第11話 甘味と商人ギルド。
数日、俺達は依頼をこなした。
そして、銃器の訓練、ゲンムとの訓練も頑張った。
そこで、一日は休みにしようとレベッカ、マイティとも話をしていた。
結構、お金も貯まって来た。
俺は、元々持っていたお金もあったし、金貨25枚と銀貨4枚(日本円にして、254000円)。
レベッカ、マイティも、そこそこのお金も貯まったと言っていた。
それは、俺達が倒すとボロボロになる魔物の毛皮も、クインが倒すと殆ど一撃で仕留めるためその毛皮などが高くで売れたのも貢献していた。
クインはその見返りに、俺から甘い物を随時欲しがっていたのだ。
ある時、俺がこの世界に来たばかりの時にあった子供、リックとリーナの母親ミーナさんから、宿で声を掛けられた。
「アラタさん、この間私にも、ぱんけーき?って甘いお菓子を作ってくれていて有難うございました」
「ああ、ちゃんと食べて貰えましたか」
「それがね、リックとリーナが私の分を半分食べてしまっていて半分しか残ってなかったわ、ふふふ。」
「あいつら‥」
「良いのよ、子供ですから我慢できなかったのでしょう、あんな美味しい物だし」
「そうなんですね」
「そこで、アラタさん提案があるのだけれども‥」
ミーナさん改まってどうしたんだろう。
ミーナさんからの提案とは、あのパンケーキを売り物にしないかと言う事だった。
この世界の食事情を初めてミーナさんから聞くことになった。
まず、冒険者が持ち歩くのは、日持ちの良いあの硬いパンが主流で、魔物の肉などをその場で焼いて食べるのが普通、ここまでは俺も知っていた。
ここからが知らない食事情だった。
まず、だいたいの味付けは、塩のみ。
胡椒やスパイスはあるにはあるが、恐ろしく高額だと言う。
そして、砂糖もあるにはあるがそれも高額。
俺が作ったあのパンケーキは、ミーナさんが昔、カゼルさんと結婚する前にフェリオール王都に行った時に、贅沢をして食べたお菓子よりも美味しかったとか‥
そこで、俺をずっと捕まえようと待っていたらしい。
「アラタさん‥あんな物、あちこちバラまいてないでしょうね?」
「いえ‥ミーナさん家で、リック達に作ったのが初めてですよ?‥」
「ならよかったです‥あんなお菓子、王都でもそうそう食べれる物ではありませんから」
「そ‥そうなんですか?」
ミーナさんは、ほっとしていた。
「もし、あれを売るとしたら、王都で最低でも銀貨2枚は取れますわ」
「え‥あのパンケーキが銀貨2枚?」
銀貨2枚ってあの適当に焼いたパンケーキが2000円ってことだよな‥
これは‥まさか‥
「そうなんです。アラタさんがどんな貴重な物を使って、あのお菓子を作ったのか分かりませんが、もし、商売する気があるのなら、私と一緒にやりませんか?」
ミーナさん‥商売人の血が騒いでいませんかね‥
「はあ、これは意外でした、ちょっとやりたいかもです」
「ほんとですか!これで、あんな売れない雑貨屋を脱出できます!さっさと改装して、ぱんけーき屋に!」
「へ?‥それ、カゼルさん知っているんですか?」
「あの人には私から説得します!!」
ミーナさん人が変わったように、勢いが凄いんだけど‥
「だ、大丈夫なんですか‥それ‥」
「あ、一応念のためなんですが、アラタさん、商人ギルドで登録しておいた方が良いと思いますよ?」
「商人ギルドですか?‥」
商人ギルドはその名の通りで、冒険者ギルドと同様、どの国でも共通だそうだ。
商売をするには、絶対に商人ギルドの承認が必要で、もし無断でやったら国の兵士に捕まってしまうとのこと。
「なるほど‥それなら今日行って登録だけでもしてきます」
「はい、それが良いと思います」
ミーナさんにそう言われたので、俺は商人ギルドに行くことにした。
商人ギルドも、町の中央付近にあった。
扉をあけて、中へ入るとそこは、むさ苦しい冒険者ギルドとは全く違い、品がある感じの内装をしていた。
行き交う人もちゃんとした服装の人が多い。
受付に向かうと、そこに座っていた女性が相手をしてくれた。
「いらっしゃませ、商人ギルドに御用ですか?」
「あの‥登録をしたいのですが?」
「登録ですね。じゃあこちらにご記入を」
名前:アラタ・イセ、職業:冒険者Dランク、これだけでいいのかな?
紙を持って行くと、受付嬢は、いろいろと説明してくれた。
商人ギルドは一応誰でも登録できるが勿論ランクがあると言う事だった。
鉄のプレート:一応商人として登録している人。
銅のプレート:商売をそこそこやっている人。
銀のプレート:中級の商人として認められている人。
金のプレート:上級の商人これを持っているだけで相当な大物。
白金プレート:泣く子も黙る大商人。
この5種類に分けられるらしい。
「アラタ様ですね、はい、鉄のプレート、冒険者カードと同様の効果を持っていますので説明は不要ですね。これで登録は完了になります」
素っ気なく、受付嬢は鉄のプレートを出した。
それを俺は受け取った。
あ、そうだ、この間スーパーで買い込んだ時、調味料も買っていた中に砂糖と胡椒あったけど‥どれだけ高価なのか売ってみようかな。
もう一度、受付に戻った。
「あの‥」
「まだ何か御用ですか?」
「これ売りたいんですけど?」
マジックボックスから、砂糖のビニールに包まれた500gを出した。
不機嫌そうだった受付嬢は、一度袋を見て、一度目を離したが2度見した。
ガタッと立ち上がって袋を手に取ってみた。
「あのぉ‥」
「しょ‥少々お待ちください!!」
砂糖を持って奥に行ってしまった。
不味かったかなぁ‥ビニール袋なんてそう言えばこの世界にはないもんな‥
「あああ‥アラタ様‥こ、こちらへ、ど、どうぞ!」
なんかえらい、態度が変わったけど大丈夫か‥?
こちらって、あそこの扉か。
受付の隣にあった扉を開けて中へ入った。
そこは応接間になっていて、魔物の革で作った高級そうなソファとしっかりした机があった。
小太りのおっさんが走って来た。
「これはこれは、アラタ様、先程の品を拝見させてもらいました。こちらにお座りください」
俺は、そのソファに座った。
うん、これは中々座り心地の良いソファだ。
「私は、ホルン商人ギルドのマスターを任される、ベスタと申します」
「はい」
「アラタ様、この砂糖なんですが、この不思議な透明の袋から出してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
ベスタと言うギルドマスターは、ナイフで袋を少し切って、器に少し移す。
ルーペのような魔道具で確認している。
「こんな砂糖は見た事がない‥高品質、いや‥最高級品質ですね‥粒が全て均一になっていてこんなに不純物のなくて、湿気も入っていない砂糖を初めてみました‥」
やってしまったなこれは‥
俺は、そう思い苦笑いした。
「これで500gと言っておりましたが‥こんなにお売りになっても宜しいのでしょうか?」
「ああ‥不味いですよね?やっぱりやめ‥」
「いやいやいやいやいや!買い取りましょう!」
俺が止めようと言おうとしたらマスターの声で掻き消されてしまった。
「え?‥」
「100g金貨10枚でどうでしょうか?全部で金貨50枚‥」
へ?100g、金貨10枚?‥日本円で‥10万円!?
「えーーー!金貨50枚!?」
「ああああ!違います!全部で金貨60枚で!」
は????
何故、更に上がんの?
「だ‥だめでしょうか?」
「売ります‥」
「本当ですか?もう返しませんよ?」
「売ります!」
いやいや、あれスーパーで200円くらいよ‥いっても300円。
ヤバくないか‥いきなり金持ちになったぞ‥
安堵した顔になったベスタは大事そうに砂糖を抱えて持って行った。
そして、金貨60枚が入った麻袋をドンと机に置いた。
「えっと、ついでにと言ったらなんなんですが‥胡椒ってのもあるんですけど」
「なんと!コショウですと!」
マジックボックスから卓上胡椒を取り出した。
「マジックボックス!!アラタ様はマジックボックスもお持ちでしたか‥さぞ、名の知れた商人の関連の方でしたか‥すみません!」
もう、驚きすぎ‥
「これは、20gしか入ってない卓上胡椒ですけど」
手に取って、器に少し出してみた。
「こんなに粉末になるくらい潰してあるとは‥私が知っているのは荒い粒なんですが‥これも高品質ですな」
コト‥
机に胡椒を置いた。
「金貨5枚でどうでしょう?」
5万円来た‥
「売ります!」
まあ、大昔、胡椒は金銀と同じ価値って言われていただけあるな。
「受付の者が、アラタ様のオーラに気付かず申し訳ございませんでした。すぐに金のプレートを用意しますので少々お待ちを」
なんか‥受付の人に悪い事したかも‥
俺は、金のプレートと、金貨65枚のはいった麻袋をマジックボックスに入れて応接間を出ると、受付嬢が、めちゃくちゃ頭を下げていた。
そして、商人ギルドを後にした。
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