第23話 新しい仲間。

 ボルボンダンジョンの20階層までを攻略し、俺達は地上へ戻って来た。


 冒険者ギルドの職員が、話しかけて来る。

「お、お帰り。もう一度、冒険者カードをその魔道具に翳してくれ。」


 俺達は皆、カードを魔道具に翳す。


「それで、どこまで潜ったんだ?」

「20階層まで行って帰ってきました」

「そうか、お前達Cランクなのに中々やるじゃないか!」


 ギルド職員は、俺達にそう言ってくれた。


「しかし、今日入った冒険者は56人がまだ戻って来ていない‥お前達も今後も気を付けてくれ」

「わかりました」


 俺達は、ダンジョン入り口の建物を出た。もう辺りは日が沈もうとしていた。


「お前達、助けて貰ってありがとう!また何処かで会ったらその時は恩を返すからな!」

「うん、クラウスも気を付けて!」


 クラウスは、俺達を見てそう言ったので、俺達も別れの言葉を言った。


 俺達が、宿の方へ歩こうとした時。

「宿は要りませんか~、すぐにご用意できますー!」


 そこでは、また立て札を持って、呼び込みをしているコリーがいた。


「コリーちゃん!また呼び込みしてるのね」

 瑞希が近づいて声を掛けた。

「あ!お姉ちゃんたち!お帰り!今日も宿は開いてますが、いかがですか~?」


 俺達は、くすっと笑い。

「お願いしますよ!小さな女将さん!」

 そう言って、またコリーの案内で、うりぼう亭へ向かった。


「あらぁ、お帰りなさいませ、どうぞどうぞ」

 ハンナお婆さんは、俺達を温かく迎えてくれた。


 俺達は今日もここで宿を取った。


 夕飯をまたハンナさんが作ってくれると言うので、俺達はそれに甘えた。

 皆、1階の食堂でハンナさんの食事を待っている。


「あのさ、瑞希、レベッカ、マイティ。ちょっと聞いてくれるか?」

「どうしたの?」

「えっと、ダンジョンで見つけた宝石だけど、これは俺に貰えないだろうか?」


 みんな顔を見合わす。


「私は別にアラタさんが欲しいって言うのなら構わないけど」

「うん、私もここまで来れたのはアラタさんのお陰だから構いませんよ」


 レベッカとマイティはそう言ってくれた。


「新、別に私も宝石なんかに興味ないから良いけど‥どうしたの?」

「いや、実はこの宝石も探していたんだ、あっちで用があるんだ」


 あっちってのは地球だと言う事に瑞希は気付いた。


「うん、良いよ!私も、新に何か考えがあるのなら何も言わない」

「皆、有難う」


 ハンナさんが料理を持って来てくれて、みんな笑って食事を摂った。


「で、アラタさん達は何処まで行けたんだい?」

「20階層までですね」

「貴方達は強いのね、私の息子‥コリーの父親もダンジョンに夢を見て冒険者になって入って行った‥そして、戻ってこなかった‥あの時、引き留めて置けばよかったと思っていますよ、だから危ないと思ったら引き返してくるんだよ」

「そうなんですか‥大丈夫です、むちゃはしませんから」


 新はそう言って、無邪気に夕飯を食べているコリーを見た。


「コリー、それ食べたら美味しい物あげよっか!」

「なーに?美味しい物って」


 新は、にっこりして、マジックボックスからチョコレートを出した。


「何その黒いの‥美味しくなさそう」

「甘~いんだぞ~。夕飯全部食べてから、あげるからまず食べな」


 コリーは頷いて、夕飯を食べきった。


 俺は、その板チョコを少し割って、興味津々のコリーへ渡す。

 一口食べて、目を丸くするコリー


「何これ~甘ーい!美味しい!」

「だろ。これはいつも頑張っているコリーにご褒美だ!」


 板チョコを全部、コリーに渡すと、嬉しそうにまた椅子に座った。


「アラタさん、あれはなんですか?」

「あれは、俺の国のとても甘いお菓子ですよ」

「うふふ、そうなのね、良かったわねコリー」

「うん!」


 その日は、各自部屋へ行って就寝した。


 ◇


 次の日。

 朝、朝食を食べて、換金のため冒険者ギルドへ向かった。


 すると、ギルドの入り口に猫耳の男が、腕組みして凭れ掛かっていた。


「お、アラタ!」

「あ、クラウス?なんでここに?」

「ここに居れば、会えると思ってな」


 クラウスは俺達を待っていたようだった。


 冒険者ギルドは、依頼をじっくり選ぶための机や椅子などもある。

 そこへ、俺達とクラウスは腰掛けた。


「どうしたんだ?俺達を待ってたって?」

「実は‥昨日一日いろいろ考えたんだが‥俺を、お前のパーティに入れてくれないか?」

「え?パーティに?」


 クラウスは、猫耳の後ろを掻いている。


「俺は‥いつも、1人が好きだったんだ、それで即席パーティばかりで行動してきたんだが‥ほら、なんかお前達といると、気が合うと言うか‥」

「はあ‥」

「ほら、それに、お前達パーティは斥候職がいないだろ?宝箱の罠さえ気づかないからよ‥ダメかな?」


 新達はきょとんとしていた。


「い、いや、俺は別に構いませんけど…」

「まじか!良いのか!」

「アラタさんに任せます」

「新が良いなら良いんじゃない?」


 俺達が承諾すると、クラウスは銀色の縦目の瞳孔を開いて喜んだ。


「ただ‥俺達そろそろ、ホルンに戻らないといけないから、ダンジョンはまた今度になるけど、それでも?」

「ああ、構わない、それと、俺に敬語とかは使わないでくれ、そんな礼儀正しい冒険者珍しいぜ?」

「そうなんですか?…わかりました」


 半獣人のクラウス・テオドロ。

 俺達の仲間が一人増える事になったのだ。


 それから俺は、受付に行きダンジョンのドロップ品の換金をしたいと申し出た。

 裏に、買取場があると言うので、そちらに案内された。


 そこには、魔物の死体や、皮、角などが査定のため置かれていた。


 そして、そこの担当が出て来た。

「何か売ってくれるのか?」

「はい、ダンジョンの魔物のドロップ品なんですが?」

「わかったこっちに来てくれ」


 担当員は、空いてるテーブルに腰掛けた。


「で、何を持って来たんだ?」


 俺はマジックボックスから、ダンジョンのドロップ品を出す。

「お、マジックボックス持ちか!これは期待できそうだ」


 俺はその場に。

 金塊20個、魔石(中)40個、魔石(小)56個。

 大きな牙1つ、大きなヘルハウウドの皮1枚、獣の皮17枚。

 纏まったアラクネの糸79個、ブレードマンティスの鎌23個。

 蟲の羽33枚、クイーンアラクネの甲殻(大)1枚、(中)4枚(小)26枚。


「お、いいねいいねぇ」

 金塊は1個:金貨50枚。魔石(中)1個:金貨1枚。(小)1個:銀貨2枚。

 他の魔物の素材もそこそこの値段で買い取ってくれた。

 そしてびっくりしたのが、蟲の羽だった1枚が銀貨2枚だった。ギルド員に聞くと、この世界の傘の材料になるらしい、破れにくく水捌けがよく、貴族が好む上質な物が作れるんだという。


 他にもクイーンアラクネの甲殻、糸などは、防具に使うらしく需要もあるようだ。

 そして、金塊、ダンジョンで出るこのインゴットは1個、約1㎏、地球では650万を超えるんだが、この世界では地球よりも手に入りやすいためか、約12分の1の金貨50枚だった、つまり50万円だ。これは後からスマホで調べてわかったことだ。


 金塊、魔石だけで、金貨1052枚、銀貨2枚。

 魔物の素材は、全部で金貨46枚だった。

 合計、金貨1098枚と銀貨2枚(日本円にして1098万2千円)である。


「な‥なんか凄いな‥」

「うん、金塊が効いているわね」


 俺と瑞希もびっくりしていたが、それを見ていた皆の反応もそうだった。

 俺は、まだ金塊5個と、魔石(大)2個だけは売っていなかった、それは何かに使うことがあるかもしれないと思ったからだ。


 クラウスは、次は俺も換金すると言っていた。

 金塊を2個出していたので、あの即席パーティの分配品であろう。


 俺は、さっきの報酬を4等分してもらい、俺、瑞希、レベッカ、マイティに渡した。


 俺以外のみんなは、冒険者カードに入金していた。


「私の貯金が250枚‥」

 マイティはそう言って、何だかわからない震えをおこしているのが見えた。




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