第21話 迷宮は続く。

 俺達は、マーダー・ヘルハウンドと言う、10階層の守護者を倒して、ダンジョン産の武器防具や宝石などを手に入れて先の部屋へ向かう。


 そこは、ギルド職員も言っていたセーフエリアになっていて、そこそこ広い部屋だった。


 1組の傷ついたパーティが休憩していた。

 俺達の前に守護者を倒して進んだ者達だろう。


 俺達も、殆どクインが活躍したので、疲れてはいないが、その辺で休憩することにした。


 部屋を見渡すと、床に魔法陣があった、あれは、恐らく冒険者ギルドが設置した地上への魔法陣なのだろう。


 そう言えば、瑞希ってどんなステータスしているんだろうと、何気に思ったので鑑定してみた。


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 名前:桐谷瑞希きりたにみずき

 年齢:20

 性別:女

 種族:人間

 体力:104

 筋力:127

 魔力:0

 敏捷:128

 スキル:地球人効果 翻訳

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 げげ‥魔力は0はわかるとして、筋力と敏捷は俺より高いんだけど‥


「何よ?」

「い‥いや、お前ってどんなステータスしてるのかなと思って見たんだが‥俺より力と素早さが2割ほど高いんだけど‥」


「は?どういうこと?」

 レベッカとマイティは、何か話していたので、瑞希の隣に座り囁いた。

「つまり‥この世界の一般人1人分、力と素早さが高いってことさ」

「え?じゃあ、普通の人より6倍ってこと?」

「そうだ」


 瑞希は少し驚いた顔をしていた。


「ふむ、それは少し違うな、ふー」

 クインがそう言った。


「え?」

「ふむ。鑑定スキルと言うのは、あくまでも物を鑑定するスキルだ、人間や魔物を鑑定した所で目安にしかすぎん」

「そうなの?」

「ふむ、人は感情で変わる物だ‥火事場の力がその例よ、その時の感情であり得ない力も出すこともあるし、スランプに陥っている時には下がりもしよう、ふー」

「ああ‥なるほど」

「それに、装備している武器防具などにもよろう、ふっ」


 クインを鑑定してみた。

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 名前:クイン

 年齢:301

 性別:ーー

 種族:クー・シー(犬妖精)

 体力:534

 筋力:767

 魔力:1349

 敏捷:1690

 スキル:無属性魔法、結界魔法、上位風魔法

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「ぶっ!」

「ふむ、我を見たのか?ふー」

「あ、ああ‥なんか‥凄かった」

「ふむ」


 クインって301歳なんだ‥そして性別がないのか?


 そう話をしていたら、傷ついて休憩していたパーティは、地上への魔法陣で戻って行った。


 とりあえず、何か食べとくか。

 前に地球に寄った時に、同級生の川村総菜屋で弁当をいくつか買っていたのだ。

 たいしには、「お前そんなに弁当買って何するんだ?」とは言われたけどね。マジックボックスは時間の流れがないので、温かいままだった。


 いろんな弁当を各自一つずつ手に取った。クインは、甘い物が良いって言うのでどら焼きと、薄皮饅頭を与えた。


 食事を終え、休憩を終えた俺達。


「そろそろ、下の階に進もうか?」

「うん」

「はい」


 セーフエリアの先の階段を降りて行く俺達。


 11階層も同じような迷宮が続いていた。


 同じように、クインが索敵して階段の場所を特定して進んで行く。


 そこからは、アラクネと言う蜘蛛の魔物、カマリキのようなブレードマンティスと言う魔物、どちらかと言うと蟲系の魔物が多かった。


 アラクネを倒すと、糸と甲殻などが稀に残った。


「楽勝ね!」

「瑞希、お前周りよく見て斧振り回せよ‥さっき危なかったぞ‥」

「そんなの避けなさい!おりゃ!」


 瑞希の振り下ろした戦斧が、ブレードマンティスを真っ二つにする。


「きゃああああ!嫌あああああ!」

 ん?なんだ?何いきなり悲鳴あげてんの?

 よく見ると、ブレードマンティスから、寄生虫のような物がひょろひょろと出てきていた。


 新はそれを火炎放射の魔法で焼き殺す。


「嫌あああって、さっきまでのメスゴリラがびっくりだぞ‥」

「あれはダメ‥気持ち悪い‥そもそも虫は嫌い」


 俺は、ジト目で瑞希を見ていた。


 先へ進む。

 すると所々に、冒険者の装備が落ちている。

 防具が、人型に並んでいると言う事は、この場で死んで肉体はダンジョンに吸収されたのだろう。


 これを見ると、死と隣り合わせなのだなと実感した。


「ふむ、我がいるから、こうはならせん、ふー」

 俺達の不安を感じ取って、クインはそう言った。


 ◇


 19階層まで降りて来た。


 すると、さきほの蟲系魔物達も強力になっていた。

 鑑定すると、エルダー・アラクネとか、明らかに上位だろうと思わせる名前になっていた。


 ここまで来ると、みんなそれなりに戦いにも慣れて、勿論多少の傷も負ったが、レベッカの回復で、ほぼ無傷で階段のある場所まで辿り着いた。


 20階層に降りると、討伐されてない魔物がうようよいた。


 クインがほぼ切り刻んで進んで行くのだが、冒険者の装備もその辺に転がっていることが多くなってきた。


 すると、先の方で戦っている音が聞こえた。


「ねえクイン、あっちから激しい戦いの音が聞こえる」

 新は、そうクインに言った。


「ふむ、そっちは行き止まりだ、もう追い詰められた冒険者も助からん、ふー」

「いや、でもまだ生きてる人いるんだよね?」


 クインは俺を一度じっとみた。

「ふむ、今助かりそうなのは一人いるが、アラタに任すぞ、ふっふ」

「‥‥‥助けよう」

「うん、賛成」

 俺がそう言った時に、レベッカが頷いた。


 行き止まりだという場所へ急ぐと、エルダーアラクネ10体以上に囲まれた、猫耳の男がいた。


 俺達は、その男を助けるため、斬りかかる。


 クインは一気に、エルダーアラクネを切り飛ばして行く。


 俺も、マイティも、瑞希もそれぞれ倒していき、全て倒すのに2分も掛からなかった。


 その猫耳の男は両手に持っていた短剣を床に落とし、床に崩れ落ちた。

 すぐに、レベッカがヒールをかける。


「あんた達は‥‥」

「黙って、すぐ治療します」

 その男は、猫耳だが顔や身体は毛も生えておらず人間に近かった。


 後に知ったことだが、獣人も俺がハーフエルフなのと一緒なように、勿論ハーフもクウォーターもいる。この男は、見るからにして半獣人なのだろう。


 その男を俺は担いで、一度、魔素の薄い魔物がいないエリアまで皆で移動した。


「ん‥んん…はっ!」


 がばっと、その半獣人男は起きて、身体の痛みで顔が苦痛に歪む。

「痛つつ‥」

「おい、大丈夫か?」

 新はそう言って、レベッカが介抱している男に近づいた。


「あんた達は‥ああ、助けられたのか‥」

「ああ、危なかったね。もう少し、ここで休んでから動こう」


 男は、自分の身体を確認する。

「結構、傷が塞がっている‥‥‥、俺はクラウス、危ない所をありがとう」

「クラウスさんか、俺は新」

 俺は、そのクラウスと言う半獣人に、みんなを紹介した。


「ああ、レベッカと言ったか‥もう大丈夫だ」

「でもまだ‥」

「あまり魔力を消費すると、お前達が困るだろう?」


 クラウスは、そう言ってよろめきながら立ち上がる。


「残念だったな‥仲間達は死んでた」

「ああ‥今日あったばかりの、ギルドで組んだ即席パーティだったからな‥別に情ってのはそこまでないんだ」

 俺が、俯いて言うと、クラウスはそう言った。


「な、なるほど‥で、これからどうするんですか?」

「ギルドが設置した魔法陣でも探して帰還するから気にするな、もし無事帰還出来たら、恩には報いるつもりだ」


 クラウスは、そのまま去ろうとするが。


「あんた、一緒にくれば?」

 瑞希がそう言った。


「え?」

「だってさ、探すにしても、蜘蛛やらカマキリやら虫たちで、うじゃうじゃよ?多分そこに着くまでに‥」

 瑞希は、そう言って呼び止めた。


「そうだな、クラウスさん俺達についてくる気あります?」

「いいのか?今の俺は役に立つかもわからないぞ?」

「大丈夫だ‥と、思う、クインもいるし…ね」


「そうしましょ、多分、1人で帰還は無理だと思います」

 そうマイティが言った。


「わかった‥俺も、多分無理だとわかっていたが、迷惑かけるわけにはいかないと思ってな‥それから、俺のことはクラウスでいい」


「じゃあ、宜しくです、クラウス」


 俺は、この男を連れて行くことにした。



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後書き。


クインの、鼻息が少々気になる方もいらっしゃるらしいので、鼻を鳴らさない所や、ふっ、ふーなどに変更したりしています。

それから、クインは当初、じゃ、とかを使うお爺言葉だったのを、もう少し若い威厳ある系の言葉に、最初の方から修正致しました。


これからも応援宜しくお願い致します。(*^_^*)

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