監視がつくことになったんですが
スキルの鑑定から何日かほど経って。
僕は、ギルドから少し離れた位置にある、少し良い宿へと泊まっていた。
S級冒険者だとか、裕福な商人なんかも泊まるような宿だ。
こんな宿に泊まれたのは任務の報酬……ではなく、ギルドの人たちに紹介してもらったからだった。
報酬もちゃんともらってはいるのだけど、今回のスキルについて、対応が決まるまでは依頼を出せないから、という理由である。
その理由自体はしっかりと納得できるものなのだけど、心情としてはここまで丁寧に対応してくれると逆に罪悪感が湧き出てしまう。
――色々服も買ってもらっちゃったし。
「……ショウさん、いますか?」
そんなことをぼーっと考えていると、ドアの向こうから人の声がした。
――アンさんだ。
「はい、いますよ」
「良かった。ショウさん、ドアを開けてくれませんか?」
あなたの処遇が決まりましたので。
そう語るアンさんの声色は、どこか明るかった。
そうして僕は、マキナさんの前に座っている。
部屋は彼の執務室。それだけの内容なんだろうなとは思うけど、どうしても緊張してしまう場所だ。
――ここに来るようなこと、そんなになかったし。
「……ショウ」
マキナさんが口を開いた。
「は、はいっ」
緊張のあまり声が裏返る。
――は、はずかしい……。
「ハハ、そんなに緊張しなくてもいいよ」
ほら、リラックスリラックス。
そう言ってくれるのはありがたいんですが、今の僕にとってはただの追い打ちですそれ……!
「……マスター。ショウさんが恥ずかしがっていますよ」
やめてあげてください。
アンさんがそう諫めると、マキナさんはやっと僕をなだめようとするのをやめてくれた。
……正直あんまりにもはずかしすぎて、もう瀕死の状態だ。
けどせめて、アンさんにお礼くらいはいっておかないと……。
「あ、ありがとうございます……」
――アンさんは嬉しそうに笑ってくれた。
よし、うまくいったみたいだ。
「……さて、本題に入ろうか」
その一言と同時に、マキナさんが声色を真面目なものへと変化させる。
彼の空気が変わったのを受けて、僕たちの表情も自然と引き締められていくのを感じた。
「結論を言うと、君には監視を付けて生活してもらうことになった」
「監視、ですか」
「そう。ギルドからの依頼だとかそう言った部分は変わらないけど、住居だけは用意させてもらう。監視役もいるからね」
「……やっぱり、その人と一緒に暮らさないといけないんですね」
「残念だけどそうなるね。ちなみにだけど、監視役はアマリア王女と法王台下からの推薦だ。」
「そ、そのふたりからですか……!」
「そうだね。まあ、実際に強く推しているのはアマリア殿下で、法王台下は了承しているだけみたいだけど」
――驚いた。
確かにアマリア殿下は、色々なところと関係を持っているお方だ。
でも、まさか交流が少ないといわれる教会ともかかわっていただなんて……!
……いや、ちょっと待てよ。
アマリア殿下と法王台下。
そのふたりから推薦を受けたということは、きっとものすごいエリートに違いない。
――もしかして僕、そんなすごい人とこれから一緒に暮らさないといけないのか……!?
「……あの、マキナさん」
「なんだい?」
「……その、監視の人というのは」
「――ボクです!」
その一言と同時に、執務室のドアが開かれる。
そのシルエットがあまりにも見慣れたものだったから、思わず幼馴染の名前をつぶやいてしまった。
「……ミシェ?」
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