第15話 開店準備

 朝、目が覚めて、店舗の方に降りると、女性陣が集まって何か屯っていた。


「おはよう」

「おはようございます!マスター!」

「アラタさんおはよう」


 何してんだ‥


「アラタさん、あの髪を洗う液体、凄いです、髪に指がひっかかりません」

 マイティがそう言った。


「え?」

「マスター‥身体からずっと良い匂いが残ってますよ‥奴隷がこんなに綺麗でいいのでしょうか‥」


 マリルレットもそんなこと言っていた。


「ああ‥それは良かった」

 これは‥そう言えば、この世界の女性ってみんなパサパサな髪してるような気がする‥


 バタン!

 なんだ?


 そこに現れたのはミーナさんだった。

「アラタさん!シルビアのあれはなんですの?」

「はい?」

 ミーナさんがいつもより、凄い剣幕だ。


「あの、髪です!」

 シルビアの髪を指差す。


 やはりそれか‥

「朝から、私を迎えに来たかと思えば、やけに良い匂いと、ツヤがあるんですもの!」


 どうやら、シルビアさん、自分の綺麗になった髪を見せびらかしに、行ったんだなきっと。


「ははは‥み、ミーナさんも、今、湯浴びしてきたらどうでしょうか?‥」

「そのつもりでしたわ!ちゃんと用意して来ましたから」


 あら、準備のよろしいことで‥

 ミーナさんは、一目散に湯浴び部屋へ行ってしまった。


 俺は、小さく溜息をついた。


「はは、マスター、女達は大変ですね、男の私もすべすべになったくらいですから、女達はもっと騒ぐでしょうねあれは、一年分の汚れが落ちたような感覚ですよ、ははは」


 ジョランさんが俺の傍に来てそう言った。


「ああ、それはいいとジョランさん、ここにカウンターを作ってこっちの中で調理をしたいんですけど、作ってくれる人っているんですかね?」

「んー、ドワーフが適任だと思いますが、マスターが商人ギルドで手配して貰った方が腕のいいのが見つかるかもしれませんよ?」

「わかりました、行ってみます」


 俺は、商人ギルドへ向かうことにした。


 今回は、ついでに密閉した瓶に100gの砂糖を入れて売って、金貨12枚で取引したのだった。


 この世界のバランスを崩さぬよう、小出しに稼がなければ‥


 そして、ギルドマスターのベスタさんに、エグバート工房と言う一流の工房を紹介してもらった。


 ◇


 エグバート工房‥ここか。

「すみませーん」

「ん?なんじゃ!」

「あの、商人ギルドのベスタさんからの紹介でここに来たんですが」

「ベスタの紹介?」


 その工房はまあまあの広さで、いろいろな物をドワーフ数人が作っていた。


 俺には、ドワーフがみんな同じ顔に見えた‥髭の長さとか服装でないと判断できないぞこれは‥


「儂がエグバートじゃ。見ての通り大忙しじゃ、ベスタの頼みらしいから一応聞いてやるぞい」

「あの、店舗のカウンターを作って貰いたいんですが」

「むう‥大工か‥まあ良いじゃろう、そんなもん、3時間あれば作ってやるわい。ベスタにはちょっとした恩があるからのぉ…任せとけ!ほっほっほ」


 一応、承諾してくれたので、店舗の場所を教えて、手書きの見取り図を描いてた俺は説明もちゃんとして戻った。


 次は、みんなにパンケーキの作り方と焼き方を教えなきゃならない。

 そして、買い込んだと言っても今持っている物だけじゃ、物足りないから、もう一度地球に仕入れに行かないといけない。


 店舗に戻り。


 次は、ミーナさん、ジョランさん、シルビアさん、マリル4人にパンケーキのレシピと焼き方を教えないといけない。


 ざっと、俺が一度、生地を作って見せて、皆にそれをさせた。


 そして、また俺がフライパンで作って、みんなにそれをやらせる。


 簡単な作業なので、皆、ちゃんと出来た‥いや、マリルのだけが何故か歪な形をしていた。


 普通に、オタマから生地を垂らせば丸くなるはずなのだが‥

 それから、結局、丸く綺麗になるまで何枚か歪なパンケーキが出来た。


 大丈夫、味は分量を図っているから問題ない。


 練習で作ったパンケーキは、ミーナとカゼルの子供リックとリーナとシルビア、ジョランの子供ジルとメイラも呼んでいたので、余ることはない。


 そうこうしている間に、ドワーフのエグバート達3人で作業をしにきた。


 頭領のエグバートに、ここから、ここまでがカウンターで、この中で、ここで調理して、ここで盛り付けして、ここで会計をすると、あらたは細かく説明を入れた。


 そして、入り口の門をアーチ状に作ってもらい、少しお洒落にしてもらった。


 本当にドワーフは、物作りの天才だった、簡単な説明だけであっという間に作ってしまった。3時間とか言っていたけど結局2時間ほどだった。


「じゃあ、アラタ殿、今回の工賃は材料込みで金貨5枚じゃ」


 安いな‥

 工賃を金貨5枚支払った。


 後から聞いた話だが、この世界は木はいくらでも生えてるし、木材なら格安なんだそうだ、そう殆ど工賃なのだと言う。しかもドワーフの腕に掛かれば、粘土を捏ねるような物だそうだ。


 すでに、昼を越えていたので遅くなる前に、俺は地球に行くことにした。


「ちょっと、俺行くとこあるから、ミーナさん任せていいですか?」

「あ!ちょっとまってアラタさん」


 ミーナさんに呼び止められた俺は、入り口で立ち止まった。


「アラタさん、あの身体を洗う石鹸と、髪を洗う液体。あれも、作り方分かりますか?」

「え‥ああ、まあなんとなくは‥」

「あれも、相当な物だと思いますよ!売れます!!」


 商売人だなぁ‥

 ミーナさん曰く、この世界の石鹸で、身体も髪も洗うらしいが、それは、木灰に動物や魔物を焼いた時に出る油を使用して、石鹸に似たような物を使っていると言った。香りは花のエキスを混ぜて多少は良い匂いがするらしい。


 そして、俺が持ち込んだ石鹸、シャンプーは、この世界では革命を起こすとまでミーナさんは言った。


「ああ、わかりました、それも今度たくさん持って来ますから」


 そう言って、俺は地球へ向かったのだった。


 ◇


 地球へ戻り、また車に乗り込む。

 俺は、このまま商売をするのなら、箱買いしかないと思い、ホットケーキミックスの会社に電話をしたが、勿論だが、問屋を通してくれと言われたので、そっちに連絡して箱買いの契約は出来た。


 それを、車で取りに行くことにした。

 それから、向こうでは手に入りにくい蜂蜜だ。


 卵と牛乳はなんとかなりそうだった。

 鶏はいたし、牛と言うか、近いブラックブルホーンという牛に似た大人しい魔物の雌から牛乳みたいな物は採れるのは聞いた。


 それはその内、試してみようと思う。


 地球にいる間に、いろいろとググってみたが、ホットケーキミックスは流石にベーキングパウダーが異世界では手に入りにくいというか作るのが大変だから、買った方が早い。


 石鹸もシャンプーも意外と簡単に作れることもわかった。


 とりあえず、ホットケーキミックスの問屋に箱買いで沢山積み込んでから、スーパーへ寄った。


 石鹸と、シャンプーリンス入りをあるだけ買う。


「おい、あらた!」

 ん?誰だ?


 そこにいたのは、同級生の川村たいしだった。

 こいつも瑞希と同じ小学生から一緒だ、この近くの総菜屋の息子だ。


「ああ‥たいしか、久しぶりだな」

「久しぶりだな、お前‥なんだよその石鹸の量‥とうとうお前‥性病とか」

「はあ?ちげーし、石鹸アートでもしようと思ってんだよ!」

「ほお?アートねぇ‥そう言えば親父さん残念だったな‥まあ、頑張れよ!じゃあな!」


 レジのおばさんが笑っていた。

 くそ、あいつのせいで笑われたじゃないか‥


 後は酒屋に寄って、ウイスキーとか紅茶、コーヒーとか買っていこう。


 車の中で全て、マジックボックスへ仕舞っていく。


 やっと、帰り着いて駐車場に車を停める。


 電話が鳴っているのに気付きダッシュで家に入る。

 遠い親戚のおばさんだった。


「ああ、納骨堂の場所は‥‥‥うん、うん、わかった、大丈夫、はい」


 ふう‥あ!もうこんな時間だ!


 急いで新は、魔法陣に手を翳し中へ入った、すると。

「ちょ、ちょっと!新!!」

「え?」


 声のした方を振り返ると、ビニール袋を持って立っている、瑞希だった。

 俺の身体半分は壁の中だった。

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