また検査することになったんですが
「失礼します」
「し、失礼します……」
僕とアンさんは、スキルを鑑定するために、複雑な彫りが入れられた綺麗なドアを開ける。
部屋の中にはまだギルドマスターしかいなかったけど、いつもとは違う、どこか重々しい雰囲気をかもし出していた。
とりあえずすさまじいことになっているのはなんとなくわかるのだけど、それが具体的にどういったものなのかはまだわからないままだ。
いったいどうしてこうなったのか。
それは、遡ること数時間前の出来事だった――
「――ってことがあったんです」
スライムの穴で起きた一部始終を、僕たちはギルドに報告していた。
任務達成の報告でもあるし、予想外の出来事が起きたのでその対策を迫るための報告でもある。
スライムの穴は初心者が良く通る場所なので、ポイズンスライムのような危険なモンスターが出てしまった以上、色々考えないといけないことがあるのだ。
アンさんはそれを聞いて苦い顔をする。
彼女は真面目な人だから、きっと駆け出し冒険者を危険な目に合わせた自分が許せないのだろう。
「わかりました。ポイズンスライムについてはこちらで対応させていただきます」
ところで、とアンさん。
まだ聞きたいことがあるみたいだ。
「どうやってその状況を切り抜けたのですか?」
アンさんは困惑した目で僕たちを見ている。
信頼していない、というわけではないんだろう。
むしろ、僕のことをちゃんと知っているからこそ、他のふたりを守りながらポイズンスライムの群れを切り抜けたというのが信じられないみたいだ。
「それがすごいんだ!」
どう説明するべきか悩んでいたところ、ヤンくんがキラキラした目でそう叫ぶ。
「どういうことですか?」とアンさんが質問すると、
「蹴りひとつでポイズンスライムを全部倒したんだ!」
かっこよかったぞ! とヤンくん。
「……どういうことですか?」
「ヤンがポイズンスライムの毒を浴びそうになった瞬間、一気に動いてそいつらを全滅させたんです」
毒も傷も、誰も負っていませんでした。
ラーさんがそう付け加えると、アンさんが驚いたように僕を見る。
「ショウさん、本当ですか?」
「はい。理由は僕にもわからないんですが、彼らを守ろうとしたらそうなっちゃって……」
僕の言葉を聞いて、アンさんは深く考え込んでしまった。
「……ショウさん」
アンさんが真剣な目をして僕を見つめる。
「スキルの検査を行います。同行していただけますか」
「な、なんでですか……? 僕はスキルを持っていないはずじゃ……」
「ごくまれに、特定の条件によってスキルに目覚める人がいるのです。……もしかしたら、ショウさんもそのひとりかもしれません」
アンさんはそう答えた。
その声色はとても苦しそうで、僕は実はとんでもない体質の持ち主なのかもしれないことを悟った。
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