第2話 能力の確認 ☆
ナナは目を覚まし、バッと起き上がった。
「アーク様!!」
しかしここはもう神界であり、愛しのアークはもういない。そのことを認識したナナはシュンとした。
「やーやー、起きたかい、時空神様?」
からかい口調でナナに声をかけるオルタ。へこんでいるかと思い声をかけ、いじろうとしていたのだが、ナナはむしろそんなことはなかった。
「……っっいやっったーーー!!!!アーク様が神界に!!!!!!」
数百年間想い続けていた恋が実るかも知れない事実に歓喜した。
「アーク様に…ちゅってされちゃった…きゃあーー!!///」
「ちょーーっと黙ろうか!!」
オルタはちょっとガッカリした。立場は自分の方が上なのに説教してくるナナを言い負かすチャンスで、ちょっといじってやろうとしていた途端、これである。
「あ、オルタ様。この度はご協力して下さりありがとうございました!おかげさまでアーク様との距離が縮められました!」
「それはおめでとうだね。何百年もアーク君惚気を聞かされてきたからなんか感慨深いよ、あはは。」
ナナはオルタが転生者選定に何百年間も迷っていたことを知っていた。これはチャンスだと思い、アークを推し続けていたのだ。
そんな時…
キュピーン!とオルタは良いことを思い出し、ニヤニヤしながら呟いた。
「いやぁ~、まさか6歳の子どもにちゅーされて興奮して気絶するなんて、みんなに伝えてあげないとね~?」
ピシッ
「オ…オルタ様……!?ほ、本気ですか…!!?」
オルタはその叫び声をきくと同時に走り出した。他の神の元へ。
「いやあ!面白くなりそうだと思ってねぇ!!!!」
ナナは絶望した。そして、オルタを追いかけた。
「いやああぁぁぁあ!待ってオルタ様!!いや、待てオルタぁぁ!!」
―――この後、オルタはボコボコに顔が腫れ、真っ赤になったが、ナナは違う意味で真っ赤になったのであった。
オルタ様との通信が切れた。なんか転生した途端、キスしちゃった。転生する前は女の人にあんまり興味とかなくて好きな子とかいなかったけど、こんな気持ちになるのか。
そう1人で思い、顔が綻ぶ。神界に行ったら、ナナとエッチできるのだろうか…と考えたが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「よし!まずは能力の確認だね!えーっと、“ステータス”と念じるのか。」
ステータス!ブゥン!
【ステータス】
アーク
年齢:6歳 Lv.1
種族:ハーフエルフ?(強制隠蔽)
職業:神ノ使徒
称号:【転生者】【時空神の婚約者】【精霊に愛されし者】
●能力
固有能力:【
属性魔法:〔風魔法Lv.1〕
特殊魔法:〔創造魔法Lv.1〕〔鑑定魔法Lv.1〕〔時空間魔法Lv.1〕
固有魔法:〔精霊魔法Lv.1〕〔血魔法Lv.1〕〔生活魔法Lv.1〕
スキル:〔剣術Lv.1〕〔体術Lv.1〕
「おお、思ったよりいっぱいある!でも…なんだこれ?」
種族欄のところに?と強制隠蔽が書かれている。まだ種族分からないのか!まぁいいんだけど、オルタ様がなにか企んでいるに違いない。うん、そういうことだ。
違うところを見てみる。
「あ、僕6歳なんだ。ふーん。…職業は、…結局使徒なんじゃないか!!こんなのバレたらどうしよう…」
オルタの嘘の1つ目がバレた瞬間である。
「まあバレなきゃいいのさ!それで次は…あ!【時空神の婚約者】って…!!婚約者なのか…?でも【転生者】は分かるけど【精霊に愛されし者】って、?エルフの血が入ってるとこうなるのかな?…次は、能力だね!ふむふむ…」
ナナのキスから得た情報によると、能力は転生前に身についていた能力に、死ぬときに思ったことや願いが反映されるという。あの神様!嘘つきじゃん!なにが良い能力くれるだ!
オルタの2つ目の嘘がバレた瞬間である。
「【
惑星オルタの住民ならこの言葉を聞くだけで縮こまるのだが、アークが知るのはあと数刻後である。
「風魔法はエルフだからって言うのと、風ノ日に生まれたから授かったのか、創造魔法は、建築士になりたいっていう願望から…?なんか飛躍しすぎじゃないかな?…お、鑑定魔法と時空間魔法はナナからの贈り物なのか!ありがたいねぇ…」
鑑定魔法はもともと転生者なら誰しもが授かるのだが、ナナは1つだけしか授けなかったと思われたくなくてあえてそう伝えていたのである。策士である。
「精霊魔法はエルフだからで、生活魔法は全員授かると…血魔法って、なんだ?吸血鬼の血筋でも入ってるのかな?あはは、そんなわけないか。あ!分からないことって【
なら早速!とまずは闇夜ノ血脈について調べてみることにした。
「えーっと、まず使い方は、アカシックレコード、起動!と念じ、聞きたいことを頭に思い浮かべると答えが頭の中に…ふんふんなるほど…慣れない内は声に出してみるといいのか、よし。」
そう言って最初は声に出してみることにした。
「【
《―――【闇夜ノ血脈】とは、吸血鬼族の真祖の血脈にしか現れない能力のことで、様々な能力を有することが可能です。夜目や血を使った能力などが代表例です。》
うわ!なんか近未来的な音声が脳内に!
「ふ、ふーん、そうなんだ!…え、つまり、僕はエルフと吸血鬼のハーフってこと!?」
衝撃の事実だよ!もう、あの神様!やばすぎるよ!
《―――はい。そうなります。》
なんか質問にも答えてくれる!でもいちいちアカシックレコード、起動!なんて念じるのは面倒だよね。名前付けられたらいいのに。
《―――能力の最適化を行います。名付けを完了の後、開始します。》
うわ!す、すごい…んー、
「じゃあ―――――『クレア』!」
我ながら完璧なネーミングなんじゃないかい!?
《―――名付けを確認。―――これより、能力の最適化を開始します。―――完了しました。》
最適化が完了したと同時に、【
「クレア―――よろしくね!」
《―――はい、よろしくお願い致します。アーク。》
クレアは頭の中で呼びかけても反応してくれるが、これからはお世話になるので最初の挨拶は声に出した。
《―――アーク、クレアはアカシックレコードからとっただけですね?》
「え!?なんで分かったの!?」
《―――いえ……【
「そ、そっか!すごいね!」
単純で鈍感なアークはクレアに意思が宿ってしまったことに気づいていない。これは名付けによる影響である。本来力のある主が臣に称号や二つ名を授けることにより発揮される効果なのだが、この現象が能力に適応された。
実は、アークは世界神であるオルタが創った体に、オルタが名付けをしたので、それは能力値が高い。そのため、能力にまで影響されたのだ。
アークがクレアの意思について気づくのは大分後になることだろう。
「クレア、これからもいろいろ助けてね!」
《―――はい、もちろんです。(わたしのアーク。)》
「ん?なんかうまく伝わらなかったよ?―――まぁいっか!」
クレアはアークにあえて認識されないように伝えた。クレアの内心を知るものはクレアだけである―――――
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