第11話 自己紹介と告白
王族の自己紹介は終わったが、今度は違う人たちが前に出てきた。
「私は宰相を務めています。クシン=フォン=タチバナと申します。アーク君とは何度か面識がありますね。一応陛下の弟で公爵位を頂いておりますので、何かあったら相談して下さいね。」
あのとき助けたご一行の偉い人だ。文官風お兄さんだね。薄い赤の髪を短くしている。この人、公爵様だったのか…何かあったらホントに相談しよう。
「俺は宰相兼近衛騎士団隊長の、ムラマサ=フォン=ロマーノだ。今度ヤろう。」
ニヤっと笑い、そう言ってきた。筋金入りの戦闘大好き民族であるらしい。何千回も付き合わせられそうである。そんなのお断りである。体はガッチリしているが、細マッチョな黒髪短髪。顔は厳つ目である。この人は戦闘狂おじさんで十分である。
「私は執事長を勤めております、セバスチャンと申します。この度はご婚約、おめでとうございます。しばらくは王城にお住みになるかと思いますが、ご自分のお屋敷に住まわれる際は、私めが着いて参りますので、今後もよろしくお願い致します。」
「おい!セバス!マジで言ってるのか!?」
ケンシンが驚いてセバスチャンに問う。
「私もそろそろ引退しようと考えておりましたので…ちょうど良いではありませんか。息子に後を譲り、私はアーク様とサクラ様のイチャイチャを眺めながら死ぬこととします…ほっほっほ。」
セバスチャンさん、ガチなのか…いやありがたいけど。それにしばらく王城に住むことになるのか。初耳である。
「…まあしばらく先のことか。分かったよ。」
ケンシンは諦めたように背もたれに体重を預けた。
「私は、王宮侍女長のナギサと申します。セバスチャンと同様に私もお世話になろうと思っておりますので、よろしくお願いしますね?」
侍女長さんがそう言い放った。お前もか!ブルータス!とは言わないが…なぜこんなに人気なのだ…
「お前もか!ナギサ!」
あっ。言った。ここまで来るとナイスガイお兄さんも大変だね…
「はい、私の場合、まだ若いので違った狙いがありますが…ね?」
と、舌なめずりをしながら頬を染め、アークを見つめるナギサ。アークは背筋が凍りついたが、無視することにした。ケンシンも諦めたのか、もう何も言わない。
―――あれ、もういない?じゃあ僕だね。と、お面を外す。
「えー、じゃあ。……僕はアークです。6歳と半分、かな?種族は―――一応エルフ、とだけ言っておきます。よろしくお願いします、お兄さんたち、お姉さんたち、それに皆さんも。」
―――あれ、反応が、こない。え、どうして!
《―――面識のないアークの顔を見たことのない者のみ硬直を確認。アークの容姿に驚愕しているのだと考えられます。さすがです。》
ええー、僕ホントにいい顔してる?
《―――はい、ガッツリ。》
そう短く伝えられた。あ。そうなのね。なんかちょっぴり嬉しい。あ、ようやく動き出した。お兄さんたちだ。
「………こんな美少年見たことがないよ…!」
「………男か…?やべえな…」
そして続々と皆さんが復帰してきた。
「あら、こんなきれいな顔してたんですね?サクラ、羨ましいわ。」
「可愛いのかかっこいいのか…いや、どっちもね。」
「か、か、可愛いにゃあああ!!」
「ほっほっほ。やはり、この目に狂いはありませんでしたな。」
「………ぜっっったい頂くわ…ふふ。」
あ、あはは…予想以上に高評価だ。あ、でも復帰してないのが若干2名おりますね。戦闘狂おじさんと可愛い猫ちゃんである。
戦闘狂おじさんはあごが外れてるんじゃないかって思うくらい口を開いている。猫ちゃんも口が開いたままだが、こちらは顔が赤く、目が獲物を狙うような猫の目をしている。
《―――これは落ちてますね。》
ん?落ちてる?どういうこっちゃ?クレアからなにか言われ、聞き返そう科と思っていたら、戦闘狂おじさんが復活した。
「……お、お前!ヤろうって、そういう意味じゃねーぞ!剣だからな!」
そう言ってどこかへ走り去った。んー、不思議なおじさんだ。お、そして猫ちゃんが帰ってきた。
「―――サクラ!!!いっっっしょうのお願いを聞いて欲しいの!!!!!」
ん、?サクラに?
「私もアークくんと結婚したいの…!完全に、惚れちゃったの…!!」
んえええーー!間接的に告白された!間接的に!
《―――やりますね…許します。》
なにを!?どゆことだ?
「……シオリお姉様。それは、アーク様が決めることですわ。直接、面と向かって想いを伝えたらどうですか?」
サクラは若干ニヤニヤしながら告げた。もしアークが受け入れてもケンシンが止めるだろうと想い、そう言った。しかし、サクラは失念していた。自分がやってきたことを。数分後、後悔することになる。
「―――わかったわ。…えい!」
そういってアークに飛びつき、唇を奪った。アークはクレアの方に意識を向けていたので、不意打ちのようになった。
「うわ!――んむっ!」
はむっ。ちゅぱ。ちゅむ。ちゅ。くちゅくちゅ。ちゅう。ちゅぱっ。―――――
「きゃーーーー!!ちょっとシオリお姉様!!やめて下さい!!」
シオリはアークにキスしてしまえば既成事実になるだろうと踏んでいた。これによって父親であるケンシンも認めざるを得ないだろうと。
ちゅ。ちゅ。ちゅる。くちゅくちゅ。ちゅぱっ。―――――
「―――アークくん……私をもらって?」
《―――落ちましたね。もらいましょう。》
ちょ、なんでクレアが答えるのさ!聞こえてないと思うんだけど…
「え、えっと…もうサクラと婚約しましたし、王族を2人もっていうのはちょっと―――」
そんな!とシオリは泣きそうな顔になるが、
「―――ほほぅ、アークお前、オレの娘が気に入らんってことか?しかも純潔まで奪っておいてなぁ?んん??」
あ、あれ。ナイスガイお兄さんが敵にいる。しかも純潔って…ここは止めるところじゃ…
《―――シンラは実力主義な風潮があるためアークならばいいやとでも思っているのでしょう。それに、王子2人が不甲斐なかった場合、アークを王に据えようと狙っている確率が高いです。》
ええー…まぁ僕的にはシオリ王女は嫌いじゃないからまだいいんだけど…国王は無理!
《―――ならばいい案がございます。まずは―――――》
よし、その案でいこう!
「……えー、分かりました。シオリ王女様、承りました。でもこちらから条件があります。僕は公爵家になってしまったのですがしばらくは旅をしたいので、自由にさせて下さい。あと、僕は王になる気はないですからね。」
「んなっ!バレてるか…」
ナイスガイお兄さんよ…その反応は中々に王子に失礼です。と思っていると、シオリが喜び始めた。
「やったーーー!!!マイお母様!やってやりました!既成事実作戦!!」
なにぃぃ!!サクラもガツガツくるなとは思っていたがまさか美魔女さんの入れ知恵だったとは…!
「うふふ…結果的には良かったのかしら?でも変な男に仕掛ける前にアーク君が見事に引っかかってくれて助かったわ。」
その時、袖口が引っ張られた。隣を見ると、サクラが頬を膨らませ、プンプンしていた。あ、怒ってる…やっぱり嫌だったのかな?
「シオリお姉様とだけちゅーして、ずるいです!私も!」
あ…そっちですか…
「はいはい、サクラ。可愛いね。」
そう言って差し出してきた唇にちゅっ。として、頭を撫でた。
えへへぇ~とだらしのない顔をして、機嫌が直った。
なんでこんなに増えるんだ…
《―――顔と性格がいいからです。》
うん、過大評価ありがとう…
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