第17話 昇格試験。

 昨日から、瑞希がこの異世界にやってきた。


 店の準備は着々と進んでいて。

 2~3日後には、オープンする運びとなった。


 瑞希とこっちの人との意思疎通が出来ないのはちょっと大変なので。

 商人ギルドで、俺は、砂糖と胡椒が手に入ったと言って。

 売って金貨30枚作った。


 そして、魔術師ギルドに売っている翻訳スキル巻物スクロールを金貨25枚で購入して瑞希はそれを使用した。


「金貨25枚‥飛んで行った‥」

「良いじゃない、元は砂糖と胡椒でしょ?」

「日本円で換算するとだな‥25万だぞ!」

「でも、地球ではワンコインで仕入れ出来るじゃない。なんなら1トンくらい持って来て売っちゃえば?」

「お前はこの世界をむちゃくちゃにしたいのか‥」


 レベッカとマイティは、俺と瑞希を見てずっと笑っていた。


 そして俺と、瑞希、レベッカ、マイティは、依頼を何かやろうと言う事で冒険者ギルドに来ていた。


「お、アラタさんにゃん、今日、Cランク昇級になる、依頼が3つ出ますけど受けますかにゃ?」

「え?Cランク試験?」

「受けましょうよ!」

 マイティが目をキラキラさせて食い付いた。


「レベッカはどうする?」

「私は、後衛だしアラタさんに任せます」

「じゃあ、受けるか!」


 俺達は3つの依頼から、選ぶことになったが。

 その一つ、沼地に巣くったグレンデルの討伐と受けた。


 猫耳受付嬢の話だと、グレンデルとは、体長は3~4メートルで、全身に毛もくじゃら、鋭い牙と爪を持つ二足歩行の凶暴な魔物だと言う。


「本当はにゃ、巣を潰すのが良いんだけど、あぶにゃいので、一匹ずつ相手するほうが良いにゃ、こいつを一人一体討伐でランクアップにゃ。でも、ズルするとその人の為にならにゃいから、ちゃんと一人一体倒すのが良いにゃ。」


「えっと、それはヒーラーもですか?」

 俺は猫耳受付嬢にそう聞いた。


「あ、それは例外にゃん、誰かと二人で倒しても良いにゃん。後、討伐の証を何か持って来てにゃん」

「そうですか」


 Cランクアップ試験、グレンデル討伐依頼を受けて俺達は生息が確認された沼地へ行くことにしたが、その前に、瑞希の装備を買いに行くことにした。


 俺がこの世界に来た時に、最初に入ったスキンヘッドのおっさんの武器防具屋に入った。


 現装備はと言うと。

 マイティは剣士で、スチールショートソード、魔物の丈夫な革製スモールシールド、革の鎧、革のブーツ。


 レベッカは、魔法を通しやすいミスリルが織り込まれたワンドに、小さな木の盾、丈夫な繊維の入ったローブ、革の靴。


 俺は、カゼルさんの雑貨屋で買った、中古のアイアンソード、スモールシールド、革の鎧、そして、革のブーツをここで購入した。


 瑞希は、ここで革の鎧、革のブーツ、スモールシールドを選び。


「うーん、新、この世界で私達、スーパーマンって言ったよね?」

「ああ」

「じゃ、この斧にしようかな?力でぶった切るやつ。私テニスしたことあるし」

「テニス‥‥」


 瑞希は、重そうな戦斧をヒョイっと持ち上げて使い心地を確かめている。


「これにしよ!」


 支払いは勿論、俺だ。


「革製ブーツは2つで銀貨4枚、女性用革の鎧が銀貨3枚、スモールシールド銀貨2枚、そして、あの姉ちゃんが持ってる鉄製の戦斧は銀貨4枚だ、しかし、細身なのに力持ちなんだな、あの姉ちゃん」

「ああ、怪力なんです‥あはは」


 俺は、金貨1枚と銀貨3枚を支払った。


 そして、グレンデルが巣くったと言う沼地へ向かった。


 ◇


 沼地へ着いた。

 木々が生えている場所に、沼地が広がっていた。


「いた」

 瑞希はすぐに発見した。

「どこ?‥」

「あそこよ、あそこの木々の間」


 その場所には、グレンデルが一体いた、何かの魔物を食っている。


「ふむ、あそこに一体、沼の中に一体、離れた森の中に1体、向こうの洞窟の中に5体おるな、ふっふ」

 クインが索敵してそう言った。


 そっと、みんなで捕食に夢中のやつに近づく。


「マイティ、レベッカ先にやっちゃって」

「うん」


 俺は、まず隙のあるグレンデルをマイティ達に任せることにした。


 マイティは飛び掛かり、背中に剣が突き刺さる。


 ガッハアア!‥


 グレンデルはすぐに立ち上がり、マイティとレベッカを見る。

 猫背で振り向いたその姿は、まさに大きな獣。

 頭は凶暴な犬を想像させる、角が2本あり、鋭い牙と爪が印象に残る。


 大きな体で素早くマイティに襲い掛かり鋭い爪で攻撃をしてきたが、レベッカの魔法障壁で弾き返す。


「速い‥」


 マイティは、動きをよく見ている。

 グレンデルが、飛んで襲い掛かって来るが、それを躱す。

 すると、先程の背中に突き立てた傷から血が噴き出し、グレンデルは体制を崩した。


 マイティはその隙を見逃さず、盾を捨て、その背中に剣を両手で握り、体重を乗せて背中に突き立てる。


 貫通し胸から剣先が見えていた。


 ガアアアアア!!


 断末魔のようなその声をグレンデルは発する。

 すると、沼から飛んでくる者がいた。


 沼にいたグレンデルが気付いて飛び掛かって来たのである。


「あ!」

「マイティ危ない!」


 ゴン!!


 飛び掛かって来たグレンデルを、瑞希が戦斧の面の部分で叩き落としていた。

 すぐさま、瑞希は、叩き落したグレンデルに戦斧を振りかぶり、高くシャンプして、地面に叩きつけるように振り下ろした。


「おりゃあ!」

 ドス!!!


 沼から来たグレンデルは、瑞希のジャンプ攻撃により、頭から胸まで二つに割れて地面に張り付き絶命していた。


「すっご‥」

 俺はそれを見て、言葉を漏らした。


「後は新だけね」

「‥‥お前、実はこの世界あってるんじゃないか‥」


 クインが言ってた、離れた所にいるグレンデルを探す。


 クインの索敵によりすぐに、そいつは見つかった。

「いたいた」


 グレンデルは、捕食する魔物を探しているようだった。


 俺は後ろから忍びより、左手に可燃ガスをイメージした炎を具現化する。

 そして、火炎放射器を想像し、それを具現化させた。


 ブオオオオオオオオオーー


 青い炎は、赤い炎と混じりあいながら、グレンデルを包む。


 グアアアア!!


 苦しんでいるが、俺は火炎放射をやめない。

 毛と皮膚が焼けた匂いが辺りを包む。


 膝を付き苦しんでいるグレンデルの首を俺は剣で刎ねた。


 クオオオオオーーー!!


 向こうの洞窟の方から遠吠えのような物が聞こえた。


「ふむ、気付かれたな、逃げるぞ!ふっふー」

「やば!」


 すぐに、俺達は森の奥へ逃げた。


「もう‥新!あんたが派手に燃やすから気付かれたんじゃないの?」

「えーーそんなこと言ったって‥」

 瑞希が走りながらそう言って来た。


「獣だから鼻よさそうですものね」

 マイティまでそう言った。


 どうやら、振り切ったようだった。


「ふむ。大丈夫そうだな‥ふー」

「はあ‥はあ‥助かった」

「はあ‥ほら、私達、力強いんだから一撃で首刎ねればよかったんじゃないの?‥はあ‥」

「ご、ごもっともでした‥」


 逃げた先で皆、息を整えていた。


「アラタさん達、なんでそんなに身体能力高いんですか?」

 レベッカがそんなこと聞いてきた。


「ああ‥これは‥その俺達の国の人間って最初から身体能力が高いと言うか‥」

「へ~、そうなんですね」


 息も整って、帰ろうとした。

「あ‥やっば、討伐の証‥」

「あ‥」

「どうします?戻りますか?」


 新は考えていた。


「ふむ、その必要はなさそうじゃぞ、ふっふ」


 クインがそう言った。


「なんで?」

「今はもうおらんが、ホルンを出た時からずっと、つけて来てる者がおった、多分、ギルドの査定員か何かだろう、ふっふ」


 その言葉を聞いて、グレンデルの沼を迂回するようにホルンへ戻ることにした。


 ◇


 冒険者ギルドへ着いた。


「おめでとうにゃん!これで、君達はCランクにゃん」

「えっと‥討伐の証がないんですけど?」

「ウチの査定員が、ちゃんと見てたから大丈夫にゃん!」


 猫耳姉さんが、チラっと見た方向に、ヒョウ顔の獣人が腕組みして壁に背もたれていた。


「ふむ、ほらな、ふっふ」

 クインはそう言って鼻を吹いた。


「後から、グレンデルの皮はこちらで回収するにゃん、そして、これが今回の報酬で、グレンデル一体につき金貨1枚と達成報酬金貨3枚、人数分に分けておくにゃ」


 4人の冒険者カードを、Cランクに書き換えて貰った。


「あ、それからにゃ、Cランク以上だと、各地のダンジョンに挑戦できるにゃ!」

「ダンジョン?」


 猫耳受付嬢の話によると。


 ダンジョンとは、生き物であると言う。


 魔素はこの世界に溢れている、魔法の源でもあり、魔物を産みだす力になっているのだと言う、その魔素が充満しているため、魔物も自然発生するし、宝物などもある。


 ただし、死んでしまうと、魔物も人も、その死体はダンジョンに吸収されてしまうため、残らないのだと言った。


 ダンジョンはその特有の宝物で、冒険者を誘き出してその魔物と人の死体を吸収して成長していくらしい。


 そして、そのダンジョンからのドロップ品は、どんな物があるか教えてくれた。


 ダンジョンにもよるが、宝石、魔石、金塊、などは勿論の事、武器防具などがドロップするらしい。


 このダンジョンから出る、武器防具が凄いらしく、一般では作ることが出来ない物が出るのだと言った。


「アラタにゃんは、鑑定スキル持ちだったにゃん?」

「うん」

「これ鑑定みてみてにゃん」


 そこに出したのは、豪華な装飾の短剣だった。

 鑑定スキルで見てみると。


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【ポイズンダガー】

 ミスリル製。

 猛毒付与:100%

 敏捷上昇:4%増加(装備時)

 自己修復

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「ポイズンダガー?‥」

「そうにゃ、わざわざ毒を塗らにゃくても、確実に毒を付与するにゃん、そして凄いのは敏捷性アップにゃん、ステータスが上がる物は貴重にゃん、身体能力が高ければ高いほど強くなるからにゃん」


「それは凄いですね‥」


「そして、自己修復!これが地味に凄いにゃん、ダンジョン産は世界にその1品しかないから壊れてしまったら無くってしまうけど、これがついているだけで多少の刃こぼれとか治ってしまうにゃん」


 新達は、ほうほうと聞き入っていた。


「このダンジョン産の武器や防具についている付与を、魔法付与マジックと我々は言ってるにゃん、この短剣にはマジックが3つ付与されているってことにゃん」


「なるほど‥」


「この近くだと、この町から西に行った所にあるボルボンって町にダンジョンがあるにゃん、死んでも良いにゃら、一度行ってみると良いにゃん!運が良ければ凄い物が手に入るかもしれにゃいにゃん」


 おいおい‥この人いつもサラッと危ない事言うよな‥


「あ!猫耳さん、宝石ってさ、まさか傷のない宝石とかですか?」

「よく知ってるにゃん?そう、ダンジョン産は採掘で出て来る宝石より、傷がにゃいにゃん、王都のお金持ちはみんなダンジョン産の宝石で作ったアクセサリーをつけてるにゃん」


 あった!やはり、親父の壺に入っていた宝石はこのダンジョン産だ。


「わかった、その内、行ってみるよ説明有難う」

「ダンジョンの血肉にならないよう願ってるにゃん!」


 それを聞いて冒険者ギルドを出た。


「ダンジョンねぇ‥益々、ゲームの世界だねこりゃ」

 瑞希がそう言った。


「まあな、とりあえず、パンケーキ屋をオープンさせたら行ってみようか」

「私がCランクでダンジョン探索‥」

 マイティは、Cランクに上がり、ダンジョン探索出来る自分に喜びを感じていた。



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後書き。


ここまで順調に書いて参りました。

たった四日で沢山の方に見て頂き、☆や♡など頂いてやる気マックスでございます。


これからも頑張って執筆しますので宜しくお願い致します。(*^_^*)

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