第10話 謁見と自己紹介
着替えを終えたアークは、謁見ノ間で大勢の貴族に囲まれる中、跪いていた。アークはお面を付け、顔が分からないようになっているので、周りの貴族たちは好奇の目でアークを見ている。
謁見ノ間に集まった貴族たちは、みんな日本風の衣装であった。アークも着させられているのでなんとなく分かっていたが、シンラという国はやはり日本風な感じなのだろう。早く町並みを見てみたいものだ。
そして、謁見ノ間に王族の方々が入ってきた。玉座にケンシンが座り、その横の椅子にマイが座る。ちょっと離れたところに妙齢の女性2人が座り、王子、王女と見られる少年少女5人はその後ろで立っている。王子2人と王女3人か…
ケンシンは、もう既に跪いていたアークに笑いそうになるのを必死の堪え、言葉を発する。
「控えよ!!」
そう告げると、貴族たちが一斉に跪いた。アークはこの時、自分のミスに気づき、赤面した。お面で見えないが。
「これより、報奨授与並びに叙爵ノ儀を行う!」
ん?叙爵…?なにかの間違いか?と思っていると、貴族の誰かが声を上げた。
「陛下!お待ち下さい!このような小っこい弱そうな怪しいものに叙爵など!認めることなどできません!どうかご一考を!」
おぉぅ…テンプレってやつだよね、これ。
「控えろ!今から叙爵の理由を言ってやるから待て。それ聞いても納得できなかったら、文句言ってもいいぜ。」
そうケンシンが言うと、その貴族はそそくさと下がっていった。あれ、この人からは悪意を感じないや…やらせかな?それにしてもこの王様、口調直ってるよ…
「…んん!まず、この者は我が娘、サクラのフォレストピア大森林のエルフ族への訪問の帰りの道中、魔物に襲われたところを救出し、被害を抑え、治療をしてくれた。そして―――――サクラがコイツに惚れちまってな。べた惚れよ、べったべた惚れ。そんでオレがこいつらんとこに転移して試しに本気で斬りかかったんだ。そしたらコイツ、涼しい顔して受け止めやがったんだぜ!?こりゃ認めるしかないだろ?それに―――――痛ッ!」
長くなりそうなところを美魔女さんが止めてくれた。
「あなた、ちょっと興奮しすぎよ。本題を忘れないで。」
「あ、あぁ、悪いな。ってなわけで、叙爵ってわけだ。あ、ちなみにこいつ、フォレストピアの大爺の孫らしいから、手を出すなよ。それに、コイツ公爵にするから。」
うえええ!!!なんかサラッとすごいこと言ったーー!!!大爺って、お面くれた人だよね?会ったことないけど。なんで知ってるんだ?じいちゃんの仕業か?いや、その前に公爵!?公爵って王族に連なってたり勇者とかじゃないとなれないんじゃないの!??
貴族たちはざわざわし始め、これは手を出せんとか、あいつはやばいとか、うちの娘をとか何やら言っている。
キリリッと表情を王様風に戻したケンシンはアークに告げた。
「アークよ。報奨は白金貨10枚と公爵位とサクラだ。これよりお主は、アーク=フォン=フォレストブルムを名乗るがよい。領地は今のところ無しだ。」
きょとんとするアークに、マイが〔無魔法〕の小さい球をぶつけてきた。
「は、はっ!ありがたきしあわせ…」
咄嗟に変なことしか浮かばず、それを口にだした。
ケンシンの後ろで王子王女様方がクスクス笑っている。そこ、聞こえてるぞ!と言いたいが言えるわけもない。
「これにて終了とする。解散だ!」
続々と貴族たちが扉から出て行く。アークは燃え尽きた。サクラと結婚できることは嬉しいが、公爵は聞いていない。アークは跪いたまま、1ミリも動かずに貴族の退出を待った。正確には待ったわけではないのだが。
貴族が全て出て行き、謁見ノ間には王族と執事っぽい人、宰相っぽい人、侍女さん数名、アークのみが残っていた。
アークは周りに気づいていないが、今、王族たちに取り囲まれている。
「アーク様!やりましたね!結婚ですわ!結婚!」
そういって飛びついてきたサクラによって意識が戻った。ふう、と息をついてお面を外そうとしたのだが、ナイスガイお兄さんに止められた。
「おーっと待て待て!急に外そうとするな。お前を知らない侍女もいるんだから。襲われるぞ?」
アークは現在燃え尽きていて何も考えることもなく素直に従った。
「え!お父様!私もお顔見たいです!」
そう王女様の1人が言い出した。
「ふふ…別の部屋行ってからにしましょうか。いろいろ自己紹介とかもあるでしょうし。」
美魔女さんにそう言われ、大人しく従う王女様。そうして謁見ノ間の隣にあった応接室に通され、ソファの真ん中に座らされた。サクラとさっきの王女様に挟まれて。
「お姉様!アーク様にくっつきすぎです!離れて下さい!」
「別に良いじゃない?減るもんじゃないし。それに、嬉しそうよ?アークくんも。」
「そんなことはありません!お姉様には渡しませんからね!」
「あら?それを決めるのはアークくんでしょ?」
なんかもみくちゃにされている。とても苦しい。心も体も。そんな時、救世主が現れた。
「サクラ。シオリ。いい加減になさい。アークくんに嫌われますよ?」
「「はい、やめます!」」
息ぴったり。さすが姉妹?
「それじゃ、ちゃんとした自己紹介もまだだったし、オレからすっか。」
そうしてケンシンが話し始めた。
「和国シンラの王をやっている。ケンシン=フォン=ロイ=シンラだ。よろしくな。息子よ!ハッハッハ!」
束ねた赤い長髪を揺らしながら笑っている、爽やかなお兄さんである。
「私は第一王妃のマイ=フォン=ロイ=シンラよ。よろしくね。ふふ。」
すこし黒みがかった銀髪の美人さんだ。モデルをやってもいい美しい顔立ちである。
この2人は知っていたのでいいが、他の人を覚えるのは少し大変そうだ。まあ大丈夫だろう。なんだか記憶力もヤバいほど向上していそうなのである。
「次は私ね。第二王妃のトモエ=フォン=ロイ=シンラよ。初めまして。よろしくね。」
この人、強いよね…なんか侍オーラが漂ってる…武者美人さんだな。
黒髪で後ろに束ねており、かっこいい。てか髪長い。かっこいい。
「次は私ね!第三王妃のミーシャ=フォン=ロイ=シンラよ!私はフォレストピアからきたの。ケンシンがどーしてもって言うから結婚してあげたのよ?よろしくね!」
あら、そうなのナイスガイお兄さん。なかなかやりますね、猫人族の方を嫁にもらうとは。それにしても…お転婆ネコさんだな。動きがせわしない。
茶色のボブカットに猫耳を付けた、スレンダーなお姉さんである。
「ミーシャ…嘘は良くないぞ…お前から散々アプローチしてきて最後には襲ってきたくせに…」
「にゃにゃ!にゃんのことかにゃ?ミーシャはそんなことしてないにゃ!」
んー、焦ると本来の口癖が出るタイプでいらっしゃるらしい。
「お義母様、みっともないです…次は私ね。第一王女のハルカ=フォン=シンラですわ。サクラが迷惑かけているようで、ごめんなさいね?…あ、私の実母はマイお母様ですよ。」
気品に満ちあふれており、非常に美魔女さんに似ている。12歳であるらしい。赤色が少し薄まったような色の長髪であろ。母親の血を濃く継いでいるのか、英才教育かわからないが魔力の流れがキレイである。…なんだか聖母様みたいな雰囲気。魔女っ子聖母様かな…
「次は僕かな。第一王子のリュウシン=フォン=シンラだ。実母はハルカ姉様と同じでマイお母様だよ。よろしくね。アーク君。」
おお!爽やかお兄さんきた!真っ赤な髪をしているけど後ろで束ねていて、落ち着いた爽やかな雰囲気。顔はザ・優男って感じ。10歳みたいだ。…この王子様は文官な匂いがする…爽やか文官お兄さんだな。
「次は俺だ。第二王子のユウシン=フォン=シンラだ。…実母はトモエ母様だ。…よろしくな?」
赤黒い髪をしたイケメンお兄さんだ。なんか顔赤いけどどうかしたのかな?…この人はいかにも剣降ってそうな感じするね。9歳だからまだまだって感じなのかな?将来はめちゃめちゃ強そう。次期王様だね。多分、第一王子の性格からして。
「なに、ユウ、恥ずかしがってるの?まぁ、あれだけ弟が欲しいって言ってたくらいだからね…かわいがってやりなさいね?」
武者美人さんがそう言った。弟ができて嬉しかったから顔が赤かったのか。なるほど。
「か、母様!今言わなくてもいいじゃないですか…!」
めちゃめちゃ恥ずかしがっている。イケメンお兄さん、ツンデレなのか。
「次は私ね!第二王女のシオリ=フォン=シンラよ!実母はミーシャお母様よ。末永くよろしくね。アークくん?」
なんだか結婚するみたいな言い方をしているが、サクラをからかいたいだけなのだろう。ニヤニヤしてサクラのことを見ている。赤茶色の長髪に猫耳が着いている。ピコピコしていて可愛い。8歳であるらしく、まだまだ子どもっぽい。顔はおっとりしたタイプなので将来はおっとり猫耳美人になっているだろう。
「お姉様!ちょっと黙ってて下さい!次は私です!私はサクラ=フォン=シンラです。アーク様、これからもよろしくお願いしますね?」
最後はサクラだ。桃色の髪でまた違ったおっとりした顔立ちである。6歳でアークとは同い年である。
こうして王族の紹介は終わった。でもまだ自己紹介したそうにしているひとが何人かいる。もうちょっと待つか。
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作者のs e v e nと申します!
本日2話投稿してます!!
前話も忘れずにチェックお願いします!!
何日か2話ずつの投稿を続けて、数日経ったら1話ずつにしたいと思ってます!
話数が増えてくのと同時に1話分の文字数も増えているので、お許し下さい…!
今後ともよろしくお願いします!
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