お仕置きなんですが
「お、お前たち! はやくこやつらを倒せ!」
壁ぎわまで後ろずさった枢機卿猊下が、盗賊たちに向かって叫ぶ。
「はぁ? そういうことを言うなら相応の報酬を――」
「い、いくらでも払う! 100000Gでも1000000Gでも!」
「……なるほど」
盗賊の頭と思わしき男がにやりと笑った。
「それなら、相応の仕事をしないとなぁ?」
僕たちの方を向いて、にやにやと嗜虐的な笑みを浮かべる。
――次の瞬間、彼がナイフを飛ばしてきたのがわかった。
「――っと!」
顔面めがけて飛んでくるそれをとっさの判断で避けながら、右手でナイフ柄を持ち、そのままミシェに近づく盗賊の腕を切る。
「ウ、ウガァアッ!?!?」
盗賊はなにが起こったのかわからないのか、辺りをうろうろと見回しながら転びそうになっている。
僕はその隙をついて、彼の顔面に蹴りを入れた。
頭に強い衝撃を喰らった盗賊はそのまま失神して、本棚へと大きな音を立てて崩れ落ちた。
バタバタと、その勢いを受けて本が僕たちの頭上へと落ちていく。
ひとりの盗賊がそれに巻き込まれたみたいで、頭に思い切り辞典をぶつけて気を失った。
――あとふたり。
「テ、テメエ!」
最後の盗賊がジョシュアくんを人質にとろうと近づく。
彼の目の前へと一気に跳ぶと――
「――あ、グァッ!?!?」
――その顔面に跳び膝蹴りをおみまいした。
盗賊はそのまま扉へ叩きつけられ、崩れ落ちる。
扉はガシャアと嫌な音を立てて、真っ二つに折れた。
――さて、これで盗賊はあとひとりだ。
「……な、なんだテメエ……」
盗賊の親玉が、目を見開いてこちらを見つめている。
「……忠告しておくよ。早く降参したほうがいい」
僕が口を開くと、盗賊がビクンと身体を跳ねさせる。
その後ろにいる枢機卿猊下は、今なにが起こっているのか飲み込めていないみたいだ。
「な、なにをしている! あんなものはハッタリだ! はやくしろ!」
やっと再起動した猊下が、盗賊に向かって叫んでいる。
「……オ、オレは……」
盗賊がわなわなと震えた。
「……やってやるぅ! オレはやってやるぞぉぉぉぉ!」
盗賊はそう叫ぶと、そのまま一直線に走りだした。
――ジョシュアくんの方に。
「……なっ!」
「ああああぁぁぁぁぁ!!」
――マズい!
ジョシュアくんの身体に、盗賊の短剣が襲い掛かる。
その銀色に光る刃が彼の首元を貫こうとして――
「……な」
「なんでっ!? なんでお前がっっ!?!?」
――とっさに差し出された僕の右腕で防がれた。
非常に痛い。右腕がものすごく熱い。
「……な、なんで俺を助けたんだ……?」
ジョシュアくんがぽかんと僕を見つめている。
正直なところいうと、自分でも理由なんてわからない。
でも、強いて言うなら――
「……助けなきゃって思ったから。かな」
ジョシュアくんの目が見開かれる。
身体はわなわなと震えていて、なにかに感動してみたいだ。
もしかしたら、僕はジョシュアくんの言ってほしいことを言い当てたのかもしれない。
――けど、今はそれより先に。
「……よくも」
困惑している盗賊の腕を掴む。
「な、なんだ!? 離せっ!? クソッ!? このバケモノがっ!?」
盗賊はなんとか手を離そうとあばれるけど、ビクとも動かない。
そして必死な盗賊の足をそのまま掬って――
「ジョシュアくんに手を出してくれた! ねっ!」
――地面へ向かって、一気に投げ飛ばした。
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