第8話 起床とサクラの両親
翌朝、サクラは起きると、目の前に最愛の人物が寝ていることに気がつく。
「ふぁああ…!アーク様…かっこいい///」
サクラはアークがまだ寝ているだろうと思い、つんつん、といたずらを仕掛けた。更に、仰向けで寝ているアークの上にゆっくりと馬乗りになり、体重をかけないようにする。そして、起きないようにキスを始めた。
ちゅ。ちゅ。ちゅ。ちゅ。ちゅ。ちゅ。―――――
「―――アーク様…」
ちゅ。ちゅ。ちゅ。―――――サクラは夢中になりアークにキスし続けていた。アークはというと…実は最初から起きていた。つんつんされて起き出すタイミングを逃していた。
《―――アーク、ここは反撃に出るべきです。まずは――――――――》
ほほう、と内心で降格を上げる。アークもこのままではいられないので、言われた通り反撃に出る。
突然に両手でサクラを抱きしめ、逆に馬乗りになる。
「ひゃっ!アーク様、これは違うのです!!これはその―――――」
慌てて言い訳をするサクラの口を口で塞ぐ。
んむ。ぷちゅ。ちゅぷちゅぷ。くちゅくちゅ。ちゅぱ。―――――
「おはよう。サクラ。」
キスをやめ、抱きしめながら耳元で優しく呟く。
「はぅ―――おはようございます…」
ビクンッビクンッ!としながら魂ここにあらずのサクラはなんとか返事をする。
「はい、じゃあ起きて。着替えるんでしょ?」
どちらも寝間着なので、着替えて朝ご飯を食べなければならない。
「はい…!ではまた!」
サクラは顔を真っ赤にしたまま部屋の外へ飛び出ていった。
《―――反撃成功。サクラの心のパラメーターが振り切れたことを確認。このキスにより、アークのサクラへの恋心が爆発したことを確認。―――結婚しろ。》
なんでバラした!?いや誰にも聞こえてないけど!!なんか恥ずかしい!
アークは〔時空間魔法〕により一瞬で着替えを完了させ、毎朝の日課をしに甲板に出る。
アークの毎朝の日課は、〔力学魔法〕により自身の周りに重力場を発生させ続け、更に、刀の重さを5倍にして基礎稽古を行う。また、その重力場内で各属性魔法の球を発生させ、〔多重思考〕で自分の周りを回遊させる。ただ、場所が場所なので、〔結界魔法〕で発生させた床の上で行う。これを魔力が半分になるまで続ける。
汗をかいて服が体にひっつくのが嫌なので、上着を脱ぎ、属性魔法の球を8つ発生させる。そして〔結界魔法〕と〔力学魔法〕を使ってから素振りを始める。
「潮風を感じながらの稽古もなかなかいいねぇ~。しかし…結界魔法で床をつくってその上でやるのはなかなかに名案だったよ…これは熟練度が上がるね!」
アークは涼しい顔をしてやってのけているが、ゴツゴツ侍でもまともに立っていられない環境であり、更に魔法の多重発動の維持は普通では無理な話である。
そんなこんなで数十分素振りや筋トレを続けていると、何やら騒がしくなってきたのを感じた。重力場の中にいると、声も届きづらくなってしまうので、そこは少し不便である。
振り向いてみると、ゴツゴツ侍さんと護衛さん数人、侍女さん数人が鼻息を荒くしてキャーキャーギャーギャー騒いでいるのが分かった。
すぐに属性魔法と〔力学魔法〕を解除し、〔結界魔法〕も解除してから甲板へ降りる。刀を腰に佩き、〔水魔法〕〔光魔法〕で体をきれいにしながら騒ぎの元まで小走りする。
「すみません、ご飯の時間ですか?朝稽古してると集中しすぎてあんまり周りの音が聞こえなくなっちゃうので…」
そう聞いてみたが、みんなからの反応はなく、侍女はアークの鍛えられた、成長途中の体をまじまじと見つめ、男たちは顔を赤くしながらチラチラとアークの顔や体を交互に見ている。
あっ!と自分が上半身裸であることに気づき、急いで手に持っていた上着を着る。
あぁ~という声が侍女から聞こえてきたが、気にしない。そんな中、サクラ付きの侍女さんが教えてくれた。
「アーク様、お食事ができましたので、食堂へ案内致します。みなさんはそれぞれの持ち場へ!」
侍女さんの喝にみんながビクッとしながら走り去っていった。
「さあ、アーク様。行きましょう?」
「は、はい。分かりました。」
アークは侍女さんの後ろについて歩き出した。食堂に到着し、扉を開く前に侍女さんから話しかけてきた。
「アーク様。サクラ様はアーク様と本気で結ばれることを願っています。様々な障害があるかと思いますが…どうか、サクラ様をお支えくださいね。」
この侍女さんはサクラ付きの人だったよな…と思い、サクラのことを心配しているんだなと感じたアークは安心させるように返事をした。
「はい。お任せ下さい。サクラ様の不幸は僕が払いますとも。それに…サクラ様は笑顔が似合いますから。ずっと笑っていてほしいものです。」
微笑みながらそう答えた。侍女さんは驚いた顔をしつつも納得したような表情を浮かべ、扉を開けた。その瞬間、殺気を感じ、瞬時に刀を抜き出し、飛んできたナイフを弾いた。
即座に戦闘態勢に移行する。室内なので〔風魔法〕は出力を抑えて発動し、〔血魔法〕で魔力を循環。〔結界魔法〕で死角を護る。そして、食堂内にチラッと見えたサクラと侍女さんたち、サクラ付きの侍女さんにも〔結界魔法〕を張る。
殺気を飛ばしてきた張本人が刀を振り下ろしながら突っ込んできたので、被害を出さないように受け止める。
ガキンッ!!
うっ…重。なんだこのナイスガイお兄さんは…悪い人には見えなんだが…
「あの…!なんで斬りかかってきたんです…!?ナイスガイお兄さん…!?」
そういうと、フッと力を抜いて後方に飛んだ。そして大笑いした。
「ガッハッハ!おい!聞いたかクシン!こいつ、オレのことめちゃくちゃ若くてかっこいいお兄さんって言ったぞ!!分かってるじゃねーか!!」
いや、そこまで言ってないけど…と思っていると、
「いえ、兄上…そこまで言ってない―――――」
クシンを遮ってナイスガイお兄さんがアークに喋りかけてきた。
「よう、お前!やるな!さすがはサクラの男だな!オレはサクラの父親のケンシンだ。よろしくな!息子よ!ガッハッハ!」
うわー…キャラ濃いですなー。そう思って自己紹介でもしておこうかと思っていると、
「アーク様!!ご無事ですか!?」
とサクラが飛びついてきた。
「うん、大丈夫だよ、サクラ。サクラこそ怪我はない?」
二次災害でなにかの破片なども飛び交っていたのでサクラに怪我がないか確認する。
「はい!大丈夫です!―――それよりも…お父様…?なぜアーク様に斬ってかかったのですか!!」
サクラはアークに抱きついたまま両頬を膨らませてプンプン怒っている。
「いやー、お前が惚れた男がいるって聞いてな?ちょっとお前に相応しいか試したわけよ。ま。合格って所なんだけどよ。それに、マイからも合格が出たようだしな!」
マイ…?誰だろう?と思っていると、サクラ付きの侍女さんがこちらに歩いてきた。それも2人並んで。目を疑ったが、侍女さんが2人いるのである。
「え!?お母様も来てますの!?」
サクラが驚いてあちこちを見回している。
サクラ付きの侍女さんの片方がナイスガイお兄さんの横に瞬間移動したかと思ったら、姿が変わった。…なるほど。変身能力ですか…すごい。美魔女だ。
「アークさん、初めまして。サクラの母のマイと申します。実は甲板から食堂まで案内したのは私なんですよ?…それにしても、サクラ。いい男を引っ掛けましたね。侍女に変装して試してみましたけど、いいお方です。お手柄ですよ?うふふ。」
うわー…サクラに似てめっちゃ美人さんだ。この人、魔法技術高いな。魔力の流れが繊細すぎる。クレア、気づかなかったの?
《―――気づきましたが悪意が全く感じなかったのであえて言いませんでした。》
なるほどである。
「はい!アーク様ときせーじじつをつくりました!でも、アーク様はそんなことしなくても私と一緒にいてくれるって…///言ってくれました!!」
サクラは爆弾発言をしつつも、照れながら告げた。アークは焦ったが、もちろんそんなことは通信用水晶で知らされていたのでどうってことはないが。
アークは焦ったまま、自己紹介もしてないし婚約挨拶で何言おうか考えていなかったしで、混乱していた。
「あ…あの、私はアークと申します。私は平民以下の身分ではありますが、サクラ様をお慕いしております。ど、どうか、サクラ様との結婚を許していただけないでしょうか…!」
それを聞いたケンシンとマイは、ぽかんとした。これがあの大爺の孫か?と。あんなのとは比べものにならないくらい真面目で礼儀正しい。
「うふふ…もちろん。むしろこちらからお願いしたいくらいだわ。ねぇ、あなた?」
「あぁ、そうだな。久々に気持ちの良い男を見たぜ。サクラをよろしくな!」
ふううぅぅ…良かった…
「やったーー!!!アーク様!嬉しいです!」
サクラは泣いて喜んでいる。はしゃぎすぎてスカートがめくれそうになるのをなんとか手で抑えてサクラを落ち着かせる。
「ねえ、アークくん?私のことはなんて呼ぼうとしてたの?ほら、ケンシンはナイスガイお兄さんでしょ?」
美魔女さんがそう聞いてくる。
「あぁ、美魔女さんです。魔力の流れと見た目が美しかったので。」
そう答えると、まんざらでもなさそうに笑いながらナイスガイお兄さんの肩をバシバシ叩いた。
「あらやだ!お上手ねぇ!!あなた、きっとモテるわよ?…サクラ、捨てられないように頑張りなさいね?うふふ…」
「お母様!そんなことはありません!ありませんよね?アーク様?」
サクラが泣きそうな顔で聞いてくる。
「サクラを捨てるなんてあり得ないよ。大丈夫大丈夫。」
そういって頭を撫でると、えへへーとふにゃけるサクラ。
「じゃあ…飯にするか!早く食おうぜ、腹減ったわ。」
食事の時間を潰しにかかった張本人が何かを言っている。解せぬ。
―――――――――――
本日2作投稿してます!
前話あるのでそちらも忘れずお願いします!
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