第14話 面通し
俺たち三人は野営地まで連れていかれた。姫はにこにこして実家のことなどさりげなく聞いてくるタイシにすらすら話を紡ぎだしていく。たいしたものだ。むしろ気になったのはセイリアのほうだ。かなり緊張している。狩人二人は飛竜の遺骸をまもってのこったものの、まだ相手は五人いるし手ごわそうなのが少なくとも二人。
タイシはふいうちで倒せるかどうかもあやしい。野営地にはけがでうめいている三人のほかに四人いた。二人は普通の兵士で、一人は召喚師。あと一人は若い女性の僧侶。僧侶は家名もちではないが、召喚師はカンセル・ノルディ・アンソウヤという立派そうな名前で明らかに貴族っぽかった。服装のよしあしはわからないが服地のよしあしは姉貴にかなり鍛えられてわかる。本当にもてる男になるためには必須の知識だとかなんとか、自分のことは棚上げにして弟の俺をなんとかしようとしていた人だった。もうあえないのか。寂しいけどちょっとほっとする。
このカンセルさんの顔を見た姫様は一瞬だが、動揺を見せた。もしかして、顔見知りなのだろうか。
この駐屯地のリーダーは名目上カンセルさんらしい。タイシは俺たちをちらちらみながら、結構ながいこと彼と話をしていた。
その間、俺たちは食事をふるまわれた。兵士のだれかに料理上手がいるらしい。姫もセイリアも味がわからないようだが、俺は堪能した。
最後にカンセルさんが首をふり、タイシが肩を落とすのが見えた。
「送らせよう」
セイリアがほっとした顔になった。
タイシが命令を伝えている間に、レンジャーの擬態を試みる。
失敗した。姫のときと同じだ。
それなら、とタイシの擬態を試みる。
また失敗した。聖戦士なら前に擬態したはずだ。それとも一度やった職能の擬態はだめなのか。
せっかくだからカンセルさんをみて召喚師を試みるとこれも失敗した。
一回だけという制限があっても、召喚師なら最初の選択にも出たしできそうだと思ったのだが。
しかたなく、駆け出しっぽいが盗賊の擬態を行った。隠れたり、探したりが得意なはずだ。あのレンジャーに気づきもしなかった不明は少しでも取り返せるだろう。
レベル3(5)、力 14(13)、敏捷18(15)、知能13(19)、魔力 20(51/51)、体力21(31/31)、盗賊(ミミック2/聖戦士/魔法使い/奴隷商人/メイスファイタ-)、スキル 弓、気配察知、短剣格闘術、カモフラージュ、罠/錠前工作、簡易鑑定 (擬態、収納、元素魔術、テイム(人間)、簡易鑑定、打撃武器)
魔法 簡易鑑定、音吸収(0.1/1拍 継続)
(着火(1/面積)、溶断/溶接(2/拍 継続)、灯り(4/日 日数指定)、鎮火(1/5体積)、水操作(100×体積×距離/1拍)、水取得(体積)、回復促進(2~)、毒排出(3~)、硬度上昇(面積)、衝撃向上(2/日 日数指定)、土操作(100×重量×距離/1拍)、掘削(重量)、簡易鑑定、隷属化解除)
ステータスボードをもってるということは知られたくないので、ふところのをちらっと見ただけなのだが、歓迎される召喚者はさすがの能力値だ。
ところでミミックがミミック2になっていることが気になる。何がかわったのだろう。きっかけと思われるのは五つ目の擬態を行ったことくらいなのだが。
案内にたってくれるのは兵士の一人だった。ブレードファイターという職能で、三日月刀とでもよぶべきだろうか、そりの強い片刃の剣をつっている。善良そうな老兵で、兵士なのに鷹の目の魔法をもっている。見張りを長くやってたのかな。
話好きのおじさんという感じでいろいろ聞いてくるが、聞かれてもないこともいろいろ話してくれる人だった。
おかげでタイシたちの事情がわかってきた。
あの飛竜は行動範囲がかなり広く、さらいやすい人や家畜が多い辺境伯領まで被害をあたえていたらしい。新王は国内の掌握のために手元にあるトップクラスの勇者たちに見届け人(たぶんカンセルさん)ほか人員を添えて辺境伯の訴えに答えた。
「警戒心の強いやつでしてな。二当てほどしましたがしとめるには至りませんでした」
それをたった三人で落としちゃったわけか。
タイシの目が笑ってなかった本当の理由がわかった気がする。
勇者ってのは誰と誰かきくとあっさり教えてくれた。思った通りタイシ、ジョナサン、カスミの三人はそうだった。魔法使いは違ったらしい。カスミはジョナサンの弟子で、いつかは師匠とおなじレンジャーになるつもりらしい。
峠の道は馬車で通れる幅はないが、トカゲ馬をひいてある国は十分な幅があった。山肌にそってくねくねと、時折傾斜が急になったり、せっかく上ってきたのに少し下るところがあったりでかなり疲れる。俺以外の健脚ぶりがうらやましい。山肌には杉のような針葉樹がかなりみっしりはえていて日陰も多く、体を酷使して火照る分には気持ちがいい。小休止すると汗が冷えて寒く感じる。少しくだってしまうところは小さな谷で道端にはたいてい湧き水があるので水を汲んでこのときばかりはみんな声をあげた。黙ってるだけで大変だよな。
小高く、開けたところについた。なだらかに山々が西に広がっているのが見える。遠くに見えるあれは平地で、蛇行する川のようなものが見える。この距離であの幅だとかなり大きな川だ。
「わしはここまでです。あとは道なりにくだっていけばいいでしょう。お嬢さんの家はどのへんですかな」
姫が川のほうを指さした。
「一日かかりますな。こっちの道は知らないのでわしとしては少し早いですがそこの山小屋で一泊することをおすすめします」
老兵士はそういって元来た道を帰っていった。
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