第3話 とにかく生き延びる

 とりあえずステータスボードを確認する。あの魔法使いの擬態をしたのがどう出るか。

 ちょっと念じるだけで表示された。


 レベル5(1)、力9(13)、敏捷7(15)、知能17(19)、魔力29(13)、体力13(8)、魔法使い(ミミック/聖戦士)、スキル 元素魔術、軍隊格闘技(擬態、収納)


 なんか()つきのが出ている。あそこの鑑定ではでなかったぞ。というか、職能でわかったけど()の中が本来のやつだ。

 能力値だけなら擬態しないほうがよかったようだ。もしかしてミミックでも受け入れてもらえたんじゃないだろうか。

 いや、ないな。人をみぐるみはいでこんなところに捨てる連中だ。それに、白衣の女神のあの反応。鑑定があることを教えてくれたあたり、やはりまずいことになったと思う。

 説明がないのは不親切だな、と思ったがスマホ感覚でタップすると表示された。


 元素魔法 周辺の元素から力を誘導する魔法。火水木金土の五元素。誘導は同じものか、相性のよいものがあれば効果的。

 現在保有の魔法

 火 着火(1/面積) 溶断/溶接(2/1拍 継続) 灯り(4/日 日数指定) 

 水 鎮火(1/5体積) 水操作(100×体積×距離/1拍) 水取得(体積)

 木 回復促進(2~) 成長促進(儀式) 四肢回復(指 5) 毒排出(3~)

 金 硬度上昇(面積) 衝撃向上(2×日数 日数指定) 融解(儀式)

 土 土操作(100×重量×距離/1拍) 掘削(重量) 腐敗・還元(儀式)


 単位がわからない。時間の一拍はたぶん秒と同じくらいだろう。

 ()の中は魔力の消費量っぽいな。水が出せるのはありがたいがごはんはどうしよう。


 軍隊格闘術は、まぁ、投げるとか殴るとか、応急武器とか主に素手でそこらのもので戦うやりかただ。ここだと瓦礫かな。

 そして、自分本来の能力としてある収納。


 収納 モンスター技能。レベルの数だけ体積の収納スペースを得る。あけたてはモンスター名に番号を追加したものを唱え開放、または収納と心で命じるだけでよい。番号はレベル数が最大となる。収納している間は時間の経過はない。また、持ち主が転げるなどしても中身がひっくりかえることもない。死ぬまで保証。


 おお、では実験だ。

「ミミック一、開放」

 ばかっと目のまえに1メートルくらいの四角形ができあがる。何でできているのか黒鉄いろの内部はひんやりしている。奥行きも1メートルくらい。つまり、スキルにかいている体積はほぼ1立方メートルか。

 ええと、てことは水取得は魔力1つかってこれいっぱいくらい出るのか。

 おや、入れた覚えのないかばんがはいっているぞ。

 かばんを取り出して収納を閉じた。試してみたがやっぱりレベル二じゃないのでこの収納だけしかあかない。たぶん死んだらこの中身はモンスタードロップになるのだろうな。

 かばんは肩からななめにかける布かばんで、中には鉈一本、金属製のからっぽの水筒、たぶん火打石だとおもわれるものをしまったケース、本、干し肉が数枚はいっていた。食べものが少しはいっていたのはありがたい。持ち主は魔法使いだったのか、本は元素魔法のコンボ的な使用方法をいくつか書いてあった。水を少量召喚し、相手ぶつけるコンボがある。ここでの計算結果をみると小数点がでているので、魔力の消費は端数ありでよいことになる。十ミリリットルを銃弾なみの秒速300メートルで相手にぶつけると0.3でいいことになる。おそらくかけるのに二秒かかるし、まっすぐしかとばないと思うがかなり強力じゃないだろうか。あ、でも空気抵抗が大きいから遠いとどうなるかわからないな。

 かばんを下げ、遺跡の調査にのりだすことにした。その前に水筒に水を詰めてみようとする。五百ミリリットルほどよんでみよう。

「水召喚、二千分の一体積」

 指の先にぷくっと水滴がでたかと思うとばしゃばしゃあっというまに流れてしまった。

 結局あと二回同じ召喚をやった。一回は水筒の中をあらうのに使った。

 それと、わかったことだがここでは水の元素が少ないせいか、全量はでない。半分しかでなかった。でも、砂漠の遺跡で水が得られるのはありがたい。

 もし、戦士いや聖戦士のままだったら水が確保できずに詰んでた。

 いや、あの司祭たち、俺たちを職能別に詰むような場所に送り込んだんじゃないか。ただ、それでは擬態元の聖戦士と別の場所ってのがわからないから本当にばらけさせて送り込んだのかもしれないけど。

 とりあえずは一晩でもすごせる場所、それにあるのかないのかわからないが物資を集めよう。大きな生き物はいないと思うが、小さくて毒をもつ生き物はいるかもしれない。

 みまわしたところ、ほとんどの建物は石の土台に石柱がまばらに残っている程度で、何か残っている期待は持てない。もしかすると地下があるかもしれないが、この様子だとあっても大半埋もれているだろう。そこで何か見つかるにしても、考古学的には価値があっても実用にはもう耐えないこと請け合いだ。

 屋根がある場所といえば、ほとんど形をとどめていない城壁に残る石積みの櫓のいくつかか、少し遠くにみえる寺院らしい石造建築くらい。

 寺院はそれほどひどく崩れているようには見えなかった。とりあえず行ってみよう。

 できればこのへんの地図が浮き彫りかなんかで残ってるといいな。

 なんでもいい。食べられる物が手に入るところに移動しないと。

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