第40話 レギオンアント討伐作戦 完 ☆
「お前らァ!!討伐完了だァァァ!!!」
「「「「「「うおぉぉォォォ!!!!!」」」」」」
アークは無事にクイーンの討伐(氷漬け)に成功し、その後も冒険者たちと一緒に残党狩りを続けた。そして、最後の1体を討伐した後、リュウゾウによる宣言により討伐依頼完了が報された。冒険者たちは中規模だと聞いていたのだが、大規模であったレギオンアント討伐依頼をなんとか終えることができて喜びの雄叫びを上げていた。
「いや~、さすがに疲れたわ…。早く帰って休みたいわよ……。」
「そう?まあ確かにルーちゃん頑張ってたものね!お疲れ様!」
「……リンカは後ろでアークくんとお散歩してただけだものね…!!」
かなりお疲れのルーミニアに比べ、そんなに疲れた様子のないリンカはニコニコしながらルーミニアへと労いの言葉を掛けていた。ルーミニアとしては疲れもあってかかなりイラッときたようだ。
「そうだぜリンカ。本当ならポーション酔いで死んでるところだったのによ。アーク様々じゃねえか。」
「……うん…。さすがアーク…。」
「あら、シズは人前だと全然喋らなくなるのに喋るなんて珍しいわね。それに身内じゃない人について喋るなんて、もっと珍しいわ。」
シズは今まで全然喋ってこなかったが、自己紹介以外の時では今回で初めて口を開いた。
「……ん…。皆の弟……。つまり私の弟…!」
「ふふふ…。そうね。アークくんは『光翼の癒し』の公式弟だわ。」
シズは満足げな顔でうんうんと頷いていた。『光翼の癒し』では妹的存在であったシズは弟ができたことで姉となり、嬉しいようだ。
「あはは。公式弟ですか。なんだかいいですね。じゃあこれから―――――あ、あれ…?」
アークは会話の途中になんだか視界が回り出し、立っていられなくなった。今まで味わったことのないような気持ち悪さを感じ、両手両膝を地面についた。
「ア、アーク!大丈夫!?」
「アークくん!?どうしたの!?」
「お、おい大丈夫か!?」
『光翼の癒し』の面々はアークへ心配の声を掛けるが、アークは全く聞こえていなかった。手をついているのも辛くなり、そのままドテッと横に倒れる。
《―――これはレベルアップ酔いですね。アーク、そのまま寝てしまって大丈夫ですよ。私がなんとかしておきます。》
ご、ごめんクレア。あとは、よろしく……―――――
アークはそのまま眠りについた。それと同時にアークの頭上に魔法陣が現れ、その中からクレアが現れた。突如現れた顔立ちの整った美少女に周囲にいた面々は驚いていた。そして、その放つオーラは上位精霊のそれとは比べものにならない程であった。
「『光翼の癒し』の皆様、それに冒険者の皆様。初めまして、ですね。私はクレアと申します。『相棒の精霊』と言えばいいでしょうか、?」
これはリュウゾウとヤマト、『光翼の癒し』しか知らないことだが、あえてオーラを強めに出してこう言うことでアークに手を出すなと暗に伝えたのだ。普段はオーラなど完全に隠しているのだが、わざとこうしているのだ。
「お、おいおいマジかよ…!これドラゴン並にやべェぞ…!」
「うえっ!まじかギルマス…!」
お祝いモードであったリュウゾウや冒険者たちは騒ぎを聞きつけ駆けつけていた。
リュウゾウはかつて現役時代に対峙したドラゴンと同等であると認識した。クレアとしては8割ほど解放してこれであったのでかなり満足であった。実際クレアは従来の精霊の在り方とは違い、アークの成長と共に己も成長する在り方であるのだ。
正直クレアから見たアークはまだ生まれたての赤ちゃんであるという認識であるため、これから成長していけばドラゴンなど瞬殺できる程になる訳である。
「ふふふ。リュウゾウさん、申し訳ないのですが、アークはこのまま学院の寮の方へ連れて行きますね。あ、これは単なるレベルアップ酔いですので心配しないで下さい。私たちの修行方法が主に魔物を倒すものではなかったのでこうなってしまいましたね。」
クレアは皆へ心配をかけないようにレベルアップ酔いのことを伝えた。突然あんなことになったらそれは心配にもなるだろう。
「あ、ああ。こちらこそ申し訳なかったな。無理に引っ張り出しちまって…。さすがに急だったな。」
「いえいえ。結果的には良かったんですよ。アークのレベルアップにスキルアップ、それに、アークが参加していなかったら冒険者の皆様の半数の方は死んでいましたからね。」
クレアの言葉に全員がそのことを想像し、顔を青くしていた。確かにアークがいなかったらかなり厳しい戦いになっていただろうし、1日では達成できていなかったであろう。短くても3,4日はかかっていたと思われる。
「そうだな…。中規模だと聞いてなんだか嫌な予感がしてたんだが…。アークには借りを作っちまったようだな。」
「ふふふ。アークは貸しだなんて全く思ってもないでしょうね。むしろそういうことはあまり好きじゃないと思いますよ。だから、冒険者の皆様。なにかアークが困ってたら助けてあげて下さいね。それではまた。―――あ、リュウゾウさんに『光翼の癒し』の皆様。次の廻の無ノ日に向かわせますので学院には来なくて大丈夫ですからね。」
アークはかなり仲間思いであり、親しい人にはなんでもしてあげるような性格をしていることはクレアは知っている。そのため、これだけの人数がお礼だ何だで詰め寄られてもアークにとっては逆に申し訳ないと思ってしまうことだろう。なので、アークが困っているときに助けてあげてと言ったのだ。
そして、リュウゾウやリンカのことだから心配して学院に突撃してくると予想し、あらかじめ釘を刺しておいた。リュウゾウはただのサボりの口実なのだろうが。
そうしてクレアは転移の魔法でアークの部屋に飛んだ。
クレアが現れ、そのオーラに気圧されていたリュウゾウ以外の冒険者たちはようやく解放されたかのように息を吹き返した。クレアはAランク冒険者であるリンカやルーミニア、カールニア、タカにモリゾウまでも喋れなくなるほどの圧力を出していたのだ。
「なんなの……。あの精霊は…!上位精霊を遙かに上回っているじゃない…!」
「あの精霊がアークの相棒なのね…。最初からあのクレアって言う精霊を出していれば早く終わったんじゃないの…?」
「バ、バカ。あの精霊はアークの相棒なんだろ?アークと修行してるみたいなこと言ってたし、今回のも修行の一環ってことなんだよ、多分…。」
「あれほどの精霊が相棒だなんて、それはアークっちも強くなるっすね…。それに精霊さんも師匠的な立場なんだろうけど、アークっちは優秀だから羨ましいっすね~…。」
「んだんだ…。コルトとは比べものにならないだ。」
Aランク冒険者たちはもう既に復帰し、思い思いに喋っている。しかし、その他の冒険者たちは地面に倒れ込んだり座っていたりしていた。レギオンアント討伐依頼の疲れも上乗せされて、かなり堪えているようだ。
「あー…。ありゃあやべェな。属性精霊に当てはまらないかつ上位精霊を遙かに上回るってなると、神の眷属か何かじゃねえか…?」
「確かに、精霊王も属性ごとにいますからね…。それの上は聞いたこともないし、あながち間違ってないんじゃないですかね。」
リュウゾウとカールニアが言っていることは間違ってはいない。クレアの元となっている【
こうしてレギオンアント討伐依頼は完了し、その後の騒動も終え王都へ帰還した。
ここは学院の寮であるアークの部屋。内装が和モダンで統一された清潔感のある寝室でアークはカーテンから漏れた光の明るさに目を覚ました。
「―――あれ…。僕いつ寝たっけ……。」
寝た時の記憶が全くないアークは寝ぼけ眼でうんうん唸りながら考え始めた。
《―――おはようございます、アーク。昨日はレギオンアントの討伐依頼に参加して、レベルアップ酔いで倒れたんですよ。覚えてますか?》
「あ~…。そういえばそうだったね。さすがにあれは疲れたよ…。」
アークはクレアに言われてようやく気付いた。後処理を全て任せることになってしまって申し訳なかったと思ったが、後で謝ればいいかと考えていた。
《―――あともう少しで学院に行く時間となるので、早く朝食を食べましょうか。今日は朝の修行はなしですね。》
「え!もうそんな時間なの!急がなきゃ…!」
アークは急いで朝食を準備して食べ終え、着替えて身だしなみを整えて部屋を飛び出した。もちろん移動時はお面を付けるのは忘れない。
アークはかなり急いだがそれ程急がなくても余裕で間に合ったようだ。むしろかなり早く着いてしまって少し暇になってしまった。仲のいいメンバーは誰も来ていなかったのでなんだか寂しくなっている。
《―――アーク、ステータスの確認をしたらどうですか?私もアークと一緒に見ようと思って確認してないんです。》
あ、そうなんだね。じゃあ、一緒に見ようか。
そう心の中で応え、ステータスを他の人には見えないように出した。
【ステータス】
アーク=フォン=フォレストブルム
年齢:6歳 Lv.123
種族:ハーフエルフ?(強制隠蔽)
職業:神ノ使徒
称号:【転生者】【時空神の婚約者】【精霊に愛されし者】【シンラ国公爵】
●能力
固有能力:【
属性魔法:〔火魔法Lv.9〕〔水流魔法Lv.1〕〔暴風魔法Lv.3〕〔大地魔法Lv.1〕〔木魔法Lv.8〕〔光魔法Lv.9〕〔闇魔法Lv.8〕〔無魔法Lv.11〕
特殊魔法:〔創造魔法Lv.6〕〔鑑定魔法Lv.6〕〔時空間魔法Lv.8〕〔完全隠蔽魔法Lv.3〕〔力学魔法Lv.10〕〔結界魔法Lv.8〕〔幻影魔法Lv.6〕
固有魔法:〔精霊魔法Lv.13〕〔血魔法Lv.10〕〔生活魔法Lv.8〕
スキル:〔上級剣術Lv.1〕〔中級刀術Lv.1〕〔身体制御Lv.5〕〔魔力掌握Lv.5〕〔高速思考Lv.4〕〔多重思考Lv.6〕〔調理Lv.7〕(〔超絶倫Lv.2〕〔性欲制御Lv.2〕隠蔽中)
ひょえーー……。かなりレベル上がってるねぇ。魔法もスキルも修行の時とは比べものにならないくらいに上がってるし。
《―――ふふふ。かなりレギオンアントを倒しましたからね。これではさすがに倒れますね。》
前回から80近く上がったからね…。でも僕はレベルアップ酔いなんてあるの知らなかったよ。教えてくれてもよかったんじゃない?
《―――ええ、ごめんなさいね、アーク。後で埋め合わせはしますから。》
アークはクレアに対して文句を言った。確かにクレアは知っていたのだが、しかしそれを伝えてもどうしようもなかったのも事実なので、クレアはただ謝った。
でも、実際に戦ってみていい経験になったよね。僕に足りないところとか改善した方がいいところとか、魔法の使い方とかね。修行とは違った目線で見られるのは良かったよ。
《―――そうですね。私もこれからの修行方針を定めるのに役立ちました。今度の修行は少し趣を変えたものにしますから楽しみにしてて下さいね。》
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