第58話 生産の続きとシオリの参加
『力線掌握ノ腕輪』を作ってから約2時間後。鍛冶部屋に入ってから5時間が経過し、現実世界では1時間が経ったことになる。
あの後は『魔銀』を素材として用いて作ってみたかったものを作ることにした。それは、前世で言うところの『電話』である。
惑星オルタでは、遠距離でのやりとりは『通信用水晶』と呼ばれるものでのやりとりだ。これは分かりやすく言ってしまうと、TV電話のようなものだ。相手の顔が見え、声も聞こえる。
しかし、私用する魔力は相当な量で、これを補充するためだけに雇われている魔法使いもいるくらいだ。
そしてかなりの大きさ(サッカーボールくらい)なので、安易に持ち運べないのだ。
アークはこのことを知識として(クレアの【
クレアに相談したところ、案外簡単にできそうだったので、今回作ってみたのだ。その完成品はこちら。
『通信ノ指輪』
レア度:☆☆☆☆☆
品質 :☆☆☆☆☆☆☆
能力 :〔遠距離通信〕〔魔力貯蔵〕〔サイズ自動調節〕
ただ単にシンプルな指輪でもよかったのだが、やはりデザインには凝りたいので、今回の意匠案は輪が重なっているものにした。平べったいX字と言えば分かるだろうか。
素材としたのは『空間魔銀のインゴット』だ。作成方法は前にやった方法と変わらずで、属性は〔時空間魔法〕の“空間”だけを用いた。“時”を入れてしまったらちょっと怖い結果になりそうだったので、今回はやめておいた。
そして、この指輪を作るときにしっかりと通信の能力が発現するようにイメージしながら魔力を流し込み、無事成功した。
ただ、〔魔力貯蔵〕の能力が発現したのは少し驚いた。まあ、通信に使う魔力が蓄えられるというのはかなりありがたいので、いいだろう。
この指輪は一応7つ作っておいた。自分用に、サクラ、シオリ、ミカゲ、ミルも婚約者4人、それといつも修行をしているメンバーのジンとツバキだ。ツバキは分からないが、アークは将来冒険者として修行をしているメンバー(一応シオリも含む)と活動したいと思っているのだ。
なので、この指輪を仲間の証としようと考えた。
「もう5時間経ったけど、まだ1時間しか経ってないってことだよね…?」
「ええ、そうですよ。ちなみに成長速度が1/5に加えて眠気もそれに合わせられているので、まだ眠くないでしょう?」
「――確かに。これはすごいね。でも、鍛冶関係は一通りやったから、取りあえずはもういいかなって思ってる。」
アークも5時間もぶっ続けで作業するのは疲れたであろう。考えていた案もやり尽くして、取りあえずは満足したようだ。
「それなら、次は別の部屋に行きませんか?」
「おお、いいね。なにをする部屋?」
「はい、調薬や錬金ができる部屋ですね。」
「ちょっとテイストが変わって気分転換になりそうだね。」
アークは調薬や錬金にも興味があったので案外すんなりと頷き、早速その部屋の入り口を開いた。
「―――おお、この部屋が…。」
広い空間が左右に分割されたような部屋で、右側に大きな魔法陣とその隣の中くらいの台に小さめの魔法陣がある。こちらが錬金をする方だろう。
左側には大きな深底の魔女の鍋みたいなものとそれより少し小さめな鍋があり、大きめな作業台には様々な種類の試験管や様々な作業道具が並べられている。
「雰囲気あるね~。早速なにか作ってみたいけど、どっちからやろう…。」
「取りあえず調薬からやりましょうか?錬金は調薬の後の方がいいと思います。」
クレアは下手な素材で錬金をされるとまた予想外なものが作られそうだったので先に調薬で下位のポーションを作り、それを素材にしてもしものことがないようにと考えたのだ。
「分かった。それじゃあ、まずは素材を創ろっか。」
調薬の知識は【
アークは調薬の基本、ポーションを作るために薬草を創り出した。
『リパ草』×20
レア度:☆
品質 :☆☆☆☆☆☆☆
詳細 :下級ポーションの材料となる薬草。
この『リパ草』は森などに必ずと言っていいほど生えている薬草で、採取してもすぐに生えてくる。それを利用して栽培をする人も多いんだとか。野生で生えているものよりも品質が上がるが、その分ちょっとお高い。誤差ではあるが。
アークは創り出したリパ草を、亜空間に放り込んだ。この亜空間は、〔火炎魔法〕〔水流魔法〕〔暴風魔法〕〔時魔法〕を付与した空間で、この中に物を入れておけば自然な乾燥具合にしてくれるのだ。
〔時魔法〕の効果で数秒が数時間になっているのですぐにリパ草を取り出すと、リパ草はカラッカラになっていた。
このリパ草をすり鉢など使わずに別の亜空間に入れて粉末にする。この亜空間には〔暴風魔法〕を強めに付与してあり、疑似ミキサーのようなイメージで創ってみた。
粉末状にしたリパ草は一旦亜空間に放置して、小さい方(それでもそこそこ大きい)の鍋に〔水流魔法〕で水を注ぐ。普通の水より魔法で出した水の方がポーションを作る上でいいとされているので〔水流魔法〕で水を出した。
正確には魔力を含んだ水なら〔水魔法〕〔水流魔法〕で出さなくても大丈夫なのだが。
水の量はピッタリ20L入れた。1Lにつき、薬草1房が1番効果が現れるからだ。
鍋を火にかけ、一定の温度にしてからリパ草の粉末を入れて沸騰しないように混ぜるのが一般的な作り方だ。しかし、火にかけるやり方は時間がかかるので、ここは〔火炎魔法〕と〔水流魔法〕を用いて最適な温度を維持するやり方を採用した。
水の温度を魔法により60℃前後の気泡がでない程度に調節しながらリパ草の粉末を投入していく。そのまま温度を維持しつつ、1分間程よーくかき混ぜれば完成だ。
この時、魔力を込めながらやればなおよいのだが、今回はあえて一般的なやり方をためすということで、魔力は注がない。
そうして出来たポーションはこちら。
『下級ポーション』20L
レア度:☆☆
品質 :☆☆☆☆☆☆
詳細 :傷や体力を癒やす回復薬。品質が高く、回復量は比較的多い。
一般的な作り方に従って作ったので、変な効果は現れなかった。それでも品質は高いのだが。色味は薄緑色で、緑茶のような感じだ。
ポーションは1瓶200mLなので、1Lで5瓶。20Lで100瓶となった。ポーションの容器は別に品質については気にしなくてもいいかなと思い、〔創造魔法〕で創り出した。
創り出したポーション用の瓶に丁寧にポーションを詰めて蓋をしたら、『下級ポーション』×100の完成だ!取りあえず“時空間収納”ではなく魔法袋の方に仕舞っておこう。
ある程度調薬の感覚は掴んだので、次は錬金に進みたい。
「――錬金は今作ったポーションを使ってみましょうか。今回はお試しということで、本格的なのはまた今度にしましょう。」
「あー、そうだね。それじゃあポーションを使ってやってみるね。」
アークは錬金の小さい方の魔法陣がある方に向かい、ポーションを2つ取り出した。そして、〔創造魔法〕で普通の包帯を創り出した。
それらを魔法陣の上に並べて、【
魔法陣が光り出し、素材たちが光の中に消えた。そして光が収まると、魔法陣の中央部にはポーション色をした包帯だけが置いてあった。
『回復ノ包帯』
レア度:☆☆☆
品質 :☆☆☆☆☆
詳細 :下級ポーションの効果が反映された包帯。巻いた部分に中級ポーション並の回復効果が得られる。
鑑定した結果がこちらだ。部分的にだが中級ポーション並の回復力があるとのことだ。骨折をしてしまった場合にはこれを巻けばいい感じになるだろう。これはこれで需要がありそうだ。
「いい着眼点でしたね。ポーションを使ってなにを作るのかと思いましたが、これはこれで使いやすいですね。」
「でしょー。…あ-、取りあえず今日はもう生産活動はいいかな…。あとはちょっと修行をして寝るだけかな。」
「そうですね。今日は取りあえず日課の修行で終わりましょうか。」
アークとクレアは亜空間の部屋からいつも修行で使っている亜空間へ移動し、そのまま試合形式の修行をしてこの日は終わった。
次の日の火ノ日。放課後となり、いつもの修行メンバーはアークの部屋に集合していた。いつもと違う点は、人数が1人増えたことだろう。
「えー、今日から一緒に修行に参加する、シオリです。挨拶をどうぞ。」
「ええ。3-Sのシオリよ。一応王族でサクラの姉だけど、仲良くしてね!特に、ミカゲちゃんとミルちゃん?」
なんだかなんとも言えない空気になっている。アークの婚約者というのもあるし、王族というのもあるし、更には婚約者同士という追い打ちもある。
「「よ、よろしくお願いします(です)…。シオリ様…。」」
「かたいかたい。将来の家族なんだから、様付けはやめてよね。それに、ジンくんもツバキちゃんも、普通に接してね。」
「はい、分かりました。」
「はい。」
シオリは皆と仲良くなりたいと思っているので畏まられたくないと思っていた。これから一緒に過ごす時間が増えてくるはずなので、学年や王族としての壁をなくしたいのだ。
「シオリは修行も毎回一緒にやるし、僕の婚約者だから皆仲良くしてね。」
「そういうことだから、よろしくね。段々慣れていってくれたら嬉しいわ。」
シオリはこの時、軽い気持ちで修行に参加していた。ただアークと一緒に過ごしたいがために。アークの部屋で行われている修行は思っているよりもかなりガチなのだ。
「それじゃあ修行始めるんだけど、シオリは刀術の修行、やる?」
「いいえ?私は素手での格闘が本職なの。だから刀術はやらないわ。」
「そっか。じゃあ、ミルとツバキと魔力操作の修行でいい?」
「ええ、いいわ。」
「それじゃあ今回は僕が刀術だから、クレア。シオリをよろしくね。」
「―――はい。シオリちゃん、よろしくお願いしますね。」
「―――――へ…?」
シオリは自分よりも少し年上であろう女の子が急に目の前に現れて思考が停止した。それも、宙に浮き、綺麗な羽が2対生えているのだ。驚くのも無理はないだろう。
「あ、シオリには紹介してなかったね。こちら、僕が契約している精霊のクレア。いつも僕たちの修行を手伝ってくれてるんだ。」
「そ、そうなのね…。よろしくお願いしますクレアさん…。」
こうしてシオリは魔力操作の最初の関門にぶち当たり、早速苦戦するのだった。
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今回までが一応1年生編です!次話から、2年生編へと入ります!
本当はもっと早く成人(15歳)にしようと思ってましたが、予定が狂いました!
徐々にペースアップすると思いますが、よろしくお願いします!!
2年生編は入替戦ともう1つのイベント+誕生日?的なの書いたら少し飛ばそうと思います!
ただ、ストックがかなりなくなってきてしまったので少し連載お休みさせて頂きます!!
よろしくお願いします~~
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