第12話 パンケーキ屋計画
商人ギルドを出てカゼルさんの店へ歩いていた。
なんか一気にお金持ちになったよ‥
砂糖と胡椒にはびっくりだ。
でもあれだ‥地球産の砂糖とか、あまり持ち込むとこの世界のバランスを崩しかねないわけだよなぁ。
これは、俺の祖国で作って持って来た希少な物ってことにしとくしかないな。
そのままだしな、考えて持ち込むことにしよう。
そうこう考えている間にカゼルさんの店についた。
「ミーナ‥本当にこの店、改装するのか?」
「勿論でしょ!このまま営業してても、砥石くらいしか売れないじゃない。私だってね、宿のおばさんなんてずっとやりたくないんです!」
ミーナさん、本当にパンケーキ屋やるつもりだわ‥
もうすでに、手前に置かれていた物が全て撤収されていた。
「あ、アラタさん!ミーナがパンケーキ屋するって聞かないんですよ」
「えっと‥」
「アラタさん!この人に言ってやってください、この店続けていても、お金にならないって」
こりゃまずいぞ‥
このままじゃ、夫婦喧嘩して俺のせいで別れる羽目になるじゃないのか‥
「ああ・・ミーナさん、ちょっと話しませんか?」
とりあえず、お店の奥で話をすることになった。
「この店はな、爺さんの、そのまた爺さんの代からずっと、続けて来た店なんだ、俺の代で潰したくはない‥」
「あなたの言い分はわかります。でも、雑貨屋なんて、売上もあまり期待できませんよ?それよりアラタさんのパンケーキ屋に転向した方が、絶対儲かると思いますわ」
「でも、それはアラタさんに頼らないと行けなくなるだろう」
二人がずっとこれじゃ、終わらないなぁ。
「あの‥提案なんですけど」
俺が口を挟むと、二人はこっちを見た。
「俺が、どこか店舗を借りてパンケーキ屋をして、ミーナさんがそこの責任者になるってのはどうでしょうか?そしたら、この店は従来通り、カゼルさんが雑貨屋出来ますし、ミーナさんのパンケーキの思いも通りますし、俺も、冒険をしながら商売出来るとなれば、凄く良くないかなと‥」
「おお!それは良い考えだな、うん」
「でも‥店舗を借りるとなるとそれなりのお金が必要になりますわよ‥」
「ああ、それなら大丈夫だと思います、金策のあてはありますから」
やっと二人は納得してくれて、話し合いは済んだ。
結局、そういう店舗は、商人ギルドが管理していると言うので。
また俺は、商人ギルドへ戻ることになった。
ミーナさんも一緒について行くと言うので、一緒に商人ギルドの前だ。
一緒に中へ入って、受付に行くと。
「あ!」
受付嬢がすぐに俺に気付いて、応接間にどうぞとすぐに個室に通された。
ミーナさんの方が驚いていて、俺はミーナさんの顔を見て苦笑いをした。
応接間に入ってソファに二人で座ると。
「アラタさん、何かしたんですか?」
「何かと言いますと?」
「いえ、あのいつも素っ気ない受付嬢があんなに顔色変えて案内するなんて」
「さ‥さあ‥はは」
すると、すぐに小太りのギルドマスターのベスタがやって来た。
「いやいやいや‥アラタ様!どうしました?ま、まさか先程のを返せと言うのでは‥」
「違いますよ」
「で、ですよねぇ‥で、何か忘れものでも?」
冷や汗をかきながら、そう言うベスタ。
「あれ?貴方様は‥カゼルさんとこの」
「はい、ミーナでございます、ベスタさん」
ミーナさんは、立ち上がり胸に手を添え会釈した。
「ああ、ベスタさん、この町で商売を始めたいんだけど、店舗って空いてますかね?」
俺はベスタさんにそう尋ねた。
「店舗ですか‥少々お待ちを‥」
ベスタは、後ろの書類棚をゴソゴソと探っていた。
「アラタ様が、店舗を借りられるとなると、それなり大通りに面した場所が宜しいのでしょうな?」
「ああ、そうだね、飲食店になるからそっちのほうが良いかな?」
「畏まりました」
まさか、異世界で商売をすることになるとはね‥
まあ、いざとなれば‥砂糖や胡椒を売れば倒産することはないかな‥
「あ、ありました!2軒ほど、アラタ様に見合う物がありました」
ベスタがこの町の地図を見せてくれた。
「めちゃくちゃ立地条件良いじゃないですか!ここ」
ミーナさんがの地図を見てそう言った。
俺は、それがどこなのかさっぱりわからかった。
「アラタ様は‥ピンと来られてないようなので、今から物件を見に行きますか?」
「うん、お願いします」
ベスタは、すぐに受付嬢に物件を紹介してくると言って、俺達を案内するため一緒に外に出た。
暫く一緒に歩く、それは、中央から少し北に行った場所だった。
大通りに面しており、囲いの塀があり石作りの3階建てで地下に倉庫があると言う。
「ここです、ここは昔貴族が、住宅兼、服屋を営んでた屋敷跡になりまして、1階がお店で、2,3階は住居で、地下に小さな倉庫があります」
広い‥屋敷って、これカゼルさんの店の3倍はあるぞ‥
1階は申し分ない広さで、2階に上ると、4つの部屋があり1つは湯浴びの部屋だった、3階には、大きな部屋が1つと、部屋が2つ。勿論、水洗トイレは各階に完備されていた。
計、1階のお店、部屋7つ、湯浴び1つ、トイレ3つ、地下1部屋ある屋敷だった。
「これは、凄く良い場所ですね、ここで月の家賃はどのくらいなのでしょう?」
ミーナさんがそう言ってベスタに聞いた。
「ここは、立地もいいので、月、金貨25枚となっております」
ベスタはそう答えたが、月に25万か‥まあ、わからなくもないなと俺は思った。
それから、あともう一軒も見たが、そっちはここよりは小さくて少し大通りから入った所にある場所で、月、金貨16枚だった。
「アラタさん、少し高いけど最初の方が良かったですわね」
「うん、俺もそう思った。しかも、パンケーキ1つ売って銀貨1枚としても、全然やっていけますよ」
そう、ミーナさんが考えるように、俺にも勝算はあった。
何故なら、この世界には甘味が殆どない状態である、そこに、あのフワフワの甘いパンケーキが登場したとすると、殆ど一人勝ちの商売となることは明白であった。
後は値段だ‥宿代が白鷲亭の普通の宿で、1泊銀貨1枚だ。
それを上回る銀貨2枚となると、相当な高級お菓子だ、果たしてそんな物売れるのだろうか?
ミーナさん曰く、王都の売っているお菓子でさえ、銀貨2枚すると言う、でも、俺の作った適当パンケーキの美味しさは、それを上回ると言う‥まあ、あれはホットケーキミックスの素晴らしさ一言に尽きるのだが。
これは議論の必要がありそうだ。
しかも、今、俺はこの世界では、宿住まいで住所なしだ。
ここを借りれば、住まいも出来て一石二鳥である。
「ベスタさん、じゃあ、最初の物件借ります」
「おお、気に言って貰えましたか!えっと、最初の月の家賃はサービスしますので、次の月からって事で宜しいですね」
「はい。それでいいよ」
場所はいきなり決まった。
「あとは‥」
「従業員ですわね」
うん、そうだ、従業員だ、いくらなんでもミーナさん一人でこの広さの店をやれるわけがない。
「アラタ様、従業員をお探しですかな?」
「うん、今それを考えた所だった」
「アラタ様、ミーナさん、従業員は一番良いのは、奴隷を使うことをお勧めします」
「なるほど!それですね」
え?奴隷?‥どゆこと?ベスタさんもミーナさんも、二人で納得していた。
それは後から説明すると言うので、とりあえず建物の契約をするために商人ギルドへ向かったのだった。
ベスタさんが、契約のための書類を持って来た。
「アラタ様、この契約書は魔法紙で出来ておりまして、もし、契約を破って逃げても居場所もすぐ分かりますので」
なんか怖い契約書だな‥さすが魔法の世界。
いろいろと、書く場所を埋めて、最後に血判をして完成した。
なんか、今日一日で、大金が転がり込んだり、物件を契約したり、夫婦の離婚を阻止したりと大変だったぞ‥
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