第18話 パンケーキ屋
冒険者ランクもCになった俺達は次は、この世界での商売に向けて準備をしていた。
この世界の魔石を使った魔道具コンロ、魔道具冷蔵庫もちゃんと買い込んで準備はOKである。
そして、この世界の鳥の卵と、ブラックブルの牛乳で作って見たが、味はそう変わらなかった、ホットケーキミックスが相当優秀なのだ。
なので、これからは、ホットケーキミックスとハチミツだけを、地球から仕入れてくれば問題ない。
それから、マリルが皿を割るので、木で出来た皿に変更したのである、実はこちらの方が温かみもあってお洒落だった、最初からこうすれば良かったと思った。
それから看板も出来た、そして、店の名前も決めた、その名は。
【イセ・スイーツ】である。
その看板を建物と、入り口のアーチの部分にも取り付けた。
おし!完成だ!
これで後は値段設定や、人員の役割だ。
その日は、全員でミーティングすることにした。
「値段設定ですが‥どうしますか?」
俺がそう皆に聞いた。
「そうですね、王都でもお菓子は贅沢品で最低でも銀貨2枚はします、なので‥本当は銀貨2枚と言いたいところですが‥どうしましょうかね」
皆、うーんと考えていた。
「最初は、銀貨2枚で良いんじゃない?お金持ちをまず囲ってから、安くしていく方法とか、最初から、いきなりわんさか来ても対処に困るでしょ?」
瑞希がそう言った。
「そうですね、いきなりこの美味しいお菓子が王都ではなく、ホルンに出来て更に安いとなると、王都のお菓子屋の嫉妬にも関わりそうですものね‥」
ミーナさんはそう答えた。
パンケーキの料金はドリンク付きで銀貨2枚に決まったのだった。
種類は、ひとまずは、パンケーキにハチミツを掛けた一品と、この世界のフルーツを乗せたパンケーキも出すことにした。
パンケーキだけでも普通に美味しいので、ハチミツアレルギーなどがあるように、苦手な人もいるかもしれないからだ。
「あと、アラタさんの国の石鹸、私の旦那の所で小さく小分けにして売りたいのですが‥いかがでしょうか?勿論、売上の8割はアラタさんの物で結構なんですが」
「え?あの石鹸売るんですか?」
「売れます!この国の石鹸は銅貨1枚ですが‥アラタさんの持っている石鹸なら、銅貨5枚、いえ‥銀貨1枚でも売れると思います!」
商売になると、ミーナさんは凄い圧だ。
「でも‥普通の石鹸が銅貨1枚なんですよね?‥それの10倍はあまりにも‥」
「そこで、その石鹸を3等分くらい小分けにして、銅貨3枚でどうかと思いまして」
そうミーナさんは言った。
なるほど‥それなら少し高級な石鹸として手も出す人もいるだろうな。
「たくさん持って来てるから、良いですよ。それから、8割俺が貰うんじゃなくて半分で良いですよ」
「え!良いんですか?やりましたわ!これでリック、リーナを学校にもちゃんと通わせれます!」
え?学校、そんなのあるんだ?
「学校なんてあるんですね?」
「勿論ありますよ。お金に余裕のある家庭しか、通わせないのでこの町の半分は学校に行ってない子供達ですけどね。やっぱり、学校に行ってる子供達は魔法も上手いし、剣技なども習いますし、王都の兵などになるには学校を出てないとなれないのです」
公務員になるためには、学校卒業が不可欠ってことか‥
この世界も地球と一緒で、そういうのは大事なんだな。
「じゃあ、これで決まりかな?何か質問ありますか?」
「あのぉ‥」
マリルレットが手を挙げた。
「マリルなんだい?」
「服装は‥この私服で良いのでしょうか?」
「あ‥だった、忘れてた」
後から、地球に適当な制服を買いに行こう。
「後から、今日のうちに用意しますんで待っててください」
ミーティングも終わり、俺は瑞希と地球に行くことにした。
マイティとレベッカは、修行したいって言うので、クインに任せることにした。
◇
地球に戻って、車に乗り込んだ。
瑞希とワークショップに行ってみたが、ピンと来る制服がなかった。
「新、どんな制服にするの?」
「ん~ああいう居酒屋みたいなのじゃなくてさ、もっと可愛らしいのがよくないか?」
「そうね、もうこの際、コスプレとかでいいんじゃない?」
「なるほど」
結局、メガ・ボンキー・ドーテに行った。
「おお、凄い種類あるんだな‥」
「うん、やっぱこういうのは、ボンキが一番あるよね。」
色々見てみたが‥
「結構過激なの多いね‥」
俺は、メイド服を手に取っていた。
「これって、夜の店の人とかのコスプレイベントとか、パーティ用だもんね。新の持ってるそれが一番普通じゃない?」
「これでいいか‥これを色違いで10着くらいと、後は、普通のエプロンを6枚くらいでいいかな?」
「うん」
ちょっと試したい事があるから、ドライヤーも買っていった。
◇
異世界の店に戻った。
「制服買って来たんだけど、着て見て」
「マスター‥私もこれを着るんですか?」
ジョランさんが、そう言った。
「ああ‥ジョランさんはこっち」
普通のエプロンを渡した。
ミーナ、シルビア、マリルレットが、メイド服になった。
ミーナさんと、シルビアさんは、30代。
まだまだ、全然メイド服が似合っていた、そして、マリルレットが一番似合っていた、エルフなんで年齢がいくつかわからないが、ダークエルフの褐色の肌に白と黒のメイド服が映えていた、身長があるので、ミニスカートぽくなっているのも、それがまた良かった。
「この服、不思議な素材で出来ているのですね‥」
「そうね、軽いし動きやすいわ」
ミーナさんも、シルビアさんも、メイド服を気に入っているようだ。
そして、【イセ・スイーツ】のオープンは明日に決まった。
今日は残りの時間で、シルビアさんは、パンケーキを作って一口サイズに切って、少量のハチミツを塗ったものを箱に入れている。
ミーナさんは、チラシを紙に手書きで書いていた。
パンケーキと、メイド服の自分達を絵を書いていた、なかなか上手い。
バタン。
そして、ミーナさんに呼ばれていた、夫のカゼルさんが来た。
「アラタさん、こんにちは、えっとミーナに呼ばれてきたんですけど」
「あ、あなた、用意してきた?」
「あ‥ああ、何かを包む紙と、蓋のついた容器だろ」
ミーナさんに呼ばれた、カゼルさんは、椅子に座り、俺が持って来た石鹸をナイフで3等分に切れとミーナさんに言われていた。
そして、あの容器は雑貨屋の売れ残りだったらしく、リンス入りシャンプーを小分けするために持って来たらしい。
最初は、試しで売るので石鹸1個を3等分した物、一個を別の紙に包んで銅貨3枚、リンス入りシャンプーを、250㎖くらいの蓋つきの容器に、移し替えて銀貨2枚で販売するようだ。
シャンプーはあの少ない量で銀貨2枚、つまり日本円で2000円‥買う奴いるのって言うくらいの破格の値段だ。
それほどまでに、この世界の女性にはシャンプーというのは猛烈にありがたい商品なのだとミーナさんは言う。
シャンプーはお徳用パックに入った詰め替え用1リットル1000円の安物だが、ミーナさんは不思議な物に入っているのに、深い事は全く聞いてこない、多分、外国には、普通にこういう入れ物に入っているとでも思っているのだろう。
「アラタさん、これは売れるわよぉ~~」
ミーナさんは、シャンプーを移し替えながらそう言っていた。
俺は、苦笑いしていた。
俺は、ちょっとした考えがあったので、エグバート工房へ向かった。
◇
エグバート工房。
「エグバートさんいますか?」
暫くすると、エグバートが出て来た。
「アラタ殿かい、なんじゃ?」
「この間の作業、ありがとうございました。実は‥作って貰いたい物があるんですけど‥」
エグバートは、腕を組み俺を見上げる。
「この通り忙しいんじゃ、またにしてくれ!」
そう言って、奥に去ろうをするエグバート。
「あ、待って、もし‥ある物を作ってくれたら、この冒険者ギルド会長ベンザさん、お墨付きのお酒をプレゼントするつもりなんですが‥」
ピタっとエグバートは止まった。
「むむむ‥酒じゃと?」
「なんなら、試飲してみます?」
うんうんと、縦に首を振るエグバート。
キャップに少し、ウイスキーを注いで渡す。
クイっと一口で飲んだ。
「うーーんまい!!なんじゃあこりゃあ!こんなの飲んだこともない!!」
「でしょー?」
「もう一杯!」
「ダメです」
「なんじゃ!何が作って欲しいんじゃ?すぐ作るから、はよう内容を言うんじゃ!」
俺は、ドライヤーを取り出して、コンセントを見せた。
「これを差し込むと動くくらいの電気が流れるようにしてほしいんですけど。動いたら風がでる機械なんですけど?」
「機械?なんじゃそれは?」
「ああ、魔道具です」
「ふむ‥すぐに取り掛かろう、要は、この2本の鉄から電流を流してこれが、電灯がつくみたいに、動けばよいのじゃろう?」
「はい、そんな感じです」
「動いたら風がでるのじゃな?」
「はい、もし上手くいったら、それを少し量産して欲しいので」
「わかった!」
エグバートは、俺の持っているウイスキーを、悩まし気に見ながら奥に引っ込んで行った、ドワーフって酒みせれば、ちょろいのもわかった。
◇
そして、次の日になり無事に【イセ・スイート】はオープンしたのだ。
朝10時~夕方18時までの営業にしてあるのだが、開店前すでに行列が出来ていた。
ミーナ、シルビアさんの試食&チラシ効果があったらしい。
「皆さん、今日から宜しくお願いします!」
「「「「お願いします!!」」」」
俺の言葉で、オープンした。
ミーナさんが扉をあけて店内へ案内する。
ぞろぞろと、たくさんの客が入ってくる。
瑞希、レベッカ、マイティもメイド服を着て手伝っている。
ミーナさんと、レベッカは案内して注文を取り。
俺とシルビアさんは、何枚もパンケーキを焼いて行く。
ジョランさんは、裏の方で、フルーツを切ってこちらに持ってくる。
瑞希がパンケーキの盛り付けをしていて、マリルとマイティは洗い物を担当していた。
時間を忘れるくらいの忙しさで、皆、俺が持って来ていたおにぎりを、合間に裏で食べる事しか出来なかった。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
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18時になり、やっと閉店だ。
「疲れたーーー!」
瑞希がドスっと椅子に座った。
「まさか、こんなに来るなんて、ミーナさん達の宣伝のおかげですね。」
俺はミーナさんを見てそう言った。
「はい、シルビアと、裕福そうな家ばかりをまわりましたからね。」
「あの試食を食した人みんな目を丸くしてましたもの。うふふ」
ミーナさんと、シルビアさんは、掃除をしながらそう言っていた。
俺と、ミーナさんは、今日の売上を計算すべく、カウンターの料金箱をひっくり返した。
初日の売上は、金貨が24枚、銀貨が202枚、日本円にして44万2000円だった。人数にして、221人が来たってことだ。
30席ほどある店内が7回転くらいしたことになる。
「アラタさん‥」
「ミーナさんこれ‥」
二人でにやけて、ハイタッチをした。
でも、この調子で来ると、とてもじゃないが材料が追い付かない、まず仕入れもちゃんとしておかないといけない。
それから頻繁に地球に行くことになったのだった。
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