第7話 きせーじじつ

「サクラ様、先ほどのしょうね―――――サクラ様!!!!??」


 文官風の男―――クシンは絶叫した。あのサクラ様があの美少年を襲っていたのだ。それも気絶させるほど大胆に。


「…これでアーク様は私のものですわ!やりましたわ!クシン叔父様!」


 サクラは泣いて喜んでいる。それほどまでに嬉しいのだろう。クシンはサクラが一目惚れしたのを知っていたのだ。


「本当はめちゃめちゃ怒っているところですが―――――――兄上から歩みの森に1人生活するエルフの少年に接触せよと連絡が入りまして…おそらくこの子ですが…」


「お父様が…!やりました!早速アーク様を連れて本国へ帰りましょう!」


「あぁ…大丈夫かな…」


 いつもそんな立ち回りのクシンであった。











「アーク様、アーク様。起きて下さい。」


「んー。あれ、いつの間に寝てたんだ…?」


「あ!起きました!おはようございます、アーク様!」


 そういってサクラがちゅ。っとキスしてきた。


「ちょ!何してるんですか!サクラ様!」


 アークはまだ寝ぼけているのか、なにがあったのか思い出せていない。


「ふふっ。アーク様、2人っきりであんなことしたのに、こんなことで照れないで下さい。」


 アークはそう言われると、思い出してきた。あぁ、僕襲われたんだった…


 こんな可愛らしい子があんな大胆なことするなんて…///


「アーク様、付いてきて下さい!」


 そういってアークの腕をとって馬車を出る。アークは慌ててお面を被る。


「ここは…港町?」


 目の前にはでっかい木造船が浮かんでいた。


「はい、そうです!」


「ん、なぜ?僕はここでお別れだとおも―――――」


「いえ!アーク様には本国、シンラにいらしてもらいます!そしてお父様にご紹介したいのです!」


 え!そんなこときいてない!と慌てるアーク。アークは身分が平民以下にあたるので、貴族令嬢の唇を奪った大罪人として処刑されてもおかしくない。


「僕、殺されませんよね…?」


 心配になり、聞いてみた。


「安心して下さい!ただの婚約挨拶ですので!」


 サクラは満面の笑みでそう答えた。


「あ、あはは…そうですか…」


 ますます心配になってきた。隙をみて逃げ出したかったが、こんなに嬉しそうにしているサクラを見ると、もう少し一緒にいてもいいかと思えた。


 そんなこんなで船に乗らされ、部屋に案内され、休むように言われた。しかし、サクラが付いてきた。


「サクラ様?ご自分のお部屋で休まれては?」


 しかし、サクラはきょとんとして答えた。


「私の部屋はこちらですよ?一緒のお部屋でドキドキしますね?うふふ…」


 おおう…嵌められた。これはご一行様、グルですな?まあ殺されそうになったら庇って貰おう。


 そんなことを考えていると、サクラが上目遣いで言ってきた。


「アーク様?お願いがあるのですが―――普段の口調で、様とかもつけないでお話して下さいませんか…?」


 ズキュンッ!アークは落ちた。普段から可愛いのだが、そんなことをされたら落ちないわけがないじゃないか。


「…分かったよ、サクラ。でも、2人っきりのときだけね?それでいい?」


 アークはお面を外しながらそう答えた。サクラはそんなアークを見て、一目惚れするほどの最強の顔面が間近にあることに気を失いそうになりながら答えた。


「(ズキュンッ!)―――はい…アーク様…///」


 サクラも同様に落ちたのである。


「じゃあ、寝ようか?」


 アークはベッドが2つあったので、それぞれで寝ようという意味を込めて言ったのだが、サクラは、


「は、はい…///一緒に寝ましょう…///」


 とアークの腕を引きながらシングルのベッドに連れて行った。


 アークは別々に…と言い出そうとしたのだが、自分の言った言葉に勘違いさせてしまったと思い、なんだか申し訳ないなと思い、そのまま受け入れた。


「少し…お伺いしてもよろしいですか…?」


 サクラはベッドの中でアークの腕を組んで頭をアークの肩にくっつけながら話しかけた。


「う、うん…いいけど、どうしたの?」


 ドキドキしながら答えた。


「私は…無理矢理アーク様に…ちゅ…ちゅーして、きせーじじつをつくってしまいました…その…嫌じゃなかったですか?さっき、逃げようとしてましたよね…逃げてもいいんですよ…?」


 サクラは泣きそうな顔をしてアークに聞いた。


 アークは驚いた。自分が逃げようか迷っていたことがバレていたのかと…


「…気づいてたんだね。…ちょっと僕の話してもいい?」


 アークは身の上話をすることにした。もちろん転生したことなどは伏せ、ちょっと改変したものだが。


「は、はい…」


「僕はね、今までずっと1人で生きてきたんだ。時々話し相手みたいなのはいたんだけど、まあ基本は1人でね。ずっと修行をしてて、ようやく1人でも生きていけそうかなってなって旅立ちをしたのが今日で、森を抜けて人がいる街に行こうとしたんだ。でもそんな中でサクラたちを見つけて助けたんだ。最初は人助けして、仲良くなって、街に連れて行ってもらって…って感じで安直な計画だったんだ。やっぱり1人は寂しくてね…せっかくこうして護衛の人たちとかサクラと仲良くなれて、その縁を切るのは、なんかダメな気がしたんだ。―――それに、サクラが嬉しそうにしてるのを見ると、なんだか僕も嬉しかったんだよね…」


 あはは、と照れ笑いした。


「アーク様…そうだったんですね…!」


 サクラは嬉しそうな顔をした。


「うん。だから僕は逃げないよ。まあ僕は平民以下だし、結婚できるかは分からないけど、しばらくはよろしくね。サクラ。」


 そう言ってアークはサクラの唇にちゅっ。とキスをし、反対側を向いた。


「(ボンッ!)はうぅぅ…!(好き…///)」


 サクラは噴火したように顔を真っ赤にし、感情が爆発した。サクラも負けじとアークに抱きついた。アークも顔を真っ赤にしていたのだが、反対を向いているのでなんとかバレてはいない。


《―――この子なら許します。》


 ん?なにかクレアが喋ったような気がしたけど、気のせいだろう。


「アーク様、覚悟していてくださいね…あなたは私のものにしますから…」


 そうして夜は明けていった。――――――――――






 別室にて―――


 クシンとジュウベエは『通信用水晶』の向こう側にいる主に報告をしていた。


「兄上、あの少年は無事船に乗りました。」


 クシンは水晶に向けて報告した。


「御館様、それにしても、あのおじょ―――お坊ちゃん何者なんですかい?ありゃ強すぎますぜ?」


 ジュウベエも水晶にむけて声をかけた。


『あぁ、あいつはフォレストピアの大爺の孫らしいぜ…急に連絡よこしやがって、そっちの国に行くことがあったらよろしくとかうちの孫は最強じゃとかなんとか自慢してきたからよ…逆にこっちから会ってやろうかと思ってな。それで…サクラはどうしている?』


 クシンはビクッ!として、どう説明しようか悩んだ。


『ん?どうした?なんかあったのか?』


 クシンは心を決めた。


「実はですね…あの少年を連れてこられるきっかけになったのはサクラ様なのですが…」


『ほう!サクラ、なかなかやるなぁ…もしやサクラに惚れたな!?ハッハッハ!』


 クシンの顔は青白く変化していく。


「えーっと…その、逆でして…」


『ん?逆とはなんだ、逆とは。』


「サクラ様が…あの少年にゾッコンと言いますか…アプローチしたと言いますか…」


 クシンはもう真っ白になっていた。


『…な!!!なんだと!!!!!サクラは無事なのか!!』


 もうどうにでもなれといった気持ちのクシンは誤魔化すのをやめた。


「…ある意味、無事じゃないと言いますか…もうキスもしてましたし今も同じベッドで寝てますし結婚するらしいですよ…あっはっは…」


『なあああ!!!…おのれ、大爺め…あとで文句言ってやるぜ…!!あの大爺の孫だから下手に手出したら俺らは終わりだぜ…』


 水晶の主はガックリした。


『まあ俺がひと目見て、認められたら考えてやってもいいか…下手なとこに嫁に出してもそれはそれでダメだしな…―――あ!それならそいつを貴族にすんのも有りだな。うし!そうすっか!ガッハッハ!これで大爺とは引き分けってとこだなぁ!』


 プツッ。水晶から光が消え、静寂が訪れた。


「ジュウベエ、私は疲れました。寝ます。」


 クシンはそそくさと自分が割り当てられた部屋へと戻っていった。


「…クシンの旦那も大変だな…ははは。」



 ――――――――――――――――――――――



初めまして。s e v e nと申します!


私は作品を書くのは初めてで、読者の皆様にワクワクして頂けるような作品を目指しています!!


私も色々な作品を読むのが好きで、それらを参考にさせて頂いてます。


短期ではなく、長期の連載を目指していますので、読者の皆様には長い間お世話になりたいと思っています。


そして、できるだけ毎日投稿したいと思っています!


最初ちょっとえっちな展開が多いかも知れませんが、段々少なくなる予定です…。


よろしくお願いします!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る