第24話 クレアの紹介と修行開始

本日も2話投稿してます! 前話をお忘れなく!!


気付いたら1000PV超えてました!感激ですありがとうございます!!




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現在、アークを除く6名は口を開いたまま立ち尽くしている。




 ミカゲの意識は思ったよりも早く回復し、アークにめちゃめちゃ謝られたミカゲはもう一度気を失いかけたが、なんとかジンが早めに引き剥がしたことによって事なきを得た。


 そして、アークは皆を連れて転移しようとしたのだが、なぜかヤマトもついてくると言ってきた。孫が男の部屋に行くのが心配だからなどと一切思ってもないことをほざきながら、パチリとウインクまでしてきた。


 まあ秘密にすることもなにもない(あるにはあるが)ので別についてきてもいいのだが。


 寮の部屋は一応土足になっていたのだが、アークの部屋は土足厳禁に改装してしまったので、三和土たたき(靴を脱ぐスペースのこと)に転移することにした。


 そうして、皆を引き連れて転移したところ、冒頭の状況となった。




「ようこそ皆さん、僕の部屋へ~。ささ、靴を脱いでこの室内用の履き物に履き替えて下さいね。」


 アークは魔法袋からブラウン色のスリッパを人数分取り出し、床に並べた。キチンと足のサイズに合うように複数サイズを多めに創ってくれたクレアには感謝しかない。


「―――――男子寮は、こ、こんなにオシャレなのですか…?」


「…い、いや。僕の部屋はこんなんじゃないよ…。」


「ア、アークや。これは、どういうことなんじゃ?」


 皆が放心している中、ヤマトはこの部屋の変わり様についてアークに尋ねた。


「あ、ダサかったので、ちょっと変えてみました。…ダメでした?」


「い、いや、そんなことはないんじゃが…―――ふぅ、まあアークじゃからのぅ。こうなっても不思議じゃなかろうて…。」


 ヤマトは考えることを放棄し、諦めた。どうせあの爺の孫などこれくらい普通のことのようにやってのけるのだろうと、全てをあの爺の孫、という理由で完結させた。


「あの…。早く上がって下さい?」


 アークはみんなを急かし、スリッパを履かせてソファに座らせた。まだ放心状態の方が数名見られるが、しばらく経てば慣れるだろうと思い、放置した。


「はい、皆さん。これは僕のお気に入りの紅茶です。どうぞ~。」


 なんだかそわそわして落ち着かない皆に、紅茶を出した。フォレストピア大森林の中で生活していた時期に見つけた『パルフ草』というものを、クレアが〔時空間魔法〕を盛大に用いて作成したものだ。その製法はアークは知らない。


 クレアは、パルフ草を特殊な空間の中で揉みほぐし発酵させ、不純物等を除去して香りの強く、美味しさの詰まった紅茶をアークのためにつくったのだ。


〔創造魔法〕で創ることはできるのだが、それはあくまで品質は普通のものとして創られてしまい、クレアがつくったものと比べると、レベルが違う。


 ヤマトたちは紅茶から放たれる香気を感じると、あまりの香り高さに驚いた。そして各々が口に付けると、


「「「「「「お…おいしい(です)(のじゃ)……!!!」」」」」」


 満場一致の高評価であった。それを見たアークは、なんだかクレアが褒められているような気がして嬉しくなった。


「ア、アークや…これは高級茶葉として中々流通しないパルフ草の紅茶かのぅ!?」


「あ、はい、多分そうですよ。高級っていうのは知らなかったですけど。」


 へぇ~。これ高級茶葉だったんだ。案外森の奥に進んでみるといっぱいあったけど。


《―――パルフ草は魔力が豊富な森でしか育たないので、市場には滅多に出ませんので高級とされていますね。それに、おそらく1番おいしいです。》


 そうだったんだ。いっぱい取れてラッキーだったね!あ、クレア、ここにいる皆はなんだか関わりが深くなる様な気がするんだ。だからさ、紹介したいんだけど……いいかな?


 アークは唐突にそうクレアに言った。なんだかんだ言ってクレアはずっとアークの中にいたまんまで窮屈な想いをしているだろう。それに、アークはクレアと共に色々なところへ旅に出たいと考えていたので、いい先駆けとなると考えた。


《―――はい、分かりました。サクラちゃんにも挨拶したかったので、丁度いいでしょう。》


 よかった!まあヤマト爺もいるけど、色々話を通していた方が都合がいいと思うし、いいよね!


「あ、皆さん、ちょっと紹介したい人……人?まあいいか。が、いるので、紹介します。“精霊召喚”!」


 何もない空間に光り輝く魔法陣が浮かび上がり、その中から精霊体と化したクレアが現れる。その見た目は銀髪の10歳程の少女であるが、宙に浮いており、背中には魔力で象られた透明で綺麗な羽が2対存在しており、白いワンピースと相まって神秘的に感じられる。


「―――皆さん、初めまして。私はクレアと申します。一応精霊ですが、皆さんと同じ人として接してくれたら嬉しく思います。」


 クレアが簡単に自己紹介をすると、全員がポカンとして、固まった。しかし、その中でヤマトだけは小刻みに震え汗をダラダラと流していた。


「あ、あなたは…いえ、あなた様は―――――」


「おや、ヤマト様。それは言わなくていいんですよ?あなたになら感じることはできると思いますが。」


 ヤマトはかつて一度だけ会ったことのある大精霊とクレアが同格であることを感じ取り、すぐさま確認しようとしたが、クレアに止められる。


 実際にはクレアは自身の魔力や気配を抑えたが、ヤマトには分かってしまうようだ。さすがは【大賢者】である。


「いやはや……アークや。お主、さすがよのぅ…」


「え、僕がですか?……まあ、ありがとうございます?」


 ヤマトはアークのやることに驚かないと決めていたのに、早々にその誓いを破り捨てられた。これからも度々起こることは目に見えているので、楽しみやら苦しいやらである。


 そこで、ようやく我に返った面々が興奮した様子で騒ぎ始めた。


「せ、精霊様!初めて見ました!」


「精霊……実際に見ると美しいわね……!」


「アーク…精霊と契約しているのかい!」


「キレイね……。」


「精霊様が…言葉を発してるのです…!上位精霊なのです…!」


 ミル以外の面々は精霊を見たことがないのであろう。初めて見る精霊に興奮している様子だ。しかし、ミルは違う意味で驚いているようだ。そもそも下位精霊は言葉を発することはない。主に魔力波による信号のようなものでイメージを伝えるだけしかできないのだ。


 しかし、クレアは自ら言葉を発していた。ミルの育った村では上位精霊との契約者は数人程度しかおらず、里長の話では言語を理解し話すことのできる精霊は、上位精霊であると言っていた。


「ふふ。皆さん、こちらへは修行しにきたのでしょう?だったら早く始めませんと時間がなくなってしまいますよ。」


「あ、そうだったね。じゃあ、畳の方に移動しましょうか。」


 クレアは当初の目的を皆に思い出させ、促した。アークは若干忘れていたが、クレアの言葉によって皆を段上がりの畳の間の方へ誘導する。まずは説明をするために修行をする面々は畳の中央に座らせる。しかし、その中にはなぜかヤマトがちゃっかり座っていた。


「―――えっと、ヤマト爺?なんでそこに座ってるの?もしかしてヤマト爺もやるの…?」


「ほっほっほ。当たり前じゃ。儂も知らんような技術を習えるかもしれんからのぅ。」


「あ、そうですか…まあいいです……それじゃあ、まずは魔力操作の修行からやりましょうか。これは―――――クレア?」


 アークはいい修行方法が思いつかず、クレアに投げた。クレアはそうなることをなんとなく予感していたので、あらかじめ最適解を用意しておいたのだ。


「はい、皆さんはおそらく自分の体内に流れる魔力を感じ取ることができていないでしょう。それができないと、魔法を使う際に意図的に威力を強めたり弱めたり、細やかな制御というのができないのです。なので、皆さんにはまず、体内で魔力を感じていただきます。」


 そう言って、アークに情報を脳内に送りながら目配せする。これにより、アークはクレアがやろうとしていたことを理解し、それを実践すべくサクラのもとへ移動する。


「はいサクラ、立って。」


 サクラを立たせ、両手を繋いだ。突然のことにサクラは顔を赤くさせながら慌てふためく。


「ア、アーク様…!い、いきなりちゅーしようだなんて……///」


「え!ち、違うよ!今からサクラに魔力を流そうとしたの!じゃあ、いくよ。」


 サクラの盛大な勘違いにアークは慌てて弁明した。そしてそんな顔を赤くさせたサクラの両手から魔力を流し込む。そうすると、サクラは目を見開き、体内に流れるなにかを感じ取ることができた。


「―――これが……魔力なんですね…!そして魔力の流れ……」


「そう、これが魔力の流れだよ。今は僕が魔力を流して操作してるけど、これを自分でできるようになってね。」


 体内の魔力の流れを操ることができれば、魔法の質や威力が向上したり、無詠唱で魔法を使えたりできる。これをできるようになるには時間がかかると思うので、しばらくはこの修行でいいだろう。幸い学生生活は始まったばかりであるので、コツコツやればかなりいいところまでいけると思う。


「は、はい…!これをできるようになれば、私もお母様みたいになれますか?」


 どうやらサクラは美魔女さんに憧れていたようだ。たしかにサクラは刀を振り回すより魔法を使うタイプだろう。僕が前衛でサクラが後衛ならバランスもいいよね。


 アークはサクラを戦いに連れ出そうとしていることに気付いていないが、いずれはそうなることは確信しているクレアは敢えてそのことは言わない。


「もちろん。サクラは魔力量が多いし、これからずっと側にいるんだから、僕とクレアがサポートするよ。」


 婚約者という立場であるサクラは、これからずっとアークと共に生きていくのだ。それはアークの永遠の相棒であるクレアも共にすることになる。


「ずっと側に―――///はい!お願いしますアーク様!」


 サクラはその言葉にまた顔を赤くした。それと同時に、強くなってアークを支えようと決心した。まだまだ自分は弱い。自分の母親が父親の横に並んで立っているように、自分もそうありたいと思う。サクラの決意は揺るがないものになった。


「よし、それじゃあ、皆にもやっていこうか。」


 そう言って皆と順番に両手を繋いでサクラの時と同様に魔力を流していく。







 そして、ミカゲがまた倒れることになることは周知のことであった。


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