10冊目 鼻くそげんちゃん
その金属音は大勢の歓声を押しのけて耳に入ってきた。
バッターの目線ですべてを察した。
その瞬間だけは1秒が何分にも感じた。
少年野球時代からともにキャッチボールをしていた義也はキャッチャーヘルメットを外し、空を眺めている。
俺の目に映る人間は誰一人として下を見ているものはいなかった。
しばらくして歓声の勢いが増したことに気づいた。どうやら特大の本塁打をくらったらしい。
義也は膝から崩れていた。
背後で守備をしているはずのやつらはどんな表情をしているだろうか。
マウンドの上でなぜこのコースに投げたのだという後悔の念が一気に襲い掛かってきた。
確かに迷ったのだ。
内角低めに投げるべきだった。
どうしてあえて高めを狙ったのか、明確な理由が思い出せない。
試合終了のサイレンがボーっとつっ立っていた俺の耳に入ってきた。
ああ、終わったんだ。
そんなことを考えていると、後ろから肩に衝撃が走る。
振り向くと岩田の顔が見えた。
「最後だ。整列、行くぞ。」
そういうと岩田は小走りでホームベースの方へ走っていった。
まだ試合が終わったとしっかり実感できない自分がいる。
実はまだ1イニングあるんじゃないか。
それでも足はホームへ向かっていたのである。
架空小説より引用・・・「鼻くそげんちゃん」
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