第10話 王国混乱の事情を知る
今の状態はこうだ。
レベル12(3)、力 16(13)、敏捷10(15)、知能8(19)、魔力 33(28.995/29)、体力39(18/19)、メイスファイター(ミミック/聖戦士/魔法使い/奴隷商人)、スキル 打撃武器、柔術、元素魔術(限定)、簡易鑑定 (擬態、収納、元素魔術、テイム(人間)、簡易鑑定)
レベルアップしていた。テイム(人間)を引き継いでいるが覚えているのは隷属化解除だけ。集団心理操作とかはちょっと覚えておきたかったし、徒手格闘もあのときゴールの剣を切断できたのはきっとそのおかげだと思えば今更ながら残ってほしかった。
セイリアを擬態して覚えた柔術は相手と密接してから関節をきめたり投げたり、体制を崩したりする技術で、とにかく組み付かないとはじまらない。たぶんさっきのような事態になった時には役に立たない。
それにしてもセイリアは見事に筋肉派だ。
「聖杯王国の第七王女、アキノミノ・リウ・ノルディアスです。そなたの名も頂戴したい」
姫は名乗った。先にきてるのが名前か。そのルールにのっとって俺も名乗る。
「テルヤ・ハナゾノですか。家名もちなのですね」
「俺の国では、全部の人間が家名を持ちます。貴族制度はだいぶ昔になくなりました」
「なるほど、なんとなくわかりました」
姫は急ににこにこしはじめた。いやな予感がちょっとする。
「あなたは全然違うところからここへ拉致された人ですね」
ちょっと迷ったが、そうだ、と答えるしかなかった。相手が知っているならごまかしても悪くなるだけだろう。
「勇者の資格を持つ死者を呼び出し、王国を魔物の手から救うとかなんとかいって、鑑定したらみぐるみ剥がれて捨てられた。その王国とはあなたの聖杯王国なのか」
「もはやわたしの国とは言えませんね。父王は斃れ、兄弟姉妹も何人逃げのびることができたか」
少なくとも七人はいるんだよね。
「なにがあったのですか」
「簒奪です。いえ、あちらから言えば奪回でしょうか。叔父にあたるイースティ公がクーデターを起こしました。イースティ家は曾祖父が打倒した先王朝の家系です」
彼女はため息をついた。
「彼は魔物の脅威をうたっていますが、父王は彼らと良好な関係を築いていました。魔物の脅威とは、彼らとの交易を通じて侵される既得権益の危機感にすぎません」
ろくでもない流れがみえてきたぞ。
「もしかして、国の中でも対立が起きてる? 」
「ええ、そして叔父はその動きに過敏です。彼に反対の大貴族もいますが、わたしのような末端王族をかばうつもりはないでしょう」
だからこそ逃げる機会があったと彼女は言った。
「それで、彼らにつかまったと」
並べた死体に目をやると、埋める穴をほっていたセイリアの手伝えという目とかちあった。
「警戒はしていたのですが、まさかあの隊商もあの村の者も全部ぐるとは思わず」
「俺も似たようなもんです」
「テルヤは太陽神殿の遺跡からきたのですよね。砂漠の中の廃墟」
「わかりますか」
「先王朝のころにも同じことをやっていたと伝えられます。見どころのあるものは厚遇し、ないものには試練を課して生き延びた者を使うと」
「クーデターの前はやってなかった? 」
「やっておりません。召喚の広間は封印されてたはずです」
「でも、神殿には犠牲者のミイラが何人分もありましたよ。しっかり干からびるくらい前からやってたけど、四世代も前ではないと思います」
「本当ですか」
「間違いないです」
姫は唇をかんだ。
「父が無関係だった、と言い切る証拠がないのがくやしいです。お願いをしずらくなりました」
お願いがなになのか見当はつく。しかし彼女にそんな道徳的な理由でためらう余裕なんかないはずだ。
「いいですよ、俺も不案内だしこれも縁、同行しましょう」
姫はぱあっと顔をかがやかせた。
「ありがとう。よろしくおねがいしますね」
なんだよ可愛い顔もできるじゃないか。彼女がさっき何のためらいもなく人間三人を殺したことも忘れて俺は思った。助けてよかったと。
トカゲ馬の馬車、主に堅パンと干し肉、干し芋のつまった食糧袋一つ、毛布十数枚、なぜか雑多な古着。かきあつめると金はそれなり。武器は大小の短剣が五本と、商人たちの腰にあった短めの剣が三本。それに荷台にあった飾り気はないがしっかりしたつくりの槌鉾。
これはセイリアのものらしく、本人大喜びでぶんぶんふりまわしている。
四人の死体は足のつきそうなものと一緒に埋めた。馬車も危ないが、貴重な足なので汚したり外の装飾をはがしたりしてみすぼらしく偽装。
もろもろ準備をしているだけでよがしらじらしてきた。
「少し、寝ます」
明るくなりかかっているし、姫は馬車の後部座席に毛布をしいてねてしまった。
「お眠りになった。やはりお疲れのようだ」
「それはあんたも同じだろう」
セイリアは苦笑した。
「そうだな。だが、姫の寝ているいまのうちにしておきたい話がある」
彼女は何か葛藤をかかえているようだった。言いたくない、しかし言わなければならない。決意の表情で彼女は俺にこう提案した。
「これから目的地までそれなりに長い旅をともにすることになる。女二人、男一人だ。身の危険もあるし、おぬしにただ我慢しろということはできまい。だが、姫は守らなければならない」
何をいっているのだろうか。
あ。
言いたいことがわかった。確かに俺は聖人君子ってわけじゃない。凡俗だ。
でも、そんな自己犠牲精神に応じるのはごめんだ。気分がよくない。
だが、彼女の考えていることは斜め上をいっていた。
「おぬしと姫に万が一のないよう、いまからわたしがおまえを手籠めにする」
えええっ
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