのホットケーキミックスは10kgで5000円だった。

「やっす…」

「そうでしょう?頑張っていますから、しかもこれを沢山仕入れてくれると言う事で大口で買っていただけるのなら、単価4500円まで落とせますがいかがでしょうか?」

「それでお願いします。あ、それからリンス入りシャンプーと石鹸も欲しいのですがありますか?」

「勿論です」


 石鹸も凄い種類があった。

 香りが付いている物や、茶、炭、ハーブなどが陳列していた。


 リンスインシャンプーにしても、ダンボールの箱からノズルが出ていて、1.8リットルも入っている物があったが値段も3200円と格安。


「どうですか?伊勢さん」

「じゃあ、この普通の石鹸を5000個と、リンスインシャンプー1.8リットルを50箱、ホットケーキミックスは500袋とりあえず買います」


 約240万円だったが現金で支払い、山口社長はびっくりしていて、今後とも宜しくと言われた。


 そりゃあ、業者でもないのに、個人でこんなに買っちゃうわけだから驚きもするだろうなと思った。


 すぐにトラックで運んでくれると言うので、自宅まで運んで貰うことにして、一緒に付いて行った。骨董品などは先に俺はマジックボックスへ仕舞いこんでいたので、店舗はガランとしていてそこに搬入してもらった。


 業者が帰り、マジックボックスへ次々に収納して行った。


 そろそろ、3時間たって急いで、フェルナンドさんが待っている立体駐車場へ行った。


 若干遅れたが、その駐車場に着くと、普通の乗用車が指定の場所に停まっていた。

 その隣に車を停めた。


「hei!アラタ」

「あ、お久しぶりです」


 助手席に乗れとジェスチャーされたので、助手席に乗った。


「見せてくれ」

 俺は布袋に入れて来た、ボルボンダンジョン産の宝石(中)を30個と、宝石(小)数十個渡した。


 ルーペを取り出し、ひとつづつ宝石をチェックしているフェルナンド。


「これは‥凄いな。完璧だ!カレン見てみろよ」

「カレン?誰?どわああああ!」


 すると、後部座席からぬっと手が伸びてきて、俺は驚いた。

 全く気付かなかったが、後部座席に人が座っていた。

 女性だった、〇ーラに似たハーフっぽいその女性は髪をポニーテールにしていて、サングラスをして、スタイルは抜群だった一瞬モデルかと思ったくらいだ。


「ハハハ、アラタ、驚きすぎ。俺のパートナーでカレンって言うんだ」

「はあ‥カレンさん‥ですね。宜しくです」

「ハ~イ。ウフフ、宜しく」


 カレンと言う女性はサングラスを外し、宝石をじっと見ている。

 サングラス外すと益々美人さんだった。


「Beautiful!ツヨシの持って来てた、宝石に間違いないわね」

「ああ、アラタ、この最高級宝石の買取価格だが」


 俺が持って来た宝石の買取価格を、フェルナンドさんは説明した。

 宝石(小)約1カラット、100万~200万。

 宝石(中)約10カラット、1000万~2000万。

 宝石(大)約100カラット、1億~。


「とまあ、こんな感じなんだが、勿論、やっぱ需要があり、一番高く買い取るのはダイヤだ。色が入ってるのが希少になるのだが、レッドやピンクは高い。サファイヤとかにも勿論いろいろある。そして、お前が持ってくる宝石は、全く不純物も傷のない最高級品だ。この宝石の殆どが市場にはない物だ。この間、100カラットのダイヤがアメリカで26億円で落札されたのも記憶に新しいからな。最高級とはそう言う物だ。」


「26億…」


 引いてる俺に、フェルナンドさんは話を続ける。


「だから、これからの取引に関してなんだが。俺達と独占契約を結んでくれないか?」

「独占も何も、宝石を売るバイヤーなんて、フェルナンドさんしか知らないし、別に構いませんが…」

「oh!イエス!よし、決まり!ま、俺達には銃器とかを密売している事実もあるから、同罪だしな!ハッハッハ」


 あ、そうか‥そういやこの人が、捕まったら俺もそうなる可能性あったんだわ‥

 銃刀法違反に、密売‥20で犯罪者だったわ俺‥まあ、マジックボックスは絶対見つからないけど‥


「ミーはこのレッドのダイヤが良いなぁ…」

 カレンさんは、宝石を眺めてそう言っていた。


「カレン売り物だぞ」

「ダー、わかってるって」


 ダーってダーリンのダーか?この二人そう言うパートナーなのね‥


「ツヨシは小出しだったが、お前はたくさん持って来てくれた。これが今回の査定した買取価格だ」


 フェルナンドは新に計算機を見せた。

 ん?凄い桁だが‥いち、じゅう、ひゃく‥千‥万‥

 4億‥?‥4千万‥


「ああ、そうだ、日本円で4億4千万だ」


 カレンさんが、1つのジュラルミンケースをごそごそとしている。


「すまんな、アラタ、闇の取引なんで銀行振り込みは出来ない。だからこうやってケースで渡すので苦労かけるがな」


「アラタ、こっち来て」

 カレンさんが車を降りて、トランクへ回って開ける。

 ジュラルミンケースが5つ。


「ひとつのケースに1億入ってる」


 パチパチとケースをひとつずつ開けて現金を見せる。

 そして、俺の車のトランクへ運んでいく。


 最後のひとつは、調整されて4千万入っていた。

 それも一度俺に確認させて、俺の車のトランクへ運んで行った。


「これで、取引は終了だな!これからも宜しくな!」

「はい…」

「ん?だから1000万でビビんなよって前に言っただろ。ハッハッハ」


 たしかにこの間の取引でそんなこと言ってたけど…億って…

 このお金を入れたら、俺の日本での所持金は約5億になったんだけど…


「契約書はないが、さっきの会話も今回の取引も録音録画している。ちゃんと俺との約束守ってくれよ!じゃあな、また、良い物期待しているぜ!またな!」


 二人は車に乗って去って行った。


 俺は、すぐに、マジックボックスに大金の入ったケースを投げ込んで仕舞った。

 そして、車に乗り込んで深呼吸をして、走り出す。


 家に入り、すぐに魔法陣で異世界へ移動した。


 ◇


 すでに夕刻、異世界の家に着くころには日が暮れていた。

 店の前に豪華な馬車が止まっており、何やら入り口で騒いでいた。


「ですから…今日は定休日で…」

「嫌だ!せっかく来たんだから、食べて帰る!」

「アンジェお嬢様‥明日出直しましょう」


 そこには、小さなドレスを着たお嬢さんと、執事のような黒服の男性。

 そして、シルビアさんが、対応に困っているようだった。


「えっと、何してるの?」

「あ!マスター、あの…このお嬢ちゃんが…」


 そのだた捏ねてた女の子がこっちを見た。


「お主!ここの店主か?」

「はい、一応…」

「なら話は早い!わらわにパンケーキなるものを、早く食べさせるのだ!」

「お嬢様‥迷惑になるから…」


 どうしても食べたいんだな‥仕方ない。


「いいよ!シルビアさん中へ入れてあげて」

「でも、他に定休日に来店の方も断ってますのに…例外を作ると後から何を言われますか…」

「まあ、その時は、その時で対処しよ」

「マスターがそう言われるのなら…」


 そのお嬢様と言われた女の子は、中へダッシュで入っていった。

 すると、執事の渋い男性が、俺に深くお辞儀をしていた。


 中へ入り、シルビアさんは、パンケーキを焼く準備をしていた。


「店主よ!名前は何と言うのだ?」

「えっと、アラタって言いますよ、お嬢様」


 俺は誰かはわからないが、あの馬車の豪華さと、執事さんを見る限り、貴族なんだろうなと予想を立てて、そう言った。


「わらわは、アンジェリア!ここまで王都から3日も掛けて、パウロと来たのだ!このパンケーキの噂が王都に届いてからと言うもの、やっと来れたのに休みとは、びっくりだったのだ」

「そ、そうだったんだね。大丈夫すぐに焼いてあげますから」


 パウロと言う執事は、立ったままでまた俺に会釈をした。


 それから、3皿平らげて、パウロと言う執事が会計をしていた。


 暫く、居座って話をしたが、なんと貴族ではなく王族だった。

 それも、フェリオール王国第二王女の、アンジェリア・フォン・フェリオールだと言った。


 そして、一緒にいるのは、その筆頭執事のパウロ・グレンシスタと言った。


「え…王女様なの?…」

「そうなのだ!わらわは、第二王女だけどな。パウロに無理いってここまでやってきたのだ」

「はい、どうしても‥いま王都で噂になっている、ホルンのお菓子を食べに行くのだと、殆ど、走り続けでここまで参った次第でありまして」


 ああ、大変なお嬢のワガママ的なやつだな‥執事の苦労がわかるな。


「アラタよ!これからお主とわらわは友達なのだ。明日も来るのだ」

「え?あ、明日も来るんですね?」

「今日はホルンに泊まるのだ!だから明日また食べて帰るのだ、ついでに持ち帰りも作ってもらうのだ!王都のお菓子より数倍美味だったのだ、うしし」

「は‥はあ。わかりましたアンジェリア様」

「あ、もうアラタとわらわは友達なのだ、アンジェと言っていいのだ!」


 そう言って、嵐のようなアンジェは帰って行った。


 バタン。


 扉を閉めた瞬間、シルビアさんと俺は溜息をついた。

「まさか王女とはね…」

「私、断ってたの不味かったでしょうか?」

「いや、シルビアさん、それは俺が休みって言っていたんだから、それは仕方ないよ。とりあえず、明日も来るみたいだけど、王族だろうと順番は守らせてね。あまり忖度すると他のお客様からのクレームが出るかもしれないし」

「はい、畏まりました。ミーナにもそう伝えておきます」


 それから、俺は瑞希達に手伝って貰って、地下の倉庫に材料をマジックボックスからだして補充したのだった。

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