プロローグ3 能力を授かりたい!

「ところで神、転生先はどんな世界なのですか?」


「きみは失礼なのか丁寧なのかわかりづらいね…まぁ一言で言うと、魔法を使える実力主義の世界ってとこさ。」


 あぁ…実力主義…なんて最悪な世界だろう…


「あはは、きみの能力は高く設定して送るから安心してよ。」


「なんですと!ありがたやありがたや…ホントの神様や…」


「いや、疑ってたんかい!僕でも読めなかったよ!」


「いや、信じてました。」


「なんなのさ!もう!―――きみ!面白いね!」


「あ、ありがとうございます。」


 神様の感性は独特すぎると祐太は感じていたが、心に思っても筒抜けなので思考をやめる。


「そんなきみには良い能力を授けよう。でもまだ秘密ね!むふふ、行ってからのお楽しみってやつ?」


 おぉ、じーざす…めっちゃうれしいぃぃ!


 無能な自分とはおさらばできるとなればそれは死んでも叶えたかったことであったのだ。もう死んでしまったのだが。


「あ、もともと聞く予定だったお願い、何にする?」


 へっへーん、これはもう決めているのである!


「あ、そーなんだ、何にするんだい?」


「地球の知識と転生先の知識詰め合わせセットで!お願いします!」


 これは異世界転生もののネット小説を読んで、これは良い!と思い、もし異世界に行ったらなどというイタい妄想の中で考えていたことなので即決であった。


「んー…きみ、よく考えたね、うん、いーよ!特別ね!でも全部詰め込むと頭吹っ飛んじゃうから、情報を引き出すって感じにするね。」


「やったー!ありがとうございます!」


「うんうん、喜んでくれたようでなにより。じゃあきみの転生先の体について説明するけど、大丈夫?」


「はい。お願いします。」


 異世界っていうと獣人とかいるのかな?エルフにドワーフも?と聞いてみたい気持ちを抑えて神様の言葉を待つ。


「きみの体は、新しく僕が創った生命体に憑依してもらう形で転生してもらうんだけど、きみに授ける能力に耐えられる体作ってみたら、ちょっと特殊な種族になってしまったんだよね!でもむこうは多種族だし問題ないから気にしないで。それで、名前なんだけど、どーする?」


 やっぱり多種族!でも僕自身は人族がよかったかなぁ。まぁ神様が言うには能力に耐えられるようにってことらしいからいいんだけどさ!


 あ…名前どうするかって聞かれたっけ…


「名前…神様に付けてもらいたいかな…?」


「お、いーの?やった!なかなかないからね!名付け!

 じゃあ、んー、えーっと…―――――アークってどう!?きみのなりたかった職業のもじりらしいんだけど…」


「…ッッテンサイですね!!!」


 どうやら神様はネーミングセンスの光る神様でいらっしゃるらしい!友人のこうたとは大違いである!


 飼い始めた犬が白くて、白い物白い物…あ、ボンドでいいや。


 …かわいそうじゃ!って怒ったこともあった。懐かしい。


「でしょでしょ!?むふふー、なんてったって神様だもんね!」


「ありがとうございます!あ、ところで―――――」


 神様に異世界での注意点や過ごし方、修行方法などを4・5時間ほど聞いておこう!と心の中で考え、口に出し始めると、


「あ!もうそろそろ時間が!アーク!もうお別れの時間みたいだ…!」


「え、そうなんですね…なかなか楽しい時間でしたが、そういうことなら、そろそろ―――――ん?ちょっと待ってください、時間たっぷりって―――――」


「じゃ!バイバイ!元気でね!手紙送るよ!教会に遊びに来てね!」


「ちょ!まてこら―――――」


 祐太の―――アークの意識は途切れた。


「ふぅ…なんとか祐太君捕まえることができて良かったよ。あの子以上に良い子なんてなかなかいないしね。あぁ、危なかった。5時間も質疑応答なんて退屈だしね…」


 世界神オルタはひとりになった部屋でそう呟いた。


「いろいろ嘘ついちゃったけど、問題ないよね?あはは。」


 実は良い能力を授けたなどと言ってはみたが、それは神のみぞ知るもとい、神ですら知らないのである。


「でも、祐太君のことだし、死ぬときいろいろ祈ってるでしょ!うんうん、大丈夫大丈夫!それに祐太君が願った能力にいろいろナビ能力付けたし!ちょっと便利すぎるけど、まぁご愛嬌だよね~。」


 後にオルタはこの能力が祐太を恐ろしく強くすることなど全く考えつかないのである。


「それに、あの子への借りも返せたし、良いことづくしだね!…まぁ頼まれてからだいぶ時間経っちゃったけどね…

 よし!じゃあ早速ゆう―――アーク君が起きるまでにお手紙書いちゃお―――」


「オルタ様…?あなたはなにをしているのですか…?」


 オルタしかいない空間に突然声が響いた。


「ひぃ!いや!僕はなにもしていないぞ!許してぇ!」


「…オルタ様。私が怒っ――んん!激怒しているのはあなたが肝心な説明やら何やらをすっ飛ばしたからですよ?」


 時空神ナナはこれまでの出来事を全て(無許可で)見ていた。


「言い換えても怒っているじゃないか!ってか余計に怒ってるじゃないか!」


「それはそうですよ。私の愛しの祐太様が転生するのにあんなぞんざいな説明だけで放り出すなんて!許せません!説明の途中で私が出てきて優しくして両思いになって使徒を終えたら私の一存で神界に連れ戻して結婚しようとしていたのに!全ての計画が頓挫しました!」


 オルタは唖然とした。え?この子なに言ってるの?と。そして思った。怖いと。


「なにか失礼なこと思いました?」


「いえ!滅相もございません!」


「まぁ私の計画は置いといて、転生者に説明を怠るとは何事ですか!だからあなたは――――――」


 説教は5時間に及んだ。どっちみち5時間は消費する運命だったのだ。


 こうして祐太は「アーク」としての転生生活を始めるのであった。

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