第2話 もらした先

(ここは一体…。)

あたりはモヤがかかっていて、よく見えない。



なんだかフワフワした感覚。

まるで夢でも見ているようだ。

なんだか心地良いような、現実味がないような。



ふと声がする。



「そこにいるのは誰だ。なぜそこにいる。」



なぜ?なぜと言われても、こちらにもわからない。

頭がぼんやりしてあまり難しいことが考えられない。


「まあ良い。まだこっちに着たてで良くわかってないようだな。ここは死んだ者が来るところだ。霊界とでも言えば良いかな?この先を行くと審判が行われて、地獄に行ったり、とかそういうところだ。」



突然説明されて、ちょっとびっくりする。

地獄?霊界?

ん?まてよ?俺は死んだのか?

なんだかよくわからない。



ぼんやりした頭でなんとか考えようとするけど、

なんだか考えがまとまらない。



「お前はまだ来る時じゃない。こっちに来るには早すぎる。戻りなさい。」



そんな声と共に、意識が薄れていく。



モヤのような世界から一転。

気付いたら、駅のホームに俺はいた。



どういうことだろうか。

たしか俺は電車に乗ってて、それで…。

考えるけど、その後のことは思い出せない。



どこの駅だ、この駅は。

さっき乗ってた電車の目的地の駅だ。よし。

時計を見ると、ちょうどさっき電車がこの駅に着いた、というかんじだ。

これなら会社にも間に合う。

良かった。遅刻せずに済みそうだ。


軽やかな気持ちで歩き出す。

なんだかお腹もスッキリしていて、少し中身が軽くなっている気がする。

時間的にも余裕があるし、そうだな、なにかお腹に入れていこうかな。


駅の売店で、あんぱんと牛乳を買う。

牛乳は、牛乳瓶のやつだ。

その場で飲んで、瓶だけ返却をする。

うーん。やっぱりあんぱんは美味しい。

そしてあんぱんには牛乳だな。

非常によく合う。

あんぱんも食べたし、牛乳瓶も返却する。



さあ、会社に向かうか!

この駅で乗り換えて、別の路線に乗り継ぐ。


階段を降りて、改札を通る。

今度は地下鉄に乗る。


地下鉄のホームに到着。

なんだか地下って空気が淀んでいるというか、

空気が悪い気がする。

単純に臭いとか、そういうことじゃなくて、

生暖かい気温だったり、いろんなことが不快だ。


しかし、地下鉄は数分間隔でどんどんくるから、あまり混まない。

そんなところが気に入っている。


ちょっと列に並んでいるだけで、すぐに乗ることができる。

自分の番がきたので、さっそく電車に乗る。


朝でも地下鉄は案外ぎゅうぎゅうになるような乗り方をしない。

もちろん、他の路線がトラブルで止まっていて、地下鉄しか動いてない、

みたいな時は別だけど、基本的にはゆったりと乗れる。


ここからしばらくはこの電車に乗って、また乗り換える。

20分くらいはこの電車に乗ることになるかな。

なんて考えていると、ふいに体調が悪くなる。


「んん?これは…」

腹痛だ。腹が痛い。あんぱんを食べたせいで、お腹に刺激が。

いや、牛乳のほうだろうか。

そんなことはどうでも良い。

突然の腹痛。デジャブだろうか。

前にもこんなことがあったような。

急に脂汗が全身から止まらなくなる。


会社までガマン…無理だ到底ガマンできそうにない。

途中の駅で降りて、トイレに行けば良いのだろう。

しかし、知らない駅で降りても、そこからトイレを探すのは大変だ。

そんなリスクを負うくらいなら、いっそ知ってる駅までガマンしたほうが良い。

第一乗り換えの駅というのは、みんなが乗り換えるせいか、駅も大きく、トイレも多い。

あと数分で目的の駅だ。なんとかがんばろう。


一駅、一駅。だんだん目的の駅に近づく。

もうすぐだ。

よし。到着した。

まずはトイレの場所だ。

ここから最短距離のトイレを目指そう。

場所は把握してる。

歩くたびにキツいが、なんとかこらえる。

一歩一歩慎重に歩く。


なんとかトイレに無事到着。

個室の空き状況はどうだろうか。

なんて、確認するまでもなかった。

順番待ちの列ができている。


どういうわけか、いつも朝からトイレは賑わっている。

個室が何個あろうと、関係ない。どこもいっぱい。

男子はお腹が弱い生き物なんだろうか。


この行列を待てる自信がないので、

別のトイレを探したが、ダメ。

こちらも行列。しかしさっきよりはマシ。

しょうがないので並ぶことにする。


もうちょっとで自分の番。

あと一人。よし次だ。

ようやく自分の番。

さあはやく出てきてくれ。

こっちはもう限界だ。


おかしい。なぜ誰も出てこないんだ。

はやくしてくれ!次は俺の番なんだ!


助けてくれ。もうダメだ。

こんなところで、もう目の前なのに。

おお神よ…。

我を助け給え。


残念だが、間に合わなかった。

パンツの中に全部出てしまった。

俺の人生終わった…。

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