5月12日

 いつだってそれに驚いている。いつだってそれに驚いているし怖いと思っている。それでもそれは問題ないものなのだ。そもそも怖がることがおかしいのだから。

 それでもいつだって何もないところで何もないように進めているのに急に発生したものにびっくりすることは当たり前なのだろうしそれを怖いという表現で伝えることはままあることなのではないだろうか。


 そういえば縫い物をしたいという衝動があった、昨日。衝動というものは大概目的がない。手段だけを求めている。

 刺繍をしたことがない。だからやってみたいけれど何が必要なのかもすぐにはわからない。ものを揃えるのも大変かもしれない。そういえば家に何かあるかもしれない。そういう方向性のものはないかもしれないけれど、意外なものがあったりする。なかったりもする。家に何があるのかを全然知らない。あの棚の奥の方には何があるのだろうか。クローゼットの中に私の知らないものはないか。引き出しの奥にはきっと知らないものがあるだろう。


 やあ。

 どうして来たんだい。

 君に会うため以外にあると思うかい。

 いいや。けれど、だから聞いたんだよ。

 おや、君と僕との間に何かあったような言いぐさじゃないか。

 なかったとでも。

 そりゃああったさ。けれどそれは僕にとって君に会わない理由になるようなものではないというただそれだけさ。

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