第24話 獣人事情
新達は、クラウスと言う半獣人を仲間に加え、ホルンに戻ることにした。
ボルボンの冒険者ギルドを出た俺達は、ホルン行の馬車を探した。
相変わらず昼から立て札を持って客引きをしている、小さな女将コリーに、暫しの別れの挨拶もした。
仲間になったクラウスは、猫の獣人で銀髪に銀の目、スラっとしていて、斥候職なので装備も軽装だ。
やっとのことでホルン行の馬車が見つかった。馬車の馭者も護衛の冒険者を探していたと言う事で、丁度良かった。
早速、皆で馬車に乗り込んだ
「クラウスって、この町の出身なの?」
新はそう聞いた。
「いや、俺はフェリオール王都から北にある、イシュタルト王国とフェリオール王国の国境にある獣人村マアシュタの出身だ」
「マアシュタ村?」
「ああ、そこは獣人しかいない村だ、そこに俺の家族がいる」
「へ~家族が」
クラウスは自分のことについて話をしてくれた。
クラウスには両親の他に、兄弟が8人いるんだと言った。
獣人にとって、それは普通らしく、子供多い所はその倍は居るんだと言う。そのお陰で貧乏から縁が切れないらしく、どの獣人家庭も貧しいのだ。
「だから、俺は、15歳から冒険者になり10年、少しでも稼ごうと頑張って来た、先ずは、Cランクに上がって最も稼げるダンジョンに行きたいと心に決めてこのボルボンにやって来たんだ」
「15歳から10年も‥」
クラウスの話に瑞希が、俯いてそう言った。
「だが‥思ったよりこの世は上手く行かない物だ…Cランクになるまで5年、それから、今までダンジョンに何度も何度も潜った、最初はソロで入って死んでいる冒険者の装備を回収して売って生計を立てた」
「なんで?パーティを組んで入ればよかったんじゃないの?」
新はそう聞いた。
「そう思うだろ?大体この町に来るやつは、すでにパーティを組んでいるか、クランの連中だ。しかも、即席パーティと言っても、俺よりランクの高い奴らの方が、先に誘われていくだろう?」
「なるほど‥」
「獣人は、人間よりも身体能力はあるが、魔力は低い、そして人口も多いとなると素早さを活かすか、体力、力を活かすかしかない、職種は限られてくる。オールラウンダーな人間と違って、結構、競争率激しんだわこれが‥はは」
クラウスの話を俺達はじっと聞いていた。
「ま、10年も冒険者やっていると、いろいろ経験も増えるってもんだ、沢山の奴らが死んでいくのも見たし、いろんな国にも行ったさ、ははは、で?俺の話はこの辺でいいとして、アラタ、お前達あまり獣人やダンジョンなんかの事を、知らないようだが、何処から来て何者なんだ?」
クラウスは、そう言って俺達に話を振った。
「ああ、俺達はホルンが拠点なんだけどね、俺と瑞希は、最近この国に来たばかりで、まだいろいろよく知らないんだ」
「ほう?って言っても、このオブリシア大陸の別の国だろ?イシュタルトか?それともエイナムルか?」
言ってる国名も全然わからない‥この国の王都にすら行ったことないんだし。
「えっと、オブリシア大陸の外‥かな?」
「はあ?この大陸の外は広大な海だぞ?俺の知っている限りでは、外から来たヤツは聞いた事がない」
「ああ‥そうなの?まあ、でも‥そうなるかな?」
クラウスは俺の話を聞いて、首を傾げた。
「まあ、でも、あながちそうかも知れないな‥この大陸の外に、他の場所がないなんて言い切れないしな‥もしそうだとしたら、あのじゅうって武器も、若いアラタがマジックボックスなどのスキルを取得しているのも納得いくな‥お前、外の世界の金持ちか何かか?」
「い‥いや‥じゃない‥そうかも知れないかな、はははは‥」
新は、引きつった笑いをしながらそう言った。
「しかし、ミズキって君も凄い力であの斧振っていたが、アラタもアラタだ、人間の癖に、あんな魔法連発して枯渇しないのも凄いな」
クラウスは流石、斥候職だけあって良く見てるなと思った。
「ああ、私の力は別として、新は一応ハーフエルフなのよ?」
「‥‥‥‥エル‥フ?」
いいってその反応‥もう慣れたからさ。
「クラウス、言いたいことはわかったからもういいよ‥」
後に、クラウスから聞いた事だが、獣人の寿命は大体、人間と同じくらいで、ネコ科、イヌ科が多く、たまにゴリラやサルなどのヒト亜科もいる。
他にも、
そんな話をしながら、馬車はホルンへ向けて進んでいた。
◇
3日後、ホルンに着いた。
「ん~、やっぱ馬車は疲れるわ‥これだけ魔法のある世界なのに、移動はアナログなんだな‥」
「そうよね‥確かに私もそう思うわ‥」
俺と瑞希は、馬車を飛び降り、背伸びしてそう言っていた。
「いや、あるにはある」
「ふむ、あるな、ふー」
「「え?」」
クラウスが、馬車から降りてそう言った後に、クインも頷いてそう言った。
「転移の魔法はある、かなりの上位魔法のはずだがな」
「ふむ、我の瞬間転移もそれの初級ではあるが」
クラウスとクインは、並んで二人でそう交互に喋った。
「え、そもそもクインのあのシュッシュって消えて出るやつ、あれどうやってんの?」
「ふむ、瞬時にその場所を意識して、転移しているだけだ、別に考えたこともない、ふー」
考えてもないのに、あんな動き出来るのかよ‥
「そういうのって‥俺にも出来るのかな?」
「んー、俺は、魔力も少ない獣人だからな‥考えたこともないが、魔法はイメージだって言うから、それをちゃんと出来れば、ある意味なんでも出来るんじゃないか?先人達はそうやって、あらゆる魔法を世に送り出したわけだし?それこそ、アラタ、お前半分エルフなんだから、知り合いのエルフに聞くとか?」
なるほど‥エルフか‥母‥
「そう言えば、あんたのお母さんエルフなんだよね?」
瑞希が、俺が母のことを考えた瞬間そう言った。
「ああ‥その内、会いに行ってみたいとは思っているんだけどね、いる場所は分かっていると思うから‥ま!いいや、とりあえず家に戻ろう、疲れたよ」
「賛成!」
俺達は、我が家へ向かうのだった。
◇
「うおお、なんだこの店!これが、アラタの店なのか?すげーな!」
クラウスが、驚いていた。
店は、閉店間際、駆け込みの客で賑わっていたのだ。
「あ、うん、この建物の部屋は、従業員と俺達で満室なんで、クラウスは俺と同室ってことになるがいいかい?」
「ああ、何処だっていいさ」
中へ入って暫くすると、最後のお客が帰ったので、俺達も片付けの手伝いをしていた。
洗い物を持って行くと、ミーナさんが洗い物しながら口を開いた。
「そう言えば、アラタさんの友達のミズキちゃん、確か、魔力持ってないって言ってましたよね?」
「うん、そうだけど‥それが何か?」
「実は、この仕事を始めて、旦那の雑貨屋のシャンプーの売上のお陰で、リックとリーナを学校へ通わすようになったんですが‥」
ミーナさんは洗い物をしながら思いつめた表情をしていた。
「ですが?」
「下の子のリーナが、魔力が元々低いみたいで、すぐに枯渇して貧血のような症状で倒れてしまうんですよ‥ミズキさんって魔力ないのに、なんで体調は普通なんでしょう?」
ミーナさんは、深刻な顔をしながらそう言った。
「さあ‥脳筋が魔力の部分を支えてるんじゃないですかね?」
「え?」
「アラタぁ‥聞こえてますからね!後から裏に来い!」
冗談で言ったのに、少し離れた所で、瑞希が殺気立っていた‥
「でも、ミーナさん、魔力無くなると貧血起こすの?」
「ええ‥貧血みたいな、ですけどね。意外とそういう人も少なくはないのよ、ただ‥ほら、魔力って重要で、勿論、魔力がある方が、将来仕事も一杯あるのよ」
確かに、この魔素と魔法の世界、全てに魔力が必要になって、冒険者やるにも、草むしりするにも魔法だもんな‥
ミーナさんが言うには、魔力のない一般人は、仕事を手作業をするため効率が悪く就職率も低いと言う、この世界ならではの悩みと言えよう。
「まあ、まだ子供なので鍛えて行けば、どうにかなるかも知れないけど‥あ、ごめんなさいね、変な話して」
「いえいえ」
後片付けが終わり、ミーナさんと集計をして、俺がボルボンで不在だった日にち分の売上をミーナさんから受け取った。
店の在庫を確認すると、あと2日分くらいしかない状態だった。
明日は地球に仕入れに行かねばならない。
そして、俺は部屋に戻る際に、後ろから瑞希に飛び蹴りを喰らったのは言うまでもない。
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