第13話  奴隷商会

 あらたとミーナさんは、パンケーキ屋をするために、物件を契約してカゼルさんの店に戻った。


「ミーナさん、さっきの奴隷ってのは何なんですか?」

「奴隷ってのはね、人身売買とは違うけど‥ほら、あそこ見てみて」


 ミーナさんが店先の人達を指差した。

 そこには、しっかりした服を着た老人が、獣人の女性を連れていた。


「あの人はね、この町では有名なお金持ちの、お爺さんなんだけど、ああやって獣人の奴隷をいつも連れて散歩に行くのよ」


 俺は、その光景を見て、なんか奴隷のイメージって背中をムチで叩かれ、働かされている感じがしてたけど‥奴隷の獣人の方が、お爺さんを進んで守っているようなそんな感じがした。


「奴隷の獣人さん、凄く楽しそうな表情してますね。なんか俺のイメージは無下に扱われているそんな感じを思っていました」


「そうね、そこは、奴隷を扱う主人によるわね。今は、奴隷に対するお給料もある程度、奴隷法で決まっているから、お給料も貰えない奴隷はいないと思うけど昔は酷かったみたいよ」


 ふーんと言いながら、新は、聞いていた。


「奴隷の良い所はね、魔法でその人の魂に呪術を施すの、そうすることで裏切ったり、邪な考えを起こそうとすると、激しい頭痛に襲われたり、下手したら死に至ることもあるわ、だから、主人の思い通りに働かすことが出来るのよ」


「はあ、なるほど、それで秘密などを厳守出来るって事ですか?」

「そうそう、とりあえず、奴隷商会に行ってみたらよいと思いますよ。私も行きましょうか?」

「お願いします」


 ミーナさんも一緒に、奴隷商会に行ってくれると言う事で、お願いしてついて来て貰うことにした。


 ◇


 そこは、ホルンでも少し治安の悪い所で、あまり良い雰囲気ではなかったが、奴隷商会の建物はそこそこ立派だった、頑丈そうな石で作られた屋敷で3階建て、庭や入り口にも数名の守衛ぽい人達が、武装して見回りをしているのも見えた。


 コンコン‥

 カチャ。


 扉をあけたのは、黒い正装のような服装をした、男性だった。

「ここは奴隷商会ですが、何か御用ですか?」

「奴隷を雇いたいんだけど見せて貰えるかしら?」


 ミーナさんが黒服にそう言うと、こちらへと手で建物の中へと合図した。


 黒服について行くと、沢山の部屋があるのが見えた。


「こちらでお待ちを」

 応接間になっている部屋へ通され、そこの椅子に二人で座る。

 部屋の中は、多分、30坪はあるだろう応接間で広かった、そして、いろいろな物が飾られていて、中世の貴族の館みたいな雰囲気の部屋だった。


 暫くすると、人相の悪いひょろっとした、細身の男がやって来た。


「いらっしゃい、奴隷を雇いたいと」

「はい」


 その人相の悪い男は、対面の椅子に座る。


「私は、ホルン奴隷商会の商会長のゲルミナルと申します。お見知り置きを。さて、初めてのご利用ですかな?」


 ミーナさんを俺は見たが、ミーナさんは首を横に振った。


「はい」

「それでは、最初から説明しましょう」


 ゲルミナル商会長は、説明を始めた。


 奴隷には、借金奴隷、軽犯奴隷、終身奴隷、3種類あるようで。


 〇借金奴隷

 何かの理由で多額借金を持っており、奴隷商会が借金ごと買い取って、奴隷とする人達である。奴隷商会の支払った金額と、利息を含めた額を納めれば開放される奴隷だが、その利息は地球の闇金くらい高額らしい。


 〇軽犯奴隷

 窃盗など、軽い犯罪をして捕まり、犯罪にもよるが国から決められた額を国に納めないと開放はされない。これも、奴隷商会への呪術管理料も支払いも合わせると、そこそこ高額らしい。


 〇終身奴隷

 文字通り死ぬまで奴隷、重罪な犯罪、盗賊、山賊などの殺人をやったことのある人達、人生の最後まで罪を償わせる奴隷である。勿論、呪術も最大級の物を施す。

就く職などは、下水の掃除、実験台、軍隊の最前線など危ない物が多いが、模範奴隷になると緩和の余地はある。



「ここまで宜しいでしょうか?」

「はい。」

「それから、次は、単身奴隷と家族奴隷についてです」



 〇単身奴隷

 種族、性別は問わず、紹介料は大人1人につき金貨20枚、子供なら10枚。


 〇家族奴隷

 親が奴隷落ちしてしまい、子供に罪はないが放置するわけにも行かず、家族ごと雇う奴隷。紹介料は大人1人につき金貨15枚。その子供は無料。


「それから、奴隷のお給料に関してですが」


 〇奴隷の給料

 給料はどんなことをやらせても、一日銀貨3枚以上が基本、貰った給料の半分は個人へ、もう半分は奴隷商会へ徴収される。



「と、なっておりますが‥いかがでしょうか?」

「わかりました‥そうですね、やはり借金奴隷でしょうかね。それから、出来れば飲食店なので、清潔感がある人が良いかと思います」


 新の発言にミーナは頷いた。


「飲食店ですか、なら、獣人系は避けた方が宜しいですね、人間かエルフか‥」


 ゲルミナルは、手をパンパンと叩くと、後ろに立っていた黒服が外へ出て行った。


 暫くすると、ぞろぞろと何人か奴隷達が、広い応接間に入って来た。

 大人が8人、子供が2人。みんな俯いて、やつれているようにも見えた。


「アラタ様のお店に見合う人達を連れて参りました、この紙にこの奴隷達の詳細は書いてありますが、質問などは自由にしても結構ですので」


 新とミーナはその書類に目を通していた。


「え?シルビア?」

「ん?ミーナさん知り合いですか?」

「はい‥子供達を通じて知り合いになったママ友です‥」


 ミーナは、席を立ち、広間に並んでいた女性に駆け寄り声を掛ける。

「シルビア?」

「え?ミーナ‥」

「何でここに?」

「あ‥夫の事業が‥」


 ミーナとシルビアって人の話を聞いていると、どうやら夫は運搬業をしていたらしいが、盗賊に襲われて護衛の冒険者は惨殺、馬と荷物を載せた馬車を切り離し、馬で命辛々逃げて帰って来たらしい。

 仕事に使う馬車もなくなり、運搬していた荷物が高額だったこともあり、止む無く、弁償のため借金落ちしたのだと言う。


 その、シルビアって人の隣で泣いているのが夫で、後ろにいる二人の子供が、リック達の友達なのだろう。


「ゲルミナルさん、あそこのシルビアって人の家族を雇います」

「有難うございます」

「え?アラタさん良いのですか?」

 ミーナさんが振り返って俺にそう言った。


「ミーナさんの知り合いなんでしょ?だったら仕事もしやすいと思うし」

「アラタさん‥有難うございます‥」


 ゲルミナルは、人相の悪い顔で微笑んだ。


「他は宜しいですか?」

 俺は書類とその人物を見る。

 まず、パンケーキ屋だから男はいらない‥やっぱ女性じゃないと印象が全然違うからね。

 すると、褐色の肌のダークエルフの女性が目に付いた、容姿は申し分ない、しかし、何故奴隷に、書類に目を通すと。


 〇名前 マリルレット・シング

 性別:女

 種族:ダークエルフ

 性格:おっちょこちょいな性格。

 貴族のメイドとして働く、しかし高価な物を何度も壊してしまい借金奴隷に、もう一度奴隷として働くも同様の理由から追放され、今に至る。多額の借金あり、2度追放されている。


 ‥‥‥追放‥2度も。

 これは、あかんやつか?

 いや、しかし、容姿だけなら看板にもなるぞ?ちゃんと、教育すればなんとかなるんじゃないのか?‥それに、高価な物なんて置くつもりもないからな。


「アラタさん、先程からあの子を見ていますが、良いんですか?性奴隷なら使えなくもなさそうですが‥本人はそれは絶対嫌だと言うのでね‥仕事となると、私は推薦致しかねますが‥」

「性奴隷!?ああ、そういう使い方もあるのか‥いやいや、違う‥」


 結局俺は、エルフと言うファンタジーな所に負けてしまい、マリルレットを雇うことにしたのだった。


「それでは、紹介料は、シルビア・サイレス家族4人が金貨30枚、マリルレット・シングが金貨20枚で合計、金貨50枚になります。なお、奴隷に衣食住を与えるのは主人の義務となっております。これを破った場合、奴隷法23条により、奴隷を商会が連れ戻し、罰則金を一人につき金貨50枚を頂きますが大丈夫でしょうか?」


「はあ‥はい」


 俺は、マジックボックスから金貨50枚を取り出して支払った。


「アラタ様、この度は奴隷達を雇ってくれて有難うございました、一日も早く奴隷から彼らを開放してやってください」


 このゲルミナルって人、人相悪いけど、ちゃんと奴隷達の事考えてくれているんだな‥


「あと、ちゃんと給料の規定などは守ってくださいね、それから、仕事を始めた時からの開始で良いので、奴隷達が給料を貰い始めた所から、こちらの支払いも開始しますので、集金は月一こちらから奴隷達の元へ行きます」


「はい。わかりました」

「そして呪術は今から行いますので別室に来て貰えますでしょうか?」


 それから、俺は、ジョラン、シルビアさんとダークエルフのマリルレットと別室に移動した。


 ゲルミナルさんが、呪術魔法を唱え、首の後ろあたりに何か文字のような術印を書いた。


「お前達はこれから、このアラタ様を主とし、裏切らない事、邪な考えを起こさない事を誓うのだ」

「「「はい、承知しました」」」


 ゲルミナルは、俺にどうぞとジェスチャーした。


「コホン、俺の仕事は特殊な物を使うことが多いので、使っている物、レシピなどは他言無用、持ち出し禁止でお願いします。後、ミーナさんの言葉にも従ってください」


「「「わかりました」」」


 ゲルミナルは、何やら呪文を唱えて奴隷呪術を定着させていた。


「これで、アラタ様の仕事などに関する事は厳守されることでしょう、そしてお前達は、これに反することがあった場合、呪術で命を失う可能性もあると思って精進せよ」


 そう言って、呪術を行った部屋を出た。

 ミーナさんがシルビアの子供、ジルとメイラの面倒を見ていたがこちらに気付いて俺に会釈した。


 今回雇った奴隷従業員は。

 ジョラン・サイレス、シルビア・サイレス、その息子ジル、娘メイラ、ダークエルフのおっちょこちょいマリルレット・シング、この5人である。


 大金が入って、大金を使った‥これから本格的にこの世界で商売と冒険をして行かないといけない、そう思った新だった。


 後から聞いた事だが、奴隷は獣人が多いと聞いた、身体能力は人間より高いものの、人間より知能が短絡的な彼らは出産率も多くて、貧乏人がその分いると言う事が原因らしい。


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後書き。

カクヨムに来て頑張って一気に、思い出して書いております。


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